藤田真司の気象予報士塾は、気象予報士試験合格をトコトン応援する通信型の塾(予備校)です。

無料メルマガ『めざせ!気象予報士・お天気キャスター』バックナンバー(第301話~第350話)


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  301、気象の勉強は役に立つ。
  302、大きな課題は、細かく分割して取り組む。
  303、進捗感・達成感が勉強習慣を確立させる。
  304、短くとも集中できる時間を持つ。
  305、今年こそ気象予報士試験合格!に向けて
  306、これまでの過去問題演習が助けてくれる。
  307、2月の使い方で差を付ける。
  308、「いつでも使える」≠「いつでも使う」
  309、最近の話題から
  310、それぞれの目標に向かって
  311、モチベーションの維持こそ、合格の必須要素だ。
  312、勉強時間と勉強場所からの自由
  313 、他人の目が応援団になる。
  314、本業に気象の専門知識をプラスする。
  315、実技試験で必要な3つの力
  316、ゴールに向かって歩み続けよう。
  317、「これだ!」と思った教材を使い潰す。
  318、「当たり前」の水準を引き上げる。
  319、直近の過去問題を温存しない。
  320、試験直前には範囲を限定して取り組む。
  321、試験前に焦ったら合格体験記を読もう。
  322、「明日から」ではなく「今から」勉強を再開する。
  323、第48回試験を振り返って(一般知識試験)
  324、第48回試験を振り返って(専門知識試験)
  325、「適切な手法」と「圧倒的な分量」を兼ね備える。
  326、実技試験の攻略に必要な4種類の力
  327、ひらめくのではない、滲み出るのだ。
  328、受験勉強の原動力は、レベルアップにあり
  329、「削る」「活かす」で勉強時間を確保する。
  330、 受験勉強に必須の3つの手順
  331、「投資」と「収益回収」には時間差がある。
  332、高いパフォーマンスは、余裕から生まれる。
  333、実力を高めるために必要な3つの要素
  334、ささやかな動機で良い。
  335、 「勝てる答案」を書くために
  336、出でよ!文系気象予報士
  337、不合格スパイラルから抜け出すために
  338、目の前の問題と格闘するのが受験勉強です。
  339、時間は有限、工夫は無限。
  340、「耳学問」のすすめ
  341、家の外に勉強の場を設ける。
  342、受験宣言は、自分を支えてくれる。
  343、アウトプットできてこそ、本物の理解
  344、残り時間での集中度を高める。
  345、夏休みを滑走路にして飛び立とう。
  346、「守りの勉強」で失点を防ぐ。
  347、試験当日に実力を発揮できてナンボ
  348、合格発表日までをどう過ごすか
  349、本業を磨くために気象を学ぶ人は多い。
  350、勉強の重ね塗りで、知識を定着させる。

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301、気象の勉強は役に立つ。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> なんだか気象って面白いぞ!という気持ちも芽生えてきて勉強を続けました.
> 途中,ごく近所で豪雨により非常に大きな被害があり,
> 復旧ボランティアに参加する中で,使命感のようなものも湧いてきて,ますます止められず.
> 藤田先生の講義を受講するたび,
> 一歩ずつ理解が深まることが実感できたことも合格への大きな後押しになりました.
> この資格を取ることにより,これから,どんな新しい世界が見れるのか楽しみです.
■Bさん(40歳・会社員・第46回気象予報士試験合格)


「実学」という言葉がありますが、気象に関する勉強は、
まさに「【実】際に役に立つ【学】問」であると、私は確信しています。

私たちは地球で生まれて、その一生を地球で過ごします。
好き嫌いに関係なく、空模様を日々気にしながら、生きていくわけです。
涼を得るためにアイスクリームをなめ、暖を取るために重ね着をします。
将来的に、月へでも移住することになれば、話は別ですが、
先日のひまわり9号の打ち上げが天候の問題で一度延期されたように、
ロケットの打ち上げも、気象状況と大きく関係しています。
それにしても、打ち上げが無事に成功して良かったですね。

「スマホで天気予報を見れば良い」というのは、正しいことですが、
情報を適切に解釈するためには、受け手側の知識も必要です。
例えば、気象庁のホームページには、
天気に関する情報が、溢れんばかりに掲載されていて、
誰でも無料で読むことができます。
しかし、基礎知識が備わっていなければ、有益な情報は引き出せません。
例えば、今日(11月7日)の時点で、
「今年のクリスマスに奈良で雪は降るか?」を知ることは不可能です。
これは、数値予報に関する勉強をしている方であれば、自明のことですよね。
検索を何度かけても、受け手の知識が不足していれば、
情報は右から左へすり抜けていくだけです。

気象予報士試験は、「幕の内弁当」のようなものだと私は思っています。
気象学・法規・天気予報・気象災害・資料の見方など、
ひととおりの基礎学習が、試験科目の中に含まれています。
つまり、試験内容が、「気象の基本学習セット」のようになっており、
幕の内弁当のように、色彩豊かな具材が揃っているのです。

極端な話、実際に試験を受けなくても、
この試験内容の学習を行うことで、十分に有益だと言えます。
資格の有無に関係なく、気象の勉強は私たちの生活・防災に役立つからです。
ただ、日々忙しい中で勉強を進めていくためには、
何らかの目標設定があったほうが、自分にとって励みになります。
やはり、学習の成果が「国家資格取得」という形で可視化されることは、
勉強を続けていくための大きな動機であると言えるでしょう。

この世で「誰にとっても役に立たない勉強」は存在しませんが、
気象の勉強は、「誰にとっても役に立つ勉強」だと私は思います。




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302、大きな課題は、細かく分割して取り組む。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 気象予報士試験の合格率は今回も4.1%と一見低いのですが、私は次の様に考えました。
> 学科試験と実技試験は別の試験で、それぞれ合格率が20%であるということです。
> 合格率が20%という試験は、他に色々あると思いますが、それ程難関ではないと思います。
■Y・Oさん(59歳・男性・無職・東京都・第46回気象予報士試験合格)


約4%という低い合格率の気象予報士試験ですが、
一般知識試験・専門知識試験・実技試験という3つの試験が組み合わさっており、
単純に言えば、3つの試験全てに合格した人の割合が完全合格率です。
よって、合格を勝ち取られたY・Oさんが述べておられるように、
個々の試験の合格率は、完全合格率よりもかなり高いということです。

ここで私が思うのは、大きな課題を達成するためには、
課題を細かく切り刻むことが大切だということです。

例えば、時代劇の最終シーンでよく出てくるパターンで、
正義の剣豪が、彼を取り囲む何十人もの敵を、
次々に成敗していくシーンがあります。
ここでは多数を相手にしているものの、斬り合いのときは常に1対1であり、
1人ずつ順番に倒していることが分かります。
もし、何十人もの敵が、刺し違え・同士討ち覚悟で一度に襲いかかってくれば、
さすがの名剣士であっても、ちょっと勝てそうにありません。

受験勉強もこれと似ていて、気象予報士試験合格という目標を達成するためには、
課題を細かく分割して取り組むことが大切です。
前述のとおり、この試験が3つの科目に分割されているのも、
受験生が勉強を進めやすいようにしてあるのだと、私は解釈しています。

ただ、これだけでは、まだ課題が大きすぎますので、
受験生側で、さらに細分して取り組んでいかれることが望ましいです。
細分するからこそ、自分が何を解決すれば良いのかが見えてくるのです。

例えば、「一般知識試験に合格する」を細分すれば、
「大気の熱力学の分野をマスターする」などのピースが出てきます。
これを、「相当温位の概念について理解する」などのように、さらに細分すれば、
現時点で自分が理解していること、分からないことの確認作業に取りかかれます。
「温位と相当温位は、どのように異なるのか?」
「相当温位が保存されるのはどんなときか? 保存されないのはどんなときか?」
「エマグラム上で相当温位を考えると、どうなるか?」
といった疑問を1つずつ潰していく作業です。

難しい課題も、細切れにすれば、ハードル(解決のための労力)は低くなります。
飛び越えられるくらいまでハードルを下げれば良いのです。
結局のところ、こうした細分化された課題を1つずつ解決した延長線上に、
受験勉強の到達点である完全合格が待っているということです。
「月へ行くためには、どうすれば良いのだろう?」という漠然とした目標も、
小さく切り刻まれた課題を全て解決することで、具現化するわけですね。

「気象予報士試験合格」という目標を掲げるだけでは、
その道のりが長すぎますし、何をするべきかも不明瞭です。
遠くの目標を眺めつつも、実際に進まなければ、ゴールには近づけません。
10000ピースのジグソーパズルを完成させるために必要なことは、
全体の絵がどうなるのかを想像しながら、
小さなピースを1つずつ埋め続ける作業の連続です。




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303、進捗感・達成感が勉強習慣を確立させる。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 1日30分でも良いからとにかく毎日勉強することを習慣付けるようにしました。
> 最初は苦痛だったのですが、それでも毎日続け、
> 歯を磨くように自然にできるようになると苦にならなくなります。
> 何より、理解が進むと勉強が楽しいとまでは言えませんが、
> 燃えてきて次の問題もやってみようという気になりました。
■Cさん(第46回気象予報士試験合格)


私たちの毎日は、さまざまな習慣で構成されています。
朝起きてから家を出るまでの時間だけを振り返ってみても、
概ね決まったスタイルが確立されているはずです。

 ・朝食に何を食べるか、何を飲むか
 ・テレビ・ラジオを付ける人は、その番組名
 ・家を出発する時刻

こうした習慣を付けているからこそ、普段の忙しい毎日で、
ゼロから「何をしようか」と深く考えることを省略でき、
効率的に物事を進めていけるわけです。

別の言い方をすれば、何か新しいことを始めようと思った場合は、
それを習慣として定着させてしまえば良いのだと言えます。

もし、気象予報士試験合格を目指すのであれば、
この合格体験記を書かれたCさんのように、学習習慣の定着は必須です。
受験勉強を習慣化できなければ、合格を勝ち取るのは厳しいです。

学習習慣を身に付けるために大切なことは、
最初の時点で高すぎる目標を立てない、ということです。
今まで勉強習慣を持たなかった人が、
いきなり「毎日3時間の受験勉強を自分に課す」と心がけたところで、
簡単に定着させることは困難です。挫折する人のほうが多いでしょう。
まずは短い時間で良いので、「継続できること」を最優先の目標とします。

そして、受験勉強が習慣になっているというのは、
「半ば無意識のうちに勉強をしている」という状態を指すわけですが、
その状態に持っていくためには、面白さを感じることが大切です。

例えば、駅で電車を待っているときに、無意識にスマホを取り出す人は、
スマホいじりの面白さが、脳の中に焼き付いているからですね。
受験勉強でも、面白さを持てるようになるのが重要で、
具体的に言えば、「理解できた」「問題が解けた」という進捗感・達成感です。
この点については、ゲームと似ていると思います。

ゲームが面白いのは、難所を攻略してクリアできる瞬間です。
今まで何度も負けたり、上手くできなかったりしたのに、
勝てるようになる、上手くできるようになると、気分が高揚します。
もし、初めての挑戦で簡単に勝てたり、達成できたりするゲームであれば、
あまり面白味を感じないはずです。
高い壁が仕掛けられていて、その壁を突破できる瞬間が訪れるからこそ、
ゲームに熱中するわけですね。

その意味では、受験勉強も一種のゲームだと考えることができます。
全ての合格者は、合格まで勉強を続けることができた方ですが、
その道のりは苦労や義務感だけで敷き詰められているわけではないです。
意識するかどうかは別にして、受験勉強にゲーム的な魅力を感じ、
単なる努力だけではない原動力を味方にすることこそが、
学習継続のための秘訣だと、私は考えています。




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304、短くとも集中できる時間を持つ。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 私は、早起きが大の苦手で、夜もすぐ眠くなるので、
> 日中に如何に勉強時間を確保するかが課題でした。
> 平日は通勤の移動時間(一日40分程度)中に
> 気象の基本知識、藤田塾・過去問演習等から抽出した自分の苦手な内容、
> ミスしやすい点などを纏めた単語帳(全6巻)を
> 「可能な限り少しでも毎日」見ていました。
■N.Tさん(39歳・男性・会社員・愛知県・第46回気象予報士試験合格)


クリスマスが近づいてきましたが、もしサンタクロースが何かをくれるのなら、
「時間が欲しい」と願う方も多いのではないかと思います。
仕事を片付けるためにも、楽しく遊ぶためにも、体を休めるためにも、
そして受験勉強を進めるためにも、時間は貴重なものです。

社会人になると、学生時代のことを思い出し、
「勉強に使える時間(≠実際に勉強した時間)」が多かったなァ、と気付きます。
もちろん、忙しい学生の方も多いでしょうが、
平均として見た場合、学生と社会人では時間の余裕のレベルが違います。

毎日が年末であるかのように、忙しい日々を送る方にとって、
「受験勉強のためだけに使える長い時間」を確保するのは難しいです。
つまり、「時間を確保できたら、勉強を始めよう」というスタンスでは、
いつまで経っても勉強に取りかかれない可能性が高いのです。

勉強に専念できるまとまった時間を作れるに越したことは無いですが、
それを用意できなくても、勉強をスタートしてしまうことによって、
何とか学習時間をかき集められることもあるのです。

受験勉強と言えば、家族が寝静まった深夜や、まだ起きていない早朝に、
一人で机に向かって奮闘するというイメージがあります。
そういった形で頑張る方もおられるのは事実ですが、
この合格体験記をお書きになったN.Tさんのように、
体質的に早起き・遅寝が苦手な方もおられます。

もし、N.Tさんが「受験勉強とは深夜・早朝に行うもの」という拘りが強ければ、
合格を勝ち取られるまで勉強を続けられなかったかも知れません。
深夜・早朝の時間を使えない代わりに、
通勤の際の移動時間に集中して勉強をされたわけです。

「一日40分程度」という時間は、決して長いとは言えませんが、
通勤という毎日の行動パターンと受験勉強を紐付けすることにより、
「電車に乗ったら気象の勉強」という形で、学習習慣を定着させやすくなります。

時間が無いと嘆く前に、まず学習を始めてみると良いでしょう。
もし、この試験勉強が自分にとって優先順位の高いものなのであれば、
優先順位の低い行動に対する時間が、勉強時間に置き換わるはずです。




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305、今年こそ気象予報士試験合格!に向けて
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「この世にある『快楽』を、可能な限り味わいたいと思っているのです。」
2000年春、大学4年生だった私は、株式会社ウェザーニューズの最終面接で、
役員の方々を前にして、自分の人生信条を青臭く主張していました。

「『快楽』というのは、18世紀の哲学だね。」と話し始めたのは、
ウェザーニューズの創業者、石橋博良会長(当時)でした。

「(18世紀の哲学・・・?)」
今思えば、石橋会長はベンサムの功利主義のことを挙げられたのでしょう。
そんなことも知らなかった私は、目の前のカリスマ経営者が、
自分の話した内容に対して、肯定的に反応されているのか、
否定的に反応されているのか、そればかりが気になっていたことを思い出します。

『快楽』という表現すると、下品な意味合いを含んだ印象を受けますが、
要は「豊かな人生を味わい尽くしたい」ということです。
2017年のスタートを迎え、今年も充実した年にしたいと願いつつも、
私は「やってみたいことが多すぎて、消化できない。」と感じることもあります。
これは、メルマガ読者の皆様も同じように思っておられるかも知れません。

「雨の日は、将棋くらいしかすることがなかったんや」と、
以前に父親が自分の子ども時代のことを話していました。
終戦から間もない時期のことで、家にテレビも無かったのでしょう。
それに対して、今ではお金をあまりかけずに、楽しめる娯楽が溢れています。
学生時代、レンタルビデオ店で週6本ずつビデオを借りていたことがありますが、
今は4000円ほどの年会費で、Amazonプライムビデオの膨大なソフトを楽しめます。

人生を豊かにしてくれる材料には事欠かないですが、
それに対して、自分の時間は1日に24時間しかありません。

去年、300円で『源氏物語』の電子書籍を買いました。
指先の操作で、世界最古の長編文学が自分のスマホに入りましたが、
「桐壺」の数ページで止まったままです。
ダウンロードは一瞬ですが、読了には長い時間を要します。

こうした環境は、受験勉強にとっては、むしろマイナスかも知れません。
気軽に楽しめるものが溢れている現代において、
それを断って机に向かうのは大きなエネルギーが要ります。
幕末期に、大阪の適塾では福沢諭吉らが日々猛勉強をしたそうですが、
ゲームも漫画も無いという環境も、学問に集中できた一因かも知れません。

私たちは、今さら不便な時代に戻ることはできないのですから、
受験勉強を上手く進めるためには、次の点に注意を払う必要があると思います。

1.思い切った取捨選択をする。
2.捨てていた時間を活用する。

1ですが、学生時代の私のように「この世にある『快楽』を」と言っていると、
快楽の渦に飲み込まれて、何もかもが中途半端になってしまうように思います。
昔よりも平均寿命が延びたとは言え、人生の時間は有限です。
何かを捨てるからこそ、残ったものが生きてくると言えます。
もし、何としても気象予報士資格を取得したいのであれば、
その代わりに何かを削ったほうが、上手くいくと思います。

ただ、「でも、いろいろやりたい!」と思う気持ちは、私もよく分かります。
とすれば、時間のやりくりをして、使える時間の密度を高めるしかありません。
何か・誰かを待っている間など、「捨て時間」に分類される時間を生かして、
受験勉強に取り組むことも、1つの方法です。

「楽しいコンテンツ」に溢れている現代では、便利な道具も数多くあります。
長崎から取り寄せた貴重な英辞書を、何か月もかけて筆写していた幕末の書生に、
スマホに入った英辞書アプリを渡せば、泣いて喜ぶことでしょう。
現代だからこそ、効率を思いっきり高めてくれるツールが揃っています。
あとは、それを活用できるかどうかです。




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306、これまでの過去問題演習が助けてくれる。
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今回は、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 第46回実技1では過去問演習で行っていない
> 鉛直断面における等風速線を描かせる問題が出て、最初は焦りました。
> そこでDVDで先生が説明されていた、等値線作図の方法を思い出しました。
> すなわち、求められている等値線の前後の値を色分けすることです。
> 非常に単純な作業ですが、これにより描くべき等風速線が見えてきました。


「過去問演習」というと、受験勉強の代表とも言えます。
大学入試では、俗に「赤本」と呼ばれる、
各大学ごとの過去の試験問題を収録した本で勉強する人も多いでしょう。
気象予報士試験も同じで、過去の試験問題で実戦力を高めるのが、
合格に向けた基本的な道筋であると認識されています。

