藤田真司の気象予報士塾は、気象予報士試験合格をトコトン応援する通信型の塾(予備校)です。

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  401、いきなり過去問題に手を付けてはいけない。
  402、歯磨き・風呂・受験勉強
  403、学習スタイルを進化させ続ける。
  404、過去問題を解いた後に、必ず行うべきこととは?
  405、実力が高まった結果として、速く解けるのだ。
  406、できない理由を探さない。
  407、知識の増強で実技試験を征する。
  408、限られた時間で、成果につなげるためには
  409、今年こそ気象予報士試験に挑戦される方へ
  410、前回の試験で合格された方々からのメッセージ
  411、次の試験日まで最も長いのが今日
  412、勉強のための時間管理術
  413、合格は継続の先にある。
  414、あと一歩だった受験生の皆さんへ
  415、理解度をチェックする方法
  416、キャリア拡張のための気象予報士試験
  417、文字・映像・音声を使い分ける。
  418、速く解けるには理由がある。
  419、合格までの道のりは1つではない。
  420、自分の点数は詳しく知らなくても良い。
  421、休むことも受験勉強
  423、出題予想が非効率だと考える理由
  424、モネが合格できた理由
  425、合格された方が教えてくれた試験日での秘訣
  426、ノート作成より大切なもの
  427、第56回試験を終えて
  428、理解度を自分で把握する方法
  429、最年長で合格を勝ち獲った秘訣とは?
  430、攻略すべきは「目の前の問題」
  431、実力を高めるための過去問題演習とは
  432、日常生活に勉強時間を組み込む方法
  433、辛くなったら、合格体験記を読もう。
  434、「ドヤりたいから、勉強する」でいい。
  435、試験直前で何をすべきか。
  436、試験当日に大切なのは「余裕」
  437、受験勉強の時間管理で大切な2つのこと
  438、過去問題を活用し尽くす。
  439、理屈半分、慣れ半分
  440、「合格率」を気にしすぎない。
  441、短期合格を勝ち獲るための2つの秘訣
  442、適切な解法は必ず存在する。
  443、始めようと思ったときが適齢期
  444、「勉強の見える化」のお勧め
  445、優れた道具は学習効率を高める。
  446、実技試験はキャッチボールだ。
  447、受験勉強を習慣化する。
  448、スタート地点は、ほぼ同じ
  449、敵の数を減らせば、勝率は上がる。
  450、出題予測は受験対策に含まれない。


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第401話 いきなり過去問題に手を付けてはいけない。
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> その間の勉強スタイルはひたすら問題を解く事に専念し
> 答えを覚えるまでひたすら問題を解いていました。
> 一般知識、専門知識の勉強もマルチプルチョイス用の勉強の仕方になっていて
> 本質を理解していなかったと思います。
> うろ覚えでも何とか正解にこぎ着けることができることがあったためだと思います。
> このやり方をしていると実技では新しい問題に全く対応ができず、
> 何回受験しても合格しないと自覚するようになってきました。
■Bさん(男性・61歳・医師・愛媛県)

実技試験でも、学科試験でも、過去問題演習が大切なのは言うまでもありません。
過去に出題された本試験に触れることで、
気象予報士にどんな知識や思考過程が求められているのかが分かります。
また、実際のところ、新しく出題される問題についても、
過去問題との関連が見られるものが、かなり多いのです。

ただし、過去問題演習を行ううえで留意すべきことがあります。
過去問題演習は、基礎事項の学習という土台の上に成り立つということです。

前述のとおり、本試験に出てくる問題の多くは、過去問題とつながりがあり、
これを丹念に勉強することが、合格に直結する道です。
過去問題演習の充実が、受験勉強での目標だと言っても良いでしょう。

そうすると、基礎学習をすっ飛ばしたうえで、いきなり過去問題演習に入るのが、
受験勉強の最短経路であるかのように思われますが、
実は大きな回り道になりかねないと私は考えます。

基礎学習が弱いと、演習で正答できなかったときにおいて、
「誤答の原因は何か」「どう解釈すれば正答を導けるのか」という掘り下げが、
上手く進まなくなりがちです。(分析のためにも知識が必要だからです。)

単純に、「A」という用語を「B」という用語に置き換えれば正解、
という程度の問題構成であればまだしも、
複雑な思考過程を経る場合、基本事項が分かっていないと、
十分な納得を感じることができなくなります。

特に、演習量(例:過去10年分など)だけを当面の目標に進めていると、
十分な理解よりも、その場でとりあえず頷ける解釈に飛びつきがちです。
さらに、これが行き過ぎると、強引な丸暗記になってしまったり、
自分で編み出した独自の解釈によって収めてしまう場合も出てきます。

私は、気象予報士試験の対策で「覚えること」を否定するわけではなく、
むしろ、覚えることは必要なものであると捉えています。
試験では、自分の頭脳と筆記用具以外は持ち込み不可なのですから、
知識を記憶しなければ、試験に合格することはできないからです。
ただ、記憶のためには「理解したうえで頭に収納すること」が大切であり、
それを省いた強引な丸暗記は、労力ほどには報われないと考えます。

また、独自解釈で辻褄を合わせてしまうと、
間違った思考パターンが染みついてしまい、後で修正するのが大変です。

基礎学習が不十分なまま、一足飛びに過去問題演習に取り組むことは、
普通の中学生が大学入試センター試験の赤本で勉強するようなものです。
回り道のように見えるかも知れないですが、まずは基本の学習で足腰を鍛え、
そのうえで、過去問題演習に取り組まれることをお勧めします。

過去問題演習には、学習内容をチェックする役割もあります。
解けない問題が出てくれば、知識の抜けを疑って、基礎学習に戻るのです。
問題演習→基礎学習→問題演習→基礎学習・・・という形で、
基礎と実践を行き来しながら、固めていくと良いでしょう。
学科試験の実力を高めるには、この方法が最も効率的だと確信しています。




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第402話 歯磨き・風呂・受験勉強
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> 仕事開始前の1時間、仕事終了のあと1時間職場で勉強するよう心がけていました。
> 通勤時間が長く、電車の中でもあまり集中できなかったためです。
> 休みの日の用事のない日は午前または午後いっぱいを
> 勉強時間に当てるように心がけていました。
> 長丁場でしたので、家族との時間はなるべく持つようにしていました。
■Jさん(男性・57歳・公務員・埼玉県)


まもなく第54回試験の合格発表が行われますが、
おそらく、今回の合格率も5%前後であろうと推定されます。
「約20人に1人」しか合格を得ることができない狭き門、
それが気象予報士試験です。

この難関試験を突破するためには、どうすれば良いか。
もちろん、具体的な勉強方法も重要なのですが、
それ以前の話として、押さえなければならない原則があります。
受験勉強を習慣化できるかどうかです。

気象予報士試験では、学科試験に合格すると、
その科目について1年間の受験が免除されます。(受験時の申請が必要です。)
このようなシステムが設けられているということは、学習すべき量が多く、
そもそも全科を一気に合格することが極めて難しいためです。
実際、合格される方の大半は、学科試験の両方または片方に合格済みで、
全科を一括して合格される方は、ほんの僅かです。

つまり、この試験に合格するためには、まず学科合格から獲っていき、
受験科目を減らしたうえで、実技試験に挑戦するという流れになります。
具体的には、「1回目:学科2科合格 2回目:実技合格」というのが、
常識的に考えたときの最短ルートです。
現実には、合格された方の大半はもっと受験回数が多いので、
受験生活は少なくとも1年以上に及ぶことになります。

これだけの期間において、勉強を積み重ねていくためには、
受験勉強を非日常のイベントとしてではなく、日常に組み入れる必要があります。
気象予報士試験を合格で終えられるかどうかは、
この点を意識したうえで、受験勉強を習慣化できるかどうかが大きいのです。

冒頭でJさんの合格体験記を一部引用しましたが、
一日の中に勉強を上手く組み込むことを重視されていたことが分かります。
就業の前後に、受験勉強を紐付けすることにより、
出勤のたびに2時間の勉強を確保することに成功されています。

Jさんが勉強の習慣化を図っておられたことは、
ご家族との時間を大切にされていた点からも読み取れます。
長期戦においては、勉強から離れて息抜きをすることも大切だからです。

もし、受験勉強が2週間の短期勝負であれば、
必要最低限の要件以外は後回しにしたうえで、
残った時間と労力を全て受験勉強に投入することになるでしょう。
しかし、そんな生活が長続きするはずもないのであり、
我慢の限界がやって来た時点で、勉強は破綻します。

前述のとおり、気象予報士試験は継続がものをいいますので、
「どうやったら長続きするか」という視点で、戦略を立てることが大切です。
続けられるのであれば、その方法は正しく、
続けられないのであれば、その方法は正しくないのです。
勉強の方法が適切であれば、それを続けることで実力は高まっていきます。
つまり、合格までの距離が縮まっていくということです。




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第403話 学習スタイルを進化させ続ける。
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> 何度も落ち続けていると、「もういいか」という気持ちになる時があります。
> でも私は諦めませんでした。
> これだけ時間とお金を投資したのだから、意地でも合格するまで諦めない。
> そう思って続けました。
■Zさん(男性・60代・中学校非常勤講師・新潟県)


もちろん、気象予報士になることへの気持ちが無くなってしまえば、
無理に受験生活を続ける必要は無いと思います。
でも、資格を取得することや、それによって実現したいことがあるのなら、
途中で諦めることは勿体ないことだと思います。

Zさんは、12回目の挑戦で合格を勝ち獲られました。
つまり、当たり前のことですが、その前には11回連続の不合格があったわけで、
これを「1勝11敗」と表現することもできます。
でも、最後に合格できれば、11敗も良い思い出になるのだと思うのです。

気象予報士試験の良いところは、毎年2回の試験が行われることです。
年に1回の試験では、次の試験まで時間が空きすぎてしまいます。
「ちょっとくらい休んでもいいか」と気を抜くと、勉強勘が鈍ってくるものです。
先日の合格発表が行われて、まだ10日ですが、
早くも3か月半後には、次の試験が控えています。

言われてみれば、当たり前のことですが、
次の試験の合格者のほとんどは、前回試験での不合格者の中から生まれます。
秋から冬にかけて、実力を大きく伸ばした受験生が、結果を掴み取るのです。

もちろん、「合格を諦めない」というのは、
「学習スタイルを変えない」ことと必ずしも同義ではありません。
より効率の良い学習に進化させることで、伸び幅もより大きくなるでしょう。

合格発表から間もないですが、早くも多くの合格者の皆様が、
自らの受験勉強を振り返り、その過程を綴って下さいました。
参考になる部分は上手く取り入れ、学習スタイルをバージョンアップさせることで、
受験勉強にさらなる磨きをかけていただければと思います。




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第404話 過去問題を解いた後に、必ず行うべきこととは?
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> オーソドックスですが、過去問を完全に理解することに努める。
> これに尽きると思います。
> 中には、奇抜そうなものや難解なものもありますが、
> 全て時間をかけて理解するように努めました。
> そうすることで、全ての問題は必ず基本を理解していれば
> 解くことができるのだと自信がつきました。
■小倉トーストさん(男性・30歳・公務員(行政職)・東京都)


「過去問題演習が大切」だということは、
おそらく受験生であれば、どなたでもご存知のことと思います。
ただ、「過去問題演習」のメインは、問題を解くことではありません。
主となるのは、解法を理解することです。

例えば、紙飛行機を飛ばすことを考えてみましょう。
紙を折って、紙飛行機を組み立てて、それを飛ばしてみる。
実際に飛ばすことによって、上手く飛ぶか飛ばないかが分かります。
もし、上手く飛ばなければ、何が原因であるのかを考えます。
そして、折り方を変えたり、使う紙の種類を変えたりして、
トライアンドエラーを繰り返していけば、
やがて遠くまで飛ぶ紙飛行機を作ることができるでしょう。

これを過去問題演習に置き換えてみますと、
問題を解くこと自体は、紙飛行機を飛ばすことだけを指しており、
解けるかどうかを試しているに過ぎないことが分かります。

何度飛ばしたところで、折り方や材質に問題があるとすれば、
それを改善・解決しない限り、上手く飛ぶようにはなりません。
過去問題演習も同じで、問題に何度チャレンジしたところで、
解法を理解する過程を怠れば、同じ箇所で間違えることになります。
もちろん、覚え込んでしまうまで演習を繰り返せば、表面上は正答できますが、
完全に同じ問題が出る可能性は極めて低いので、
類題で正答を得るには、思考過程を熟知している必要があるのです。

つまり、過去問題演習の肝となるのは、問題を解くことではなく、
解くことで見つかった課題を解決することにあります。
試験勉強での「実力が高まる」というのは、「解ける問題が増える」と同義であり、
そのためには、「解けなかった問題」を「解ける問題」に変えるしかありません。
この過程のみが、レベルアップにつながる唯一の道であり、
問題を解くこと自体は、この下準備に過ぎないとも言えます。

次々に問題を解いていると、勉強が進んでいるように感じるかも知れないですが、
紙飛行機を飛ばしまくるだけでは、性能を高めていくことができないのと同じで、
1つの問題を解いた後には、浮かび上がってきた課題を解決し、
キチンと理解できたうえで、次に進むことが大切です。

学科であれ、実技であれ、短期間で実力を上げていく受験生の多くは、
「問題を解くことによる課題発見」と「見つかった課題の解決」という、
サイクルをどんどん回していかれるのが特徴です。
こうした学習の延長線上に、合格があるのだと確信しています。




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第405話 実力が高まった結果として、速く解けるのだ。
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> 時間を計る必要はほぼありません。
> だんだん解くスピードが勝手に速くなりますし、
> 実力が伴うと、一気に問題が解けるようになります。
■Vさん(男性・40代・国家公務員(研究職)・和歌山県)


気象予報士試験は、時間との闘いです。
学科試験であれば60分で15問ですから、1問に費やせる時間は平均4分です。
まだ学科試験であれば、マークシートを塗りつぶすだけで解答できますが、
実技試験では、作文や作図での解答が求められます。
にもかかわらず、与えられた時間は75分しかありません。

実技試験の分量が膨大であることは、理にかなっています。
実際の予報業務においても、時間との闘いだからです。
当然ながら、明日の天気予報は、明日が来るまでに発表しなければなりません。
また、これは法的な意味での「現象の予想」とは異なりますが、
マスメディアにおいて、気象解説の仕事を行う場合であっても、
限られた時間で、解説の流れを組み立てる必要があります。

数多くの資料に目を通し、そこから有益な情報を短時間で抽出したうえで、
文章や図という形で、的確にアウトプットするという技能が、
実技試験で要求されているわけです。

このような試験ですので、初めて実技試験に挑戦された受験生は、
口を揃えて「時間が足りなかった」と仰います。
合格のためには、7割程度の正答率が要求されるのですから、
スピードアップが求められることになります。

ただ、注意していただきたいことがあり、
問題を解くスピードは、受験生の実力に連動するものだということです。
言い方を変えれば、「速く解こう」と強く望んだからといって、
速く解けるものではないということです。

これは、「フルマラソンで2時間を切りたい」と望んだだけで、
それが実現するものではないのと似ています。
いくら願っても、その人の脚力や心肺機能を上回る形でのタイムは出せません。
問題を解くスピードも同じで、その人の実力以上には速く解けないのです。

確かに、鉛筆を速く動かすトレーニングをすれば、
多少の時間短縮にはなると思いますが、大きな効果はありません。
試しに、実技試験の解答例を答案用紙に丸写しする時間を計ってみますと、
絶対に10分もかからないことに気付きます。
つまり、75分における実技試験の大半は「考える時間」です。

コンピュータの性能によって、1秒間での演算能力に上限があるのと同じで、
受験生が持つ知識・資料解釈能力・語彙の幅の広さなどによって、
実技試験を解き終えるまでの時間は概ね決まります。

