藤田真司の気象予報士塾は、気象予報士試験合格をトコトン応援する通信型の塾(予備校)です。

【対談】高校在学中に気象予報士試験に合格できた理由


対談

藤田真司の気象予報士塾を受講された宇井星日さんは、2024年(令和6年)8月に行われた第62回気象予報士試験で合格を勝ち獲られました。金城学院高等学校3年生在学中の現役高校生としての合格です。
宇井さんからのご提案で、藤田真司との対談シリーズ第四弾が実現しました。
学校の勉強と並行しながら、合格まで受験勉強を貫徹できた秘訣などについて、2人で語り合った内容を以下にご紹介します。

●これまでの対談
第1回:加賀屋陽介さんとの対談(2008年)
第2回:川口智紀さんとの対談(2018年)
第3回:柏山自夢さんとの対談(2022年)



■実は理科が苦手科目だった。

藤田:第62回試験での合格、おめでとうございます。 一般財団法人気象業務支援センター様が公表されたデータに基づきますと、今回の試験で合格された方は248名で、そのうち10代(19歳以下)で合格されたのは僅か11名とのことで、その中のお一人が宇井さんということになります。
まず、お伺いしたいのは、気象予報士を志した動機ですね。やはり、子供の頃から空を見るのが好きだったりする「理科少女」だったのでしょうか?

宇井さん(以下敬称略):実は全然そういったことは無くて、むしろ理科は苦手科目だったんです。 中学入試(金城学院中学校)のときに、今でも覚えているんですが、理科の試験で台風に伴う風の流れを作図する問題が出たんですよ。 地上付近で「台風の中心に風が吹き込んでいるのか」「台風の中心から風が吹き出しているのか」で迷ってしまい、台風の中心から風が吹き出している図を描いてしまって・・・。(苦笑) それくらい理科は苦手でした。

藤田:その数年後に気象予報士資格を取得されるのですから、ある時点での「不得意」というのを過度に気にされる必要は全く無いことを実感します。 足りないものや欠けているものがあれば、これから学んでいかれることで埋めれば良いのですから。理科が苦手であっても気象予報士資格に関心があれば、チャレンジして欲しいですね。
そうすると、気象予報士試験に挑戦してみようと思ったきっかけは何だったのですか?

宇井:子供の頃からテレビが好きで、小学校3年生の道徳の授業で、なぜか「気象予報士になりたい」って書いてたんですね。 中学校に入ってぐらいからは(気象予報士の)石原良純さんに憧れて、番組とかめちゃくちゃ見てたんですよ。 番組宛てにファンレターを送るくらいの良純さんのファンで、良純さんと同じ仕事をしたいなと思ったのが、わりと意識し始めたきっかけですね。

藤田:そうすると、石原さんへの憧れが受験勉強にそのままつながったって感じですか?

宇井:いえ、ハッキリと気象予報士になりたいと思ったきっかけは、大雪のニュースに接したことですね。
私は北海道が好きなこともあって、今でもよく覚えているのですが、大雪で新千歳空港の機能がストップしたんです。 ちょうど受験シーズンだったので、空港で困っている受験生がたくさんいて、辛いなと思ったんです。これを解決するにはどうすればいいんだろうって。
JR北海道に入るか、新千歳空港の会社に入るか、それとも北海道庁に入るか、とかいろいろ考えたんですけど、まずは気象の勉強をしないと!って思ったんです。


■心が折れそうになったとき、恩師の言葉に救われた。

藤田:受験勉強をお始めになったのが2022年の10月頃ですから、当時は高校1年生ですね。 高校生なのですから、平日は学校での授業や課外活動があるということで、とても忙しいと思います。
そんな中、勉強開始から2年弱、2024年8月の試験で合格されたわけですが、学校生活と受験勉強の両立の秘訣って何ですか?