最近では、気象業務支援センターでも、
PDF化された過去3年分の試験問題を無料でダウンロードできます。
欲を言えば、もう少し古い問題に遡る形で入手できたほうが、
受験生としては、よりありがたいことですね。

さて、標準的な受験勉強となっている過去問題演習ですが、
いったい何のために、こうした勉強を行うのでしょう?
その理由を考えてみますと、2つを挙げることができます。

1,基礎学習における弱点をあぶり出す
2,試験での出題形式を知る

過去問題演習の前に、基礎的な学習は必須です。
基礎学習が不十分なまま、無理やりに過去問題に取り組んでも、
解らない部分があふれ出してくることになります。

理解度が不足している中で、勉強の成果を残そうとすると、
全体をそのまま暗記するか、ヘンテコな独自解釈で納得するかのいずれかになります。
機械的な棒暗記は労力も大きく、応用が利かないので、非効率です。
また、間違った論理で強引な辻褄合わせをしてしまうと、
後々の学習も、それに引き摺られることになり、修正が大変です。
私自身も、温度風の概念について誤った理解をしていたことがあり、
それに気付いて正すまでに、長い時間を要したことがあります。
だから基礎事項の学習を丁寧に行うことは大切なのです。

こうした基礎学習の定着を確認するために、問題演習は有効です。
問題には必ず正誤があるので、問題の出来具合で、
習得した知識の正確度・充実度を測ることができます。

そして、過去問題演習を行うことのもう1つの意義は、
習得した知識が、どんな形で問われるのかを知ることにあります。
例えば、静力学平衡について、教科書的に学んだだけでは、
今ひとつピンと来なかった方も多いのではないでしょうか。
ここで実際の試験問題を見てみますと、静力学平衡の知識を活用したものが、
特に一般知識試験において、今まで数多く出題されています。
習得した知識をどのように活用すれば、問題を解くことができるのか、
それを教えてくれるのが、実際に出された試験問題に当たることなのです。

1つ1つの問題に対して、丁寧に向き合えば、
問題に対する応用が利くようになってきます。
最初に引用した合格体験記でも述べられていますように、
第46回試験の実技1では、鉛直断面図における等値線解析が出されました。
等値線解析と言えば、平面図に行うものがよく出されているだけに、
戸惑いをお感じになった受験生も多かったことでしょう。
しかし、等値線解析の問題に対して丁寧に取り組んできた方であれば、
平面図であれ、鉛直断面図であれ、等値線を引くうえでは、
本質的には何ら違いが無いことに、すぐに気が付いたはずです。
(なお、第33回試験の実技1で鉛直断面図における等温線解析が出ています。)

試験会場で見慣れない問題に直面しても、過去問題演習の充実度によって、
「あの問題と似ているな。」と気付く方もいれば、
「こんな新しい問題、誰も解けないはずだ。」と諦める方もいることでしょう。
実のところ、過去問題と共通点を持つ試験問題は多いのです。
過去問題演習を十分に消化した受験生であれば、
同じ根っこを持つ問題群の多さにお気づきだと思います。
これまでの受験勉強が、きっと試験会場であなたを助けてくれるはずです。




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307、2月の使い方で差を付ける。
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1月は入学試験が多く行われる時期です。
先日、見事に難関校の入試を突破した受験生は、
それまでに録り溜めていたテレビ番組を一気に見ているとのことです。
合格の開放感は、何事にも代えがたいものですね。

昨日に気象予報士試験も終わり、次の8月試験まで約7か月の時間があります。
8月試験から1月試験までの期間が約5か月であることと比べれば、余裕があるので、
「とりあえずは3月の合格発表まで休もう」と考える人もいると思います。

確かに、受験勉強の疲れを取ることは大切ですが、
完全合格が確定していない段階での休みすぎには注意が必要です。
もし、次の試験を受ける必要がある場合に、響いてしまうからです。

試験までの時間が長いことは、余裕を持って学習できることを意味する一方で、
受験生どうしの実力差を広げることにもつながります。
なぜなら、長い時間を活用して、受験勉強に励む受験生が必ずいるからです。

気象予報士試験の合格率が概ね4%台で推移していることを考えますと、
受験生全体の上位4%程度に入ることが、合格の条件だと言えます。
マラソンで例えれば、よーいドン!で走り始めたランナーたちがいて、
その30分後にスタートを切るランナーがいれば、
どちらが早くゴールできるのかは明らかですね。

もちろん、受験勉強の場合は、それぞれの受験生の進捗が異なるので、
全員が同じスタートラインに立っているわけではありません。
しかし、合格発表まで受験勉強をお休みする人がいる一方で、
試験の翌日も通勤電車の中で勉強をする人がいるのであり、
日々の微差は、やがて大差につながるであろうと想像できます。

試験前の時期に頑張るのは、普通の受験生であれば当然のことであり、
結果として、ここでは大きな差は付きません。
差を付けたい人、挽回したい人、追いつきたい人は、2月こそが勝負です。




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308、「いつでも使える」≠「いつでも使う」
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私が気象予報士試験対策の講座を始めて、今春で12年になります。
ごく一部の特別講座を除いて、現在では通信型でご受講いただく形式ですが、
開塾当初は、通学型の塾としてスタートしました。
大阪市内で、週2回の授業を行っていたのです。
中には、広島や名古屋などから新幹線で通って下さるお客様もおられました。

通信型専業での運営に変えた理由は幾つかあるのですが、
そのうちの1つとして、お客様の学習スタイルの移り変わりが挙げられます。
決まった日時に通学して講義を受けるという形式から、
都合の良い日時にDVDやネットを通して受講するという形式への変化です。
これは、ネットの普及に伴うライフスタイルの変化と対応しています。

私が子どもの頃は「テレビを見る」と言えば、
「放送時刻に合わせて、テレビの前に座るもの」でした。
そのために、食事をバタバタと済ませようとして、母親に叱られたものです。
我が家に中古のVHSビデオデッキがやって来たのは、
私が10歳くらいのときだったと思います。
録った「ドラえもん」を後から何度も見られるとは何と素晴らしいことか!と、
感激したことを思い出します。

今では「事前に録画をしておく」という作業さえ不要になりつつあります。
オンデマンドで見られる映画やテレビ番組がどんどん増えていて、
「見たいときに、見たいものだけを、見たいだけ見る」ことが可能になっています。

同様に、勉強についても言えるのであり、例えば大学受験であれば、
地方に住んでいても、有名予備校講師の講義を映像で受講できます。
必要箇所だけを繰り返して受講することも可能です。
これは、都会と地方における学習機会の差を確実に埋めています。

また、スマートフォンやタブレット端末は持ち運びにも便利なので、
こういった機材で受験勉強できる環境を整えれば、
ちょっとした空き時間を活用して、学びを進めていくこともできます。
従来であれば「使えない半端な時間」を、上手く生かせるということです。

ただ、「いつでも手に入る」ことと「実際に活用している」は等しくないです。
例えば、スマートフォンに電子書籍の参考書をダウンロードすることは、
WiFi環境が整っていれば、おそらく1分間もあれば可能でしょう。
しかし、本当に大切なことは、自分の頭の中にダウンロードすることです。
これは、本を買い集めることを趣味にしている私への自戒でもあります。

かつて通学型講座を開いていたとき、何人ものお客様から、
「講義をICレコーダーで録っていいですか?」と尋ねられました。
もちろん、お客様が個人的に活用されるための録音ですから、快諾しました。
ただ、講義音声をICレコーダーに録ることが、
必ずしも受験勉強の成果と直結するとは限らないことも事実でした。

もし、「録音しているから後で聞ける」という安心感で、生講義に集中できず、
そのうえ、忙しくて後から録音講義を聞き返すこともしなければ、
結局は充分なインプットを行えないことを意味します。
「いつでも受講できる」という安心感が、逆効果を生み出すパターンであり、
ネットによるオンデマンド受講においても、留意すべき点だと思います。

極端な話ですが、「講義中の録音・メモは厳禁」といった、
スパイ養成機関のマル秘授業のようなスタイルであれば、
講義中は講師の話を一言も聞き漏らすまいと全力集中し、
講義が終われば、その内容を即座に紙に書き出すことでしょう。

私の経験を付け加えますと、「radiko」のタイムフリー機能が挙げられます。
これは民放ラジオ番組を、放送後1週間に限って聞き直せるサービスですが、
「1週間」という制約があるからこそ、時間を確保して番組を聞いています。
以前は、面白そうだと思った番組を予約録音していたのですが、
聞かないまま、どんどん音声ファイルだけが溜まってしまった経験があります。
「いつでもできる」は、「いつまで経ってもできない」となる可能性を含んでいます。

私たちは、今さら30年前の世界に戻ることはできませんし、
ネットなどの便利な道具・機能を活用したほうが、効率的なことも多いです。
そのうえで、学ぼうとしている内容を自分のものにするためには、
今も昔も変わらず、頭のトレーニングが必要だということです。




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309、最近の話題から
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近ごろ、ニュースでよく出てくる話題と言えば、
「人工知能」「長時間労働の是正」「プレミアムフライデー」でしょうか。
この3つには、つながりがあると私は思います。

従来であれば、人間が長い時間を費やして行っていた仕事を、
機械やコンピュータがやってくれるようになりました。
例えば、「大勢の人に文書を配布する」という仕事の場合、
50年前なら、下書き・清書・複写・配布といった過程を経る必要がありました。
下書きも清書も、主として手書きですし、
コピー機の無かった時代であれば、カーボン紙による複写です。
できあがった文書を遠方に配布するためには、郵便を利用することになります。
多くの費用と人員を使って、ようやく成し遂げられる仕事だったわけです。

しかし、現代では似たような仕事を、たった1人で迅速に仕上げられます。
例えば、このメルマガは私が一人で書いて、一人で発行しています。
パソコンで書いていますから、下書きと清書の区別はありません。
そして、「まぐまぐ」と「melma!」という2つの配信システムは、
いずれも無料で利用できるのです。
現在、このメルマガは1200部くらいを発行していますが、
これを全て郵送にすれば、82円×1200部=約10万円かかりますし、
宛名書きや封入などの発送作業を考えれば、絶対に一人では行えません。

毎回のメルマガを発行するために要する時間は、おそらく3時間ほどです。
読者の皆様に、隔週でメルマガをお送りできるのも、
パソコンや配信システムなどのおかげです。

さらに時代が進めば、機械やコンピュータが行える仕事はもっと増えるでしょう。
最近、長時間労働の是正についての話題がよく出ていますが、
これまで人間が行ってきた仕事を一部を人工知能が肩代わりできれば、
労働時間の短縮につながるのではないかと思います。

一方、こうした変化は、人間が仕事を奪われる可能性も含んでいます。
先ほどの話で言えば、「下書き文書を清書する仕事」や、
「カーボン紙を使って文書を複写する仕事」などは、すでにほぼ絶滅状態です。
私たちは時代の移り変わりに勝てるよう、スキルを伸ばしていく必要があります。

新しく始まったプレミアムフライデーは、余暇を楽しむためのものでもありますが、
同時に、自分の腕を磨くための場にも使えると思います。
テレビのニュースでは、居酒屋でワイワイ過ごす人たちが映っていましたが、
空いた時間を勉強に使う人たちも大勢いたはずです。
気象予報士試験の学習をされていた人もいたかも知れないですね。

近い将来、私のような塾講師の仕事も、
もしかすると人工知能が行うようになる可能性もあります。
CGの講師が問題解説を行うことも、それほど想像に難くありません。
そんな時代になっても、私でしかできない仕事ができるよう、
研鑽を深めていきたいと思います。




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310、それぞれの目標に向かって
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「気象予報士試験の実施が、年1回になることはあるのでしょうか?」
こういったご質問を、お客様からいただくことがあります。

ただの受験屋である私のところに、特別な情報が流れてくるはずもなく、
「どうなんでしょうかねえ」と生返事を返すしかないのですが、
確かに、1年に1回しか試験が行われない資格は結構多いです。
司法書士・行政書士・宅建・社労士・電験・税理士は、いずれも年1回です。

試験主催者である気象業務支援センターさんにしてみれば、
試験を年に2回執り行うことは大変だと思いますが、
受験生にとって、合格の機会が多いのは良いことです。

もし、試験が年1回しか無ければ、
合格発表後に次の試験まで10か月くらいあることを意味し、
「夏くらいまでは、もう少しノンビリするか」という気持ちになりがちです。
年に試験が2回行われるからこそ、緊張感を維持しやすいのだと言えます。

つい先日に、気象予報士試験の合格発表が出たばかりですが、
惜しくも合格に届かなかった受験生にとっては、気持ちの切り替えが大切です。
結果が判明するまでは、勉強に手が付かない気持ちは良く分かりますが、
合否が確定した今は、気分を一新して、次に向かって再スタートですね。

また、今回の試験で合格を勝ち獲られた方々も、勉強は続きます。
受験のための勉強は終わりですが、予報技術は日々改まっているので、
これに合わせて、気象予報士としての腕を磨いていかれる必要があります。
日本気象予報士会では、講習会・勉強会・施設見学会などが行われ、
会員どうしの情報交換も盛んに行われています。

当塾を経て合格を勝ち獲られた方々について、少しだけご紹介しましょう。
昨年に合格されたAさんは、早くも気象キャスターの仕事を掴まれました。
もともとマスメディア業界で仕事をされていた方ですが、
気象予報士資格を取得されたことで、お仕事に幅を広げられた形です。

また、一昨年に合格されたBさんからは、合格後に開いた懇親会の場で、
技術士の試験勉強に取り組まれていることをお聞きしていました。
これは、かなり難度の高い試験なのですが、
先日に最終合格を勝ち獲られたというお便りをいただきました。

長かった冬も終わりにさしかかり、いよいよ春がやって来ます。
空気の冷たさも和らぎ、これからは勉強するにも最適の時期ですね。
合格を勝ち獲られた方も、惜しくもあと一歩及ばなかった方も、
次の目標を目指して、一緒に歩んでいきましょう。




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311、モチベーションの維持こそ、合格の必須要素だ。
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今回は、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 受験勉強を終えて、試験を突破するのに、3つの関門があったなぁと思っています。
> 第一関門は、社会人の方ならどなたも感じていらっしゃると思いますが、
> モチベーションを保つことと、勉強時間を確保することです。
> なにしろ、強制された勉強でもないので、やめようと思えばいつでもやめてもよいからです。
●Pさん(男性・32歳・会社員・大阪府・第47回気象予報士試験合格)


「気象予報士試験合格のために、最も重要なものは何ですか?」
このように問われたときに、私は迷いなく次のようにお答えします。
「モチベーションを維持することです。」

引用した体験記にもありますように、気象予報士試験の勉強は、
ほとんどの受験生にとって、「強制された勉強」ではありません。
言い換えれば、自発的に行う勉強であり、途中で止めることも自由です。
「いつでも止められる自由」こそが、この試験の厳しさの1つです。

ですから、「合格したい」「気象予報士になりたい」という目標に向かって、
少しずつ前に進んでいこうとする意欲こそが、相当に重要です。
これを欠いたまま合格を勝ち獲ることは、まず不可能です。

中には、「試験に対する適性」を過度に気にされる方もおられますが、
12年の講師経験に基づいて申し上げますと、それほど重要ではないです。

もちろん、受験生によって、ある程度のセンス・特性の違いがあるのは事実です。
例えば、同じ高校球児でも、入学直後からレギュラーに定着する人もいれば、
私のように、3年生になってもベンチでウロウロしている人もいます。
でも、私も公式戦で3塁打を放ったことがあるのですよ。(続けてて良かった!)

同じように、教材や個別指導を通して100お伝えした際に、
100吸収する人、70吸収する人、50吸収する人がおられます。
一度にたくさん吸収できるほうが、学習ペースも速く、
短期間で合格を勝ち獲る可能性が高いことも事実です。
ただ、50しか吸収できなくても、時間をかけて取り組めば、
ペンキを重ね塗りするように、少しずつ実力は高まっていくものです。
そのときに、繰り返し学習ができる原動力こそが、本質的に重要なのです。

これまでに、見事に一発合格を決められた方がおられる一方で、
20回以上の受験を経て、念願の合格を勝ち獲られた方々もおられます。
不合格が続いても、その都度、気持ちを立て直し、
短期間で受験勉強を再開しておられました。
それを可能にしているのが、合格に対する強い意欲だったのです。

もちろん、資格試験には攻略のためのノウハウが存在します。
それを日々研究し、実践に生かしているのが、私の仕事であるわけですが、
前提条件として、受験生が強い合格への動機を持っていることが大切です。
「動機」+「ノウハウ」が合わさることで、実力の高まりにつながります。

春を迎え、年度が替わる今の時期、新しいことを始める方も多いと思いますが、
「始める」だけでなく、「続ける」ことができるかどうかで、
それが「ものになる」かどうかが決定します。

例えれば、「種を蒔くこと」自体は、それほど難しくないことです。
しかし、芽が出た後に、毎日水やりをし、害虫や雑草の対策を行い、
近所の野良猫に踏み荒らされないような工夫をすることなど、
花を愛でたり、実を収穫したりするまでには、時間と労力が必要です。

スタートの段階では、途中で挫折する可能性をあまり考えないものですが、
「続けられる仕組み」まで考えておくと、収穫チャンスも高まると私は考えます。




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312、勉強時間と勉強場所からの自由
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 仕事が不規則でしたので、「1日に@時間やる!」ということは決めずに、
> その日できるだけやる、といった感じです。
> まったくやらない日もありましたし、12時間やった日もありました。
> でも、睡眠時間を削っては何もできないタイプなので、
> すきま時間で何とか勉強していきました。
> 暗記モノやテキストの読み返しは、湯船に浸かりながら、
> 電車で移動しながら、そうしたすきま時間にすべて行っていました。
●Qさん(女性・28歳・放送局契約キャスター・第47回気象予報士試験合格)


社会人受験生が抱える受験での最大の課題は、「仕事と勉強の両立」です。
もう少し広く言えば、「日常生活と勉強の両立」と表現できるでしょう。
「会議の資料作成の締切が、2日後に迫っているな。」
「あの顧客から、またクレームが来ないか心配だ。」
「売上が前年同期を下回りそうだ。ネット広告を手配するか。」
「自宅のシャワートイレの水漏れが気になる。早いうちに交換だな。」
「子どもの家庭訪問について、日時の希望を出さないと。」
こんなふうに、頭の中には常に心配事や考え事がよぎります。