「ガムシャラに取り組めば、速く解けるのでは?」と思われるかも知れませんが、
1つ1つの過程が雑になるだけで、結果として精度は下がります。
最後まで辿り着いても、正答率が低ければ無意味です。

私自身は、「時間を計って取り組む」ということにも消極的です。
ペース配分を考えることや、緊張感の維持といった効用までは否定しませんが、
第54回試験で合格を勝ち獲られたVさんが合格体験記で綴っておられるように、
実力が高まれば、解答に要する時間は自然に短縮されるものだからです。
つまり、力点を置かねばならないことは、急いで解くことではなく、
課題を洗い出すことと、見つかった課題を解決することです。

人間は熟知していることや得意なことについては、
速くかつ正確に行えるようになります。
日常的に料理をする人であれば、1時間で3品を用意することも可能でしょう。
気象予報士試験も同じで、知識を増やし、資料読解に精通し、
答案作成における留意点を十分に踏まえることができれば、
結果として、短時間で的を射た答案を作れるようになります。
繰り返しますが、それは「結果」として速くなるのであり、
脚力を鍛えたから、タイムが縮まったのと同じ理屈です。

受験勉強の過程において生じた疑問を、1つ1つ解決するという、
この過程を着実に積み重ねることができれば、
当日に初めて目にする試験問題もスピーディーに解けるようになると、
私は確信しています。




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第406話 できない理由を探さない。
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> 学習を始めようと考えたのが48歳。
> 物理系の国家資格とは縁遠い私立大学文系出身で、
> 勤務時間、休日が不規則な百貨店で管理職を担いながらの学習で、
> なんとか6回目の受験で合格できました。
■Qさん(男性・52歳・百貨店勤務・愛知県)


Qさんは第54回試験で合格を勝ち獲られましたが、
「20代や30代の合格者が多いから」「大学は文系だったから」
「決まった休日が取れる仕事じゃないから」「マネジメント業務で忙しいから」
といったことを言い訳にされていれば、
合格どころか、気象予報士試験そのものにも挑戦されていなかったと思います。

気象業務支援センターが発表した情報に基づきますと、
第54回試験での合格者の平均年齢は32.7歳だそうです。
一方で、最年長で合格された方は69歳、最年少で合格された方は14歳です。
(実はいずれの方も、当塾の元受講生です。)
少なくとも、14歳~69歳の年齢層に属する方々であれば、
「もう歳だから」や「まだ若すぎる」と軽々には言えないですよね。

理数系の勉強を頑張っていれば、気象予報士試験に多少有利なのは確かです。
ただ、これは実際の試験問題をご覧になれば、すぐに分かることですが、
微分方程式を解かせるような問題は出ていません。
実際のところ、大半の計算問題は四則演算の範囲内です。
つまり、試験で試したいのは高度な計算技術ではなく、
気象学の基礎事項が備わっているかという点にあります。

仕事が忙しいことや、休日を順当に取れないことについては、
多くの社会人の方々が経験されることだと思います。
もちろん、寝る間もないほどの激務であれば、受験勉強どころではないですが、
どこからか時間を捻出できる余地のある方も多いと思います。
「通勤時間なら使える」とか「細切れ時間なら使える」という方もおられるでしょう。
1日30分でも絞り出すことができれば、そこから受験生活はスタートできるのです。

そもそも、若さでエネルギーに溢れていて、学生時代の勉強の蓄積も豊富で、
休日を思う存分に取得でき、職場で部下や上司に気を遣う必要なく、
友人から遊びに誘われることも皆無で、家族の世話も一切しなくて良い、
などという条件の揃った人がどれだけいるでしょうか。

誰であっても、受験勉強を阻む存在は多少なりとも存在していて、
全ての壁が取り除かれることは、永遠に訪れないように思います。

一番大切なことは、「気象予報士資格を取りたいかどうか」だけです。
これを満たしていれば、受験勉強に取り組む意味があると言えます。
まずは、心の声を聞いてみると良いと思います。




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第407話 知識の増強で実技試験を征する。
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> 「いやいや、学科は受かるのに、実技に結びつかないんですけど、、、」
> と思いながら学科の過去問を解いているうちに、あることに気づきました。
> それは、「実技試験と結びつく単元の学科知識の不足」でした。
■P2さん(女性・30代・パート主婦)


気象予報士試験には「学科試験」と「実技試験」があり、
学科試験に合格すると、申請により1年間は受験が免除されます。
このため、多くの受験生はまず学科試験の合格に向けて勉強を進めます。
2科の学科試験に合格した後に、実技試験の勉強に集中することが理想的です。

ただ、ここで注意したいのは、実技試験は学科試験と別物ではないということです。
実技試験を解き進めるためには、学科試験の知識が必須であり、
言わば気象予報士になるための「総合格闘技」が、実技試験なのです。

例えば、大気の鉛直安定度や状態曲線に関する問題は、
「大気の熱力学」に関する知識が必要です。
最近は、温度風に関する問題が目立ちますが、これは「大気の力学」ですね。
また、2つの数値予報モデルの予測結果を比較する問題では、
「数値予報」の概要について理解していないと、答案が書けません。
さらに、以前から頻出事項である警報や注意報の知識については、
「防災気象情報」の単元を押さえていることが必須です。

ご承知のとおり、実技試験は記述式の問題がほとんどですから、
土台となる知識が不足していたり、誤解して捉えておられたりすると、
それが答案の内容にそのまま反映されることになります。
出題者が意図するような答案がなかなか書けないな、とお感じの場合、
それは知識不足に起因することがあります。

よく知られていますように、気象予報士試験の合格率は極めて低く、
「豊富な知識」「正確な問題・資料の読解」「適切な答案作成」の3つが、
きちんと揃った受験生だけが合格できる、ハイレベルな試験です。
上記のうち、1つでも弱点を抱えていれば、
短い制限時間で、合格点を超えることは不可能だと言って良いでしょう。

上記の合格体験記をお寄せ下さったP2さんは、
学科試験の範囲における知識不足を認識された後に、
該当分野の徹底復習を行われたのことです。
これは、第54回試験で合格を勝ち獲られた理由の1つだと断言できます。

第55回試験まで残り2か月を切りましたが、
もし必要であれば、学科試験の合否に関係なく、
実技試験と密接に関わる部分の復習をされることをお勧めします。




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第408話 限られた時間で、成果につなげるためには
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2021年1月に予定される第55回試験まで、残り1か月あまりとなりました。
これまで着実に受験勉強を積み重ねてこられた受験生にとっては、
そのまま試験日に向けて走り続けるのみですね。

一方で、いろいろな理由があって、
十分に勉強に取り組めなかった受験生もおられることでしょう。
そういった方々にとって、少しでも受験勉強を有利に進めるために、
私は次のような提案をしたいと思います。

まず、複数の受験科目をお持ちの場合は、科目を絞ることをお勧めします。
例えば、「全科目」であれば、「学科のみ」に、
「一般と専門」であれば、「一般のみ」といった具合です。
もちろん、受験すべき科目全てに合格されることが最も望ましいですが、
ご自身で進捗を把握されたうえで、「このままでは厳しそうだ」とお感じになれば、
思い切って目標を下方修正されたほうが良いです。

最も心配なことは、高い目標を掲げ続けた結果として、
投入するエネルギーが各科目に分散されてしまい、
目に見える結果を何も残せないことです。
これは受験へのモチベーションを著しく低下させる恐れがあります。
1科目でも前に進めれば、それが次の試験に対する原動力になります。

限られた時間を有効活用するためには、
できるだけ目標を絞って、集中的にエネルギーを投入したほうが、
その科目に対する合格の可能性を高めることができます。

このようにして、目標を絞り込んだ場合、
必然的に、ターゲットは学科試験だけになることを意味しますが、
限られた時間で最大限の効率性を求めるためには、
学習範囲を絞り込むことをお勧めします。
具体的には、過去の出題が極めて少ない部分についての学習を保留することです。

例えば、過去に10回出題されている内容と、
過去に1回しか出題されていない内容であれば、
次の試験で出される可能性が相対的に高いと言えるのは、前者です。

もちろん、50回以上行われている気象予報士試験の中で、
たった1回しか出題されていない内容も含めて、
丁寧に理解することが望ましいのは、間違いなく言えることです。
そういったマイナーな箇所が問題として出てくることも、あり得る話です。

ただ、現実問題として、試験までの日数は限られているのであり、
受験勉強に投入できる時間にも上限があります。
その中で、成果を出すために、ベストを尽くすのであれば、
極めて出題実績が少ないものについては後回しにしたうえで、
一定以上の出題があった箇所に対して全力投球することが望ましいです。
雑踏の中で、小銭入れをぶちまけてしまったときに、
まず拾うべきは500円玉であって、1円玉ではないです。

年末年始の期間において、受験勉強に手応えを感じられることを願っています。




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第409話 今年こそ気象予報士試験に挑戦される方へ
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このメルマガをご購読の皆様は、受験経験をお持ちの方が多いと思いますが、
中には、まだ受験されたことのない方や、
しばらく受験から遠ざかっている方もおられると思います。
新たな年を迎え、これからの目標を掲げるにあたって、
気象予報士試験への挑戦や再挑戦をされるのは、いかがでしょうか。

今月に予定されている第55回試験は、すでに受験手続きの期間も終わっていますので、
最初の目標となるのは、8月に行われるであろう第56回試験となります。
今からお始めになれば、ある程度の受験勉強の期間も確保できますので、
学習のスタートとしては、ちょうど良いと言えます。

まずは一般知識試験の合格を目指すのが、標準的な目標となります。
もし、時間的・労力的に余裕があるならば、
学科2科(一般・専門)の合格をターゲットにされても良いですが、
単純に言って、「一般のみ」の目標の2倍の勉強量が必要となります。
今から約8か月で2科に合格されるのは、相当に集中して勉強されることが必須です。

いずれを目標にされるにせよ、学習の流れは2段階です。
まず、基礎事項の学習を行い、それが固まった時点で過去問題演習です。

最初から過去問題演習に着手できれば、その分だけ時間を節約できそうですが、
そう思われる方は、気象業務支援センターのホームページで公開されている、
過去に出題された問題に挑戦してみて下さい。
おそらく、大半の方にとっては、問題文の意味を掴むことすら困難だと思います。
大学入試センター試験で、地学を選択された方であれば、
部分的に分かる問題が含まれる、といった程度でしょうか。
ほとんどの受験生にとっては、過去問題演習から始めることは困難であり、
まずは基礎事項の学習を着実に固めることが大切です。

基礎事項の学習が一通り終えた時点で、過去問題演習に着手されると良いです。
学科試験の場合、私は最低でも過去10年分の演習をお勧めしています。
できるだけ多くの問題に対して、丁寧に演習されることが、
合格の可能性を高めるためには、大切だと考えるからです。
ただ、専門知識試験の過去問題を中心に、制度変更や技術革新により、
現在では古くなってしまった問題もありますので、注意が必要です。

当然のことですが、資格を得るためには、
受験勉強という道のりを、一歩踏み出すことが必要です。
歩みをスタートさせることで、合格までの距離が縮まることになります。
今月末の試験に向けて、奮闘されている受験生の皆様も、
かつては、新米受験生として、第一歩を踏み出された瞬間をお持ちです。
今年こそ、気象予報士の勉強を始めてみませんか。




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第410話 前回の試験で合格された方々からのメッセージ
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コロナ感染予防対策のため、試験会場の換気が盛んに行われると推定されます。
普段よりも、冷たい外気が入りやすいと考えられますので、
寒暖を調節しやすい服装で臨まれることをお勧めします。

試験当日までの時間が残り僅かになった今、
強い不安と緊張感に襲われている方もおられるでしょう。
それは決して、あなただけではありません。
前回の試験で合格を勝ち獲られた方々も、不安だらけだったことが分かります。

> 54回試験で落ちたらもう勉強は続けられないだろうな…
> と弱気になりながら会場に向かいました。
> 試験直前には「受かるしかない」という決意になりましたが、気持ちが強すぎたのか、
> 手が震えて答案用紙に書いた名前の文字がガタガタになるほどでした。
■Cさん(男性・30代・IT企業のニュース編集・福岡県)


> いざ実技1にとりかかると、あまりの緊張に、
> 文字を書く手の震えが止まりませんでした。
■P2さん(女性・30代・パート主婦)


緊張するのは、本気で合格を目指している証拠です。
自分の周囲にいる受験生も、同じように緊張しているに違いない、
緊張しているのは決して自分だけではない、とお考えになれば、
緊張している自分のことさえも、客観的に見ることができると思います。

そして、第54回試験で合格された先輩受験生からの、
試験当日におけるアドバイスも大いに参考になります。
多くのメッセージを体験記から読み取ることができますので、
ぜひ当塾ホームページでお読みいただきたいのですが、
ここでは1つだけご紹介します。

> ・問題文をしっかり読むこと。大事なキーワードは必ず赤ボールペンで○をつける。
> また文章を書いた後できちっと○をつけた内容を記述したかどうか確認する。
■Vさん(男性・40代・国家公務員(研究職)・和歌山県)


実技試験であれ、学科試験であれ、共通しているのは、
出題者の意図を正確に把握することにあります。
試験とは「出題者と受験生のキャッチボール」だとお考えになると良いでしょう。
出題者はどこへボールを投げて欲しいと考えているのか、
それを知るための手がかりは、問題文の中に埋め込まれています。

問題文を熟読することは、どんな試験でも当たり前のように言われることであり、
秘術を期待されていた方は、がっかりされるかも知れません。
でも、この当たり前のことを着実に進めることが大切なのですね。
受講生の皆様から多くのご質問が連日寄せられていますが、
題意の正確な把握ができなかったことによるお間違いは意外に多いのです。

本試験では、時間制限の中で初見の問題を解くことになるため、
早押しクイズのごとく、急いで解答用紙を埋めたくなる気持ちに駆られます。
しかし、間違った解答を入れても1点にもならないのですから、
問題文の丁寧な読み込みや、解答された内容の確認は大切ですね。

今冬は寒い日が多くなっていますが、最高のパフォーマンスを発揮できるよう、
体調をしっかりと整えて、試験日に臨みたいですね。
これまで頑張ってきた自分自身を信じるのみです。




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第411話 次の試験日まで最も長いのが今日
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受験後の手応えはいかがでしたか?
まずは、正式な解答例の発表を待ちたいですね。

8月の試験に比べますと、1月の試験では、
準備不足をお感じになる方が多い印象を受けます。
「8月→1月」の期間は、「1月→8月」の期間よりも、2か月ほど短いのです。
ところが、前年から見れば、「試験は翌年」ということになりますので、
心理的には、試験日が少し先のようにも感じられてしまいます。
さらに、年末年始という忙しくかつ非日常的な時期が直前にあるため、
受験勉強のリズムが崩れがちです。
これらの要因が重なってしまったことで、受験勉強を十分に進められないうちに、
試験当日を迎えてしまった方もおられるでしょう。

実技試験については、自己採点にも限界がありますので、
合否に関しては、3月を待つのみですが、
学科試験については、おおよその結果は事前に掴めるものです。
もし、受験勉強の必要があると判断された場合は、
できるだけ早い段階で再スタートされることをお勧めします。

学科であれ、実技であれ、この試験の攻略にはある程度の時間が必要です。
実戦力を付けるためには、過去問題演習が欠かせませんが、
実技試験の場合、過去7~8年分の問題について、
ほぼ全ての問題で適切な答案を書けるほどのレベルに達していなければ、
合格は難しい、というのが率直な感覚です。

「合格ラインは70点くらいだから、7割程度の出来を目標にすれば良いのでは?」
と思われるかも知れませんが、過去問題と類似しない問題も必ず出ますし、
75分という厳しい時間制限もあります。
前に見たことのある過去問題で、70点しか取れないのであれば、
初見の本試験の問題では、50点程度というのが関の山です。
練習以上の成果が本番で出ることはないので、
過去問題演習の充実度を限りなく高めることが大切なのですね。
これは、学科試験においても同じように言えることです。