宇井:決して上手く両立できていたと言える自信は無いのですが、昼休みなどのちょっと空いた時間に、短時間で取り組める課題をやっていました。 実技試験の過去問題演習のように、まとまった時間を要する勉強は、帰宅後に取り組んでいましたね。

藤田:気象予報士試験の勉強は、高校での学習内容とはかなり異なるので、大変だったと思います。

宇井:そうなんです。実は最初に受けた試験では、1科目の学科試験すら引っかからずに、全落ちしてしまったんです。
それが凄いショックで、これ以上に受験勉強しても無駄になってしまうくらいなら、ここで手を引いて学校の勉強だけ集中したほうが合理的かな・・・と落ち込んでしまいました。
そのときに高校の恩師に相談したのですが、私にかけて下さった言葉が、今では私の座右の銘になっています。

藤田:どんな言葉ですか?

宇井:「七転び八起きです。まだゲームは始まったばかりですよ。」って言われたんですよ。
私の恩師は100kmマラソンや富士山への登頂を何度も行っている方で、気象予報士試験をマラソンでに例えられたのですね。 他の試験だと、2か月くらい集中的に取り組めば合格できるものもありますが、気象予報士試験はそうじゃないんだと。 派手に転んだとしても、その後起き上がるかどうかが大事なんだってことを学びました。

藤田:そのときの先生の励ましがあったからこそ、宇井さんは気持ちを切り替えて気象予報士試験の勉強に戻ることができたのですね。 これは本当に大切なことだと思います。受験に関する技術的な部分というのは、適切な教材を使えば良いわけですが、「合格まで頑張るんだ!」というモチベーションを維持できるかどうかは、結局のところ、ご本人の気持ち次第ですからね。

宇井:マラソンの例えで言うと、もう1つ実感したことがあります。 実技試験の過去問題演習に延々と取り組むことが、なかなか大変だと感じたのです。 この勉強は、答案の精度をひたすら高めていくことの連続ですよね。

藤田:仰るとおりで、実技試験では出題者が要求する解答を端的にまとめられるかどうかが勝負の世界ですね。そのためには、炙り出された課題を1つ1つ解決していく必要があるわけで、地味な勉強だと言えます。

宇井:そのときに恩師に「頑張っていれば見える景色が変わるし、受かった人にしか見えない景色がある。」って言われたんです。 正直、言われたときは半信半疑だったんですけど、ちょっとそれを信じてみようかなって感じでしたね。

藤田:山に登っている最中は、山頂からの眺めを想像することが難しいのと同じように、合格したからこそ見えるものが存在しますね。 だからこそ、多少合格の時期が遅くなったとしても、最終的に合格という形で受験勉強を締めくくって欲しいというのが、講師としての願いです。

宇井:それだけに、気象予報士試験に合格したときに、恩師に報告できたのが本当にうれしかったです。
難しい試験ですから、「絶対」というのは存在しないですが、「(宇井さんは)受かるよ」と言葉にしてくれてたのは凄くありがたかったですね。

藤田:家族であったり、友人であったり、受験生を無条件に信じてくれる人の存在は貴重ですね。


■大切なのは「正しい方法で努力すること」

藤田:宇井さんは、当塾の「実技試験対策講座」をご受講下さいました。 今振り返ってみて、受験勉強において押さえるべきことは何だとお感じになりますか?

宇井:「正しい方法で努力すること」が何においても大切だと思うんですよ。 間違った方向で努力しても効率が悪いですから、そういうのを教えてくれるのが塾だと思います。

藤田:仰るとおり、試験に合格のために大切な「本質」と「本質でない部分」の違いを見抜いたうえで、本質的な部分だけに特化する形で、時間と労力を投入されることが重要ですね。 私はこの仕事を通して、多くの受験生を見ていますが、短期間で合格される方は例外なく、このツボを押さえておられます。
もちろん、気象予報士試験への取り組み方は人それぞれであって、のんびり時間をかけて気長に取り組んでいかれるのもあって良いと思います。 その一方で、就職や転職といった将来における明確な目標があって、その通過点が気象予報士試験合格なのであれば、それに向けた最短経路を通っていただくことが、その方にとっての最善策のように思いますね。