全ての用件・案件が解決したうえで、時間にも余裕ができれば、
スッキリした気持ちで、机に向かうことができることでしょう。
でも、私自身も含め、毎日の生活を送る社会人にとって、
そういった状況は、いつまで経っても訪れないような気がしてなりません。
「○○に目処が付いたら」「□□が落ち着いたら」と思うのですが、
実際のところ、○○に目処が付き、□□が落ち着いても、
別件である、△△や◎◎がひょっこりと現れてくるものですよね。
ということは、日常生活と勉強を両立させるためには、
頭の片隅に用件・案件を抱えながらも、
同時並行的に受験勉強を進めていかざるを得ません。

また、勉強時間の確保の仕方についても、
小学生が夏休み前に作る「1日の過ごし方」のようなものを作るのではなく、
臨機応変に勉強時間を挿入していくことが求められます。
例えば、「9時~11時:図書館で勉強」というふうに、
固定的なスケジュールを入れることができれば良いのですが、
ここに予定外の残業や用事が入れば、時間は潰れてしまいます。
逆に、予定していた会議や打ち合わせが、急にキャンセルになることで、
思わぬ空き時間ができてしまうというケースもあります。

よって、社会人の勉強は、固定された時間に固定された場所で行うものではなく、
時間も場所も縛らない形で行うほうが、トータルの学習量を稼ぎやすいのです。
学生の勉強といえば、「決まった場所で決まった時間に行うもの」ですが、
この固定観念に囚われていると、いつまで経っても勉強はできません。
今回の合格体験記でも書かれているように、
「湯船に浸かりながら、電車で移動しながら」でも勉強はできるのです。
私自身も、風呂の中で「日経ビジネス」などの雑誌をよく読みます。
さすがに単行本は浴室に持ち込めませんが、
雑誌なら読み終わった後に捨てれば良いと考えています。

時間というものを、固定枠ではなく、流動的に考えることは、
技術の進歩で便利な道具が開発されることにより、ますます活発になっています。

20年前であれば、会社のデスクトップパソコンからしか送れなかったメールが、
15年前には、携帯電話と接続したノートパソコンからも送信可能になり、
今では、ポケットから取り出したスマホから送れるようになりました。

私たちは、一昔前に比べても、場所と時間の制約が小さくなっています。
結果として、仕事を含めた日常生活についても、より自由度が増しています。

50年前であれば、映画は映画館で見るものでしたが、
30年前には、自宅でレンタルビデオを見ることができるようになり、
今では、電車の中でも映画を見ることができるようになりました。

こういった変化は、資格試験の勉強についても言えることです。
時間と場所の自由度が大きくなったことで、私たちはより効率的に勉強できます。
それは、1週間あたりの学習量を増やせることを意味すると同時に、
心身を休息させるための時間を確保しやすくなることを意味します。
眠い頭で勉強しても、理解度を深め、知識を定着させることは難しいです。
しっかり休み、スキマ時間と道具を駆使して効率的に学ぶこと、
忙しい社会人の勉強として、これがパフォーマンスの高い手法です。




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313 、他人の目が応援団になる。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 周囲で気象予報士の勉強をしている人がいなかったので、
> 試験勉強をしながら孤独感を感じていました。
> そんな中で藤田塾の懇親会への参加を通じて塾生同士の連帯感を感じ、
> 「皆、頑張っているんだから僕も頑張ろう。」と、自分を奮い立たせることができました。
●Vさん(男性・59歳・会社員(情報通信系技術職)・四国・第47回気象予報士試験合格)


SNSやブログなど、媒体はさまざまですが、
他人が閲覧できる形で、日常生活を綴る方は多いです。
自分が承認した人だけとか、会員限定での公開、といった制限をかけていても、
誰にも見せずに夜中に綴る日記帳とは、本質的に異なります。

日記を付けることは、3日坊主の典型とも言われますが、
Web上の日記は、長く続いているものも多いですね。
続けられる秘訣は、「他人の目」だと私は思います。

人間は、周囲の視線が気になる生き物です。
自営業者である私は、朝に家を出て、夜に帰ってくる生活ではなく、
平日の昼間でも、近所のスーパーなどをウロウロしていることがあります。
こうした生活も、すでに13年目ですが、
周囲から何と思われているかは、わりと気になるものです。
そこで、なるべく自分が何者であるかを、キチンと説明するようにしています。

LINEで「既読スルー」があるのを気にしたり、
FaceBookで「いいね!」ボタンをポコポコ押してほしいと思ったりするのも、
やはり、ネットの向こうに存在する他人の目が気になるからですよね。
もし、自分でホームページを開設しても、
アクセスカウンターが全く回らないようでは、寂しいものです。

気象予報士試験の勉強も、これと似たようなところがあって、
学習に対するモチベーションの維持のために、
他人の目を上手く使うことが大切です。

1人で黙々と勉強を続けて、合格後に公表できれば、格好良いですが、
周囲に知られない形での受験勉強は、1人でヒッソリと店仕舞いしやすいものです。
いったん、「気象予報士資格を取る!」と心に決めたからには、
合格を勝ち獲らないと恥をかくような環境を、自ら作り出すのが良いのです。
片足だけ突っ込んで、「いつでも撤退できる」という姿勢ではなく、
全身を投入するくらいの意欲が無いと、この試験での合格は難しいと思います。
それくらいの本気度を持つ受験生が頑張っているからです。

もちろん、他人の目は「自分を追い込むため」だけのものではありません。
お尻を叩いてくれる存在であると同時に、背中を支えてくれる存在でもあります。
「この前の試験で、一般知識に合格したんですね。」
と声をかけてもらえる人がいるかいないかは、雲泥の差です。
頑張った自分を見てくれている存在があるからこそ、
長期の受験勉強にも耐えられるというものです。
周囲で笛を吹いてくれる人がいるからこそ、踊りやすくなります。
自分で笛を吹きながら、同時に自分で踊るのは、なかなか難しいことですね。

「自分を律して、1人で勉強を貫徹すべきだ」とお考えになる方は、
これを「人間の弱さ」だとお感じになるかも知れませんが、私はそうは思いません。
むしろ、「人間の強さ」を実感するのです。
「いいね!」をもらうだけで、さらに前に進みたくなる生き物なのですから。




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314、本業に気象の専門知識をプラスする。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 仕事の面では、昨年4月から再び防災関係の業務に従事しています。
> 業務と気象はとても密接に関係しております。
> 気象予報士の資格を取得したから、それが即業務に活用できる訳ではないですが、
> 気象予報士試験を通じて習得した知識を
> 十分に活かした業務活動が展開できればと考えています。
●Cさん(男性・50代・地方自治体土木技術職員・長野県・第47回気象予報士試験合格)


メルマガ読者の中には、「気象予報士試験の勉強をしている」と周囲に話したとき、
「キャスターを目指すのか」「気象会社に就職(転職)するのか」と、
尋ねられた方がおられるかもしれません。

たしかに、この資格が世間で広く知られるようになった理由として、
テレビやラジオで活躍する気象キャスターの役割は大きいと思います。
しかし、気象予報士は気象業界で仕事をする人だけのニッチな資格ではありません。
気象会社での仕事を志す方が気象予報士を目指すのは、言ってみれば当然のことです。
そういった方だけでなく、現在の仕事の拡張と深掘りを考える方にも、
気象予報士資格の取得をお勧めしたいのです。
実際にも、そういった方のほうが多数派だというのが私の印象です。

この体験記を書かれたCさんは、公務員として防災業務を担当されています。
ご承知のとおり、防災に携わるお仕事は気象とも密接に関連があります。
そういった職種の方が気象予報士資格を取得すれば、
本業の仕事にも、きっと役に立つであろうことは容易に想像できます。
なぜなら、全国で約1万人いる気象予報士の中で、
防災行政に精通した人はそれほど多くないでしょうし、
防災を担う公務員で気象予報士資格を持つ方も限られるからです。

つまり、2つの領域・分野に対して深い見識を持つ人は「希少性」が高いのです。
仮に、分野Aの専門家が1000人に1人、分野Bの専門家も1000人に1人だとすれば、
分野Aと分野Bの両方を兼ね備えている人は、100万人に1人ということになります。

特に、気象は他業界との関連性が大きいので、
気象の専門知識を増やすことで、現在の仕事にプラスに作用する業種は多いと思います。
例えば、水力発電・太陽光発電・風力発電は、発電量と気象が深く関係していますし、
鉄道・道路・船舶・航空などの運行管理業務も、気象との結びつきが強いです。
「気象だけに詳しい人」や「発電だけに詳しい人」は数多くいるでしょうが、
両方の道に通じていれば、見えてくるものが違うはずです。

「違うはず」という言い方をした理由は、
私自身は20歳で気象の世界に飛び込んで以来、異業界の経験に乏しいからです。
それだけに、塾のお客様と気象についてお話ししていても、
各専門性を活かした切り口があることに、強い刺激を受けます。
両方の世界をご存知だからこその着眼点なのですね。

人によって、今まで生きてきた道筋に違いがあるがゆえに、
気象予報士試験の勉強をしたときに生まれる連想・発想は異なることでしょう。
どんな化学反応が起こるのかは、勉強を始めてみてのお楽しみです。




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315、実技試験で必要な3つの力
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 自分が正しい理解だと思っていても、
> 他人からみれば間違っていることも多々あります。
> 私の例ですが、「茨城」と「茨木」の区別に気づきませんでした。
> 「茨城」は都道府県名、「茨木」は市町村名です。
> 関東や関西に在住の方には当たり前の話ですが、
> それ以外に在住の方には認識されていないのではないでしょうか。
> 私の場合、藤田先生に答案の添削を受けて初めて気がつくことができました。
> また熱力学や用語の使い方など、答案のアウトプットの面においても、
> 自分では気づかないミス(考え方や理解のずれ)をご指導いただきました。
●Lさん(男性・40代・技術系会社員・第47回気象予報士試験合格)


実技試験が学科試験と根本的に異なるのは、文や作図で解答する点にあります。
学科試験は、5つの選択肢から1つを選んでマークシートを塗り潰すだけですが、
自分の言葉で答案を作成しなければならないのが、実技試験です。

実技試験の合格に必要な力は、3つに集約されると私は考えます。
 1.知識力
 2.問題文と資料の読解力
 3.答案作成力

まず、前提となるのが、学科試験の範囲における知識の充実です。
特に実践的な気象の学習が好きな受験生は、
実技試験の勉強に傾斜するあまり、学科試験の勉強が手薄になりがちです。
先に学科試験に合格しないと、実技試験の採点を受けられないのですから、
「急がば回れ」で、学科試験の勉強を優先させる必要があります。

「学科試験は合格するのだが、実技の壁に阻まれてしまう・・・。」という方は、
2や3の部分に躓きの原因があると考えられます。

2についてですが、天気図などの資料読解力の重要性は、
多くの受験生が認識されていることだと思います。
その一方で、問題文の読解という点が軽視されがちだと、私は感じています。
「日本語で書かれているものを読めば良いだけ」と思いがちですが、
実技試験の問題文には、複雑な指示が含まれていることもあります。
問題文の不十分な解釈による誤答は相当に多い、というのが、
大量の答案添削を日々行っている私の実感です。

3の答案作成についても、練習を積むことが求められます。
ただ、引用した体験記で、Lさんがお書きになっているように、
自分がどこで間違っているのかを、自ら検証するのは簡単ではありません。
当たり前のことですが、本人としては最良の答案文だと思っているわけで、
それに対して、「どこがおかしいか」という視点で探っていくのは大変です。
例えてみれば、弁護士と検察官を1人でやるようなものです。

しかしながら、この大変な作業は避けて通ることはできません。
どれだけ学科試験の学習が充実していても、答案作成力は別物です。
私は今まで何百人もの答案を拝見していますが、
最初から完成された答案を書けた人は皆無です。
自分の答案から課題を見つけ出し修正を行う、という作業を繰り返すことで、
少しずつ答案の書き方が見えてきます。
だからこそ、過去問題演習が重要なのです。

過去問題演習では、問題文と解答例を丹念に読み比べ、
問題文から解答例に至るまでの論理の流れを掴むことが大切です。
それを掴めれば、自分の書いた答案に対して改善点の有無が見えるのです。
これを1つずつ行っていくことで、実力が少しずつ養われていきます。

試験まで残り約3か月となりました。
これからの時間で、どれだけ質の高い受験勉強ができるかによって、
実力の伸び方も大きく違ってきます。
試験に向けて、頑張っていきましょう。




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316、ゴールに向かって歩み続けよう。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 8回目の受験に落ちたことで一般・専門の部分合格が消え、
> 私は気象予報士をあきらめようと思いました。
> 専門知識は苦にしていなかったので再び合格できると思いましたが、
> 一般知識だけはもう二度と勉強したくない!合格は無理!と考えていたのです。
> あきらめかけていたその時「42kmまで走ってきたのにあきらめる!?あと、ほんのちょっとやで!?」
> と職場の気象予報士の先生に言われはっとしました。
> なんと、気象予報士試験をフルマラソンに例えたのです。この言葉がとても心に響きました。
●ハープスターさん(女性・32歳・大阪府・第47回気象予報士試験合格)


一般財団法人気象業務支援センターが公表しているデータによりますと、
平成28年度第1回試験における受験申請者数は3533人で、
平成28年度第2回試験における受験申請者数は3235人です。
その差は298人です。

普通に考えて、平成28年度第1回試験で合格した127人は、
平成28年度第2回試験を受験していないはずですが、
この人数を差し引いても、171人減っています。

当然ながら、平成28年度第2回試験が初受験の方もおられるわけで、
これを考慮しますと、少なく見ても200人以上の方が、
何らかの理由で受験をやめているであろうことが推定されます。
ちなみに、ここで見ている数字は受験申請をされた方の人数ですので、
急な予定や体調不良などの理由による、当日の受験欠席者は含まないです。
受験手続きそのものを行わなかった方を指しています。

もちろん、早い段階から試験日に予定が入ってしまっていたために、
やむなく受験を断念された方もおられることでしょう。
その一方で、外部的な事情とは関係なく、
ご自身の意思で受験手続きをされなかった方もおられるはずです。

気象予報士試験において、不合格を経ることの無い人は、ごく僅かです。
ほぼ全ての受験生が、不合格を経験するのです。
中には、学科試験に合格したにも関わらず、実技試験の壁に阻まれ、
学科試験の受験免除を失ってしまわれる方も、少なくありません。
今まで積み上げてきたものが崩れるような感覚に陥ったとき、
もう一度、立ち上がることができるかが、この試験で求められる力の1つです。

もちろん、人によって価値観はさまざまであり、
「もう気象予報士資格には興味が無い」と思う方に対して、
再挑戦を進めるつもりは一切ありません。
(そういった方は、このメルマガも購読しておられないことでしょう。)

一方、不合格が続いて、心が折れそうになっているものの、
やはり気象予報士資格を取得したい、と思っておられる方には、
ぜひとも、再び立ち上がってほしいと思います。
今回の合格体験記での例えを用いれば、コースに戻って歩み始めることが必須で、
沿道で腰を下ろしているままでは、ゴールに到達できないということです。

マラソンの場合は、自分が今まで走った距離が可視化されますから、
「あと10km」とか、「あと5km」といったことが、すぐに分かります。
しかし、受験勉強では、ハッキリとした残量が分からないのであり、
これも、勉強を続けることを難しくさせている1つの要因ですね。

ゴールまでの具体的な距離が明瞭に見えない中で、
ひたすらに走り続けることは、本当に大変なことです。
でも、合格という形で、受験勉強を終えることができれば、
今まで投入した時間や労力が、資格という形に姿を変えて返ってきます。
だからこそ、ゴールまで走り続けてほしいと思います。




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317、「これだ!」と思った教材を使い潰す。
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長年、受験支援を仕事としていると、気が付くことがあります。
それは「教材の誤植を指摘される方は、合格を勝ち獲る可能性が高い」ことです。

もちろん、本来であれば、教材に誤植など無いことが望ましいのですが、
制作過程で、誤字・脱字、日本語として違和感のある部分など、
内容の不具合が生じるケースが稀に生じます。
そういった誤りを鋭く指摘される方は、学習進捗も良い傾向にあります。

誤植を発見するためには、文章を丁寧に読み込まねばなりません。
時間に追われての流し読み、眠気に襲われての斜め読みでは、
小さな間違いに気付くことはできませんし、
そもそも文章を読んでいなければ、誤植を発見できる可能性は0です。
つまり、教材を深く消化しているほど、誤植の発見率は高まるのです。

もちろん、これは気象予報士試験の勉強に限った話では無いと思います。
どんな試験勉強でも、基礎事項を固めるための教科書的な教材が必要です。
いくつもある教材の中で、どれが自分に合っているのかを吟味したうえで、
「これならやれそうだ」「自分に合った教材だ」と確信を持てたものに対して、
できるだけ労力と時間を投入して、集中的に取り組むことが大切です。

数多くの教材を手元に揃えておくこと自体は、
学習で生じた疑問を解決するための手段が増えることを意味しますので、
その点においては、否定すべきことではありません。
ただ、いろいろな教材を次々に渡り歩くような学習の仕方をすると、
結果的に、基礎固めが整うまでに多くの時間と労力が必要になります。

もし、1種類の教材を仕上げるのに、「100」の時間と労力を要するとします。
このとき、「100」の時間と労力が、5つの教材に分散されてしまうと、
どの教材も仕上げることができないという、中途半端な状態になってします。
つまり、過去問題演習を行うために必要な基礎力を十分に付けるために、
さらに多くの時間と労力を要することになるのです。
これは、渡り歩く教材の数が増えるほど、顕著になります。

時間と労力を集中的に投入することで、
1つの教材を仕上げてしまったほうが、早い段階で基礎を固められます。
もちろん、途中で他の教材を参照することで、理解が深まることもありますが、
あくまでも、メインとなる教材はできるだけ絞り込むのが秘訣です。
中学校や高校での勉強でも、各教科での主たる教科書は1種類だけですよね。

資格試験の勉強のように、各個人が自由に取り組むような勉強では、
つい数多くの書籍・教材を揃えたくなるものです。
それ自体は良いのですが、最も大事なことは教材のコレクションではなく、
心に決めた教材を徹底的にやり抜くことです。




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318、「当たり前」の水準を引き上げる。
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今回は、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 社会人ということもあり時間の捻出は楽ではなかったので、
> 通信講座を活用することで効率を上げるようにしました。
> 疲れていても、やる気が出なくても、
> 毎日最低1~2時間は勉強するようにし、勉強を習慣づけました。
> そして試験の一か月半前位からは、
> 休日は国会図書館や自習室も活用しながら一日中勉強していました。
> 人生で一番勉強した気がします。
●Bさん(33歳・関東・第47回気象予報士試験合格)