当然ながら、この水準の受験勉強を貫徹するためには、
ある程度の時間を必要とするのであり、
8月に予定される試験を念頭に置くのであれば、
今からお始めになるというのが、ベストの選択ということになります。
実際に、すでにお始めになっている受験生もおられると思います。

もちろん、勉強には息抜きも必要ですが、
休憩のし過ぎで汗が冷えてしまうと、再スタートが億劫になるので、
少しずつでも良いですから、走り出していかれると良いですね。




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第412話 勉強のための時間管理術
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受験生にとって、勉強時間をどのように確保するかは、大きな課題です。
第54回試験で合格された元受験生の皆様が活用された、
時間管理術の一部をご紹介します。


> 私は朝型です。「夜のはじめ頃」には眠り、「明け方」には目覚める。
> そして、朝食までの数時間を学習時間に当てる。
> このような生活のリズムがいつしか定着しました。学習の習慣化は大きな力となりますね。
■Zさん(男性・60代・中学校非常勤講師・新潟県)


私の生活スタイルも、Zさんと似ています。
21時には布団に入り、5時に目覚めるという生活が基本です。
お客様からのご質問や答案添削を、朝食まで集中的に取り組み、
教材の執筆や収録といった、特に頭を使う作業も午前中に行うことが多いです。

朝に集中できる人もいれば、夜に集中できる人もいると思いますので、
早朝学習は全ての受験生に適用できる最適解ではないですが、
これからの時期、夜明けの時刻がどんどん早くなってきますので、
一度、試してみる価値は大きいです。


> 自分の生活の中に気象予報士の勉強をルーチンとして取り入れること。
> 土日に気合いを入れて勉強をする人もいるかと思いますが、
> 平日も土日も全く同じ勉強時間・勉強スタイルの方がうまく勉強ができます。
■Vさん(男性・40代・国家公務員(研究職)・和歌山県)


週末はまとまった受験勉強の良い機会ですが、
週末に偏りすぎると、勉強のブランクが大きくなってしまいがちです。
「ええと、どういうことだったかな?」という振り返りの時間が長いと、
そのぶんだけ時間をロスしてしまうことになります。

平日に忙しい方も多いかと思いますが、
少しでも取り組む時間を確保できれば、理想的です。
そうすることにより、受験勉強は「非日常の行為」から「日常の行為」に、
つまり、風呂に入ったり、歯を磨いたりするのに似たものになります。
「今日は勉強してなかったから、なんか気持ち悪いな」と思えるようになれば、
日々の生活に、しっかり定着したと言えますね。


> どうしても気象予報士になりたい!という思いがあったので、
> 仕事時間を減らし、勉強に集中する環境を作りました。
■P2さん(女性・30代・パート主婦)


1日は24時間であり、これは誰しも同じ条件です。
食事や休息に要するものを除いた残りの時間を、何に投入するかによって、
将来的に得られるものが違ってくることになります。
例えば、仕事に投入すればお金が得られ、
旅行に投入すれば思い出が得られるということですね。

意欲的な方ほど、「あれもやりたい、これもやりたい」となりがちですが、
受験勉強の成果は、「効率×時間」で決定します。
効率を無限に高めることはできないので、やはり時間は必要です。
布団圧縮袋を使えば、押し入れに収納できる布団の量は多くなりますが、
それでも、限度というものは存在します。
足し算だけでなく、引き算の発想も必要なのであり、
P2さんの「仕事を減らす勇気」が、合格につながったと言えるでしょう。


> 「勉強をしない日を作らない」ことを自分に課していました。
> 4~5時間以上連続で勉強できた日は一日もありませんが、
> たった10分でも1時間でも毎日続けました。
> 仕事の移動時間、子供が寝た後などに勉強時間を作り、
> 時には寝かしつけをしながらイヤホンで講義を聞きました。
■Cさん(男性・30代・IT企業のニュース編集・福岡県)


仕事・家事・育児に忙しい受験生にとって、
「勉強だけに専念できる黄金の時間」は、なかなか確保できないものです。
まとまった時間を取れる機会を待っていては、受験勉強は進まないのであり、
細切れ時間をかき集めて、勉強に注ぎ込むのが最善の策です。

良質な勉強時間の不足は、道具でカバーしたいところです。
「スマホ+イヤホン」で場所を選ばず勉強といったスタイルは、
何百万年という人類史の中でも、最近約10年で実現可能になった秘技です。




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第413話 合格は継続の先にある。
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> 「続けてればいつか絶対受かるから止めちゃダメ」。
> 53回試験で専門知識を1点差で不合格となり落ち込んだ私に妻がかけてくれた言葉です。
●Cさん(男性・30代・IT企業のニュース編集・福岡県)

Cさんの奥様のこの言葉が無ければ、第53回試験で不合格になった時点で、
受験勉強から撤退されていたかも知れません。
そうであれば、第54回試験で完全合格を勝ち獲られることもなかったでしょう。

もちろん、Cさんが合格体験記で書いておられるように、
ただ闇雲に突き進むだけで、合格という結果が自動的に得られるほど、
気象予報士試験は簡単な試験ではありません。

まず、合格に向けた目標設定です。
少しでも早く合格したいのは、誰もが願うことではありますが、
それゆえに、設定する目標が高すぎるケースがしばしば見られます。
合格を狙う試験科目が多すぎると、1科目に費やせる時間と労力が少なくなり、
結果として、合格圏に到達する可能性を低くしてしまうことにつながります。

「一般も専門も実技も」合格できることが一番ハッピーなのは当然ですが、
3科に時間と労力が分散されて、結果的に1科も獲れないのが、一番怖いのです。
「こうありたい」という理想ではなく、「これならできる」という現実を踏まえること、
つまり、目標設定は冷静に、その達成のためには熱血で、というのが大切ですね。

目標達成のための受験勉強ですが、やはり一定以上の時間確保は必須です。
もちろん、これまでの学習歴・集中度・意欲などに起因する、
学習効率性には個人差が大きいので、
一概に「○○時間やれば合格圏」などとは言えないですが、
トータルとしての勉強時間が少なければ、実力を大きく伸ばすことはできないです。

前回のメルマガでは、「仕事を減らす勇気」という表現を用いましたが、
勉強時間を確保するために行う「○○を減らす勇気」は、人それぞれだと思います。
「ゲーム」の人もいれば、「晩酌」の人もいるでしょうし、
「他の勉強」という人もいるかも知れないですね。
なお、睡眠を減らしてはいけないのは、これまでのメルマガで何度も書いてきたとおりです。

こうした点を踏まえて、着実に勉強を積み重ねていかれれば、
少しずつ合格に近づいていくと確信しています。
この試験では、学科試験の合格水準が高い(15問中11問正解が標準)ため、
場合によっては、運不運が合否を分けてしまうこともあるように感じます。
それを乗り越えるのが継続の力だと思います。




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第414話 あと一歩だった受験生の皆さんへ
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今回(第55回試験)の合格率は、前回や前々回よりも低く、5.6%の狭き門でした。
試験というのは、その性質上、どこかで合否ラインを決めなければならないわけで、
実技試験においても、「あと1点」「あと2点」が足りなかったゆえに、
合格を逃された方々もおられることでしょう。

明らかな勉強不足だったり、そもそも気象予報士試験をナメてかかっていたのであれば、
不合格という結果にも、ある程度は納得せねばならないというものですが、
頑張って受験生活を送ってこられた方にとっては、本当に悔しいことだと思います。

「(合格点/自分の得点)×100」という形で、惜敗率を表現した場合、
仮に99%や98%であったとしても、0%と同じ扱いを受けます。
試験には、こうした非情な一面があります。

だからこそ、次の試験で、ぜひ合格を勝ち獲ってほしいと思います。
結局のところ、不合格の悔し涙は、合格の嬉し涙でしか、拭えないと思うからです。

多少の変動はありますが、最近の試験での合格者数は150名前後です。
言い方を変えれば、上位150位くらいに入れば合格圏ということになります。
今回の試験で合格された方が、再度受験されることは原則として無いので、
次の試験で合格を勝ち獲られる方は、
今回に合格を掴めなかった受験生から生まれます。
約150人という枠に入れるかどうかという勝負は、すでに始まっています。

「また学科からやり直しだ」という方もおられることでしょう。
積み上げてきた受験免除が崩れることは、本当に辛いことです。
でも、資格取得によって実現したい目標をお持ちであれば、諦めるべきではないです。

知識や技能というのは、使っていなければ、少しずつ薄れていきます。
勉強から離れている時期が長いほど、勘が鈍ってくるものです。
勉強を続けることで、維持され、そして向上していきます。
8月試験までの残り約5か月間を、最大限に活用していきましょう。




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第415話 理解度をチェックする方法
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> 問題がどうやったら答えにたどり着くのかを自分の口で一人で説明します。
> こうすることで、説明できなかったらちゃんと理解できていないということで、
> 説明できていたらその問題はバッチリということになります。

■島田有吾さん(男性・12歳・福岡市公立小学校・福岡県)の合格体験記より

気象予報士試験の受験生であれば、必ず過去問題を演習されていると思いますが、
何のために過去問題を勉強するのか、という点を確認しておきます。

今後の本試験で出題される多くの問題は、
過去問題の内容と共通する部分を伴う形で出題されるだろうと推定されます。
実際に出題された試験問題を分析してみますと、
このようになっていることが、お分かりいただけるはずです。

気象予報士試験は、資格試験の一種ですから、
独創的な発想力が問われる試験ではありません。
過去問題を見れば、おおよその出題範囲が分かるようになっていますので、
その範囲について、集中的に学習を深めれば良いのです。

ただし、運転免許試験のように、まるまる同じ問題が出てくることは、
学科試験でも稀ですし、実技試験では皆無です。
つまり、問題文と解答例の組み合わせを機械的に丸暗記する方法では、
太刀打ちできないことを意味しています。

内容や思考パターンが似ているのですが、少しひねってあるのです。
こうした過去問題と本試験の問題との差を埋めることを、
「応用を利かせる」とも表現することができるでしょう。
そのためには、表面上の暗記ではなく、理解(納得)が求められるということです。

このように考えますと、過去問題演習の肝は回数ではないことが分かります。
極端な話、1回の演習で完全完璧に理解し、頭に収納できれば、それで完成です。
もちろん、大半の受験生にとって、たった1回で仕上げることは困難であり、
何度かくり返しながら、理解と納得を重ねていくことになるわけですが、
「○回演習する」というふうに、回数が目的化するのは本末転倒です。

また、記憶力が良いことは、一般的にペーパーテストでは有利だとされますが、
この試験においては、必ずしもそうとは言えないです。
理解や納得に至る前に、解答例が再現できてしまうと、
表面上の正答率は高くなるので、勉強が進んだように感じてしまいます。
しかし、前述のとおり、本試験では過去問題が出てくるわけではないので、
応用力を効かせられないと、適切な解答ができないのです。
「過去問題はできるのに、本試験が解けない」の原因は、ここにあります。

むしろ、「納得できないと頭に入らない」という程度の記憶力のほうが、
自分自身で学習進捗を把握しやすいという点で好都合です。
演習の目的は、解答を頭に入れることではなく、
思考過程を習得して、本試験への対応力を付けることにあるからです。

そのときに、「理解できているかを判定するための指標」となるのが、
島田有吾さんが合格体験記でお書きになったように、
自分自身で説明できるか、という点にあります。
言い換えれば、インプットしてきた内容を、
適切にアウトプットできるかを試せば良いわけですね。

インプット学習だけでは、理解度がどの程度なのかを把握することが難しいですし、
問題演習というのは、短期間のうちに無闇にくり返すと、
理解度とは関係なく、なんとなく正答が焼き付いてしまうものです。

もちろん、受験勉強の目的は、解答を覚えることではなく、
問題から解答に至るまでに必要な知識と思考過程を理解することにあります。
基礎学習においても、過去問題演習においても、
この点に力を入れて勉強を進めていかれることが、
着実に実力を高めるためには大切なことですね。




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第416話 キャリア拡張のための気象予報士試験
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> 気象と航空機の運航は密接に関連しており、
> 仕事をするうちに気象について深く学んでみたいと思うようになりました。
> また、運航管理にも関心があり、
> 仕事の幅を広げられるように準備をしておきたいという考えから、
> 2020年5月に入塾し、本格的に学習を始めました。

■Vさん(女性・20代・航空会社勤務・東京都)の合格体験記より

気象予報士試験に挑戦する方々の動機は、大きく3つに分類できます。
 1.就職・転職のため
 2.現在の仕事の幅を広げるため
 3.自己研鑽・趣味のため

一般的に、資格試験の勉強と言えば、
「1.就職・転職のため」を思い浮かべる方が多いと思います。
実際、就職を控えた学生さんで、気象業界やマスコミ業界を目指す場合、
履歴書に気象予報士資格について書けると、良いですよね。
また、すでに社会人として仕事をしながら、気象予報士資格を取得することで、
前述の業界に転身することを目指して頑張っている方もおられます。

ただ、私の感覚としては、就職や転職を目的とされる方よりも、
「2.現在の仕事の幅を広げるため」という動機で、
実際には、1回の試験での受験生が3000人程度に過ぎません。
これは、英語や簿記などの試験に比べると、桁違いに少ない人数です。
「有名だが、実際に持っている人は少ない資格」の1つと言って良いでしょう。

しかし、天気はあらゆる産業と密接に関係しています。
食品や衣服のように、気温の変動によって売れ行きが変わる商品が数多くあります。
2021年の初頭には、天然ガス(LNG)のスポット価格が高騰しましたが、
その一因として、年末年始の寒波が挙げられていますね。

また、Vさんのように航空会社を始めとする運輸業界や、
防災行政を担う国や地方自治体の機関においても、
よく知られているとおり、気象に関するデータや知見は必須です。

このため、気象と関係のある仕事に就いておられる方が、
その仕事の幅を広げたり、仕事内容を深めることを目的として、
気象予報士試験の勉強をされるというケースは多いです。

おそらく、こうした方が気象予報士資格を取得されても、
気象業務法で定められた「現象の予想」に携わる機会はまず無いでしょう。
その意味では、資格の本来の目的と異なるのですが、
気象や天気予報についてのベーシックな知見を学ぶために、
気象予報士試験の勉強というのは、最適なパッケージだと言えるのです。

基礎的な気象学に始まり、気象庁の観測や予報の業務について学び、
さらには、実際の資料を読み解くところまでを習得することにより、
現代の天気予報に関する基本を、一通り学べるようになっているからです。
多品種の商品がギッシリ詰まった「コンビニ」のようなイメージですね。
(だからこそ、受験勉強が大変だとも言えるのですが・・・。)
試験合格証を得ることは、学位を取得することに例えても良いでしょう。

気象予報士と言えば、「キャスター」「気象会社」というイメージが強く、
もちろん実際に、気象そのもののプロフェッショナルを志す方が印象深いですが、
むしろ、Vさんのように、今の仕事に役立てるために気象を学ぶ方も多いです。
気象会社に気象予報士がいるのは、「当たり前」のこととされますが、
気象会社以外での気象予報士は、希少価値も高いように思います。




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第417話 文字・映像・音声を使い分ける。
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> これは人によって違うと思いますが、文字情報で勉強するのと、
> 映像・音声で勉強するのでは理解度がまったくといっていいほど変わります。
> 私は映像・音声での勉強によって、一気に理解が進みました。

■Tさん(男性・40代・公務員(行政職)・群馬県)の合格体験記より

学校で授業を受けることと違って、1人で勉強する場合、
従来であれば、「書物を読み解く」というのが、最も基本的なスタイルでした。
蛍の光や窓の雪で照らしているのは、本ですね。
王侯貴族でもない限り、自分専用の家庭教師を随時呼び出すことは不可能であり、
昔の人は本に書かれたことを読み込んで習得していたわけです。