宇井:あと、「合格率の数字をあまり気にしない」というのも大切だと思います。
よく「合格率5%前後」と言われますし、それは事実ではあるんですが、実際に試験会場に行って「この中から上位5%しか受からないのか・・・」って考えちゃうのが良くないんですよ。

藤田:それは「合格率」と「確率」を混同してイメージしまうことによるものですね。 例えば、商店街のクジ引きで「白い玉19個と赤い玉1個」の中から、ガラガラポンで赤い玉が出ることをイメージすることと「合格率」は意味が異なります。 自分の意思で変えることができないのが、クジ引きなどの「確率」で、自分の意思で変えることができるのが「合格率(合格の可能性)」ですね。 誰でも最初の時点では「合格の可能性ゼロ」からスタートするわけですが、受験勉強を適切に進めることで、その数値を高めていくことができます。 気象予報士試験が難しいことは間違いないですが、1つ1つの疑問を解決して納得に変えていくことができれば、その延長線上に合格があるのだと確信しています。
ちなみに、宇井さんは受験期間に敢えて我慢をしたものはありましたか? 例えば、「テレビを見ない」とか「遊びに行かない」とかいった話です。

宇井:無かったですね(笑)。試験前日の土曜日も遊びに行ってましたし。
試験当日に70点を超えるために過去問を完璧にすることに取り組んでいて、それが試験日までにできればいいでしょ、っていう考えでしたね。

藤田:それも「本質」と「本質でない部分」の見極めの1つですね。あと、「緩急を付けて勉強する」ことの大切さでもあると思います。 「集中的に取り組む時間帯」と「しっかりと頭を休めてリフレッシュする時間帯」のメリハリを付けるからこそ、質の良い勉強につながったのだと思います。
当塾の「実技試験対策講座」のご受講を開始されたのが2024年1月試験の直後で、そこから約7か月間で集中的に実力を高められましたね。

宇井:自分としては、夏休みの期間にガッツリ勉強できたことは大きかったと思います。
これは社会人の方には得られない恵まれた条件でした。

藤田:学生さんなのですから、勉強をするための時間が豊富に与えられているのであって、それを最大限に有効活用されたからこそ、高校在学中での合格を勝ち獲られたのですね。


■次の目標に向かって走り続けたい。

藤田:まもなく高校を卒業されることになりますが、春からは大学へ進学されるとお伺いしました。

宇井:先ほども話したように、もともと理科が苦手でしたが、工学部で勉強することになりました。
これも気象予報士試験合格の影響が大きかったですね。

藤田:春休みの時期からインターンシップをはじめ、いろいろご予定が入っているとのことで、忙しいキャンパスライフになりそうですね。

宇井:はい。今思うのは気象予報士試験合格の成功体験に縛られないことですね。 今はまだ一番新しい気象予報士ですが、もうすぐ次の試験で新しい気象予報士が生まれるわけですから。

藤田:大学ではどんなことに取り組んでいきたいですか?

宇井:工学と地域社会の関わりについて広く学んでいきたいと思っています。 恩師との出来事がきっかけで学校経営にも興味を持ったので、学生ができる範囲での運営にも携わってみたいですね。 それに加えて、学外での様々な大人との関わりを通じて、組織というものを知りたいと思います。

藤田合格体験記でも書いて下さいましたが、「雪害をなくしたい」という大きな目標をお持ちとのことで、そのために何ができるのかを、じっくりと学び、そして行動に繋げていくことになりそうですね。
今後の宇井さんのますますのご活躍を願っています。

宇井:ありがとうございます!