気象予報士試験の難度と幅広さ、そして合格率の低さを考えますと、
合格に至るまでに必要な勉強量は、かなりのものです。
社会人受験生で、お仕事と受験勉強の両立で悩む方は多いのは、
それだけハードな試験であることを意味しています。
学習の効率化に対する関心が高いのは、そのためです。

ただ、効率性をいかに高めたところで、
「1分間の学習で、他人の1時間分の学習と同じ効果」といった芸当は不可能で、
なんだかんだ言っても、絶対的な学習時間は必須です。
つまり、結局は「やるしかない」ということです。

気象予報士試験の勉強を始めて間もない頃に、合格体験記をお読みになると、
受験生の学習量の多さに驚く方が多いです。
 ・疲れていても、やる気が出なくても、毎日最低1~2時間は勉強する。
 ・休日は一日中勉強する。
この体験記でも、こういった記述が出てきます。

私自身も懇親会で、合格された方々と直接に話をする機会がありますが、
結構スゴイことを、涼しげな顔をして仰る方が多いです。
「藤田:ということは、週末はほぼ勉強漬けだったってことですか?」
「合格者:まあ、そういうことになりますかねぇ。(涼)」

こんなやりとりを耳にすると、「自分には無理だ」と感じる方もおられるでしょう。
しかし、合格者の多くは、決して「スーパーマン/スーパーウーマン」ではありません。
「当たり前の水準」をジワジワと高めることに成功した結果なのです。
少しずつ勉強時間を増やしつつ、優先度の低い事柄を思い切って削りながら、
結果的に、1週間あたりの学習量を増やすことを実現しています。

例えば、「1日に1万歩ウォーキング」を考えたとき、
すでに実践している人にとっては、大きな労苦ではありませんが、
現時点で1日3000歩の人にとってはキツイ目標です。
しかし、少しずつ歩く機会を増やしていけば、
5000歩が習慣になり、やがて7000歩に到達し、1万歩も達成できることでしょう。
そのとき、1日3000歩だったときの「1日1万歩」と、
すでに習慣付いたときの「1日1万歩」では、感じ方が異なるはずです。
これは、当たり前の水準が高まったということです。

立場上、多くの合格者を見ていますが、わりと共通しているのは、
「当たり前に受験勉強する」というスタイルが確立していたことです。
(最初は誰でもそうですが)意思の力だけで勉強しているうちは、まだまだです。
客観的に見て、「これは強い意志が要りそうだ」と思える内容を、
当たり前のようにこなすことができれば、学習量はぐんと伸びます。
結果を出す人には、やはり理由があるということです。



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319、直近の過去問題を温存しない。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> ともすれば過去問題や模擬問題を手当たり次第に試したがるのが受験生の心理かと思います。
> 藤田先生はそこを見据えて、「問題を解くことは『刀の切れ味』を試すだけの試し切りに過ぎない。
> 刀の切れ味を良くするためには、切れ味を検証し、どのように研いだらよいのか考える必要がある。
> 重要なのは、間違った問題を一つ一つ検証してつぶしていくことだ」と指摘されました。
●N.Mさん(男性・42歳・公務員・関東在住・第43回気象予報士試験合格)


過去問題に取り組むことには、2つの意味があります。
 A:現在の自分の実力を査定するため
 B:問題の解法を理解し、将来の試験に役立てるため

高校入試や大学入試を経験された方は、
Aの目的で模擬試験を受けられた方が多いと思います。
「今回の模試の偏差値が60を超えたから、
 志望校を○○大学から、□□大学に変えても良さそうだ。」
といった形で、実力査定を細かく行いながら、進路を探る方もおられるでしょう。

しかし、気象予報士試験においては、実力査定の必要性がほぼありません。
高校入試や大学入試と異なり、目標はただ1つ、
「資格が取れるかどうか」だからです。
ということは、現時点での実力を知ったところで、
「それがどうした」という話なのです。

試験まで残り1か月あまりとなりましたが、直前での「力試し」という目的で、
直近の過去問題を模擬試験のために温存する受験生が結構おられます。
今なら間に合いますので、率直に申し上げますが、あまり意味の無い行為です。
お盆休みの時点で、模試の結果が95点であろうと、30点であろうと、
残り時間を考えれば、打つ手はほとんど残っていないからです。
結局は、その刀で戦うだけのことです。

直近の過去問題のような、受験生にとって大事な教材を、
単なる「試し切り」のために使い捨ててしまうことは、とても勿体ないです。
過去問題は、実力査定のためではなく、実力向上のために使うものです。
例えれば、「試し切りのための藁束」ではなく、
「刀を磨く砥石」のようなものだとお考え下さい。
弱点を洗い出し、それを全力で解決するために使い潰す道具なのです。

私は講座の中でも、「試し切りは勉強に含まれない」と言っています。
「勉強」を「実力向上のために知識を増やす頭脳行動」だと考えれば、
単に問題を解くだけの行為は、実力向上をもたらさないからです。
体重計に乗るという行為自体は、体重の変化をもたらさないのと同じです。

そもそも、普通に受験勉強に取り組んでいれば、
どの程度の「手応え」を感じるかどうかは、自分で気が付くものです。
実力査定は、それで十分です。

試験勉強に魔法は無いと私は考えます。
単純に言えば、目の前の過去問題が解けるようになるために、
ひたすら知識を補強し続ける作業です。
それは、暗くて長いトンネルを走り続けることに似ています。
だからこそ、トンネルの出口までの距離を知りたくなってしまうものですが、
仮にそれを知ったところで、トンネルから抜け出すためには、
自分自身が出口まで走らねばならないことに、変わりは無いです。
だから、ひたすら疾走する。これに尽きます。




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320、試験直前には範囲を限定して取り組む。
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前回に引き続き、試験直前における学習方針について書きます。

試験日が近づくと、多くの方が焦りを感じるわけですが、
そうした気持ちが、戦略上のミスを誘発しやすくなります。

ありがちなのが、「やみくもに大量の過去問題に手を出す」といった戦線拡大です。
これまで基礎学習を丁寧に積み上げてきたのであれば、
数多くの問題演習で実践力を養うことは理にかなっていますが、
基礎力不足での問題演習は、時間と労力の浪費になりかねません。

問題を解くことは、単なる実力査定に過ぎず、
そこで生じた課題を解決しないと、実力はアップしない、
といった内容を前回に書きました。
大量の過去問題を片っ端から解いていると、
「今、自分は受験勉強を頑張ってるぞー!」という気持ちにはなるのですが、
かいた汗が得点につながるかどうかは、別問題です。

よく「試験直前で何をしたら良いですか?」というご質問をいただきますが、
特別な試験直前メニューなど、基本的には存在しないと私は考えます。
確かに、試験直前での暗記物の確認は有効ですが、
それ以外の学習については、地道な勉強を続けるしかありません。

「飛躍的に得点の上積みが期待できる手法」がもし実在するならば、
試験直前だけでなく、最初から使えば良いはずです。
実際には、そういった魔法は無いと私は考えます。
1つ1つの疑問を納得に変えていくという、ダサい方法の積み重ねこそが、
試験勉強を成功させるための最短経路だと確信しているのです。

よって、試験直前でなすべきことは、学習範囲を広げることではなく、
むしろ学習範囲を狭めることにあります。
必要と判断される場合は、3科から2科へ、2科から1科へ、
限られた残り時間と労力を集中して投入することで、
その科目の得点引き上げを図るのです。

例えて言えば、畑を目の前にして、バケツ一杯分の水しか無いとき、
どの作物にも均等に水をやろうとすると、全ての作物が干上がってしまいます。
しかし、バケツの水を一株だけに与えれば、その株だけは生き残るでしょう。
もちろん、本来は全ての作物に十分な水を与えられるのが望ましいですが、
時間と労力が限られている以上、選択と集中を行うのが正しい戦略です。

また、基礎事項の学習に不安があれば、その部分の補強は必須です。
試験が近くなるほど、実際の問題に手を出したくなりますが、
基礎ができていなければ、問題演習の成果は乏しいです。
泳げないのに、水泳大会に出ても意味が無いのと同じで、
まず成すべきことは、速く泳ぐ方法の習得ではなく、泳ぎ方の習得です。
基礎をしっかり固めることで、問題演習で実戦力を付けることができます。




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321、試験前に焦ったら合格体験記を読もう。
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いよいよ試験が目前に迫ってきました。
あとは、これまでに頑張ってきたことを信じ、試験で発揮するのみですね。

お盆休みを活用して、ハードな受験勉強を続けている方もおられると思いますが、
試験までの残り時間が少なくなった今、最も大切なのは体調を整えることです。
暑さ・冷房・寝不足などで、コンディションを崩してしまうと、
長い試験時間で集中力を持続していくことが難しくなってしまいます。

また、試験に対する焦り・緊張が高まってくるのも、この時期の特徴です。
真剣勝負に挑むのですから、これは当然のことです。
そんなときは、合格体験記をお読みになることをお勧めします。

私が合格体験記をお勧めするのは、
「試験前に役立つマル秘学習法」が書かれているからではありません。
合格体験記に目を通されれば、かつての受験生の皆さんも、
不安を抱えながら、試験に臨んでいたことがよく分かります。
試験前に、あれこれ心配するのは、自分だけではないということ、
それに気付いてほしいからです。

かつて、進学塾の非常勤講師を務めていたときに、
中学入試や高校入試の現場に立ち会ったことがあります。
校門前で、塾や学校を同一とする生徒が集まって、
円陣を組んでいる光景を見かけました。
「決して独りで受験するのではない」ことを確認するために行うのです。

気象予報士試験の場合、大人が個人で受験するのが一般的ですから、
試験会場前でワーワーやるわけにもいきません。
でも、何歳になっても、真剣勝負を前にすれば、身震いするものですよね。
だからこそ、合格体験記を通して、
元受験生の皆さんからエールを受け取ってほしいと思います。




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322、「明日から」ではなく「今から」勉強を再開する。
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今回は、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 試験も終わったことから、1週間のつもりで試験勉強を休んだところ、
> 1週間が過ぎても「明日から学習を始めよう」という状態が3ヶ月超続いてしまい、
> まったくエンジンに火が入らなくなってしまいました。
> その後何とかスイッチを入れることができましたが、
> その後はこの反省を踏まえて学習の休みは取っても1日と決めました。
●M.Iさん(男性・51歳・制御装置設計エンジニア・茨城県・第47回気象予報士試験合格)


まだ正式な解答例が発表されていないので、待ち遠しいところですが、
昨夜は久々にゆったりとした気持ちで、床に就かれた方も多いと思います。

ただ、今回の試験を、1つの経由点と捉えておられる受験生の皆様にとっては、
すでに次の試験に向けた準備を進めていかれる必要があります。
事実として、第49回試験までの残り時間は5か月です。
年明け後なので、先のように感じますが、それほど長い時間は残っていないです。

もちろん、今回の試験での完全合格を確信されている方にとっては、
あとは、10月の合格発表を待つだけなのですが、
十分な手応えを得られなかった方、仮採点での結果が思わしくなった方は、
早めに手を打っておいたほうが良いです。

引用した体験記の中でも、述べられていますように、
少し長めの休みを取ってしまうことで、再スタートが難しくなることがあります。
例えて言えば、山登りの途中での休憩時間が長すぎることで、
汗が冷えて体が重くなってしまうことと似ています。

1週間休むつもりが、3か月を超える休みになってしまえば、
受験勉強としては、修復の効かない打撃になります。
多くの受験生が、忙しいスケジュールの中で勉強を進めておられますので、
一度、スケジュールからはみ出てしまうと、元に戻しにくいとも言えます。

短い休みを頻繁に取ったほうが、再スタート時の負荷は小さいです。
次の試験を見据えて受験生活を送っておられる方は、
今回の試験でリズムを崩さないよう、進めていきましょう。




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323、第48回試験を振り返って(一般知識試験)
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出題された15問の中で、特に私が着目した問題を4題取り上げます。


【問1】
見方によっては「引っかけ問題」だと解釈することもできますが、
気圧の概念を正確に捉えておられれば、決して引っかからない問題です。

「静力学平衡」という用語を知らない受験生はいないと思いますが、
「Δp=-gρΔz」という式を頭に入れるだけでは、
この概念の有用性が見えにくいのです。

気圧面p1と気圧面p2に挟まれた気層があるとき、
p1とp2の気圧差は気層の重さに等しい、という点がツボです。

そうすると、当問に出てきた3つの気層は、いずれも気圧差が100hPaであり、
同じ重さであることが導き出されます。
つまり、気温や相対湿度に関する情報は、解答において不要な要素ですね。

静力学平衡に関する問題は、これまで数多く出されており、
27-2-般1(「平成27年度第2回試験の一般知識試験問1」の意。以下同様。)
25-2-般2・23-1-般8・22-2-般7・19-2-般1などが挙げられます。
一般知識試験対策における、最重要箇所の1つだとも言えます。


【問3】
実技試験でも頻出の対流不安定に関する問題です。
教科書的には、「高度が増すにつれて、相当温位が低くなっている気層」を、
対流不安定な気層であると学ぶわけですが、
その知識だけでは、当問の正誤を判断できません。

エマグラム上において、対流不安定な気層を持ち上げる操作を行うことで、
気層内の気温減率が大きくなることを確認してこそ、理解が深まります。
また、そうした学習を行っておられた受験生であれば、
おそらく、30秒程度で自信を持って正答を選ぶことも可能だと思います。

また、鉛直安定度の分野に限っても「○○不安定」という用語は複数あり、
それぞれの意味の違いを正確に把握していることが必須です。
特に実技試験では、語句を書かせる問題が多いので、
点数を積み上げていくためには、正確な理解が求められます。


【問7】
「地衡風」「傾度風」「偏西風」「貿易風」などと異なり、
「温度風」は「風」という字を含むにも関わらず、その概念は風ではありません。
この時点で、頭が少し混乱してしまうので、苦手とされる方も多いのです。

気圧面p1で吹く地衡風と、気圧面p2で吹く地衡風の差が温度風であり、
言い換えれば、「風の鉛直シア」のことを指しているのです。
この点を踏まえて、学習を積み上げていけば、
風の鉛直分布から温度移流の種類を判別できる理由も、明らかになります。
(大気を立体的に捉えることがポイントです。)

「時計回りなら暖気移流、反時計回りなら寒気移流」というのは、
試験対策としてのテクニックとしては有効ですが、
少しひねった問題に出くわした場合、本質を押さえておいたほうが強いです。
今回も南半球の事例が出て、戸惑った方もおられると思います。


【問9】
教科書的な海陸風の説明図を丸暗記しておけば解ける、
と考えるのは、あまりにも労力が大き過ぎます。
海陸風の概念を理解していれば、自ずと選択肢は絞られていくのです。

当問で必要な知識は、次の3つです。
 1:海上から陸上に向かって海風が吹き、陸上から海上に向かって陸風が吹く。
 2:上空では、海風・陸風とは逆向きの「反流」があり、循環を形成している。
 3:コリオリ力が無視できる場合、風は高圧側から低圧側に向かって吹く。

当問では、2の知識を活用すれば、選択肢1または選択肢4に絞られます。
そこで重要なのが、3の知識です。
問題の断面図から、どちらが高圧部であるかを読み取れるかが勝負です。
断面図において、真っ直ぐに横線(等高度面)を引いてみれば、
等圧面高度が高いほうが、高圧部であることが分かります。

ここで、等圧面という概念が出てきましたが、苦手とされる方がわりと多いです。
等高度面であれば、ビルの床面をイメージすれば良いのですが、
等圧面については、頭に思い浮かべるのが難しいです。
私は「空中に絨毯が浮いている」といった言い方をすることがあります。
一度イメージできれば、後はそれほど強く意識する必要は無いのですが、
最初にしっかりと理解をしておかれることは、とても大切です。
(これは、先ほどの「温度風」についても、言えることです。)




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324、第48回試験を振り返って(専門知識試験)
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今回の専門知識試験では、過去に出題された問題と関係するものが、
普段よりも多く出題されたという印象を受けます。

例えば、問2のドップラーレーダーによる風の動径速度分布図は、
平成24年度第2回試験の専門問3や、
平成26年度第2回試験の専門問2などでも出題されました。
これらの問題で読み取り方を習得しておけば、当問の解答は難しくないです。

また、問4・問5はいずれも数値予報に関する問題ですが、
正誤判断に登場した問題文の多くは、過去に何度も出ています。
つまり、気象予報士として特に重要な知識が問われたとも言えます。

問7では、発雷確率ガイダンスについて問われました。
かなり以前の平成11年度第2回試験の専門問12で出題されたものの、
このようなガイダンスがあることを、初めて知った方もおられると思います。
しかし、問題文には発雷確率ガイダンスについての説明がなされており、
これを踏まえれば、降水確率からの類推で正誤判断は可能です。
降水確率が意味するところについての問題は頻出で、
最近では平成23年第2回試験の専門問7で出ています。

また、問9では積乱雲について、問11では台風について出題されましたが、
これらは一般知識試験の問題として出されることもあります。
具体的な気象現象に関する問題は、一般・専門のいずれでも出題されており、
いずれか一方の受験であっても、対策を行っておきたいところです。

専門知識試験は、気象庁が行う観測業務や予報業務についての問題が多く、
技術的な仕様などに関する細かい内容が問われたこともありました。
ただ、あまりに込み入った事柄が問われると、正答を得るのは困難です。
今回の試験では、比較的オーソドックスな問題が多く、
基礎学習をきちんと踏まえたうえで、過去問題演習に丹念に取り組めば、
望ましい結果が得られやすい試験だったように思います。




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325、「適切な手法」と「圧倒的な分量」を兼ね備える。
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このメルマガでは、合格体験記の一部を引用し、
それに対して私がコメントする手法をよく用いますが、
次の体験記は、いつの試験で合格された方のものか、お分かりでしょうか?