確かに、現代であれば、スマホ・タブレット・電子書籍などを活用することにより、
数多くの書籍を持ち歩くことも可能になりました。
ただ、「字面を目で追う」という点においては、紙媒体と変わりはなく、
能動的に「読む」という作業が必要になります。
言い換えれば、「読まない限り、勉強できない」という制約があるわけです。

こうした欠点を補ってくれるのが、音声や映像による学習です。
同じ内容であっても、文字に書かれたものを自分で読み解くより、
人が説明しているものを見聞きするほうが、内容を早く掴めることも多いのです。
ネット検索で調べ物をする際に、Youtubeなどの動画を検索する方も多いと思いますが、
これも、文字より映像のほうが優れていることがあるためですね。
例えば、「魚の捌き方」「バイクで上手く曲がるコツ」といったことは、
映像と説明音声を見たほうが、文字と写真よりも分かりやすそうです。

音声だけの場合、映像を伴わないことで情報量は少なくなりますが、
「見る」という行為が不要になるため、活用の機会が広がるという利点もあります。
例えば、庭の草むしりをしながら、ウォーキングをしながら、
ヘッドフォンを使って音声情報を得ることも可能です。
寝る前に、部屋を暗くして、音声だけを聞くといった活用もできます。

「文字を読む」「映像を見る」「音声を聞く」には、それぞれ長所があります。
また、人によって、どのスタイルを最も好むかについては個人差があり、
合格体験記を書かれたTさんの場合、映像や音声との相性が良かったようです。

従来であれば、耳を使った学習といえば、実際に教室に通って講義を受けるか、
テープレコーダーのようなものを持ち歩くといった方法しか無かったわけですが、
スマホの普及によって、ここ10年で環境はガラリと変わっています。
好みや環境に合わせた学びスタイルが活用できると、さらに効率的ですね。




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第418話 速く解けるには理由がある。
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> 完璧に解くと決めた28題は全て添削してもらい、
> 適切な解答であるのか、どの部分が間違っているのか、
> 明確に教えていただけて、たくさん気づくことがあり、理解が深まりました。
■Qさん(女性・34歳・主婦(司会業)・沖縄県)の合格体験記より


実技試験での実力を高める方法は実にシンプルであり、
一言で言えば、「過去7~8年分の問題を、自分のものにする」ということです。

合格する受験生は、なぜ初見の問題なのに合格点を取れるのでしょうか?
それは、過去問題演習を通して、多くのパターンを蓄積しているからです。

例えば、風が山岳を越えるという状況を資料から読み取れば、
 ・風上側では地形性の上昇流、風下側では地形性の下降流が生じやすい。
 ・それに伴って、風上側で降水が起こりやすく、風下側では降水が起こりにくい。
という鉛直流と降水量に関する分布傾向が導き出されます。
さらに、風下側でフェーン現象による昇温の可能性も考えられます。

最近の実技試験は分量が多く、75分間で解き終えるのは大変です。
それゆえに、多くの受験生が「速く解けるようになりたい」と願うのも無理は無いですが、
結局のところ、速く解ける人とそうでない人の違いは、
上記のような事柄がスッと頭に浮かぶかどうかの違いだということです。
問題文に目を通した段階で、すでに「臭い」のようなものを感じ、
実際に該当する資料に着目した段階で、その予感が確かなものであると確信します。
それを答案に落とし込むので、短時間で解答ができるのです。

以前から「意識的に速く解けるものではない」と言っているのは、このためです。
問題文や資料を見ても、地形性上昇流やフェーン現象が脳裏に浮かばなければ、
いくらバタバタしても、的確な答案は書けません。

問題を解くのに、長い時間がかかってしまう理由は、
気合いが入っていないとか、時間配分を意識していないといったことではなく、
根本的に知識と技能が不足しているからです。
よって、成すべきことは、横に時計を置くことよりも、知見を増やしていくことであり、
まさに、これこそが「実技試験の勉強」なのですね。

もちろん、習得すべき知識や技能の数は非常に多く、
短期間の学習では、目に見えるような実力の高まりを感じることは難しいです。
それでも、1つ1つの課題を炙り出し、その課題を潰していくことで、
着実にレベルアップしていくことになります。
その延長線上に合格があるのだと、私は確信しています。




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第419話 合格までの道のりは1つではない。
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> 当初は、「独学で合格!」ということが「カッコいい」と思っており、
> 塾や通信教育は受講しませんでした。
> しかし、合格した今は、単に時間を余計に過ごしていただけであり、
> もっと早く藤田塾に入塾して、整理された知識を習得すればよかったと思っています。
■Cさん(男性・40代・運輸関係・東京都)の合格体験記より


勉強において、書物だけで勉強することを「独学」といい、
「塾や通信教育を利用しなかった」と意味で用いることも多いです。
「他者のサポートやアドバイスを受けるかどうか」という違いのようにも思えます。

ただ、私に言わせれば、両者とも本質的な違いは無いと考えます。
どちらのタイプの受験生も、結局は独りで学んでいかねばならないからです。

登山に例えてみると、ガイドさんがいるかどうかの違いです。
ガイドさんは道案内をしてくれますし、疲れにくい歩き方を教えてくれます。
珍しい高山植物にも詳しく、足跡から野生動物の種類も見分けられることでしょう。
しかし、登山者の重い荷物を運んでくれるわけでは無いですし、
ましてや、登山者を背負って、頂上に連れて行ってくれるわけでも無いです。

受験勉強も同じで、講師は知識や技能を噛み砕いて説明しますし、
これまでの指導経験に基づいたアドバイスを行うこともできます。
しかし、知らないことを咀嚼して、自分の知識として蓄えるという作業自体は、
どんな手法であれ、自分で行うしかないのです。
受験勉強の際にいつも寄り添ってくれる家庭教師がいたところで、
頭に入れることができるのは、受験生本人だけです。
当然ながら、実際の試験を受けに行くことを、肩代わりすることはできません。

「独学で合格!」が「カッコいい」という感覚は否定しません。
自分の力だけで高い山に登ることができれば、誇らしいと感じますし、
金銭的な出費も抑えられることは事実です。
あくまでも「独学」で合格を目指したい、ということであれば、
その達成のために頑張っていかれるのが良いと思います。

ただ、道迷いのリスクが高まるという点は否めないのであり、
効率性という点を考えた場合、ガイド役がいるに越したことは無いです。

少しでも早く資格を取得して、その資格を役立てたい、
ということを最優先にされるのであれば、
手段の違いにこだわる必要性は無いようにも思います。
勉強スタイルに関係なく、合格を勝ち獲ることは「カッコいい!」のですから。




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第420話 自分の点数は詳しく知らなくても良い。
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> 入塾後は実技対策がいかに自分は間違っていたことが発覚しました。
> 「解答チェックの際は必須解答要素が含まれてるかどうかが重要で点数化は必要ない」
> 「単語帳等での答案の暗記はオススメしない」
> 「過去問は解けるようになるのではなく、その答案に至ったプロセスを理解する」etc
> 他にも先生から教わったことは沢山ありますが、
> 自分が行ってた実技対策がいかに悪い対策だった事に気づけた事が本当に大きかったです。
■Mさん(男性・20代・放送関連業務)の合格体験記より


世の中に、「正しい勉強法」は数多くありますし、
人によって、何が「正しい勉強法」であるのかにも、違いはあります。
それを踏まえたうえで、なお受験対策業を通しての私の経験から、
「こうすれば、より効率的になるのでは?」と感じたことについて、
教材やこのメルマガを通して、お伝えしています。

第55回試験で合格されたMさんが、合格体験記で挙げられた3つの要素のうち、
「解答チェックの際は必須解答要素が含まれてるかどうかが重要で点数化は必要ない」
について、私の考え方をご説明申し上げます。

過去問題演習において、現時点での得点が気になるのは当然です。
ただ、試験戦略上において、詳細な実力査定はあまり意味が無いと私は考えます。

確かに、高校入試や大学入試であれば、模擬試験などを通して、
現時点での自分の立ち位置を正確に把握することにより、
「偏差値がワンランク高い志望校に切り替えよう」といった判断がなされます。

ある程度の勝算が見込める学校を選び、無謀な賭けを避けるためにも、
現状の把握は大切だと言えるでしょう。
言い換えれば、数多くの目標点(この場合は学校)があるときにおいて、
その適切な着地点を絞り込むために、実力診断を行うわけです。

しかし、気象予報士試験には、目標点が1つしかありません。
「気象予報士試験合格すること」のみです。

もし、気象予報士試験において、
「一級気象予報士」「二級気象予報士」「三級気象予報士」のような階級があって、
それぞれの試験の難易度に応じた資格設定になっているのであれば、
「思ったより勉強が進んでいないから、今回は一級ではなく、二級を狙おう」
といった判断をするために、現状の実力を把握することに意味はあります。

しかし、実際の目標点は「気象予報士試験合格」しか無いのですから、
現時点での到達度が、「3割」なのか「5割」なのか「7割」なのかが分かっても、
あまり意味が無いというものです。

また、現時点での自分の得点というのは、現状での実力を指しますが、
受験勉強で大切なのは、「今後、どれだけ実力アップできるか」にあります。
例えば、水が入ったコップを見て、「今、どれだけ入っているか」ではなく、
「満水まで、どれだけ足りないか」という視点が大切だと考えます。

イヤな言い方をすれば、受験勉強では「アラ探し」こそが重要なのです。
「過去問題演習で、75点取れたぞ!」ではなく、
「満点に25点も足りない。誤答を正答に変えるために、どうすれば良いか。」
という見方で、「ダメな部分」をほじくり出すことが必要です。
なぜなら、今よりも実力(=得点)を高めるためには、
正答できなかった部分を改善するしか、手段が無いからです。
上手く解けた問題を、どれだけ可愛がっても、
配点以上の点数にはならないので、放置しておけば良いのです。
「○○ができていない」「□□に課題がある」という点を、ビシビシ洗い出し、
それを片っ端から解決してこそ、実力は伸びていくことになります。

私が「現時点で何点取れてるか?」に、あまり関心が無いのはこのためです。
お客様に対して行う答案添削においても、点数化を行いません。
点数計算をする時間があれば、1つでも課題を洗い出したほうが役に立ちます。
試験日までに、「解けない問題をどれだけ減らせるか」という視点こそが、
受験対策において、最も重要だと考えています。




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第421話 休むことも受験勉強
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8月の試験まで、残り2か月となり、本格的な受験勉強に余念が無いとお察しします。
日々の勉強に精を出すことも大切ですが、疲れたときは休むことも大切ですね。

今日は夏至であり、奈良でも強い日射しが降り注いでいました。
もちろん、炎天下では厳しい暑さですが、日射等の影響を受けにくい室内では、
少なくとも私にとっては、冷房無しでも凌げる程度の気温であり、
本格的な暑さの到来は、これからの話です。

ご承知のとおり、梅雨前線が北上して、太平洋高気圧に覆われたときから、
いわゆる「真夏の暑さ」は始まることになります。
単に気温が高くなるだけでなく、湿度も増してきます。

今年から、全国での運用が始まった「熱中症警戒アラート」においても、
発表の基準になっているのが、気温だけでなく、
湿度などの要素も加味された「暑さ指数(WBGT)」ですね。

特に、蒸し暑さが増す時期は、体が順応し切れていないこともあります。
受験勉強の仕上げに向け、実戦力を高めていくために、
これからの2か月間は、特に大切な期間だと言えるのですから、
学習ペースを上手く作っていけると理想的です。

また、「前夜に寝苦しかったので眠い」「暑さで食欲が落ちた」といった場合は、
無理に勉強に取り組もうとされるよりは、まずは体調の快復を図り、
ゆっくりと休むという時間を持つことも大切ですね。

8月試験を征するため、間もなく到来する盛夏期を、
上手く乗り越えていきたいところです。




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第422話 続けることが力になる。
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> 辛いときは、「何で気象予報士試験の勉強をすることになったのか?」
> という初心を思い出してみてください。
> 私は、「気象予報士になって転職する!」という思いがあり、
> 辛いときなどは自分が転職した姿を妄想して乗り切っていました。
■S.Sさん(男性・20代・電力会社・茨城県)の合格体験記より


気象予報士試験の合格率は5%程度です。
これは受験生の中で「上位5%の実力」を備えることができれば、
合格できることを意味しています。

もちろん、実際には試験が学科と実技に分かれていますので、
話はそれほど単純ではありませんが、
マラソンで例えれば、「トップから数えて上位5%の先頭集団」にいれば良いのです。

毎回の試験で、この上位5%程度が合格を勝ち獲っていくことで、
受験レースから退き、残った中での上位5%が新たな先頭集団になります。
このため、試験が行われるたびに、このぶんだけ自分の順位は上がることになります。
少しずつ実力を高めていけば、やがて上位5%に入るということです。

ただ、この理屈では、「人並みに受験勉強を続けること」という仮定が入っています。
マラソンで言えば、他のランナーと同程度に走り続けるからこそ、
少しずつ順位が上がっていくのであり、歩みを止めれば、順位は落ちます。

そのために大切なのが、モチベーションの維持ですね。
S.Sさんのように、合格を通して叶えたい目標が明確であれば、
勉強を持続的に進めていける大きな原動力になります。
合格した後の「妄想」については、私自身も寝る前とかによくやってました。

受験生という立場から見れば、
合格者は「雲の上にいる人」のように見えるかも知れないですが、
かつては同じように、厳しい受験生活を送っておられたのであり、
タイミング的に合格を手にする時期が少し異なるだけとも言えます。

勉強で苦しいときは、元受験生の「成功談」「失敗談」の中に、
状況を改善するためのヒントが埋まっていると考えます。
勉強の合間にでも、合格体験記をチェックしてみて下さい。




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第423話 出題予想が非効率だと考える理由
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私は受験サポートの仕事を始めて17年目ですが、
今までに「次の試験で何が出るか」という予想をしたことがありません。
理由は簡単で、当てられるようなものではないからです。

「試験のヤマを張る」という表現がありますが、
そもそも、気象予報士試験は、そのような技が使えない仕組みになっています。

まず、学科試験は、単元ごとの出題数がおおよそ決まっています。
よって、勉強しなかった単元は、そのまま失点につながります。

一方、実技試験については、近年における実際の事例が出ますので、
「顕著事例を押さえておけば有効では?」とお考えになるかも知れないですね。
もちろん、過去の事例を学ぶことは、広い意味での勉強として大切なことですが、
試験対策としてはあまり有効ではない、というのが私の考えです。
なぜなら、「その事例を知っていること」と「出題者の出す問題に答えること」は、
かなり違いがあることだからです。

結局のところ、出題者の問いかけに解答できるかどうかが試験の全てであり、
それを適切に、かつ短時間で解答できるかどうかは、
過去問題演習の完成度をどれだけ固めたかによって決まってしまうのですね。

また、学科・実技ともに、「初出題」の問題が必ず出てきます。
これに失点するのが怖くて、「何が出るのでしょう?」と不安になる方がおられますが、
当然ながら、何が出題されるかは分からないです。
でも、それでいいんです。

合格する人は、初出題の問題が解けるからではなく、
これまでに出題された内容をマスターしているから、受かるんです。
一般的に、資格試験というのは、そういった性格を持つものです。

そもそも、初めて問われるような知識・論点というのは、
多くの受験生にとって、頭を悩ませる問題なのであり、
それゆえに、この部分で点数の差が付くとは考えにくいのです。

つまり、受験生どうしの点数差が大きく開くのは、過去問題と似た問題です。
「前に勉強した問題と同じ考え方で解ける!」と気づける受験生と、
「こんな問題見たことない・・・。」と感じる受験生の差は、
過去問題演習の充実度(土台としての基礎力は当然)にあります。
よく考えてみれば、きわめてシンプルな(身も蓋も無い)話なのですね。

私が推奨している試験勉強の目標は、次のとおりです。
 ・学科試験:最低でも過去10年分の問題演習を完成させる。
 ・実技試験:過去7~8年分の問題演習を完成させる。