対談


●対談を終えて、宇井星日さんからのメッセージ
対談記事を最後までご覧いただき、ありがとうございます。読者の皆様の合格をお祈りします。
こちらの対談も私から申し出たものです。しかも三が日にです。お正月にも関わらず迅速なレスポンスで話をトントン拍子で進めて下さいました。対談を申し出たその日に日程が決定する早さこそ、さすが藤田先生だなと感心しました。何回か往復でメールのやり取りをしていると、受験生時代のあの質問三昧の日々を懐かしくも思いました。
藤田先生と1対1で対談をして、先生の鋭い観察眼に驚きました。懇親会でお会いしたことがあるものの、じっくりと話すのはこちらの対談が初めてでした。にもかかわらず、私自身も気づかぬ特性や向き不向きなどを冷静な立場からお教えいただき、終始新たな発見でいっぱいでした。また、長年の指導経験に基づく知見を垣間見ることができ、勉強になりました。対談を申し出て心から良かったと思います。貴重な経験、誠にありがとうございました。
私は9歳から気象予報士への憧れを持ち続け、約10年越しに叶えることができました。18年間の人生の中で、半分以上の時間を気象予報士への憧れに費やしていたことになります。それほどの想いがあっても挫折しそうな時期は何度もありました。
諦めたらただの学習経験者で終わります。何度も不合格通知を手にする辛さも分かりますが、夢や希望をそこで終わらせて良いのですか? 気象予報士試験の借りは気象予報士試験でしか返せません。合格後に見る空や雲は、今までの中で一層輝いて見えますよ!
末筆ながら、熱心にご指導・添削いただきました藤田真司先生。藤田先生なくして合格はありませんでした。
現役気象予報士として職業の魅力を教えていただいた茂木息吹様。茂木様を目指して今後も研鑽を積みます。
人生の指針となる言葉を授けて下さった恩師こと、金城学院高等学校・事務職員のO様。私はOさんのような大人になりたいです。
いつも励ましてくれた友人等々、関わって下さったすべての皆様に深く感謝申し上げます。
ありがとうございました!


●対談を終えて、藤田真司からのメッセージ
大雪被害の報道を目にし、それを解決するために、まずは気象予報士を目指す、という宇井さんの志は新鮮でした。 学業の傍らで、子どもたちに絵本の読み聞かせをするボランティアにも参加されているとのことで、目の前に存在する問題を解決するために、自分が何をすべきか、自分に何ができるのか、を常に考えながら、勉強に取り組んでこられたのだと感じました。
「行動を前提としない学び」に意味は無く、「学びに基づかない行動」は危険であるとさえ言えます。「学び」と「行動」は常に車の両輪の如く対になっており、「行動するために学ぶ」「学びを行動に活かす」ということが大切なのですね。
対談の中で、特に印象深かったのは、受験勉強に躓きかけたときに、高校での恩師(事務職員の先生)の励ましが大きな心の支えになったというエピソードです。 これも宇井さんが先生に相談されるというアクションがあったからこそ、先生からのアドバイスを受けることができたのであり、何かに行き詰まったときに誰かの力を借りることの大切さを実感します。 他者の力のありがたさを強く感じる経験を数多く持つからこそ、自らも誰かを助けることの重要性を身をもって認識されておられるのだと確信しました。
宇井さんと私は「高校在学中に気象予報士試験に合格した」という点では同じですが、宇井さんと意見を交換する中で、 約30年前の自分はこれだけ考え、そして行動できていたかと自問することの連続でした。それとともに、気象予報士を目指して日々奮闘する若い受験生の皆様を特に応援したいという気持ちが強まっています。
宇井さんが在学される金城学院高等学校と私の母校(同志社国際高等学校)は、奇しくもキリスト教(プロテスタント)に基づく教育が行われている点で共通しています。 私は特定の宗教を信仰しているわけでは無いのですが、聖書に書かれた次の言葉を引用し、メッセージを締めくくりたいと思います。

《求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば、見いだすであろう。門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。》(マタイによる福音書 7章7節)
『口語訳新訳聖書』日本聖書協会発行 1954年版 より


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