> 臆することなく、ご自分に合った方法で、
> 「自分はこれだけやったんだから」という充分な準備と自信をもって
> 本番に臨むことができれば絶対に大丈夫だと思います。
> 藤田塾では、受講生のレベルに合わせて塾長が適切なアドバイスをしてくれます。
> そのアドバイスを愚直に実行できれば必ず良い結果が出ると思います。
> 要は自分がやるか、やらないかです。


これは、今から10年前の2007年(平成19年)8月に行われた、
第28回試験で合格された方による、合格体験記の一部です。
(M.Nさん 男性・42歳)
あれから10年が過ぎ、20回もの試験が行われましたが、
合格の秘訣は当時も今も全く変わりません。
それは、「適切な手法」と「圧倒的な分量」を兼ね備えることです。

ここで、「2つを兼ね備える」という点が大事です。
両方とも欠けている状態がダメなのは、直観的に明らかだと思いますが、
片方だけ満たしていても、合格を勝ち獲るのは難しいのです。
「努力しているのに、結果が出ないのはなぜ?」とお感じになる方は、
この点を振り返ってみて下さい。

例えば、同一の過去問題について、演習を10回繰り返して行ったところで、
正確な理解を伴っていなければ、実力は伸びません。
誤った認識を修正し、1つ1つ納得していけることが必須であり、
こうした過程で学習を進めていくことが、前述の「適切な手法」です。

また、学習方法が正しくても、実際の学習量が少なければ、
短期間で実力を高めていくことは困難です。
勉強の効率性を意識し、いろいろ試してみることは大切ですが、
どんなに優れたノウハウでも、100の時間を10に縮めることは不可能です。
勉強法の本を100冊読むよりも、10冊に減らしたうえで、
空いた時間を勉強に充てたほうが、前に進めます。
つまり、自分である程度の確信を持てる手法に辿り着いたら、
バンバン進めていかれることが大切です。

例えて言えば、広大な面積の草刈りをする際に、
錆びた鎌でガムシャラに草を刈ろうとするのもNGである一方、
性能の良い草刈り機を手にしながら、それを動かすことなく、
「もっと優れた草刈り機はないか」と考え尽くすのもNGだということです。
草刈り機の性能が良いと分かれば、それで草を刈りまくるのがベストなのです。

このように、受験勉強の基本ノウハウは、いたって簡潔なのですが、
あとは、それを実践に移せるかどうかが、肝心なところです。
1年に2回も合格のチャンスがある国家試験は、そんなに無いです。
この試験は、常に敗者復活戦です。
次の試験での合格者の多くは、これまでの敗者の中から生まれます。
質・量ともに充実した受験勉強で、実力を高めていきましょう。




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326、実技試験の攻略に必要な4種類の力
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 実力が上がっているかどうか分からなくても、藤田流を信じて進むのみ。
> こういう所は先人を信じて割り切って進みました。
> 本当に最初はあの問題が1時間ほどで解けるとは思っていませんでした。
●S.T.さん(男性・60代・奈良県・自営業 日本防災士会会員、フリーカメラマン)


実技試験の勉強を進める受験生が、必ずと言ってよいほど悩むのは、
「問題を解くのに時間がかかり過ぎる」ということです。

本試験では1時間15分で解かねばならないのに、
2時間かかっても最後まで到達しない、ということが、
実技の勉強を始めて間もない頃には、よく起こります。

そこで、「どうすれば速く解けるか」というご質問が多く出るのですが、
留意していただきたいのは、いくら意識したところで、
問題を解くスピードを上げることはできないということです。

これはマラソンや競泳に置き換えて考えれば分かりやすく、
ベストタイムが、その人の実力を上回ることは決してありません。
知的格闘である試験についても、十分に集中して取り組んでいるのであれば、
それが全力疾走の状態であり、これ以上に速く解くことはできないのです。

試験に合格するためには、およそ3分の2以上の正答が求められますので、
ある程度の誤答が含まれることを踏まえれば、
合格者の大半は、ほぼ最後まで問題に取り組めているはずです。
これは、意識的に「速く解こう」としたから達成できたのではなく、
実力の高まりに伴って自ずと速く解けるようになっています。

ここで指す「実力」とは、具体的には次の4項目に集約されます。
 ・学科試験の範囲における知識
 ・問題文を正確に把握するための読解力
 ・資料内容を正確に把握するための読図力
 ・浮かび上がってきた解答要素を答案に加工するための作文力・作図力

勉強を重ねることで、これらの力が備わってくれば、
問題文を短時間で把握できるようになり、
資料を短時間で読み解けるようになり、
正確な知識に基づいて、適切な解答要素を導き出すことができ、
短時間で、解答要素を答案文・作図として出力できるようになります。
これは、「ムダな頭の動き」が削ぎ落とされていることを意味します。

もちろん、これらの学習は決して簡単ではなく、時間と労力を要するものです。
また、先ほど挙げた4項目全てを意識的に行うことが大切であり、
これはアスリートにとって必要な筋肉を意識的に鍛え上げることに例えられます。

例えば、学科試験の知識が明らかに欠けている状態で、
強引に実技試験の過去問題演習を繰り返しても、成果は出にくいです。
あくまでも、適切な手法に基づいたトレーニングが必要なのであり、
それは運動選手であれ、受験生であれ、同じであると言えます。

「知識」「読解力」「読図力」「作文力・作図力」を鍛えることこそが、
実技試験の実力を高めるための道です。




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第327話 ひらめくのではない、滲み出るのだ。
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中学受験のために通っていた塾で、算数の図形問題と格闘しているときに、
先生がスッと補助線を引くと、解答への道筋が見えたことがあります。
目の前の霧が一瞬で晴れたかのように感じると同時に、
「この補助線を引くことを、どうしたら思いつくのか?」と疑問を持ったものです。

また、実技試験において、「なぜ、そんな資料解釈が思い浮かぶのですか?」
と、受験生の方から聞かれることもあります。
過去問演習の際に、解けない問題について解答例を参照したとき、
「こんな答え、自分で導けるはずがない」と思った方もおられるかも知れません。

「正しく解けるのは『ひらめく力』を持っているからだ」と考えてしまうと、
「自分には『ひらめく力』が無いから、勉強しても伸びない」となります。
実際のところ、これは適切な解釈ではありません。
私は次のように考えているのです。

勉強とは、疑問を納得に変えていく知的作業のことですが、
理解できるたびに、頭の中に思考パターンが蓄積されていきます。
新しい問題に出くわしたとき、頭の中では、
今までに蓄積された思考パターンを、いろいろ当てはめてみようとします。
これは、開かぬドアの前で、持っている鍵を次々に差し込むようなものです。
もちろん、鍵の数が多いほど、ドアが開く可能性は高まります。

ここで面白いのは、鍵の場合は、厳密に一致していないと開かないですが、
蓄積された思考パターンは、ある程度、変形するということです。
つまり、「思考パターンA」を持っている場合、
その思考パターンを少しだけ発展・アレンジした「思考パターンA+」が、
頭の中で作られることがあります。

例えば、自転車に乗れる人は、原付バイクにも比較的容易に乗れます。
両者は種類の異なる乗り物ですが、0から習得する必要はありません。
私たちは、自転車に乗るときに習得した技術や感覚を、
無意識のうちに原付バイクに乗る際にも応用しているのです。

同じように、頭の中に浸透させることができた思考パターンは、
ある程度の応用が利くようになります。
一見、今までに無かった資料解釈が求められるような問題でも、
数多くの思考パターンを蓄積した人の目には、
従来から見られた思考パターンの発展形に過ぎないと写るわけです。
これは、「ひらめき(無から生まれるもの)」ではなく、
「蓄積からの滲み(すでに有るものの進化形)」なのです。
おそらく、私が見た算数の図形問題での補助線も、同じだったのでしょう。

蓄積をするためには、十分に理解して頭に入れることが大切です。
意味を十分に把握できずに丸暗記することに対して否定的なのは、
応用が利かず、新しい問題への対応力が小さいからです。
残り2か月半で、さらに学習を充実させていきたいですね。




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第328話 受験勉強の原動力は、レベルアップにあり
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今回は、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> わからないことは人に教えてもらうこと。
> 本やネットでいくら調べてもわからないことがたくさん出てきます。
> そういうことは、藤田先生はじめ、
> わかっている人に教えてもらうのが一番確実だし、速いです。
■Cさん(女性・36歳・埼玉県)


> 特に理系の勉強とは無縁の方は、
> 始めから試験を熟知された方に教わった方が絶対に早く合格できます。
> 現に私は独学に執着しすぎて、3回分の試験を無駄にしてしまいました。
■Vさん(女性・24歳・文化振興事業団勤務・大阪府)


スポーツや楽器の練習で面白いと感じるのは、上手くなることにあります。
何度繰り返しても成果が出なければ、ぜんぜん楽しくないです。
多少の困難を伴っても、最終的に上達するからこそ、続けたいと思うわけです。

これは、あらゆることに当てはまることです。
「1000件に1件」でも売れるからこそ、営業マンは商談に熱を上げるのであり、
最初から勝率ゼロであると分かっていて、靴底をすり減らす人はいません。

受験勉強もこれと似ていて、学習に対して手応えを感じるからこそ、
より複雑な課題にも取り組みたいと思えるようになります。
ゲームで言えば、ドラクエやポケモンGOではレベルが数値化されています。
成果が実感できるので、もっとレベルアップしたいと思い、
より多くの敵を倒したくなって、ウロウロするわけですね。

受験勉強に躓く原因は、これの逆を考えれば良いのであり、
「分からない」「解けない」「納得できない」が積み重なることにあります。
これらが、自分の中にヘドロのように溜まっていき、
「資格を取って、実現させたい目標がある」という動機を上回った時点で、
受験勉強は、ゲームオーバーしてしまうのです。

ですから、「分からない」「解けない」「納得できない」といった阻害要因を、
いかに素早く取り除けるかが、重要になってきます。

私が受験生だった頃に比べて、気象予報士試験の学習において、
その選択肢は、ずいぶん増えたように思います。
友人・知人に気象予報士がいれば、教えてもらうのも良いでしょう。

絶対に避けねばならないのは、分からない内容が出てきたときに、
我流で作った「正しくない理屈」で辻褄を合わせようとすることです。
仮に意図的で無いにせよ、正しくない理解の仕方をすると、
後でそれを修正するのに、大きな苦労をすることになります。

なぜならば、誤った知識が頭に入ってしまうと、
どの部分が間違っているのかを探したうえで、
見つけ出した誤解部分を修正する、という2つの手間が発生するからです。
むしろ、知識ゼロのほうが、足していくだけなので楽なのです。

特に、書物だけでの受験勉強は一方通行(著者→読者)であるため、
受け手である受験生が、内容を誤って定着させてしまうリスクがあります。
自分の理解の仕方が適切であるのかを十分に確認しながら、
受験勉強を進めていかれることをお勧めします。




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第329話 「削る」「活かす」で勉強時間を確保する。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> フルタイムの仕事と家事、息子たちの受験や学校、
> 部活のサポートなどもあり、時間は本当にありませんでした。
> どうやって時間を確保したかの答えにはなりませんが、
> 受かりたいなら勉強するしかないと思って、仕事や家事の効率を上げて、
> 人と会う機会や出かける機会は適度に削り、
> 最初はとにかく送られたDVDを溜めないことを心がけました。
> 平日は1時間から1時間半、休日は3時間から5時間、
> もちろん何もできない日もありました。
> どこに行くにも何をするにも、すき間時間の活用は考えていました。
■Lさん(女性・52歳・制御機器メーカー 海外営業・東京都)


12月も中旬に入り、普段に増してバタバタする今の時期だからこそ、
時間の貴重さを強く実感しますね。
多くの受験生が、勉強時間の確保という点で課題を抱えておられます。

どんなに優れた勉強法があったとしても、勉強時間をゼロにはできません。
ムダで非効率なやり方を改めることは大切ですが、
人間の脳はコンピュータのように一瞬でデータをインプットできるわけではなく、
ある程度の時間をかけて、学習を積み重ねていく必要があります。
つまり、学習時間を確保しないと、受験勉強は前に進まないということです。

結局のところ、本気で気象予報士試験に合格したいのであれば、
勉強のための時間を捻出することが必須条件です。
しかし、1日は24時間しかありませんので、
ここに新たに勉強時間を入れるためには、工夫が必要です。
キーワードは、「削る」「活かす」の2つです。

「削る」というのは、従来の予定を減らしたり無くしたりすることです。
具体的には、この合格体験記でLさんが書かれているように、
仕事や家事を工夫することで効率を上げることや、
外出の機会を少し減らすことなどが挙げられます。

ちなみに、睡眠時間を削ると、コンディションが悪くなって、
受験勉強に支障を来す恐れがありますので、
これを削ることはお勧めできないです。
(以前のメルマガでも何度も書いています。)

「活かす」というのは、従来ならば勉強に使えないとされた時間を、
学習のための時間に転換させることです。
例えば、風呂に入る際に、普通に湯船に浸かっているだけであれば、
それは単なる「入浴の時間」に過ぎませんが、
湯に浸かりながら、防水仕様のタブレット端末で勉強するならば、
これは、「入浴を兼ねた勉強時間」となります。

もちろん、「風呂くらい、のんびりと入りたい」という思いもあるでしょうが、
発想と道具を活用することで、時間の転換は可能だということです。

また、毎日の通勤や通学で電車を利用される方も多いと思いますが、
つり革を握っていなくても、自分の体が倒れないほどの混雑した車内では、
集中して勉強に臨むことは難しいです。

こういった状況でも、もし有料で座席指定ができる列車に乗れば、
気持ちを落ち着けて勉強に集中できます。
お金という道具を活用することで、時間を転換するわけです。

私は奈良に住んでいますが、京都や大阪へ向かう列車の特急券は、
いずれも500円ほどです。(近鉄電車の特急です。)
車内で過ごすのは、30分あるかないかという短い時間です。
この30分という時間に、乗車券に追加する形で500円も余計に払うことに、
もったいなさを感じるのが正直なところです。

しかし、この「もったいない」という気持ちこそが大切なのです。
カネが惜しいと感じるからこそ、車内での時間を大切に使おうと思えます。
もし、私が500円という金額に対して、
世間で言うところの10円ほどの値打ちしか感じなければ、
車内でムダに過ごすようになってしまうかも知れません。

これは、月極の有料自習室などでも同じことです。
「自分にとって、なかなかの出費だぞ」と思えるくらいの金額を投じるからこそ、
投資に見合ったぶんのリターンを取り戻さなくては、という気持ちが働き、
受験勉強を前へ進めるための大きな原動力になるのです。

忙しい12月に勉強時間を捻出できるのであれば、
その後もきっと確保できるはずです。
「来年から」ではなく、「今から」見直していきましょう。




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第330話 受験勉強に必須の3つの手順
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 合格には、一般・専門・実技どれも過去問題演習を徹底的に行い、
> 自力で満点を取れるまで繰り返し解くことが必要だと思います。
> 先生もおっしゃっていますが、合格するのに魔法はなく、
> 愚直に過去問題を繰り返し解く、これが遠回りのようで、
> 合格への最短ルートだと思います。
> ここで注意が必要なのは、「自力で解く」ということです。
> 解答解説を見て、なんとなく分かったつもりになっても、
> いざ問題を解くとつまずいてしまうことがあるので、要注意です。
■Zさん(男性・33歳・地方公務員(土木職)・岐阜県)


受験勉強でのレベルアップの手順は、次のとおりです。
1.探す
2.解決する
3.自分のものにする

まず、「1.探す」というのは、自分が理解できていない部分や、
間違って覚えてしまっている部分を洗い出すという作業のことです。
具体的には、過去問題というフィルターを使うのが効果的で、
問題が解けるか解けないかで、理解度を判定できます。
解けなかった問題にチェックを付けることで、
学習が必要な箇所を見つけ出すのです。

このようにして洗い出された課題は、「2.解決する」ことが必須です。
せっかくチェックを入れた誤答も、解決しなければ誤答のままであり、
実力向上にはつながりません。

そして、疑問点が解決した後は、「3.自分のものにする」ことが大切です。
「分かる」と「解ける」は似ているようで、違います。
説明を読んで分かったと思っても、実際に自分でできるかどうかは別です。
疑問が解決したと感じたときに、再び問題に向き合って、
自力で解けるかどうかを確認されることが大切です。

また、私も日々実感していることですが、人間は忘れやすい動物であり、
一度納得したことでも、復習を怠ると、納得したこと自体を忘れてしまいます。
疑問を解決することは大切ですが、それを定着させることによって、
実際の試験での得点力につながってきます。

試験で合格を勝ち獲られる方々は、上記の3つの手順を満たしておられます。
逆に言えば、3つのうち1つでも欠けているものがあると、
時間と労力に見合った結果が得られません。

・過去問題を解くだけで、誤答の分析ができていない。(1・2・3の欠落)
・疑問点が増えてきたのに、解消できていない。(2・3の欠落)
・その場では理解できたが、時間が経つと分からなくなってしまう。(3の欠落)

問題に挑戦するだけではなく、疑問点を炙り出す。
疑問点を炙り出すだけではなく、それを解決して納得する。
納得するだけでなく、その事柄を定着させる。
この3つの過程を繰り返してこそ、実力は高まっていきます。
学習のツボを押さえることで、2018年をさらなる飛躍の年にしたいですね。




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第331話 「投資」と「収益回収」には時間差がある。
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2018年がスタートし、新たな気持ちで受験勉強に向かわれる方も多いと思います。
気象予報士試験の攻略において大切なことは、
どんなに効率性を高めても、合格までにはある程度の時間を要する点です。
「1週間で合格」とか、「1か月で資格取得」といったことは不可能であり、
決して短くない時期を受験生として過ごすことになります。

受験生の期間というのは、「投資」の時期であると言えるでしょう。
「投資」といっても、お金だけを指すわけではなく、
時間の投資でもあり、労力の投資でもあります。
誰にとっても貴重なものである、お金・時間・労力を投入することにより、
受験生である自分自身を育て養っていく時期なのです。

一方、試験に合格し、資格を取得できれば、投資に伴う収益が始まります。
資格を活用することで、就職や転職が実現することや、
現在の仕事や社会活動や学業などに、プラスにつながることが挙げられます。
また、これは目に見えないものですが、
合格を勝ち獲ることで得られる達成感や自己肯定感も大きな収益です。
いい大人でも、学生のときのような感情が湧き起こるのは、素敵なことですね。

ここで注意したいのが、「投資」と「収益回収」にはタイムラグがあることです。
例えば、2018年の正月に「今年は気象予報士試験に挑戦するぞ!」と決意しても、
実際に2018年中に気象予報士資格を取得できるのは、ほぼ不可能です。
この時間差に耐えられるかどうかというのは、結構重要なのです。

例えば、株式市場で100万円をつぎ込んで株を買い、
その10分後に101万円で売ることができれば、1万円の利益が出ます。
これは「投資」と「収益回収」における、極端に短期(かつ短気)な例ですが、
それと対極的な姿勢で望めるかどうかというのは、大切なことだと思っています。