「完成させる」というのは、答えそのものを丸暗記しているのではなく、
順を追った解法を熟知していることを指します。

今から確保できる勉強時間と照らし合わせて、
完成まで持っていけるかどうかを、冷静に判断してみて下さい。
もし、厳しいという判断が出れば、受験科目を絞ることが合理的です。
皆様の受験勉強が順調に仕上がることを願っています。




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第424話 モネが合格できた理由
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NHKの朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」をご覧になっている方は多いと思います。
気象予報士を志したモネは、3度目の受験で合格を果たしました。
これは短期合格の範囲だと捉えるのが、私の感覚です。

なぜモネは比較的短い期間で、合格を勝ち獲ることができたのか、
受験対策を仕事にしている私の視点から、3つのポイントをご紹介いたします。

【1.資格や仕事に対する強い憧れがある。】
モネは朝岡をはじめとするウェザーエキスパーツの社員の活躍ぶりから、
「命を救う仕事」でもある気象予報の現場に憧れを抱きます。
「自分もやってみたい」という気持ちが、勉強への動機を高めるのです。
目標を叶えるための勉強であれば、内容が難しくても頑張りたいなと思えます。
私の実感としても、就職や転職を目標とされているお客様は、
特に受験勉強に投入するエネルギーが大きいように思います。

【2.受験勉強の「離陸」に成功している。】
ご承知のとおり、気象予報士試験は簡単ではありません。
特に初めて受験勉強をされる方にとって、多くの躓きポイントが存在します。
例えば、「対流圏の気温減率と乾燥断熱減率の違いが分からない」、
「空気塊の圧力が減少すると、なぜ水蒸気圧も減少するのか?」、
「地衡風のバランスが成立していれば、空気塊は止まっているのでは?」
といった内容は、初学者の方からよく出てくるご質問です。
モネも受験勉強の開始当初は、かなり勉強に手こずっていましたが、
基礎学習の内容を菅波に教えてもらうことで、土台を築いていきました。
分からないことを解決することで、勉強への意欲を維持でき、
受験勉強を軌道に乗せることができたのだと思います。

【3.受験勉強を公言し、後に引けないようにした。】
森林組合で働くモネにとって、受験勉強は空いた時間を見つけて行うものです。
仕事が忙しくて十分に勉強時間を確保できず、不合格も経験しましたね。
このとき、誰にも言わずにコッソリと受験勉強をしていれば、
コッソリと受験勉強から撤退することもできます。
言い換えれば、失敗しても恥をかくことが無いということです。
しかし、サヤカや職場の仲間らに受験していることを伝えることで、
簡単には後に引けない状況ができました。
1で紹介したような「前向きの動機」も大切なことですが、
「失敗するとカッコ悪いぞ」という感情も、受験勉強に駆り立ててくれます。

ドラマをご覧になって、気象予報士試験の勉強に興味が湧いた方は、
こういった点も参考にされると宜しいかと思います。

難易度を考えますと、気象予報士試験の合格を勝ち獲るためには、
それなりの時間とエネルギーを投入することが必要になります。
資格取得を志すのであれば、ぜひ「合格」という形で、
受験勉強を締めくくってほしいと思います。




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第425話 合格された方が教えてくれた試験日での秘訣
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第55回試験で合格を勝ち獲られたTさん(男性・40代・公務員(行政職)・群馬県)が、
合格体験記の中で、試験当日の秘訣を綴って下さっていますので、
以下に引用しながら、私のコメントを付けていきます。


> 1.試験当日は、十分勉強したと思っても、想定していなかった問題等が出る可能性があります。
> そのため、「絶対にあせる」ことを想定しておいた方がいいと思います。
> あせることを想定して、そうなったときの対策や心構えを準備する必要があると思います。(特に実技試験)


まさに書かれているとおりであり、想定していなかった問題は「必ず出る」と私は考えます。
そもそも、「あらかじめ出題内容が全て分かっている試験」など、学校の小テストくらいであり、
たいていの試験では、見たことのない問題もチラチラ出てくるものですね。

大切なのは、そうした問題が出てきた時点で、
「となりの受験生も、同じように悩んでるんだろーな」などと冷めた目で見られるかどうかです。
頭が真っ白になってリズムが崩れるような事態を、いかに防げるかが大切です。
このメルマガで何度も書いていますように、過去問題との類似性の高い問題を、
どれだけ取りこぼしなく、丁寧に拾っていけるかで勝負は決まります。
新問や難問で正答を取る必要は無いのです。


> 2.私は、実技試験については時間が足りませんでした。時計は必ず準備した方がいいです。
> 平成30年第2回試験の時は、時計を準備していませんでした。
> そのため、係員の合図だけが頼りで、時間配分が全然できませんでした。
> また、前後の問題からの影響がなく難しい問題は、思い切って切り捨てました。


実技試験は、最初から解いていくことを想定して作成されています。
前の問題内容を土台にして、次の問題が構成されていることが多いからで、
上手く「問題の流れに乗る」ことができれば、出題者の意図も見えやすいのです。

ただ、先ほども触れたとおり、実技試験においても必ず新傾向の問題は出てきます。
「これは手強いぞ」と思ったときに、そこでどれだけの時間を費やすかを考えるために、
時間経過を意識されることは大切ですね。
Tさんが述べられているとおり、「切り捨てる」という判断も場合によっては必要です。
難攻不落の城に固執し続けることよりも、
着実に攻略できる城をどれだけ攻め落とせるかが大切ですね。


> 3.道具を気に入ったもの、使いやすいものを準備した方がいいです。
> 小さいことですが、道具についてはきちんと準備することで、
> 少なからず時間短縮や効率化に効果がありました。特に効果があったと感じたことは以下のものです。
> ・定規は目盛りが赤いものをつかう。→これによって、見やすくなります。
> ・トレーシングペーパーは赤鉛筆で書く。→これも、見やすくなります。
> ・トラフや前線の転記は、トレーシングペーパーの表面に赤鉛筆で書き、
> 裏面に黒鉛筆でそのエリアを塗るように書き、さらに、表面から赤鉛筆でなぞる。
> (カーボンペーパーと同じ要領です。)


当日に活用する道具についても、事前に1つ1つ確認を行っておかれることが大切です。
ただ、筆記用具などは相性や好みがありますので、Tさんがご紹介の道具や手法が、
必ずしも他の受験生の皆様にとってもベストチョイスになるとは限りません。
この記事をお読みになっている皆様は、実際に試してみたうえで、
ご自身に合うかどうかを事前にチェックしておかれることが大切です。

また、小さな文字が見づらい方にとっては、ルーペへのこだわりも大切です。
試験後の懇親会で、お二人の受験生から使ったルーペを見せていただきましたが、
とにかく大きい(直径10cm以上はあったと思います)のが印象的でした。
ネットショップで「ルーペ 特大」などと検索すると、いろいろ出てきます。
大きいほど視認性が広がるので有利ですが、同時に重くなりがちですから、
軽量である点も考慮して、お選びになると良いですね。
ちなみに、大きなルーペを活用されたお二人はすでに合格されて久しいです。




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第426話 ノート作成より大切なもの
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> 僕はノートをとっていません。
> なぜなら、ノートに書くのには聞く時間の約6倍時間がかかると聞いたことがあるからです。
> それならノートを1回とるより6回講義を聞く方がいいですね。
■島田有吾さん(男性・12歳・福岡市公立小学校・福岡県)


誰もが思い浮かべる「勉強」の光景といえば、
教師が黒板に書いた内容を、生徒がノートに写し取ることだと思います。

小学校の授業であれば、それも大切なことでしょう。
ひらがな・カタカナに始まり、膨大な量の漢字を覚えていく必要があるのですから、
実際に手を動かすことは、筆記の良い練習にもなります。
間違って覚えていないか、教師が確認するためにも、書かせることは大切です。

しかし、すでに文字を習得した人間が、高度な内容を学ぶにあたって、
「板書を筆記する」という古典的な手法が効率的かと言えば、疑問もあります。

私が運営する塾は、現在では通信型専業ですが、
かつては大阪で通学生のお客様に向けた授業を行っていました。
また、中学受験や高校受験の学習塾で、講師をしていたこともあります。
そこで思ったのは、「ノートの美しさと成績は必ずしも連動しない」ということです。

定規で丁寧に線を引き、カラーペンで彩りを加え、筆記ミスを修正テープで消す。
そうやって時間をかけて作ったノートも、試験では閲覧が許されません。
学んだ内容は「ノート」ではなく「ノー(脳)」に入れなければ、意味が無いのです。

「書くことによって、学んだ内容が整理される」ということもありますので、
ノートを取ること自体は否定しません。
ただ、学んだ内容を白紙に聞き書きすることは、時間的にも労力的にも大変です。
それならば、板書をスマホのカメラで撮影してしまっても良いですし、
最初から出来上がったノートのようなものがあれば、さらに効率的ですね。

そもそも受験勉強とは、未知を既知に変え、その内容を記憶することだと考えれば、
ノートを作成する場合であっても、それは学習の途中経過に過ぎないのであり、
最終的に頭に染み込ませることができるかどうかが、本質だと言えます。
学生時代、ノートの貸し借りの経験がある方も多いと思いますが、
借りた側のほうが成績が良かったということが起こり得るのは、このためですね。

第55回試験で合格を勝ち獲られた島田さんの合格体験記からは、
「頭に定着させる」という点を重視して勉強に取り組まれたことが分かります。
1つが「理解すること」、もう1つが「繰り返し学習」です。

誰でもそうですが、「とりあえず覚えろ!」とだけ言われて、多くを覚えることは困難です。
「○○だからこそ、□□は▽▽と言えるのだ」といった筋道が分かってこそ、
頭に定着させやすいというものです。

また、その場で理解できたことと実際に問題が解けることは、イコールとは限りません。
定着が不十分であれば、時間経過に伴って記憶も薄れます。
そこで、納得した知識を血肉化するためには、繰り返すことも大切です。

大切なのは、ノートを作るかどうかよりも、
紙などに書かれた学習内容をいかにして自分のものにできるかですね。




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第427話 第56回試験を終えて
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第56回試験の内容を振り返ってみますと、難しい問題も含まれてはいますが、
基礎事項の定着度について試された問題が多かったように思います。

例えば、一般知識試験の問2ですが、
問題文には図が無く、文章だけで状況を把握することが求められています。
言い換えれば、空気塊の持ち上げについての操作を、
白紙の状態から瞬時に説明できるかが問われたと私は解釈します。
実のところ、全体像を把握することさえできれば、
あとは選択肢を順番に当てはめていっても良いですし、
方程式(といっても中学校で勉強する水準)を使って解くことも可能です。

一般知識試験の問5は、模式的な大気を考えたうえで、
温室効果の原理を説明した問題であり、なかなか手強そうに見えます。
しかし、(a)(b)はいずれも基礎事項の知識です。
(c)の正誤は実際に計算をしないと分からないですが、
温室効果の意味が分かっていれば、(d)が誤であることは一瞬で判断できます。
この時点で、適切な選択肢が選べるようになっているのですね。

また、これは毎回の試験で同じようなことを申し上げておりますが、
多くの問題において、過去問題との類似性が見られます。
試験では、限られた時間での解答が求められる以上、完全に初見で臨む受験生に比べて、
「この問題、演習で見たことあったな」と気づける受験生のほうが、有利です。
これは一般知識試験だけでなく、専門知識試験や実技試験に関しても言えることですね。

第56回試験が終わったばかりですが、すでに次の試験まで4か月半です。
1月試験から8月試験までの期間に比べると、約2か月も短いため、
いかに集中的に受験勉強を進めていけるかが大切です。




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第428話 理解度を自分で把握する方法
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効率的に受験勉強を進めていくうえで、学習の到達度を把握することは大切です。
言い換えれば、「学習の必要性が高い部分と低い部分の仕訳」を行うことです。

不十分な箇所が残ったままでは、それが出題されたときに正答できないので、
当然ながら、学習を進めて理解度を高めることが求められます。
一方、すでに理解が固まった部分を、繰り返し学習することも優先度が低いです。
もちろん、時間経過とともに記憶は薄れていきますので、
定着の維持に努めることは大切なのですが、配点以上の得点はもらえません。

仮に、現在のスコアが55点であったときに、それを70点に高めるためには、
現時点で正答できていない15点を獲ってくる必要があります。
つまり、受験勉強では「長所伸展」より「短所克服」のほうが重要なのですね。

短所を克服するためには、まず短所そのものが何であるのかを把握する必要があります。
手っ取り早いのは、実際に過去問題を解いてみることですね。

もし、何度も問題演習を繰り返していて、正答番号が頭に焼き付いているのであれば、
正答に至るまでの思考過程を説明できるか試してみると良いです。
「説明」といっても、他人が必須というわけではなく、自身に対して行えば良いです。
このときに、スムーズに説明ができなければ、まだ課題が残っていることを意味します。

大切なことは、「説明が理解できる」と「自分で説明できる」は、
必ずしもイコールでは無いということです。
講義を受けたり、解説文を読んだりして、「なるほど」と感じるのは、
学習がある程度進んでいることを示していますが、まだ完璧ではありません。
何となく分かったつもりでも、「じゃあ、説明して」と言われれば、
言葉に詰まることも多いのではないでしょうか。

仮に、「8割方分かっている」状態であっても、
裏を返せば、分かっていない部分が2割くらい残っているということです。
2割も曖昧な点があれば、正答につながらないことも多いので、
(特に実技試験は記述問題のため、思考過程が透けて見えます。)
結果として、全く得点が伸びないということになります。

また、学科試験の場合、過去問題と似た傾向のある問題は、
以前の出題時よりも、少しグレードアップ(難化)する形で出ることも多いです。
つまり、応用を働かせることが求められるわけですが、
そのためには、土台となっている過去問題の理解度が高いことが条件ですね。

短期間で実力を高めていくためには、過去問題を材料にしたうえで、
「自分への説明が可能か」というリトマス紙を用いて、理解度に対する仕訳を行い、
課題が残っていると判断された箇所について、集中的に学び直すと良いです。
次の試験まで約4か月ですが、このサイクルをどれだけ回せるかによって、
得点力の伸び方が違ってくると考えています。




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第429話 最年長で合格を勝ち獲った秘訣とは?
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今回は、新しく出版される本をご紹介します。

水野敏明著『元校長が、69歳で気象予報士になっちゃった 合格までの6年間の奮闘記』
産経新聞出版から、まもなく発売の予定です。

著者の水野敏明さんは、2020年8月に実施された第54回試験にて、
その試験での最年長合格を勝ち獲られた方です。

早ければ、受験勉強開始から合格まで1~2年という方もおられますので、
表題にありますように、「6年」は決して短期合格であるとは言えません。
それだけの期間において、お仕事と並行して勉強を続けられることは本当に大変です。

不合格を何度も経験すれば、勉強を投げ出したくなったこともあったでしょう。
「年齢が~」「仕事が~」「記憶力が~」など、
受験勉強を中断するための、もっともな理由は出てくるものです。
しかし、水野さんは受験勉強を合格という形で締めくくられました。
合格の秘訣について、基本方針を3つ挙げておられます。私も納得でした。
ぜひ、本書を手に取ってご確認いただきたいと思います。

実は水野さんは、当塾の元受講生で、
当塾のことについても少し触れて下さっています。

本書の前半部は、主として受験体験記をまとめられているのですが、
後半部には、資格を取得された後の活動内容や今後の目標、
さらには、読者へのメッセージについても綴られています。

気象予報士資格には更新制度が無く、
気象業務法違反でも起こさない限り、資格は生涯有効です。
ただ、それゆえに、予報業務の現場で仕事をするといった方を除けば、
合格後の研鑽は、当の本人に委ねられているのであり、
忙しさのあまり、ペーパー予報士になっている方もおられるかも知れません。

受験生の方にとっては、受験を勝ち抜くための指南書として読めますが、
すでに資格を取られた方にとっても、一読していただきたい本です。




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第430話 攻略すべきは「目の前の問題」
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> 「門外不出の秘伝のようなものはない」本当にその通りです。
●Mさん(男性・42歳・不動産関係・愛知県)の体験記より


まさに、Mさんがお書きになったとおり、
気象予報士試験の攻略に秘術は無いと私は考えます。

合格への経路は極めてシンプルであり、それは次のようなものです。
 A:基礎事項をしっかりと押さえる。
 B:過去問題演習を充実させる。

なお、「シンプルである」とは「実行することが簡単である」という意味ではないです。
「シンプルであるが、それを貫徹するのは難しい」からこそ、難関試験なのですね。

また、前述のAやBは、言葉で表現すると簡単なのですが、
それゆえに、誤解が生じやすいという面もあります。

まず、「分かる」と「できる」は別だということです。
説明を読んで、「なるほど」と思うことは大切です。
ただし、納得できたことと、実際に問題が解けることは、イコールとは限りません。
いざ、問題を目の前にすると、一知半解であったということも多いです。
よって、「問題が解ける」というレベルまで引き上げることが大切ですね。

それから、「目の前の問題を解くことにエネルギーを投入すること」が大切です。
「当たり前のことではないか」と思われた方は、スルーしていただいて良いのですが、
問題の解答と直接に関係の無い事柄について長考するのは、受験勉強ではありません。
それは、試験の得点を上げることに寄与しないので、学習効率が下がります。
特に「気象が好き」だという受験生は、この点を意識されることが重要ですね。

やや極端な言い方になりますが、この試験の勉強において、
「趣味」だとか、「教養」だとか、「学問」だといった捉え方を保留されたうえで、
受験勉強に徹するという方針を貫かれることが、短期合格の条件だと考えます。
短期間で合格される方の多くは、「目の前の問題が解けるようになる」という点を、
とにかく最優先して、集中的に勉強される方ばかりだという印象です。
これが合格のためのツボだといっても良いでしょう。

頑張っている方には、是非とも合格という形で受験勉強を締めくくってほしいので、
「問題が解けるようになる」ことに力点を置いていかれることが大切ですね。




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第431話 実力を高めるための過去問題演習とは
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> 過去問題を解く作業はあくまで理解や知識の定着の確認行為であり、
> それ自体は学習にはならないので、
> 過去問題をこなしただけでやった気にならないように注意していました。
●Lさん(男性・30代・会社員(運送業)・東京都)の体験記より


気象予報士試験の勉強において、過去問題演習は必要不可欠ですが、
効率的に実力を高めるためには、その目的や方法を適切に踏まえることが大切です。

過去に出題された問題の演習を行うことによって、
基礎学習の内容が、具体的にどのような形で問われるのかを知ることができます。
また、本試験において出題される問題が、過去問題の類題であると考えれば、
過去問題を徹底的に理解することによって、対応力・応用力を養えます。

Lさんは、「それ自体は学習にはならない」と述べておられますが、
これは、問題解くという行為自体が、
自身の持つ知識や理解度のチェックにしかならないためです。

例えば、スマホを使うときに、そこにどんなアプリが入っているのかは、
画面を操作・閲覧することによって、確認することができます。
例えば、ゲームAはインストールされていて、辞書Bはインストールされていない、
ということが分かるようになっています。

一方、ある人間の脳の中に、どんな知識や技能が備わっているのかについては、
パソコンのフォルダを開くような操作で知ることはできません。
そこで、実際に問題を課し、それを解くことができるのかどうかを見ることで、
知識や技能の充実度を調べることが必要になります。
これが「試験」とか「テスト」と呼ばれるものであり、
その言葉が示すように、「(知識などが備わっているかどうか)試す」ということですね。
本試験というのは、まさに試験主催者が受験生を「試す」ために行うものです。

そして、受験生が自身の学習進捗度を「試す」ために行うのが、過去問題演習です。
演習をとおして、「○○はマスターしたが、□□は理解できていない」といったことが、
自分自身でハッキリと把握できるようになります。
言い換えれば、「問題を解く」というのは、今の課題を洗い出す作業のことです。

当然ながら、洗い出された課題は、解決できてこそ意味があります。
洗い出すだけ洗い出して、放置したままであれば、実力は伸びないので、
時間と労力を無駄にしたことになります。
Lさんが「それ自体は学習にはならない」と述べられているのは、このためです。
あくまでも、「学習(=自分の実力を高めるための行為)」とは、
課題を解決することで、「未知」を「既知」に、「誤解」を「理解」に変えることです。

つまり、「問題を解くことは作業」「課題の解決こそが勉強」ということです。

もし、両者の明確な違いを意識しないまま、問題を解くことだけに力点を置き、
解答を参照して、「合ってた」「間違ってた」という確認程度しかできていなければ、
問題を何回解こうと、その演習はほぼ無意味です。
(いわゆる「問題を解き散らかす」と呼ばれているものです。)

短期間で実力を大きく伸ばすためには、
「課題の洗い出し」と「洗い出した課題の解決」という両輪を、
高速回転させること大切ですね。




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第432話 日常生活に勉強時間を組み込む方法
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> 勉強する時間の工夫としては、
> 通勤時間をすべて勉強に充てるという、「ルーティーンへの嵌め込み」です。
> 片道40分間程度の通勤中には単語帳やハンディな一問一答式の問題集を読み、
> 自宅では授業の復習をして過去問を解くという感じです。
●Zさん(男性・53歳・出版社に勤務する会社員・東京都)の体験記より


多くの社会人受験生にとっての悩みは、
「『勉強のためのだけの時間』をなかなか確保できない」ということです。
仕事や家事を回し、日常生活を進めていく中で、
「勉強のみに使える時間」を持つことは、ある種の贅沢とも言えるかも知れません。

そんな中でも、気象予報士試験の合格を勝ち獲るためには、
着実に勉強量を積み上げていくことが求められています。
総学習時間は、「1日あたりの量」×「日数」として示され、
社会人受験生であれば、前者を極端に大きくすることは困難です。
そのため、「継続できるか」というのが、合格のための必須条件になってきます。

継続のためには、受験勉強を「一時的な行事」ではなく、
日常生活に溶け込ませることが必要です。
言い換えれば、習慣化を図るということですね。

そのための1つの手法は、Zさんが実践された「通勤時間の活用」です。
通勤している限り、通勤時間は必ず存在します。
ここで、「通勤時には勉強する」というルールが定着すれば、
そのことによって、1日あたりの固定的な勉強量を確保できます。
Zさんのように、片道40分であれば、往復で80分となり、
週5日勤務とすれば週400分ですので、1年で300時間を超えることになります。

もし、電車通勤であれば、本やスマホなどを用いて「読む学習」も可能ですし、
徒歩であれば、「聴く学習」がお勧めです。
最近では、ノイズキャンセリング機能の高いイヤホンも出ていますので、
ザワザワした環境を軽減することができます。
一方、周囲の音が聞こえにくくなってしまう危険性を避けるためには、
耳を塞がない骨伝導ヘッドホンがお勧めで、私も毎日使っています。
(耳栓を併用すると、騒がしい場所でも聴き取りやすくなります。)
「聴く学習」は、手足を動かしていても活用できるのがメリットで、
例えば、洗濯物を干したり、食器の片付けをしているときでも使えます。

「読む学習」については、入浴中も使えます。
紙の本は湿気で痛んでしまうので、お勧めできませんが、
防水機能のある電子書籍リーダーであれば、風呂に入ったまま読めます。
タブレット端末の中にも、防水機能を備えたものがあります。
特にこれからの時期は、湯に浸かる時間が長くなるので適しています。
また、エアロバイクのようなものがあれば、「読む」「聴く」のいずれも可能であり、
しかも運動と勉強の2つを同時的に行えるので、効率的ですね。

もし、ご自身に合った方法が見つかれば、
そのぶんだけ勉強量を増やすことができますので、ぜひ試していただければと思います。




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第433話 辛くなったら、合格体験記を読もう。
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> 平日・休日の自由時間をほとんど勉強にあてていたため
> 途中でモチベーションが下がりそうなときもありました。
> (中略)
> そんな時は合格体験記を読んで、自分も絶対合格体験記を書いてやる!と鼓舞したり、
> 資格が取れたら何しようか考えたりして合格した時のことを想像して乗り越えました。
●Qさん(女性・20代・会社員・神奈川県)の体験記より


勉強開始から合格まで長い時間を要する気象予報士試験の勉強では、
必ず調子の波(好調・不調)が生じます。
快調に学習を進められるときもある一方で、
勉強に気乗りしないときや、スランプに陥ってしまうこともあります。
また、「本当に合格できるのか」といった不安に襲われることもあるものです。

そんなときは、合格を勝ち獲った人の経験談に触れることをお勧めします。

受験生である以上、気象予報士試験の合格経験は無いわけで、
「合格の感触」を知らないまま、手探りで勉強を進めることを強いられます。
例えてみれば、登頂したことのない山を1人で登るようなものです。

そんなとき、登頂経験者の経験談があれば、実に心強く感じることでしょう。
「ここの分岐で、道を間違えやすい」
「水場は、この場所にしかない」
「この時期であれば、まだ積雪の残っているところがある」など、
各経験者がそれぞれ感じたことを綴ったレビューのようなものがあれば、
それを読んだうえで歩き進めたほうが、安全で快適な登山につながります。
つまり、道迷いのリスクを下げ、飲料水の確保の心配を減らし、
滑落を避けるためにアイゼンを用意する、といった対策ができます。

受験勉強もこれと似ている部分があります。
経験したことのない合格に向かって勉強を進めるのですから、勘を掴めなくて当然です。
また、1人の受験生として、得られる経験は限られています。
だからこそ、先に受験を経て合格した人の経験談に目を通すことは有益です。
「成功体験」だけでなく、「失敗体験」も同じくらい大切です。
他人の失敗談を知ることによって、同じ轍を踏むことを回避できます。
合格体験記を通した「代理経験」によって、
より効率的な受験生活につなげることができると考えます。

もちろん、受験スタイルには個人差もありますし、
受験生自身の立場や環境にも大きな違いがあるものです。
ですから、他人の経験談を自分に当てはめることができない場合も多いです。
しかし、数多くの事例をあたれば、自分に合ったアドバイスが得られることでしょう。
当塾ホームページには200名以上の方々が合格体験記をお寄せ下さっています。
当塾を受講されている方も、そうでない方も、
受験勉強に疲れたときは、合格体験記を触れてみられることをお勧めします。




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第434話 「ドヤりたいから、勉強する」でいい。
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> 大雨による災害現場で取材する事も多く、年々出動する頻度が増している事から、
> 気象予報士の知識は今後益々必要になってくると感じていたところで、
> 新型コロナが蔓延し、『ここで自粛期間に何もせずに過ごすのと、
> 「私は自粛期間中にこれをやりました」と胸を張って言えるものがあるのとでは随分違う』と考え、
> 本格的に気象予報士を目指す事にしました。
> (名刺に『気象予報士』って入ってたらカッコイイなという不純な動機もありました。)
●Vさん(男性・40代前半・テレビ局員・愛知県)の体験記より


Vさんは4度目の挑戦で気象予報士試験の合格を勝ち獲られましたので、
受験期間はおよそ2年ということになります。
日々のお仕事や家庭生活と並行して、2年にもわたり受験勉強を続けることは、
本当に大変なことだったと思います。

中・長期にわたって、合格に向かって走り続けるためには、
それを支えるモチベーションが必要です。
テレビ局員として取材活動の多いVさんにとって、
仕事の幅と深みにつながるだろうということで、気象予報士を志されています。
このように、今の仕事にプラスになるというのは、勉強に対する大きな動機になります。

一方、Vさんの合格体験記における、
「名刺に『気象予報士』って入ってたらカッコイイ」という記載にも着目です。
「仕事に役立つ」というのが【理屈しての動機】だとすれば、
「名刺に入れられる」というのは【感情としての動機】であるとも言えます。
敢えて直接的な表現をすれば、「ドヤれる」ということですが、
私は、むしろこうした動機が重要だと思っています。

豊富な勉強時間、快適な部屋、座りやすい椅子、分かりやすい教材など、
勉強を取り巻く環境を整えることは、もちろん大切です。
ただ、結局のところは、受験生本人のやる気という要素が大きいのであり、
特に長期戦を支えるのは、「下世話な動機」ではないかと思うのです。
具体的には、「脚光を浴びたい」「一目置かれたい」「モテたい」といったものです。
まさに、私もそうでした。

「子供たちに天気を教えるボランティア活動を」という動機も素晴らしいですが、
それだけでは、長くて険しい受験勉強を乗り切れるとは限りません。
むしろ、「テレビに出てみたい」「『スゴイ!』と言われたい」といった、
ちょっと他人には言いにくい動機を持った受験生のほうが、
猛烈な勢いで勉強を進め、合格を勝ち獲っていかれるという印象があります。

つまり、「世間で難関とされる資格を取って、ドヤりたい」という方は、
この試験の勉強を続けるための適性があるとも言えます。
合格まで続けられるスタイルが、正しい勉強法です。




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第435話 試験直前で何をすべきか。
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試験が近い時期になりますと、
「試験直前にどんな勉強をしたら良いか?」というご質問をよく受けますので、
それについて、お答えしましょう。

「短期間で劇的な効果のあるマル秘学習法」のようなものを、
期待されているかも知れないですが、
ズバリ言いますと、直前期に特化した勉強法は基本的には存在しません。

合格に至るための道は、実にシンプルであり、
「基礎事項を固めて、過去問題演習で実戦力を高める」ことに尽きます。

もし、「短期間で得点力が大幅にアップする方法」が存在するならば、
直前期まで温存せずに、最初からその手法で進めれば良いだけの話です。
実際には、「直前期だけ使える裏ワザ」のようなものは無いと考えます。

結局のところ、どれだけ基礎事項の知識が固まっているか、
どれだけ過去問題の内容をしっかり理解できたか、これが重要です。
当然ながら、それは一朝一夕で身に付くものではないので、
マラソンランナーのように走り続けられた受験生が有利です。

頑張っておられる受験生であるほど、試験前になると、
いろいろな不安・心配が湧き起こってくるものです。
ゆえに、「何か特別なことをするべきでは?」と気にされますが、
前述のような勉強をそのまま続けていかれれば良いです。
直前期であっても、普段どおりに勉強して、
試験日には、普段どおりに問題に向き合って、合格点を取る。
これが理想的なスタイルであると考えています。

例外があるとすれば、暗記物ですね。
どうしても、時間の経過とともに記憶は薄れてきますので、
特に覚えておきたい事柄については、普段よりも時間と労力を費やして、
記憶の定着を図っていかれると良いと思います。




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第436話 試験当日に大切なのは「余裕」
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> 分からない問題もいくつかありましたが冷静に後回しにして、
> 余った時間で落ち着いて解くことが出来たと思います。
> まさに、「練習は本番のように、本番は練習のように」
> ということを実践できたと思います。
■Bさん(男性・40代・公務員(防災分野)・中部地方)


第56回試験で合格された方による合格体験記はお読みになりましたか?
わずか数か月前に、同じ受験生として試験に臨まれた方々です。
どのような心構えで受験されたのかを知ることで、
今回の第57回試験においても、きっと有用な情報が得られると確信しています。

その中でも、特に私が大切だと思ったメッセージが、
冒頭におけるBさんの合格体験記からの引用です。
「練習は本番のように、本番は練習のように」は、
平常心で試験に臨むことの大切さを伝えていると思います。

試験日まで、すでに2週間を切った今、すでにできることは限られています。
闇雲に過去問題を解き散らかしたところで、劇的に変わるわけではないです。
それは、講師の立場で30回以上にわたり受験を応援してきた者の実感です。
むしろ、ガムシャラにやり過ぎて、体調を崩してしまうことのほうが心配です。