気象予報士試験の勉強では、実技試験の学習をやりたがる人が多いです。
天気好きにとっては、天気図や衛星画像などの資料を見るのが楽しいですし、
完全合格に直結するのは実技試験の合否だからです。
でも、実技試験の出来具合を大きく左右するのは、学科試験の知識であり、
その不足に気が付いたときに、戦略的な回り道ができるかどうかで、
最終的に合格を勝ち取れるかどうかに影響してきます。

葉が落ちた桜の木に向かって、「なんで咲かないのか」と言っても花は付きません。
寒風に耐えながら、つぼみが少しずつ膨らんで、やがて花が開くことになります。
今が投資の時期であることを認識して、腰を据えて取り組めるか、
収益回収の確実性を高めるためには、その姿勢が必須であると私は考えます。




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第332話 高いパフォーマンスは、余裕から生まれる。
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第49回試験の前における最後のメルマガですので、
今回は試験日に向けた準備について書きます。

昨年末から、ラストスパートをかけてきた受験生も多いと思いますが、
そろそろ調整の段階に入ったと言えそうです。
もちろん、暗記が必要なものについては、試験日当日にかけて、
頻繁に繰り返し確認を行っておかれることは大切です。
ただ、今から高い山を登るような学習は、
オーバーワークを引き起こす恐れがありますので、お勧めできません。

ここまで来れば、「今まで積み上げてきたもので戦うのだ」と腹を括り、
あとは試験当日に実力を十分に出し切れることを目指した準備が大切です。

特に、冬はインフルエンザや風邪など、感染症にやられることが多いです。
どれだけ実力の高い人でも、体調不良では満足に戦えません。
試験直前で、寝不足を続けながらの受験勉強というのは、
ハイリスクを自分から引き寄せる行為です。
体調を整えて、自分が持っている実力を全て出し切れるようにしたいものです。

また、試験当日は緊張感や焦りが高まるものですが、
「余裕」を持つことで、ある程度は軽減できると私は思っています。

例えば、今回の東京での試験会場の1つが早稲田大学です。
少なくとも、最近の試験で会場になったことはなかったので、
初めて訪れる受験生が相当に多いと思われます。

このときに、いつもの試験会場と同じ感覚で準備をしていると、
当日の電車の乗り換えや、駅の出口などで戸惑ってしまい、
遅刻もしくは開始ギリギリになってしまう恐れがあります。
(白バイやパトカーが送迎してくれることは、多分無いと思います。)

さすがに、試験会場の下見まで行うのは面倒なことですが、
Googleマップなどの便利な道具があるのですから、
経路や時間を事前確認しておけば、当日に慌てるリスクを減らせます。

また、試験が行われる教室内での、体感温度のコントロールも重要です。
冬ですから、室内に暖房がかかっていますが、
場所(出入り口や窓の位置)によって、多少の気温の違いはあります。
そもそも、暑さ・寒さに対する感覚には個人差があるものですから、
万人が納得できるような環境はあり得ません。
だからこそ、衣服の調節ができることは大切です。

室内環境によっては、足下だけが冷えるといった可能性も想定されます。
足が冷えると、腹具合まで悪くなることもありますので、
そういったことも踏まえて、靴用・靴下用のカイロなどがあると安心ですね。

このほかに、筆記具・ルーペ・持病の薬・喉を潤す飲み物など、
欠けたときに自分のパフォーマンスが低下するようなものが無いか、
確認をしておかれることが大切です。

これらの準備は、気持ちに余裕があってこそ、できることです。
目の前のことで精一杯だと忘れてしまいがちで、
試験会場で不足を感じた時点で、初めて気付くことになります。
事前に考えておくことで、リスクを減らせます。




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第333話 実力を高めるために必要な3つの要素
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先日の試験に対する手応えは、いかがでしたか?
十分に実力を出し切れた方、厳しい結果が予想される方、
受験生それぞれの感触をお持ちだと思います。

もし、次の試験に向けた学習を必要とされるのであれば、
頭の中のエンジンが冷めてしまわないうちに、学習を再開しましょう。
いったん勉強から大きく離れてしまうと、再スタートが大変です。
アイドリングとエンジン停止では、大きな違いです。

試験が終わった直後だからこそ、これまでを振り返り、
今後の受験勉強に活かしていきましょう。
具体的には、3つの要素「意欲」「時間」「効率」に着目されると良いです。

実力は、この3つの要素の積(かけ算)で作られると私は考えます。
「足し算ではなく、かけ算」というところが注目点です。
つまり、意欲満々でも、学習時間を確保できなければ、成果は出ませんし、
意欲と時間があっても、非効率な学習では実力を大きく伸ばせません。
効率的な学習とは、疑問点が短期間で解決できているかどうかです。

高い意欲、十分な時間、効率的な学習、
この3つの要素が揃ってこそ、短期間で実力を高めていけるのです。

これまでの受験勉強において、3つの要素は満たされていたでしょうか。
もし、欠けているものがあれば、それを補うことによって、
今までよりも実力を大きく高めていくことにつながることでしょう。

3月の合格発表はまだまだ先ですが、
すでに8月試験を見据えて走り出している受験生がおられます。
再スタートの時期が早いほど、より大きな目標を掲げることができます。
長い期間は、受験生にとって大きな味方です。




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第334話 ささやかな動機で良い。
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気象予報士制度のもととなる、気象業務法の大改正が行われて、今年で25年。
テレビやラジオのニュースにもよく登場することから、
気象予報士という資格は、広く知られるようになっています。
(「天気予報士」と呼んでいる人も少なくありませんが。)

ただ、前回の第49回試験を受験された方は、3000人程度であり、
他の有名な資格試験と比べれば、圧倒的に少ない数です。
現時点での気象予報士の登録者数は約1万人に過ぎず、
「知名度はあるが、実際に取得している人は少ないレアな資格」となっています。

それだけに、この試験に挑戦しようかどうか迷っている方の中には、
「物理や数学の問題ばかりで、文系は門前払いなのか?」とか、
「天気に対して、特別な熱い思いが必要なのでは?」といった、
不安を抱えているかも知れません。(実際そういったご相談が寄せられます。)

まず、1つ目の回答から。
理数系の問題が出されるのは事実ですが、
必要箇所を集中的に学習すれば、カバーできることも多く、
高校3年分の教科書を、全部網羅していただく必要は無いです。
気象キャスターとして活躍されている方の経歴をググってみれば、
理系の学歴をお持ちの方がそれほど多くないことが分かります。
私自身も、文学部卒(しかもエスカレーター進学)です。

次に、2つ目の回答です。
私自身は、子供のときから気象や天文が好きで、
その延長線という形で、高校生のときに受験を経験しました。
(前述のように、エスカレーター進学で時間に余裕があったことも理由です。)

ただ、受験対策の講師という立場を十数年経験して分かったことは、
天気に対する「熱いキモチ」は、必要では無いということです。

例えば、第48回試験で合格された方々の受験動機は、こんな感じです。

> 写真を取りに行った時に予報快晴なのに曇りで少しムッとなったのが最初のきっかけ。
■S.T.さん(男性・60代・奈良県・自営業 日本防災士会会員、フリーカメラマン)


> 仕事が航空関連でお天気が業務に直結するから、
> そして子供の頃から空を眺めるのが好きで雲に興味があったからです。
■Cさん(女性・36歳・埼玉県)


> 壇上で気象キャスターの方が気象や仕事の魅力について語る姿がとても輝いて見え、
> 「私も気象予報士になりたい!」と思い立ったのでした。
■Vさん(女性・24歳・文化振興事業団勤務・大阪府)


もちろん、多少の興味・関心は持っておられたでしょうが、
「幼い頃から、気象の図鑑をボロボロになるまで読み込んでいた」とか、
「毎日、ラジオを聴いて天気図を描いていた」といったエピソードを持つ方は、
私が知る合格者の中では、かなり少数派です。

むしろ、先ほどの体験記のように、ちょっとした動機で受験の門をくぐったところ、
勉強に熱が入るようになり、合格まで走り続けられた、というパターンが、
資格を取得された方によく見られます。

天気が好きで、気象予報士試験を志す方もおられますが、
「好き」が動機である場合、受験勉強に偏りが生じがちです。
私もこのタイプだったので、よく分かるのですが、
天気図などを見て、実際的な現象を学ぶことには熱中する一方で、
興味の湧かない分野の学習は、オロソカになってしまいがちです。

ただ、この試験における出題範囲は広いので、
学習傾向に偏りが大きいと、合格することが難しくなります。
「天気愛」を自覚する受験生は、この点を意識されることが重要です。
「趣味」と「受験勉強」は、完全に重なるものではないということですね。

むしろ、「気象に特段の興味は無いが、キャスターになりたいから勉強している」
と割り切っている受験生のほうが、趣味が入らないぶんだけ、
各分野の学習を淡々と進めることができる、という側面があります。
学習が進み、知識が増えれば、天気に対する興味も自然と高まるもので、
それが、さらなるステップアップを後押ししてくれるものです。

受験に興味のある方は、まず門をくぐってみると良いと思います。
ネットで調べてみるのも良いですし、本屋さんで探してみるのも良いでしょう。
試験問題も無料で公開されていますから、どんな内容なのかも分かります。
そのうえで、少し時間を確保したうえで、半年ほど取り組んでみれば、
自分に向いているかどうかが、おそらく分かることでしょう。
その時点で、進み続けるか、撤退するかを判断されれば良いです。




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第335話 「勝てる答案」を書くために
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 実技試験は時間の問題がありますが、
> 藤田先生の「急いでも速く解けるものではない」というコメントは目から鱗でした。
> たしかに気持ちで焦っても解けない問題は解けないので、実力をつけるしかないのです。
■Lさん(女性・52歳・制御機器メーカー 海外営業・東京都)の合格体験記より


10年くらい前と比べると、実技試験の分量は増えていると私は感じています。
もちろん、制限時間に違いは無いのですから、
問題数の増加は、難度の高まりを意味しているわけです。

おそらく今後も、問題の分量が少なくなることは無いだろうと考えます。
なぜなら、限られた時間で資料を読み取り、判断する能力こそが、
気象予報士に求められているからです。
将棋でいうところの「早指し」というものですね。

だからこそ、多くの受験生は、「問題を速く解く方法」を追求するわけですが、
ここで、重く存在する事実があります。
「その人の実力以上には、速く解けない」ということです。

もちろん、限られた時間で思いついたことを答案用紙に書き込めば、
その時点では、「速く解けた」と感じるかも知れません。
しかし、正答が得られる答案でなければ意味が無いです。
将棋のルールさえ知っていれば、一手5秒で指すことは可能ですが、
それが名手であるかどうか、勝てるかどうかは、別問題ですね。

あくまでも「勝てる答案」を時間内に書けることが必要なのであり、
それは、実力そのものを高めるしか、方法は無いということです。
具体的には、基礎事項の学習と、過去問題演習の充実です。

「実技の勉強なのに、今さら基礎学習?」と思われるかも知れませんが、
大気の熱力学などに、知識不足が残っていることは珍しくないです。
実技試験では、その答案から思考過程が明るみに出ますので、
実技に関係する知識に不足があれば、きちんと解決しておくことが大切です。

過去問題演習については、じっくりと取り組むことが大切です。
問題に挑戦することも大切ですが、その後の分析による課題の発見や、
発見された課題の解決のほうが、より重要な学習です。

課題を1つずつ解決できれば、それに伴って実力は高まっていきます。
長い時間と大きな労力を必要とする過程ですが、
その延長線上に、合格があるのだと私は確信しています。




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第336話 出でよ!文系気象予報士
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 気象予報士は理系か文系どちらが有利か気になると思いますが、
> 一般は比較的計算や物理現象が出てくるので理系が有利、
> 専門はどれだけ多くの気象知識が頭の中にインプット(暗記)
> されているか問われるので文系有利、
> 実技は解答を文章化しなくてはならないため文系が有利だと思います。
> (計算も出るが一般ほどではない)
> 文系だからとあきらめている人は
> 一般を集中的に勉強すれば合格できるのではないかと思います。
■Sさん(男性・40歳・放送局技術・愛知県)の合格体験記より


「気象予報士資格=理数系の資格」とお考えになったうえで、
「私は文系だから、ムリムリ」と諦めるのは、極めてもったいないことです。

引用した体験記にもあるように、少し込み入った数理的知識が求められるのは、
主として、一般知識試験だということです。

気象予報士試験の学習経験の無い方が、初めて問題を目にすれば、
「こんな問題が自分に解けるとは思えない・・・。」と尻込みするかも知れません。
しかし、初学者が問題をチラッと見ただけで、
解答の筋道が分かることこそ、あり得ない話であり、
難しいとお感じになるのは当然のことです。

勉強は知識の積み上げ作業です。
基礎事項を固めたうえで、応用学習が可能になります。
不足している学習があれば、補えば良いだけのことです。
それが、1次方程式の解き方であるのか、分数の割り算であるのかは、
人によって違いはあるものの、分かるところまで戻って学習し直せば、
着実に実力を高めていくことが可能です。

自称「文系」の受験生で、計算系の問題にビビる方は少なくないですが、
そもそも、一般知識試験は60分間で15問を解く必要があります。
60÷15=4ですから、1問あたりにかけられる平均時間はわずか4分間です。
180分で3題の証明問題を解く試験ではないのです。

こうした条件は、出題内容に縛りをかけていると言え、
実際に出された問題を見ても、
「きちんと勉強していれば数分以内に答えが出る」というのが大半です。

ですから、気象予報士試験は、文系受験生にも広く門が開かれた試験です。
「高校数学の内容をさっぱり忘れている人でも、
適切な方法でコツコツ勉強すれば、何とかなる可能性が高い。」
というのが私の認識です。

また、気象予報士試験には、法律の内容を理解したり、
気象に関する知識を整理して蓄えたり、
天気図などの資料を読んで文や図で答案をまとめたりする問題も多いです。
これらの学習は理数系特有の知的作業ではなく、
そういった種類の学習なら得意だ、慣れている、という方も多いでしょう。

いろいろな分野から、少しずつ問題が出される学科試験では、
不得意分野の克服こそが、合格にとって必須なのです。
誰でにでも苦手分野はありますが、それを上手くカバーできれば、
実力を底上げしていくことが可能です。




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第337話 不合格スパイラルから抜け出すために
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 4月より次々と教材が手元に届きました。教材DVDで学習していて愕然としました・・・
> それは自分にはまだまだ学科の知識が欠けていることに・・・
■K1129さん(男性・47歳・生鮮食品卸売業会社員)の合格体験記より


この合格体験記をお書きになった方は、
22回目の受験で念願の気象予報士となられました。
ということは、21回もの不合格にめげることなく、
挑戦を続けられたことを意味しています。
途中で挫折してしまえば、合格はなかったことでしょう。
「諦めずに挑戦する」という言葉の重さを感じます。

とは言え、この言葉を実行することの難しさは、
何回も不合格を経験された方であれば、強く実感しておられることでしょう。
試験に合格できないことは、本当に辛いことで、
不合格が続くと、心が折れそうになるからです。

「同じ場所をグルグル回っているだけではないか?」
「このまま合格できずに終わってしまうのだろうか?」
こうした迷い・不安を抱えたまま、受験勉強を続けるのは簡単ではありません。

不合格のスパイラルから抜け出すためには、
これまでの受験勉強の方法を振り返ってみることも大切です。

気象予報士試験は、決して受験者数の多い試験ではないので、
他の人がどんな受験勉強を進めてきたのか全く知らないまま、
受験生活を送っている方も少なくありません。

こうした「自分なりの受験勉強法」を、
私のような受験対策を仕事としている人間から見たとき、
理想的な学習法からかけ離れている場合もあります。

一例を挙げましょう。
受験勉強において、過去問題演習が重要であることは、よく知られています。
学科試験の成果がなかなか出ないという悩みを抱えた方が、
「過去問題はしっかり勉強したつもりなのですが・・・。」と仰るので、
具体的な演習量を尋ねてみますと、「3年ほど。」というお答え。
ズバリ私に言わせれば、これは圧倒的に少ない分量です。

ご当人としては、十分に受験勉強に取り組んだという感覚があって、
「これだけ勉強したのに結果を伴わないのは、不条理だ」という、
モヤモヤにつながっていたわけです。

しかし、少なくとも気象予報士試験を突破した経験をお持ちであれば、
学科試験の過去問題演習量として、3年分は少なすぎる数字であり、
失礼を承知で言えば、「これだけ勉強したのに!」ではなく、
「これだけしか勉強してないの?」ということになります。
ちなみに、私が推奨する学科試験の過去問題演習量は、最低でも10年分です。

ここでは、一つの例として、学習量に関する話をご紹介しましたが、
「どの分野を学習するか」「どのようにして学習するか」という点においても、
同じようなことは数多くあるわけです。
受験生ご当人にとっては、「当たり前」「普通」と思って進めていることが、
その道を先に攻略し終えた人間から見ると、「?」と感じることは多々あります。
また、必要不可欠な学習が、ごっそり欠落していることがあれば、
それは受験戦略において致命的な誤りになります。

これが、学校での勉強やビジネスマナーなど、
多くの人前で経験するような技術・方法であれば、
いわゆる「我流」の誤り・非効率性を指摘される機会も多いのであり、
そのことによって修正できることも多々あります。

しかし、気象予報士試験という、レアな資格試験の勉強においては、
「その方法って、どうなのよ?」と指摘される経験に乏しいのです。

つまり、受験生において、自らの勉強方法が適切なのかを知るためには、
自分自身で振り返るという発想と、それに伴う行動が必要だということです。
「自分では適切に勉強したつもりだが、もっと良い方法があるのでは?」
という気持ちこそが、受験勉強の改善につながります。

ネットで検索すれば、いろいろ情報が手に入る時代ですし、
もし、知り合いで気象予報士がいれば、話を聞いてみるのも良いでしょう。
当塾のホームページには、100人以上の合格体験記が載っていますし、
ご希望でしたら、私にご相談下さっても良いです。

今までの学習について、大幅な修正が必要であることに気付くと、
この合格体験記で書かれているように、「愕然」とすることもあります。
しかし、それだけの衝撃を感じたことこそが、
受験勉強を良い方向に向かわせるための原動力になるのです。




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第338話 目の前の問題と格闘するのが受験勉強です。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 6回目の試験直前には、問題文を読み「何を回答させたいのか」を想定し、
> それを図で確認するというアプローチができるようになってきました。
> 要するに出題者の問題文に込めた出題意図が何となく分かり始め、
> そして、これが実力なのだとわかった気がしました。
■Bさん(男性・50歳代・地方公務員・技術士(総監・建設部門)・東海地方)


Bさんは6回目の受験で完全合格を手にされていますので、
上記の記述内容は、合格直前における受験勉強、
具体的には実技試験の勉強への手応えを示しています。

天気が好きな受験生にとって、実技試験は誘惑の多い分野でもあります。
天気図などの資料を眺めていると、ついつい引き込まれてしまい、
問題とは関係の無い事柄について思索が広がりがちです。

何事も興味を持って学ぶことは大切ですから、
こうした過程を一概に否定するわけではありません。
それだけ、気象の世界は魅力的であることの証拠だと思います。
しかし、試験問題と関係の無い視点で資料を眺めていても、
受験勉強にならないのも事実です。

「趣味」と「受験勉強」を明確に区別し、
意識的に、「受験勉強」に取り組むことが大切です。
具体的には、「目の前の問題を理解することに全力を投入する」というのが、
気象予報士試験合格への最短経路だと考えます。

実技試験の勉強における必須学習要素の1つが、「題意の把握」です。
天気が好きな受験生にとって、これは地味な学習に思えることでしょう。
「理科の試験なのに、現代文の勉強?」と感じるかも知れません。
でも、実技試験に強くなるためには、
題意の把握を正確にできるようになることが必須なのです。

なぜなら、試験は「出題者の問いかけに答える」という形で構成されるからです。
何を問われているのかを適切に掴まねば、得点につながりません。

題意の把握が正確でなかったことによって、
「資料は読めているが、解答としては間違い」といったミスが起こります。
私はたくさんの答案と日々向き合っていますが、この種の誤答は多いのです。
(題意の把握が正確であるかどうかは、答案を見ればすぐに分かります。)

逆に言えば、この点を克服すれば、まだまだ得点が伸びるということです。
問題文に目を通し、題意が何であるかを読み取り、
それに基づいて資料を参照し、得られた解答要素を答案に落とし込む。
作成した答案の添削を受けることで、炙り出された課題を解決する。
こうした学習サイクルを続けることによって、
実技試験の実力を大きく高めることが可能だと私は考えます。




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第339話 時間は有限、工夫は無限。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> そこで取りかかったのが、単語帳の作成です。
> 手書きの単語帳だと作成に時間がかかるため、携帯の無料アプリを使用しました。
> 藤田塾のテキストになぞってテキスト全てを網羅するように問題・答えを打ち込みました。
> 作成には1週間近く時間がかかったと記憶しております。
> 作成後は、単語帳を繰り返し見たり、音声再生して聞き流しをしました。
■Zさん(女性・27歳・看護師・東京都)


> 勉強時間を計れるアプリを使って勉強時間を計測したのも、
> 自分を鼓舞する材料としては良かったかなと思います。
■Pさん(女性・28歳・放送局契約キャスター→フリーアナウンサー・東京都)


英単語を覚える際に、単語帳を活用された方は多いと思います。
ご承知のとおり、100枚くらいの小さなカードがリングで閉じられており、
カードの表には「rain」、裏には「雨」と書き、
電車の中などで繰り返しめくって学習する、昔ながらのツールです。

一昔前において「単語帳」と言えば、ほぼ全員がこれを思い浮かべるわけですが、
今では、スマートフォンアプリで作れる単語帳が出ています。
従来の単語帳であれば、カードの数が増えるほど、持ち運びが不便になりますが、
スマホアプリなら、1000語でも、2000語でも入れられますし、
電子データですので、スマホの重量は全く変わりません。
読み上げ機能が付いているものも、無料で使えるものもあります。

一人一人が1日に持っている時間は24時間だけです。
この時間の中で、睡眠や食事を確保したうえで、
やるべきことを組み込んでいかねばなりません。
この制約の中、人間は道具を活用することで、生産性を高めてきました。

例えば、あらゆる事務作業に必要な「計算」についても、
筆算より、算盤や計算尺を使ったほうが効率的ですし、
さらには、手回し計算機や電卓が開発されました。
手計算で何時間もかかっていたような計算でも、
表計算ソフトを用いれば、数秒間のマウス操作で、すぐに答えが出ます。

スポーツの世界でも同じで、私が所属していた弱小野球部でさえも、
バッティング練習のためのマシーンがありました。(もう20年以上前の話です。)
機械なのに、カーブボールを投げることもできます。
おそらく、高校野球の強豪校であれば、このようなマシーンをフル活用して、
打撃練習に励んでいるのだろうと想像します。

受験勉強も同じだと思います。
ほとんどの方が、忙しい生活の中で、勉強時間の捻出に苦労されています。
捻出できたとしても、10分や15分といった細切れ時間の集まりだったりします。
こうした時間も、単語帳などの活用で「使える時間」に転換させることが可能です。
そして、これらの細切れ学習時間をアプリで計測すれば、
意外に多くの時間を学びに投入できていたことに気が付き、
受験勉強に対する進捗感を味わえるのです。

もちろん、こうしたアプリをお使いになるかどうかは、人それぞれです。
その人にとって、効率的に学べる方法こそ、正しい学習法だからです。
ただ、単に「そうした道具を知らない」「使ったことが無い」という理由だけで、
活用できていないのであれば、勿体ないことかも知れません。

私自身の話ですが、タブレットで新聞を読むことを先月から始めています。
今まで、「新聞とは紙で読むものなり」という意識が強かったのですが、
実際に試してみると、いろいろと長所もあることが分かってきました。
 ・紙の新聞よりもページをめくるのが速い。
 ・気に入った記事を簡単にクリッピングできる。
 ・1週間ほどためても、まとめ読みがラク。
 ・古新聞が増えない。(すでに紙で3紙とっているので、もう十分です。)
こういった利点に気づけたので、しばらく購読しようかなと思っています。

受験勉強についても、現時点での手法が100点満点とは限りません。
知らなかった方法や、試したことの無い方法に挑戦することで、
意外な効率性に気づけることもあるはずです。
与えられた時間は有限ですが、工夫は無限です。




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第340話 「耳学問」のすすめ。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 自転車で通勤(40分程度)するときやウォーキングのときは、
> DVD教材の音声をMP3プレイヤーで録音したものを聞いておりました。
> 目の前にはプリント教材や問題の天気図はありませんが、
> 先生の講義でそれが頭に浮かぶくらいのレベルになるよう復習することが目標でした。
■Vさん(男性・54歳・高校理科教員(専門は物理、地学も担当)・香川県)


> 特に1日何時間とは決めていませんでした。やれるときにやる。という感じでした。
> 実技講座についてはDVD講義をIPADに落とし込んで
> 通勤時の電車の中で聞いておりました。
■Lさん(男性・アラフィフ・総合物流業・東京都)


勉強量は、「意欲」「効率」「時間」の3要素の掛け算で決まると私は考えます。
やらされモードで取り組んでいても、頭に入りませんし、
非効率な方法では、労力を浪費してしまいます。
また、意欲に溢れていても、投入できる時間が不足していたのでは、
実力を大きく伸ばしていくことは困難です。

日々忙しい社会人受験生の皆様にとって、学習時間の確保は大きな課題であり、
私の塾の懇親会でも、決まって出る話題なのです。

では、実際にどのようにして勉強のための時間を捻出するかですが、
考え方として、大きく2つに分けられると思います。
 ・他のことに使う時間を削って、勉強時間に充てる。
 ・他のことに使う時間に、勉強を上乗せする。

前者の例としては、テレビを見る時間を減らしたり、
呑みに行く時間を減らしたりすることなどが挙げられます。
スケジュール帳の中にある予定を「削る」「動かす」といったイメージです。
受験生として、こうした取り組みも大切ですね。

一方、後者の場合、スケジュール帳の中にある予定をそのままにして、
そこに勉強時間を足していくというイメージです。
例えば、入浴の時間に、湯船でゆっくり浸かっているときに、
本を持ち込んで読むことができれば、勉強時間を追加できます。
入浴の時間を「削る」のではなく、「上乗せする」ことがポイントです。
ただし、浴室で本を読むと、湿気で本が傷んでしまうので、
私の場合は、読後に捨てられる雑誌や冊子を読んでいます。

また、通勤・通学に電車を使っておられる方も多いと思います。
1日の中で一定の時間を費やしているのですから、
これを活用できれば、学習習慣の確立にもつながりますし、
トータルの学習量を大きく伸ばせることになります。

ただし、移動時間を勉強に充てる場合において、
「読む」という学習は不向きであるケースが多いです。

まず、車内が混み合っていると、書物を広げて読むのは困難です。
せいぜいのところ、スマートフォンをチェックできる程度です。
比較的空いた車内あれば、本を広げることは可能ですが
揺れる車内で文字を目で追うと、気分が悪くなることがあります。
(特に、加速や減速の多いバス車内では、そうなりやすい。)
あと、他の乗客から「何を読んでいるのか?」と横目で覗かれることに、
抵抗感がある方もおられるでしょう。
もちろん、歩行中や運転中に読む行為は、危険ですから厳禁です。

こうした状況を考えれば、移動中の学習については、
耳から行ったほうが利点が大きいのです。
例えば、語学の学習であれば、文章を読むことよりも、
ヒアリングのほうが向いているということです。

耳からの学習には、イヤホン・ヘッドホンを使うことになりますが、
無線通信(Bluetooth)により、コードが不要なものがあります。
混雑した車内でコードが絡むのはストレスですが、
ワイヤレスタイプを使うと、自由度が増します。
スマホを鞄に入れたまま聞くことも、もちろん可能です。

以前に私が使っていたものは耳かけタイプで、少しかさばりましたが、
今年3月に、耳の穴に押し込むタイプに買い換えました。
こちらのほうが見た目もスッキリしています。
私は片耳タイプを使っていますが、両耳タイプもあります。
いろんな商品が出ていますが、私が買ったのは1,700円ほどです。
うっかりシャツのポケットに入れたまま洗濯してしまったことがありますが、
そのまま普通に使えています。

「耳学問」という言葉には、「他人から知識を聞きかじっただけ」という意味があり、
読んで学習することに比べて、一段劣る勉強法であるかのような響きがあります。
しかし、忙しい受験生が、その時間と体力を最大限に有効に活用するためには、
聴くことによる学習を積極的にお勧めしたいです。
便利な道具がある現代においては、「耳学問」こそが、
学ぶことの可能性を広げてくれるものだと私は確信しています。




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第341話 家の外に勉強の場を設ける。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 年齢的なこともあり一度覚えたことがなかなか頭に定着せず、
> 退職していることもあり人の倍は勉強し、
> 図書館では大学受験や資格の取得を目指す人が多いので、
> その人達の刺激を受ける意味でも必ず図書館で勉強しました。
■Cさん(男性・64歳・定年退職(元中学校理科教員)・東京都)


合格を勝ち獲るために大切なことは、トータルとしての勉強量を増やすことであり、
「1日あたりの学習量」×「日数」という形で示されます。
1日は24時間ですので、これ以上を勉強に投入することはできません。
そもそも、生活も休息も仕事もあるので、1日あたりの学習量は限られています。
しかし、1日あたりの学習量が少なくても、日数をかければ、実力は伸びていきます。

例えば、スイミングスクールに通っている子供さんは多いと思いますが、
週1回に1時間のレッスンであっても、キチンと5年も続ければ、
4泳法(クロール・平泳ぎ・背泳ぎ・バタフライ)を習得できる子が多いようです。
ピアノなどと異なり、水泳はプールの中でしか練習できませんから、
まさに「1週間でたったの1時間」ですが、継続の効果が効いてくるわけです。

気象予報士試験の勉強も、これと似ています。
学習すべき量が多いので、さすがに「1週間で1時間」では、
目に見えた学習成果が出るまでに相当の期間を要するでしょうが、
「1日30分」でも良いので、毎日続けることができれば、
着実に合格までの距離を縮めることができると考えます。

大事なのは学びを継続することであり、続けられない学習は成果を伴いません。
よって、受験勉強の秘訣は、「続けられるかどうか」にあるのです。

この合格体験記を書かれたCさんは、
図書館に通われることで、学習習慣を確立されました。
入試や資格取得を目標に掲げた人が集まってきますので、
その集団の一部に属していることを意識すると、気持ちが引き締まります。
互いに言葉を交わさなくても、通い続けていると、顔見知りが増えることでしょう。

私が住む町の図書館は、自習を禁止していますが、
近くのショッピングモールの中に、誰でも利用できる机と椅子があります。
そこでは、高校生を中心に、多くの人が勉強に励んでいます。

もちろん、自宅で勉強すれば良い、という考え方もありますし、
それを実践されている方も多いと思います。
ただ、家の中には誘惑も多いのも事実です。
テレビ・布団・ゲーム・ソファー・菓子・酒など、いろいろ揃っています。

そもそも、自宅とは「ホーム」であり、休息・安住のための場です。
つまり、第一の目的は「外から帰ってきた自分を癒やし、充電する場所」であり、
自分に対して、優しく快適な環境になっているのは、当然のことです。
一方、受験勉強は厳しい修行の一面も持ち合わせていますので、
それを自宅で行うためには、快適空間を道場のように変える必要があります。
現実問題として、この切り替えはなかなか難しく、悩む方も多いのです。

これを解決するためには、受験勉強という修行の場を、
自宅ではなく、外に作り出すのが良いのです。
先に紹介した無料で使える自習席のほかに、
喫茶店やファミレス、有料の自習室を活用される方もおられます。

費用がかかることは、短期的な視点では負担となりますが、
「カネを払ったのだから、元が取れるように頑張ろう」という気持ちが生じ、
それで充実した学習につながるのであれば、プラスです。




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第342話 受験宣言は、自分を支えてくれる。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 周りの人に試験勉強中だと公言するのは効果的でした。
> 最初のころは「そんなの無理だよ!」と言われると思いなかなか話せなかったのですが、
> 周りの人が応援してくれることが分かり、
> その応援を受けると勉強しなくては!という気持ちになりました。
> 合格を報告する喜びも増えるのでオススメです!
■Pさん(女性・28歳・放送局契約キャスター→フリーアナウンサー・東京都)


> 職場の仲間と藤田先生に「背水の陣」宣言をしました。
■Bさん(男性・50歳代・地方公務員・技術士(総監・建設部門)・東海地方)


> 自分の気持ちを立て直してくれたのは、会社の先輩なんです。
> 職場の健康診断で顔を合わせたときに、
> 「気象予報士試験受けているんだって? 頑張れよ!!」と。
> この一言が私にとっては救われましたね。
■川口智紀さん(藤田真司との対談記事より)


気象予報士試験に挑戦していることを公表するのは、
結構、勇気の要ることだと思います。
少なくとも、私はできませんでした。

ほぼ確実に取得できる資格ならばともかく、合格率5%前後の試験です。
誰でも、失敗するところを他人に見られるのはツライ。
しかし、受験生であることを公表することには、2つの利点があるのです。

1つ目は、PさんやBさんが書かれているように、「自分を追い込むため」です。
一人で勉強し、一人で受験というスタイルであれば、
確かに失敗したときに恥をかくことはありません。
しかし、多くの人間は「ケツに火が付いた状況」になってこそ、
物事に本気で取り組めるものではないでしょうか。

友人・知人に対して、受験宣言をすることは、
自分で自分のケツに火を付けるようなものです。
「失敗すると恥をかく」という立場に自分を追い込むことによって、
チンタラ気分を一掃し、一気に本気モードに駆り立てるという作戦です。
良い意味で、自分にプレッシャーをかけるということです。

受験を公言することのもう1つの利点は、「自分をアゲてもらうため」です。
気象予報士試験のような難関試験では、合格を勝ち獲るまでに、
ほぼ必ずと言って良いほど、受験の失敗(不合格)があります。
本気で取り組んだ物事に対して失敗すると、誰でも大きく凹むものです。
ただ、その凹みから短期間で立ち上がることが大切なのであり、
立ち上がれない期間が長引くほど、次回試験での失敗リスクが増大します。
不合格と凹みの悪循環を繰り返さないために、早期の復帰が大切なのです。

こういったときに、受験について公言していれば、
周囲の人が、下がった気持ちを引き上げてくれる可能性が高まります。
それは決して、盛大な残念会を開いてくれるという意味ではありません。
引用した記事で、川口さんが述べておられるように、
ほんのちょっとした一言が、気分を上向きにしてくれるのです。

気象予報士試験の合格を勝ち獲るために、
充分な時間と適切な教材が必要であることは勿論ですが、
その大前提として、受験生ご本人のモチベーションが高いことが必須です。
いくら良い環境が整っていても、それを最大限に活用できるかは、ご当人次第です。
よく、「地頭の良さは?」「学歴は?」「文系でもOK?」「センスは?」などを、
気にされる方がおられますが、それを凌駕するのが意欲の有無です。
高い意欲を継続できるかが、最終的な合否に大きく影響します。
その方法の1つが、受験していることの周囲への公表です。

気象予報士を目指していることを伝えるのは、気恥ずかしさを伴うものですが、
そのぶんだけ、自分の受験を前に進めてくれる要素となってくれるはずです。




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第343話 アウトプットできてこそ、本物の理解
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 注意したことは、丸暗記でなく、文面と図面・数式等との関連性を持たせる事や
> 現象を頭の中でイメージ(3D動画で動く様)できるように
> (最も簡単に自分なりの言葉で説明できる状態=理解しながら)
> 記憶・整理する事を心がけた。(他人に説明できて120%の理解)
■Nさん(男性・34歳・会社員(海運関係)・東京都)


本を読んでいたり、問題を解いていたりする際に、
理解に苦しむ部分というのは、必ず出てきます。
もし、それが学習事項における本質で無いのであれば、
後回しにしたり、場合によっては捨てたりしても構わないのですが、
重要な箇所であれば、十分に理解をすることが必須となります。

こういった場面で、ありがちなのが、機械的に覚えてしまうという手法ですが、
頭の中で筋道を描けていないようなことを、長期記憶するのは困難です。
頑張って覚えたところで、理解を伴っていなければ、応用も利かないので、
試験で役立つ可能性は低いです。
丸覚えしたことを吐き出すだけで受かるほど、気象予報士試験は甘くないです。

しっかり理解できた事柄であれば、そう簡単に記憶が飛ぶことは無いです。
少なくとも、2か月先の試験までに完全に忘れてしまうことは考えにくいですし、
薄らいだ記憶も、復習によって取り戻すことができます。
「ああ、そうだった、そうだった」と感じるのは、記憶が残っているからですね。

Nさんも述べておられるように、「しっかり理解できる」というのは、
他人に説明できるくらいの水準を指します。
つまり、アウトプットがきちんとできるレベルだということです。
この立場から見れば、「何となく分かる」というのは、
「まるで分かっていない」と大差ないのです。