持っている実力を試験日に最大限に発揮できるよう、
体も心も整えていきたいですね。
当日は時間に余裕を持って、試験会場に入れるのが理想的です。
実技試験だけでも、「75分+75分」の全力投球が求められます。
学科試験の受験が必要であれば、さらに長丁場です。
問題の最後に至るまで、題意を正確に読み切れるかどうかは、
当日のパフォーマンスに大きく左右されると思います。

そして、これは相当の確度を持って言えることですが、
過去問題演習で培ったノウハウでは、太刀打ちできない問題が出てくるはずです。
そもそも、試験とはそのようなものだとお考え下さい。
過去問題の焼き直しだけで構成された試験ですと、易化することになるので、
新傾向の問題が出てくるのは当然なのです。

大事なのは、そこで動揺しないことです。
「おっ、藤田が言っていたとおりだな」と思っていただければ良いです。
満点を取る必要はなく、合格最低点が取れれば、それで良いのです。
「できない問題が出てきて当たり前や」とサバサバできるかが肝心です。
そうすると、頭の中が少しクールになって、
よく見れば過去問題の応用パターンだった、といったことになるかも知れません。

本試験では、緊張が高まってしまう仕掛けが数多くあります。
慣れぬ場所で大勢の受験生が一堂に会し、試験監督が目を光らせる中、
見たことの無い問題を60分という制限時間で解かねばならないのです。
自宅受験ならば、ここまで緊張することは無いように思います。

この空気に飲まれずに、Bさん曰く「本番は練習のように」取り組めるかが、
合否線上の実力を持った受験生の明暗を分ける要素になるでしょう。
その方法の1つが「余裕を持つこと」だと考えます。
体調に余裕を持つ、時間に余裕を持つ、気持ちに余裕を持つ。
当日はお持ちの実力を100%発揮できることを願っています。




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第437話 受験勉強の時間管理で大切な2つのこと
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> 睡眠時間と勤務時間の双方を削ることは出来ないので、
> 遊びの予定や趣味の時間を削ることで、勉強時間を確保しました。
> また、仕事終わりに長時間勉強するのは集中力が持続しないと考えたため、
> 朝は普段より1時間ほど早く起きるようにし、
> 少しでも勉強できるように心がけました。
> 会社への通勤中にも参考書を読んで勉強しました。
■Cさん(女性・20代・会社員(民間企業勤務)・関東地方)


気象予報士を志す受験生の多くは、お仕事・家事・他の学業などを抱えながら、
日々の勉強に取り組まれていますので、時間の捻出が大きな課題です。
ただ、時間さえ確保できれば、何でも良いというわけではなく、
 ・勉強に適した質の良い時間を捻出すること
 ・単発的ではなく、継続的に時間を捻出できること
この2つの条件を満たすことが大切です。

まず、前者ですが、疲労感の強い状態であれば、
新しい知識を咀嚼・整理して頭の中に吸収していくことは難しいです。
Cさんが受験勉強の時間を確保するために、睡眠時間ではなく、
遊びや趣味の時間を削るという選択をされたのは理にかなっています。
ボーッとした頭で机に向かっても、得られるものは少ないです。

そして、後者については、「勉強量=効率×時間」から言えることです。
例えば、同じ学習効率であれば、日曜日だけ5時間取り組むよりも、
毎日1時間だけ取り組んだほうが、総勉強量は4割も増します。
(さらに、勉強の間隔が空くと、学習効率は低下するものです。)
つまり、継続的に勉強できるようなスケージューリングが大切なのであり、
Cさんが「1時間の早起き」「通勤中の学習」を行われたことは、
いずれも、日々の生活の中に受験勉強を定常化させるための方策だと言えます。

もし、受験生の皆様の中で、受験生活への課題を抱えておられるのであれば、
まずは、先ほどに挙げた2つの点に着目されたうえで、
改善できる部分があるかどうかを、検証されると宜しいかと思います。

仮に8月の試験に向けて、これから勉強を進めていくことを考えた場合、
200日くらいの比較的長い時間があります。
この200日を上手く活用できるかどうかで、
トータルで進めることのできる学習量は大きく異なってくると思います。




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第438話 過去問題を活用し尽くす。
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> 大切なのは問題作成者の意図を認識すること、
> なぜその解答にいたるのかをしっかりと理解することだと思います。
> これを繰り返すことで次第に
> 「この問題は〇回で聞かれていたことと本質的には同じ」などと気づき、
> 解答することが出来るようになりました。
■Aさん(女性・アラサー・地方局アナウンサー・関東地方)


本試験の問題を目にしたときに、「着実に正答を積み上げていける人」は、
そうでない人と何が違うのでしょうか?

それは、過去問題演習の充実度の違いです。
ただし、「過去問題を丸暗記している」という意味ではありません。
本試験で過去問題と完全に同じ問題が出題されることは、
学科試験では少し見られるものの、実技試験では皆無です。
よって、問題が持つ深層に至るまでを理解しているかどうかが重要です。

過去問題と完全に同じではないが、思考パターンに類似性がある問題や、
過去問題の内容を少し応用させた問題が、本試験に出てくることがあります。
ここで「勉強した過去問題の類題だな」と感じ取れるかどうかが勝負です。

我々は、本試験で何が出題されるかを予測することはできません。
だからこそ、「過去問題+α」として出題される問題に対応できるよう、
過去問題の理解に全力を投入するのが、合理的な対策なのです。
「+α」に対する応用力が利くどうかは、理解の充実度にあると考えます。

先日に実施された第57回試験のための受験勉強において、
「実力試しのために、前回(第56回試験)の問題を、試験直前に解く」
ということをされた受験生はおられませんか?
もし、単に模擬試験のつもりで解いただけであれば、とても勿体ないことです。

なぜならば、過去問題は実力を試すための「リトマス紙」ではなく、
理解し尽くすために活用するものだからです。
「もし、この中から類題が出されたら、全部正答できるな」と実感できるまで、
「ボロ雑巾」のごとく使い倒すのが過去問題です。

単に問題を解いて「得点は65点でした」というのが分かったところで、
そのまま放置していれば、それは勉強でも何でもありません。
失点した35点の中から類題が本試験で出されれば、同じく失点するだけです。
そうではなく、取れなかった35点について分析を行い、徹底理解して、
「同じような問題なら、自信を持って解答できるぞ」
という形に仕上げるのが、過去問題演習です。

冒頭で引用した合格体験記をお書きになったAさんも、
当初は過去問題演習で苦戦しておられたということですが、
その目的を適切に捉えられたことで、手応えを掴んでいかれました。

基礎学習でしっかり土台を固めた後は、
過去問題を深く理解することで、実戦力を高めていきましょう。




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第439話 理屈半分、慣れ半分
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> 実技試験は、慣れの部分も結構あると思いました。
> 最初は、緯度・経度の読み取りや、定規で長さを測って速度を求めることなど、
> とても苦手でこんなの無理!と思いました。
> 「慣れるとできるようになる」というのは、にわかには信じがたかったのですが、
> 確かにだんだんパパッとできるようになり、
> 「慣れってやっぱりあるんだなあ」と驚きました。

◎Jさん(女性・20代・東北地方)の合格体験記より

実技試験の勉強に取り組まれた方がお感じになることは、問題量の多さです。
少なくとも3つはある大問を、75分で解くことが求められます。
ところが、その習熟の過程では2時間以上もかかることがあり、
「本当に時間内で解けるようになるのか?」と焦ってしまうわけですね。

結論から言えば、実力の高まりとともに、
解答に要する時間は少しずつ短縮されていきます。
これは解答に至る過程で「無駄な動き」が削ぎ落とされていくからですね。

例えば、等値線の作図において、最初は補助線を引きながら、
2点間での値を細かく按分する作業を重ねます。
しかし、こうした作図に慣れてきますと、目分量で按分を行いながら、
同時並行的に等値線を引くことができるようになってきます。

また、低気圧中心の緯度・経度を1°刻みで読み取る際においても、
10秒もあれば、目分量で読み取れるようになります。
これは練習を積み重ねることが大切です。

もちろん、定規で計測すれば、正確な値は得られますが、時間がかかりますし、
この手法に頼る限り、目分量での読み取り力は身に付きません。
「補助輪ありき」では、自転車に乗れるようにならないのと似ています。

冒頭で引用したJさんもお書きになっているように、
初学者の時点では、テキパキと解き進める姿を想像しがたいものですが、
練習次第で習熟度が増すものは、日常でよく見られることです。
自動車の車庫入れも、PCのキーボード入力も、スーパーのセルフレジも、
最初から上手くできる人はいないと思います。
よって、上達を信じて練習を重ねてほしいですね。

もちろん、「質」は「量」によって生まれるだけではなく、
基礎となる考え方を丁寧に学ぶことは大切です。
例えば、前線解析においても、資料内のどのような特徴に着目すべきなのか、
その理由も含めて学習しておかないと、正確な解析はできないです。

理屈をしっかり最初に学んだ後は、練習を十分に重ねることが大切で、
そのいずれも満たすようにトレーニングを進めていきましょう。




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第440話 「合格率」を気にしすぎない。
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一般財団法人気象業務支援センターの発表によりますと、
今回(第57回試験)の合格率は4.9%ということで、 前回に引き続き5%を下回りました。

この数字だけを見れば、「20人に1人しか通らないのか・・・。」となりますが、
本気で気象予報士資格を取得されたいのであれば、
この数値を過度に気にすべきでは無いと私は考えます。

厚生労働省によりますと、昨年(第115回)の医師国家試験の合格率は91.4%です。
「4.9%」と「91.4%」は全く異なる数値ですが、
だからと言って、「医師国家試験はイージー」とは言えないですね。

なぜなら、そもそも医師国家試験を受けるためには、
大学の医学部で6年間の勉強を積み重ねる必要があり、
さらには、医学部に入学するための受験勉強も突破せねばならないからです。
国家試験に通らなければ、医師免許が得られないという、
「ケツに火の付いた状態」で勉強を重ねた結果としての「91.4%」です。
むしろ、1割弱の不合格者が出ることが驚きです。

これに比べますと、気象予報士試験は受験生間での学習量の差が大きいです。
これは、多くの人に開かれた裾野の広い試験であるからです。
年齢・学歴・職歴などに関係なく、誰でも受験ができることは、
あらゆる人の日々の生活に気象が関係していることと通じています。

気象予報士試験の受験生の中には、将来の仕事の獲得のために、
人生の一時期を受験勉強に全力投入する方がおられます。
その一方で、就職や転職とは関係なく、少しずつ勉強される方もおられますし、
朝ドラを見て「とりあえず挑戦してみようか」と考える方もおられます。
試験に対する価値観やエネルギーの注ぎ方は人それぞれであり、
このとき「合格者数÷受験者数」を算出すると、約5%になるということです。

「%」で示されるものとして「確率」が挙げられますが、
「合格率(ごうかくりつ)」と「確率(かくりつ)」は別物です。
20本のクジに1本の当たりが含まれていれば、当選確率は5%ですが、
これと「合格率5%」は明らかに意味が異なります。

なぜなら、受験勉強の充実度によって、
個々の受験生の合格の可能性は全く異なるからです。
言い換えれば、一人一人の受験生にとっては「100分の5」ではなく、
「1分の1」か「1分の0」のどちらかです。

もし、絶対的な勉強量が足りないとか、学習方法が間違っているとすれば、
何回受けたところで、結果を出すのは厳しいです。
一方で、適切な方法で学習を続ければ、合格との距離は着実に縮まると考えます。
もちろん、その過程は決して平坦ではなく、合格された方の多くは、
「受験勉強は本当に大変だった」と振り返られるほどにハードなものです。
だからこそ、合格したときに涙が出るほど嬉しいのです。

あと1点、あと2点で、惜しくも合格に及ばなかった方も、
たくさんおられることでしょう。
どこかのラインで合否が分かれてしまうのが、試験が持つ厳しい側面ですね。
もし、気象予報士を志す気持ちに変わりが無ければ、
受験勉強を続けてほしいと思います。
年に2回挑戦する機会があるのが、この試験の良いところです。




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第441話 短期合格を勝ち獲るための2つの秘訣
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> 何度も間違えるポイントは、
> 「頭で理解するより、腹の底から理解すること」を目指して、
> テキストと動画を納得するまで見直し、知識の補強を行いました。
> そのおかげで、実際の試験でも似たような問題があることにも気づき、
> 「あ!これ前にやったぞ」と落ち着いて臨めたと思います。
■Aさん(男性・49歳・民間放送局報道記者・関西地方)の合格体験記より


> 過去問以外の勉強は時間のない自分にとっては誘惑と思って手を出さず、
> 徹底的に同じ問題を回しました。
■Kさん(男性・30代・物流系企業勤務・神奈川県)の合格体験記より


この合格体験記をお書きになったAさん・Kさんのお二人は、
わずか2回の受験で合格を勝ち獲られました。
一発合格される方はほとんどおられないので、相当なスピード合格です。

短期で合格を勝ち獲られる受験生に多く見られる特徴が2つあります。
まず、一定量の勉強時間をできるだけ毎日確保することです。

受験勉強を「コップに水を溜めること」に例え、
満水になれば合格すると考えた場合、
毎日コップに水を注ぎ込み続けたほうが、早く溜まりますね。

ここで、「毎日1時間」と「日曜日だけ7時間」は、
1週間の勉強時間としては同じですが、私は前者をお勧めします。

「勉強」と「勉強」の間隔が空いてしまうと、記憶が薄れ、勘が鈍るからです。
(コップの水で例えると、「一部が蒸発してしまう」というイメージです。)

週末しか勉強時間を確保できない方もおられると思いますが、
前に学んだ内容が薄れないうちに、復習を重ねていくほうが、
学習効率を高めることができるのです。

もう1つの特徴が、必要な学習に的を絞って集中的に取り組むことです。
気象予報士試験の場合、基礎を固めて過去問題を徹底理解することです。
一見すると、当たり前のことのように思われるかも知れないですが、
実際に貫徹するのは、決して簡単なことではありません。

「過去問題の徹底理解」は「過去問題をだいたい理解する」とは全く異なります。
もちろん、ある問題に対して8割方理解できるようになっている時点で、
かなり勉強を頑張ってこられたのは確かなことです。
しかし、2割も曖昧な点が残っているのであれば、
その過去問題の知見を生かして、応用を利かせることは難しいと考えます。
つまり、この段階では、まだ道半ばなのであり、
ここから理解度を一歩深めることにより、本試験への対応力は増すのです。

決まった学習範囲について、1つ1つの理解を深めていくのは、
とても地道な作業であり、泥臭い勉強です。
それゆえに「飽き」が生じてしまい、違うことをやりたくなってきます。
具体的には、次のようなことです。

・解いたことの無い問題をやってみたいので、古い実技試験に手を出す。
・出題されたことの無い問題について、その出題予測をする。
・現業者や研究者向けの専門的な資料・解説・論文を読み漁る。
・過去問題と関係しない内容について、学問的興味から延々と考える。

いずれも、知的好奇心の強い方だからこそ、
気象が好きだからこそ、引っかかりやすい点であると言えます。
もちろん、これらを趣味・学問として追求されるのであれば、
私が口出しするのは野暮というものです。

しかし、最上位の目的が試験合格なのであれば、
これらの事柄は、その最短経路上には存在しない、と私は考えます。

決まった範囲の学習をどれだけ究めることができるかが勝負であり、
受験勉強は、そういった点でストイックな面を持っているのですね。
特に、短期で合格を勝ち獲りたいとお考えの受験生は、
行っている勉強がゴールを向いているかどうかについて、
常に意識されることが大切です。




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第442話 適切な解法は必ず存在する。
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> 解答例を見ても、解説を読んでも、なぜそうなるのかがわからないのです。
> 解答例の内容そのものが理解できないものさえありました。
> 根本的にわかっていないことがあるのですが、
> それが何で、どうすればわかるのか、わからないのです。
■Qさん(女性・57歳・派遣社員・北海道)の合格体験記より