気象予報士試験では、資料の持ち込みが認められていないので、
自分の頭脳だけが頼りになります。
学科試験は勿論のこと、実技試験においても、
結局は、「質の良い知識をどれだけ蓄えられたか」で決まります。
「何となく分かる」のレベルで、選択肢は絞り込めませんし、
ましてや、まともな答案など書けるはずも無いです。

そのためには、結局のところ、知識の蓄積が大切です。
合格を勝ち獲った人も、最初からよく知っていたわけでは無いのであり、
ゼロから知識を蓄えていったのです。
「知らない」を「よく知っている」に変え、
「誤解している」を「理解している」に変えること。
この地味で地道な作業の連続が、アウトプットに耐えられる知識を醸成します。

次の試験まで約2か月となり、そろそろ焦りを感じる受験生も出てくる時期です。
焦燥感に押されて、強引な暗記に頼ると、失敗します。
1つ1つの疑問点を着実に潰せば、実力は普通に伸びていくものです。
魔法はありません。要はやるか、やらないかということです。




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第344話 残り時間での集中度を高める。
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2018年8月の試験まで、残り1か月半となりました。
すでに受験申請の期間も過ぎ、いよいよ受験勉強が最も熱くなる時期です。

試験が近づいてくると、徐々に焦りも生じてくるもので、
「実力を一気に高めるためのコツ」といったものを探したくなる時期でもあります。

「コツ」という言葉は「骨」に由来し、「物事の本質」という意味ですが、
実際には、「ラクして上手くやる方法」というニュアンスで使われることが多いです。
ただ、そういった意味での「コツ」は存在しないというのが、私の考えです。
もちろん、勉強のやり方によって、効率度には違いがあるものの、
残念ながら、魔法のような手法は無いのです。

受験勉強は地道であり、日々の学習の蓄積こそがモノを言います。
ですから、前回の試験後に、適切な方法で勉強を積み重ねてきた方は、
着実に実力が高まっていることでしょう。

一方で、これからの1か月半という時間も大切です。
決して長くはありませんが、まだまだ実力を伸ばせる余地は大きいです。
特に、試験日が迫ってくると、良い意味で緊張感が高まり、
今までよりも集中度がアップしやすくなります。
「4月・5月」と「7月・8月」では、気合いの入り方が違います。

そのようなことが言える理由を、例え話で説明します。
友人や同僚から、結婚式のスピーチを頼まれたとしましょう。
スピーチを頼まれるのは、式の3か月くらい前であることが多いですが、
だからといって、3か月前から準備をする人は少ないと思います。
ざっとした構想を練りつつも、実際に原稿をまとめるのは数日前であり、
最終的な練習は前日、もしくは当日の新幹線の中であったりします。

逆に、スピーチを頼まれた日から数日間で準備し、
それを寝かせたまま、本番で披露するという人はいませんよね。
同じ数日間でも、直前の数日間でやってしまう人が大半です。
これは、「もうすぐ本番だ」という緊張感が無ければ、
なかなか本腰を入れて取り組むのが難しいことを示しています。
「時間が迫っている」という焦りが、自ずと集中度を高めさせるのです。

試験勉強もこれと似ています。
ただ、受験勉強と結婚式のスピーチでは、準備に要する分量が桁違いですから、
試験日直前でバタバタするのは、高い確率で失敗します。
受験手続きを終え、「いよいよ来月に試験だ」と意識する時期になれば、
その緊張感を良い意味で活用していきたいところです。

実際、私が運営する塾でも、試験日の1~2か月前から集中的に学習に取り組み、
急速に実力を高める方がおられます。
(実技試験の答案添削を通して、受講生の実力は把握できます。)
もちろん、1日あたりで相当な時間を受験勉強に投入していたからですが、
高い集中力がそれを支えていたのだと言えます。

今までコツコツ頑張ってこられた方は、さらに実力に磨きをかけていきたいですね。
一方、今までの学習量が十分でなかった方は、
これからの集中学習で、一気に追いついていきたいところです。




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第345話 夏休みを滑走路にして飛び立とう。
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7月も下旬となり、学生の皆さんは長い夏休みが始まった方も多いと思います。
私が通っていた大学では、9月下旬まで夏休みがありましたので、
東北や北海道などを自転車で巡る旅を、19歳と20歳のときにしました。

長い時間を自分のために投入できる機会は、それほど多くないので、
ぜひ有意義に活用していただきたいと思います。
旅に出ることも良いですが、学生の本分として、
自分を磨くために、勉強に取り組まれることも大切ですね。

もし、気象予報士試験に挑戦されるのであれば、
この夏休みの期間を大いに活用したいところです。
どんな勉強でもそうだと思いますが、学習習慣を定着させ、
勉強を安定飛行に持っていくためには、ある程度の分量をこなすことが秘訣です。
1日30分しか確保できないのであれば、それは仕方の無いことですが、
まとまった時間を投入することが可能なのであれば、
それを使って、一気に土台を固めてしまったほうが、全体像を早く掴めます。

学生の皆さんは、社会人の方に比べて、1日に使える時間が長いので、
就職活動などを踏まえ、短期で資格取得を目指す方が多いです。

そこで、目標としたいのは、2019年1月試験での学科試験合格です。
(2018年8月試験は、すでに受験申請の時期が終わっています。)
一般知識試験の合格だけを目標とするのか、2科合格を目標とするのかは、
確保できる時間や、今後の勉強の進捗によっても違ってきます。
もし、2019年1月試験で学科2科に合格できれば、
2019年8月試験での実技合格(=完全合格)を狙うことになります。

つまり、頑張り方次第では、約1年で気象予報士資格の取得も見えてくるわけです。
逆に言えば、この夏休みに受験勉強を開始しなければ、
2019年8月試験での完全合格は、極めて困難になるというのが、
受験指導のプロの目からの見通しです。

就職活動を目前に控えた時点で、資格取得のご相談をいただくことがありますが、
気象予報士資格は、欲しいと思ったときに、すぐに取れる資格ではないです。
将来に進みたい道があれば、事前に準備しておくことが大切ですね。




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第346話 「守りの勉強」で失点を防ぐ。
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試験まで残り20日となった今、学科にせよ、実技にせよ、
学習すべき内容は、これまでの振り返りがメインとなります。
未修分野を突き進む「攻めの勉強」で、分からない部分が噴出すると、
焦りがどんどん積もって、収拾が付かなくなる恐れがあります。
これまでの学んだ内容の再確認といった、「守りの勉強」を行うことで、
ミスを減らし、手堅く得点できる体制を整えることをお勧めします。

「守りの勉強」などと表現すると、消極的な姿勢のようで、
試験に対する闘志が欠けるように思われるかも知れませんが、
毎日、大量の答案添削を行っている私に言わせれば、
記憶違いによる、初歩的とも言えるミスは決して珍しくないのです。

今まで何度も書いていますように、「無闇な丸暗記」は否定されるべきですが、
気象予報士試験に資料の持ち込みが認められていない以上、
解答のときに頼りになるのは、自分の頭だけです。
「知識」と名の付く学科試験はもちろんのこと、
実技試験においても基礎知識が無ければ、資料の読み取りも、
答案文を作成するための論理の組み立ても不可能です。
よって、正確な知識をたくさん備えることが大切です。

自分の知識が正確かどうかは、自分自身で1つずつ確認するほかありません。
停滞前線の記号と閉塞前線の記号の違いや、
暴風雪警報と大雪警報の違いについては、確かめるしかないのです。

人間の頭はコンピュータのように一括検索ができないので、
知識の抜けは無いか、記憶違いは無いかを、瞬時に捉えることはできません。
だからこそ、試験前の20日間を、こうした学習に充てる意義があると考えます。

未知の知識を習得することによって5点を得ることも、
知識定着の再確認によって5点の失点を防ぐことも、同じ5点です。
気象予報士試験の学習範囲は広いですが、
知識の内容によって、その出題頻度には明らかに違いがあります。
よく出される部分の復習をしっかり固めることによって、
着実に得点を積み重ねていきましょう。




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第347話 試験当日に実力を発揮できてナンボ
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今回は、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> ・当日の糖分補給は、「羊羹」が最も良いと思われる。
> チョコレートは油分が多く胃もたれし、
> 飴は溶ける時間がかかる割に1つ2つでは糖分が思ったように取れない。
> 学生時代の伝統行事の影響もあるが、羊羹は、大凡2口で多量の糖分が摂取でき、
> 油分もなく消化も早く胃もたれもしない。
> (学生時代の部活では、医師・看護国家試験を受験する学生に
> 糖分補給用に羊羹を手渡すという伝統があり、頭がクリアーになると評判であった)
■Nさん(男性・34歳・会社員(海運関係)・東京都)


この合格体験記を読んで、「その手があったか!」と軽い衝撃を受けました。
私自身が受験生だったときは、午後の試験前に板チョコを食べて糖分補給し、
その試験で合格したという体験があったために、チョコレートへの拘りがありました。

しかし、Nさんがお書きになったように、チョコレートには脂分が多く含まれており、
それによって胃腸に負担がかかってしまうようでは、試験への妨げになります。
脂っこくない羊羹であれば、より消化にも良さそうです。
また、夏の試験においては、昼間の気温が高く、
環境によっては、チョコレートがベットリと溶けてしまう可能性もあり、
こうした点も羊羹のほうが一歩優っていると言えます。

試験まで残り1週間足らずとなった今、
成すべきことは、無理を重ねる受験勉強ではありません。
現時点で、受験生の実力はほぼ定まっていると言って良いのです。
あとは、持っている実力をフルに発揮できるかどうかで、勝負が決まります。
実力が高くても、過労(過勉?)による生活リズムの乱れで、
試験当日の集中力が低下すれば、取れる点数は下がります。

学科であれ、実技であれ、求められるのは集中力です。
学科試験では、問題文を細部まで読み込んだうえで、正誤判断が求められ、
集中力が欠けると、うっかりミスが誘発されやすくなるのです。
また、実技試験では、求められる解答要素が何であるか苦しむことがあり、
問題全体の流れを掴むことが大切です。
問題文と資料を熟読することで、出題者の意図を把握できれば、
隣り合うパズルのピースが次々に埋まっていくように、問題が解けることが多いです。
それを限られた時間で見抜くためには、土台となる実力が不可欠ですが、
当日のコンディションが良いからこそ、実力が発揮できるというものです。

生活リズムを整える、睡眠をしっかり摂る、疲れを溜めない、
朝食を摂る、時間に余裕を持って出かける、といったことが大切です。
「直前に確認した事柄が出題されて、合格できた」といったストーリーを夢見て、
直前ギリギリまで無茶な受験勉強を続けると、こうした基本がオロソカになります。
ちなみに、私は仕事柄、200人以上の合格者を送り出していますが、
そんなドラマチックなストーリーを耳にしたことは、まだ一度も無いです。

さあ、肩の力を抜いて、試験当日のパフォーマンスを高める準備に取りかかりましょう。
なお、試験前に羊羹を補給しようと思われた方は、
事前に用意しておかれたほうが安心です。
このメルマガは1000通以上配信していますので、
試験会場に近いコンビニでは売り切れてしまう恐れがあるからです。




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第348話 合格発表日までをどう過ごすか
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今週半ばに、気象業務支援センターから正式な解答例が発表されます。

学科試験の場合は、解答選択肢を控えていれば、おおよその合否は分かります。
15問中11問以上の正解であれば、合格と考えて良いでしょう。
気象予報士試験の黎明期には、12問正解が合否ラインだったように思いますが、
現在では基本的に11問正解となっており、10問正解でも合格のこともあります。

一方、実技試験の場合は、解答例をチェックしたところで、
正確な得点を掴むことは困難です。
マークシートと異なり、自分で白黒をハッキリ付けられない作文や作図は、
自己採点を行うことが難しいうえに、毎回の試験での合否ラインは変動します。
よっぽど試験の出来が良かった受験生か、その逆の受験生であれば、
だいたいの結果は頭に浮かんでいると思いますが、
大多数の実技受験生は、その中間に位置しているはずです。

そうした中、採りうる選択肢は大きく分けて2つです。
そのまま10月の合格発表を待つか、今から受験勉強を再開するか。
ここに、試験の合否を加えると、4パターンが生じることになります。

1.受験勉強を再開しない×合格
2.受験勉強を再開しない×不合格
3.受験勉強を再開する×合格
4.受験勉強を再開する×不合格

最もハッピーなのは、もちろん1ですね。
そして、最もダメージが大きいのは2だと思います。
v 今から受験勉強を再開するのと、合格発表後に受験勉強を再開するのとでは、
1か月程度の差が生じることになります。
次の試験が来年1月に行われることを考えますと、この差は無視できないです。

もちろん、受験生によって学習スタイルには差があり、
コツコツ積み上げる方もおられれば、わりと短期間で集中される方もおられます。
試験後くらいは、少しのんびりしたいと思う方も多いでしょう。
大切なことは、漫然と日々を過ごすことではなく、
自分なりの方針を明確に立てておくことだと思います。




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第349話 本業を磨くために気象を学ぶ人は多い。
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第49回試験で合格された当塾の元受講生17名様のうち、
合格体験記を書いて下さった15名様の肩書き(ご職業)を抜き出してみました。

■放送局技術
■生鮮食品卸売業会社員
■地方公務員・技術士(総監・建設部門)
■元中学校理科教員
■放送局契約キャスター→フリーアナウンサー
■航空保安業務
■団体職員(医療関係)
■高校理科教員(専門は物理、地学も担当)
■技術系短大講師
■総合物流業
■看護師
■防災コンサルタンツ会社勤務
■鉄道会社勤務
■会社員(海運関係)
■監査法人勤務

こうして見てみますと、所属分野がほとんど重なっていないことが分かります。

その理由としては、気象という学問の裾野が広いことや、
気象と関係する業界がとても多いことが挙げられます。
極言すれば、気象と無関係の業種を見つけるのは困難だと言って良いでしょう。
宇宙飛行士にでもならない限り、私たちは一生を地球上で過ごすのであり、
好むと好まざるに関係なく、天気と付き合っています。

自動車を運転するときは、雨で路面状態が変わり、霧で見通しが悪化します。
庭に何かを植えると、日射量や雨量が気になります。
料理をするときは、気温や湿度によって食中毒のリスクが変動します。

天気が身体や命に関わることもあります。
仕事では、気象状況によって儲かることも、損をすることもあります。

気象予報士というと、TVカメラの前で棒を持って解説するシーンが浮かび、
もちろん、キャスターを目指して勉強される方も多いです。
ただ、私の実感としては、気象や放送を専門としない方が大多数であり、
それぞれの専門分野を補強するために学ばれる方が目立ちます。
理由はすでに述べたとおり、あらゆる業界が気象の影響を受けるためです。

気象予報士試験の勉強は、気象業界を身を置く方だけのものではないです。
そもそも、気象会社で気象の勉強をするのは当たり前のことで、
気象予報士資格を持っていることは、「希少性」にも「強み」にもなりません。
気象業界以外の分野だからこそ、専門知識が重宝されるとも言えるでしょう。

また、昔と比べて勉強へのハードルが低くなっていることは注目点です。
例えば、私が受験生だった当時は、店頭に無い本を注文するために、
本屋さんで取り寄せをしてもらい、「2~3週間かかるかも」と言われましたが、
今では、専門性の高い本でも、翌日に届くことが珍しくありません。
決済と物流のシステムが発達したからですね。

学ぶための壁が低くなった今、「学ぼう」という意志と行動を持った人が、
次々とその壁を乗り越えていく時代となりました。
結果として、各個人の学習量の違いはさらに広がるように思います。
向学心の高い受講生の皆様に接している私も、身の引き締まる思いです。




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第350話 勉強の重ね塗りで、知識を定着させる。
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当塾では、講座を受講されたお客様に対して、
メールによる質疑応答・答案添削を承っています。
当然ながら、過去問題に関するご質問が圧倒的に多いのですが、
このとき、私から返信をする際には、表題に問題番号を必ず記載しています。
例えば、「平成30年度第1回試験・一般知識問6」であれば、
(30-1-般6)と付けています。

メール表題に、問題番号を付ける理由は、
後日に、お客様が検索をかけたときに、すぐに見つけられるようにするためです。

一度、読んだメールを、わざわざ後で見返すことがあるのか?
と思われるかも知れませんが、それは人間の「忘れやすさ」を軽視しています。
では、皆さんにお聞きしてみましょう。

1週間前の夕食に何を食べましたか?
10日前の朝刊の1面トップの記事の見出しを覚えていますか?
前回の本メルマガで取り上げた内容は何でしたか?

これらを即答できる方は、あまりおられないと思います。
「試験勉強は、日常生活とは違うだろう」と仰るかも知れませんが、
英語の学習で、同じ単語を何度も引いた経験をお持ちの方は多いはずです。
私も懲りずに、短期間で三度も四度も引いちゃってます。

メールでの質疑応答でも、その時点では十分に納得できるわけですが、
時間経過と共に記憶が薄れ、再び問題を前にしたときには、
「あれ、これどうやって解くんだっけ?」となることがよくあります。

そんなときに、同じご質問をされる時間と手間を省くために、
メール表題に問題番号を付けているのです。
検索をかければ、すぐにヒットしますから、
それをご覧になることで、「ああ、そうだった」と納得できるわけです。

以前に学習した内容を十分に思い出せなくても、
「自分は頭が悪い・・・」などと悲観される必要は全くありません。
むしろ、たった1回の学習で、試験当日まで記憶が定着するという人は、
希有な記憶力の良さだと考えたほうが良いです。

スマホやパソコンのログインで、素早くパスコードを入力できるのはなぜか?
それは、何度も何度も繰り返し入力しているからですね。
カラオケで歌える曲は、その曲が好きで、何度も何度も聴いているからですね。
勉強もこれと同じで、ペンキ塗りや漆塗りに例えられます。
学習の繰り返しで定着するものです。

もちろん、その際に筋道を立てた理解を伴っていることが必須であり、
十分な理解こそが、学習の定着度をより高めるわけですが、
それでも、たった一度きりで、長期記憶を維持することは難しいです。

受講生の皆さんが集まる懇親会で、私は冗談めかして、
「DVDが擦り切れるまで講義を受けて下さい。」と言うことがあります。
もちろん、レコードと違って、DVDは擦り切れませんし、
インターネット受講であれば、メディアそのものが存在しませんが、
必要なぶんだけ、繰り返して学習することは大切だということです。
合格を勝ち獲られた方の中には、「藤田の口調をモノマネできるまで聴いた」
と仰る方もおられるくらいです。

「人間は忘れっぽいものだ」ということを踏まえたうえで、
重ね塗りを重視した学習を続けることで、実力の定着度を高めていきましょう。

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