Qさんがお書きになった「分からないという感覚」は、
私が受験生時代にも無数に感じたことです。
「この問題に対する解答が、なぜこの内容になるんだ?」ということが続くと、
困惑と焦りと苛立ちが混ざったような感覚に襲われました。
気象予報士を志す多くの受験生が似たような経験をお持ちだと思います。

ここで意識していただくべきことは、試験の正答を得るという目的においては、
必ず合理的に納得できる道が存在する、ということです。

もちろん、学問的に奥深く進んでいけば、未知の世界は山ほどあります。
ある物事に対しての解釈について、意見が分かれているものもあるでしょう。
しかし、資格試験として出題される問題である以上は、
白黒(正誤)が定まっているものしか出ない、と考えられるわけで、
適切な思考過程を踏めば、正答に辿り着くようになっています。

日常生活や人付き合いにおいては、明確な正答が存在しないことだらけですが、
試験問題では、出題者の先生方があらかじめ解答を用意して下さっています。
いかに難問といえども、作問に不備が無い限り、この事実に変わりは無いです。
「答えは、存在するかも知れないし、存在しないかも知れない」ではなく、
「答えは必ず導き出せるになっている」ということを再確認するだけで、
少しは気持ちが楽になると思います。

分からない問題への解決法は、その内容によってさまざまですが、
多くの事例において言えることは、基礎事項を固めるということですね。
単なる知識の正確性が要求される問題ではなく、思考を要する問題においては、
複数の知識の組み合わせや積み重ねが求められています。
ここで糸が絡まってしまった場合は、分かるところまで戻って、
もう一度、知識を確認・整理・構築されることが大切ですね。

「何が分かっていないのか」を知ることこそ、理解への第一歩です。
基礎事項から少しずつ解きほぐしていきましょう。




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第443話 始めようと思ったときが適齢期
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> 定年退職後、日本全国のローカル線をめぐる鉄道旅に出ているときに、
> 何度か大雨や台風または地震により鉄道が運休する事例をみかけたことから、
> スタートは遅いですが、気象・防災のことを勉強しようと思った次第です。
■Cさん(男性・69歳・無職(元保険会社勤務)・千葉県)の合格体験記より


Cさんは69歳で気象予報士試験の合格を勝ち獲られました。
ちなみに、気象業務支援センターさんの発表によりますと、
第57回試験での最年長合格は69歳と記載されています。

年齢を重ねられると、記憶力や体力の低下をお感じになる方が多いようで、
確かに、その点だけに着目してみれば、
若いときに比べて勉強効率の低下は否めないように思います。

しかし、30代や40代の方々と比べて、平均的に見た場合、
会社等に拘束される時間が少ないと考えられますので、
勉強に費やせる時間を長く確保しやすい、と言えると思います。

また、どうしても就職活動に間に合わせたい学生さんであれば、
寸暇を惜しんで、強引に受験勉強しなければならないこともあるでしょう。
もしかすると、それは苦行に近いのかも知れません。

就職や転職といった短期的な目的でなければ、
肩の力を抜いて、自分に合ったペースで勉強を進めることも可能です。
また、人生経験が長いからこそ、判断力が高まるという側面もあり、
それは受験勉強においても、プラスになると考えます。

Cさんは体験記で書いておられますが、
受験期間中に白内障の手術を受けられたのだそうです。
手術後には視力も良くなったとのことで、これに伴う学習効率の高まりも、
合格を勝ち獲られた1つの理由だと思います。
年齢を重ねられても、高度な医療を受けることで、
カバーできる部分もあるのですね。

気象予報士試験の受験資格に年齢制限はありません。
勉強をお始めになりたいときこそが、最適のタイミングだと思います。




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第444話 「勉強の見える化」のお勧め
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> 少ない時間でも毎日勉強して習慣化していました。
> 勉強時間を見える化するために、
> スタディサプリというスマホアプリで記録していました。
> 平均すると平日土日ともに1日3時間ほど、試験直前は4~5時間ほど確保しました。
■Sさん(女性・20代・不動産事務・東京都)の合格体験記より


試験日に向けて、学習計画を立てる方は多いですが、
綿密な計画を立てても、実行できずに終わることもあると思います。

仕事の予定が急に入ったり、家事が立て込んだりすると、
なかなか計画通りに勉強が進まないことが多いですね。
よって、学習計画については、あまり細かく設定するのではなく、
大まかな流れを決めておかれると良いでしょう。

計画には、余裕も盛り込んでおかれると良いです。
これは突発的な予定が入っても、計画が破綻しないようにするためです。
たとえば、1週間のうち土曜日だけを「調整日」としておけば、
平日に計画していた勉強ができなくても、ここで取り戻せます。

そして、勉強計画を立てること以上に大切なのが、勉強の成果の記録です。
Sさんが行われたように、1日の勉強時間を記録しておかれると良いですね。

もし可能であれば、勉強時間だけでなく、
その日に行った勉強の内容も、簡潔にメモしておかれることをお勧めします。

これを続けることで、今までの受験勉強の足跡を振り返ることができます。
例えば、1か月でどれくらいの勉強ができたのかを可視化できますので、
次のステップに向けた計画を立てる際にも参考になるのです。

実績をもとにしない計画ですと、「あるべき理想的な姿」を想像しますので、
現実的には達成が難しい内容になりがちです。
一方、実際の成果に基づいたうえで、その延長線上に今後の計画を立てれば、
より達成が可能な内容になりやすいと言えます。
これにより、次回試験での自分に合った目標設定ができます。

「勉強の見える化」によって、より効率的に進めていきたいですね。




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第445話 優れた道具は学習効率を高める。
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> 実技2回目の挑戦にあたり改善した点(シニア向けの対策)は以下の通りです。
> <デバイダを使用しました> 寸法の移しとりが精度よくできるので、
> 速度算出などの正解率が向上しました。
> <虫メガネを使用しました> 矢羽根の数がよ~く見えます。
> 間違えることがなくなりました。
> <眼鏡を度数調整しました> 筆記紙面にピントが合うようになり、
> 画数の多い漢字も容易に書けるようになりました。
■Dさん(男性・65歳・デパートの清掃員(パート)・埼玉県)の合格体験記より


> 自宅で勉強することが苦手だったため、
> コワーキングスペースを契約し、利用させて頂きました。
■Tさん(女性・20代・大学生・静岡県)の合格体験記より


勉強量は「効率×時間」で決まります。
このうち、使える「時間」を長くするための方法として、
「ムダ時間の削除」「スキマ時間の活用」をメルマガでも提案してきました。

ただ、1日は24時間であり、そのうちの相当の部分が、
削ることが困難な時間(睡眠・仕事・家事など)であることを考えますと、
日々忙しい受験生にとって、確保できる時間には限りがあります。

そこで、正味の勉強量を増やすためには、学習効率を高めることも重要であり、
その手法として、「適切な道具を活用する」ことをお勧めします。

Dさんが紹介されているように、デバイダ・虫眼鏡・メガネについて、
自分に合ったものを用意することは大切です。
これらの道具に限らず、普段使っているものについては、
イマイチ合っていなくても、習慣(惰性)で使い続けてしまいがちですね。

同じようなことは、筆記用具・椅子などにも当てはまると思います。
例えば、「まだ使えるから」という理由だけで、
出が悪いボールペンを無理して使っていると、肩まで凝ってきそうです。
書きやすいボールペンが数百円で手に入り、
それで学習効率が高まるのであれば、乗り換えるべきです。

また、Tさんの合格体験記にありますように、
勉強のための場所を意図的に確保することも、
学習効率を高めるための方法の1つであると言えます。

自宅で快適に勉強ができるのであれば、それに越したことは無いですが、
有料の自習スペースのほうが効率性が高まるのであれば、検討の価値はあります。
社会人受験生で「満員電車の中での勉強はキツイ」ということであれば、
座席指定の列車を予約することも1つの方法です。

自習スペースも座席指定の列車も、お金がかかることですので、
「費用は承知のうえで、学習効率を高めたい」という方向けの提案です。
もし、資格試験の勉強が趣味・娯楽の範囲であれば、
多少非効率であっても、安く仕上げることが優先かもしれないですが、
資格を活用して、収束や転職を志すというプロフェッショナル志向であれば、
これらの費用については、前向きな投資です。

また、大切なお金をかけるからこそ、投じた費用を無駄にしないために、
特に気合いを入れて集中的に勉強しよう、という意思も働きやすいです。

「弘法筆を選ばず」と言いますが、弘法大師のような超人でも無い限り、
筆については大いに選ぶべきだと思います。




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第446話 実技試験はキャッチボールだ。
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> 模範解答にて明らかに試験当日にこんな言葉は浮かばないだろうと思うところは
> それを簡単な言葉に変換する練習もしました。
> そもそも常日頃から簡単な言葉で解答するように心掛けていました。
■まーくん(男性・20代・気象予報士受験生・大阪府)の合格体験記より


次の試験まで残り約2か月半となり、
実技試験の過去問題演習に、いっそう力が入る頃かとお察しします。

実技試験には、記述問題がたくさん含まれていますが、
解答において「出題者とのキャッチボール」を意識されることが大切ですね。
具体的に言いますと、次の2つが重要です。

 ・解答すべきことは、問題文に書いてある。
 ・採点者を意識して答案文を綴ること。

いずれも、「当たり前」のことですが、
よほど意識していないと、抜け落ちることも多いです。

まず、1つ目ですが、実技試験の問題文は結構長いです。
当該問の問題文だけでなく、大設問の冒頭文章にも目を通す必要があります。
問題文が長いということは、解答に対する条件・制約が多いことを意味し、
言い換えれば、「不自由な作文問題」だということです。

問題文の指示を1つ1つ踏まえたうえで、答案文を作成しないと、
得点が取れる解答にならないのであり、
必要であれば、何度も問題文を読み返すことが大切ですね。

実技試験は分量が多いゆえに、解答用紙を埋めることに躍起になりがちですが、
適切な答案が書けなければ、そこから得点は生まれません。
宅配ピザ店で、客の住所も十分に聞かずに、ピザを持って飛び出したところで、
正しく配達ができないのと同じです。

解答者(受験生)が誤解をしないように、
出題者は言葉を尽くして問題文を作成していると、私は感じます。
つまり、問題文の細かな指示は、同時に「ヒント」であるとも言えるのです。
まずは、じっくりと問題文を咀嚼しましょう。

そして、2つ目です。
マークシートと異なり、記述問題は機械による自動採点ではありません。
生身の人間である採点者の先生方が、答案に目を通されます。
ですから、「分かりやすく、読みやすい答案」が大切だと私は考えます。
美文字である必要は無いですが、読みやすい字であることが望ましいですね。

知識に自信が無く、「ものを知らないと思われたくない」という意識が強いと、
かえって小難しい表現を使ってしまう場合があります。
しかし、問題内容をしっかりと理解していれば、虚勢を張ること無く、
自信を持って、簡潔明瞭な表現ができるものですね。

上記の合格体験記において、まーくんがお書きのように、
答案では、できるだけシンプルな表現をされることが大切です。

解答例に出てくるフレーズを、他の問題で使えることも大切ですが、
フレーズを丸暗記するよりも、自分の言葉で言い換えることができれば、
答案作成力はさらに高まることでしょう。




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第447話 受験勉強を習慣化する。
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> 私は、合格の約1年前に出産をしました。
> 0歳児を育てながらの試験勉強は、やはり時間の確保が最大の課題でした。
■I.M.さん(女性・30代・フリーランス〈マスコミ関係〉)の合格体験記より


> 長丁場ですので、娯楽を過度に我慢したりはせず、
> 「勉強するときは勉強し、遊ぶときは遊ぶ」を心掛けましたが、
> 一方で、毎日少しでも勉強するということは意識していました。
■Gさん(男性・34歳・地方公務員・岩手県)の合格体験記より


> 育児・家事・仕事と勉強の両立は、時間との闘いでした。
■Pさん(女性・20代・派遣社員・埼玉県)の合格体験記より



気象予報士試験にしてから、合格を勝ち獲るまでの時間は、
どんなに早くても1年はかかるものです。

仕事柄、何百人もの合格者と伴走してきましたので、
中には1年を待たずして完全合格を勝ち獲られる方々もおられましたが、
あくまでもレアケースです。
2年以内に資格を取れるのであれば、短期合格だと言って良いと思います。

気象予報士を志す多くの受験生が、
I.M.さん・Gさん・Pさんのような「兼業受験生」であり、
本業に力を入れながらも、試験勉強に勤しむ必要があります。
この点が最も難しいところだと思います。

総勉強時間は「1日あたりの勉強時間×日数」で決まります。
多くの受験生にとって、前者の「1日あたりの勉強時間」は限られています。
ここで、「少しでも早く合格したい」と誰しも考えるところですが、
無理をして「1日あたりの勉強時間」を増やすと、継続が苦しくなります。
続かない勉強法は、その人にとって正しい勉強法では無いのですね。

続けられるかどうか、言い換えれば「習慣化できるかどうか」を考えたうえで、
学習計画を立てていかれることが大切ですね。
そのためには、Gさんが述べられているとおり、息抜きの時間を入れつつも、
1日の中に少しでも勉強時間を組み込むことで、
「受験勉強が含まれた毎日」を上手く回していくことが理想的です。
受験勉強の習慣化により、総勉強時間を蓄積していきたいですね。




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第448話 スタート地点は、ほぼ同じ
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> 「センター試験の理科は地学を選択していた」という謎の自信から
> ほとんど勉強せずに“お試し受験”をした結果、
> 問題に書かれている内容が全く分からず、実技試験の前に帰宅してしまいました。
■Vさん(男性・20代・放送局社員・東北地方)の合格体験記より


Vさんにとっては、苦い初受験の思い出ですが、
このエピソードは、気象予報士試験の性格を示しています。

ほとんどの受験生にとって、これまでの勉強歴は、
受験の優位性に大きく関係しない、ということです。

確かに、大学入学共通テスト(以前は「センター試験」)には地学科目があり、
そこでは気象に関する学習内容も出てきます。
もちろん、気象予報士試験の内容と共通する部分もありますので、
受験勉強の導入部でスムーズに進みやすいとは言えます。

また、もし高校で物理を選択していれば、
「熱力学第一法則」「ニュートンの運動法則」を知らないことは無いでしょう。

ただ、地学を選択しようと、物理を選択しようと、
気象業務法や数値予報について勉強することは無いですし、
数多くの資料を読み解いて文や作図で解答する問題とは、初対面になります。

気象予報士試験全体における学習過程を考えれば、
高校で地学や物理を選択することによって可能な勉強量の節約分は、
おそらく全体の「10分の1」に満たないだろう、というのが私の印象です。
言い換えれば、完全初学者が「100」の勉強量を必要とした場合、
少なくとも「90以上」は必要だというイメージです。

つまり、理科系の勉強歴があっても、この試験の合格のためには、
新たに学ばねばならないことも多いのですね。

と同時に、理科系の勉強歴を持たない初学者の方から見れば、
自分自身が「圧倒的に不利な立場」にいるわけではないことも示しています。
「熱力学第一法則」「ニュートンの運動法則」の勉強も避けて通れないですが、
文系であることを、殊更にマイナスだと意識される必要も無いです。

大切なのは、今まで何を勉強してきたかではなく、
これから、どれだけ勉強を積み重ねることができるか、ですね。
初受験では、大きな負け戦となったVさんですが、
その後の集中的な受験勉強で合格を勝ち獲られた経緯については、
合格体験記で綴って下さったとおりです。




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第449話 敵の数を減らせば、勝率は上がる。
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> 私は、学校の勉強や行事の都合上なかなかコンスタントに勉強できず、
> 常に時間に追われながらの受験でした。
> なので、1回の試験につき1科目のみを集中的に勉強して、
> 確実に3回で合格することを目標にしていました。
■Eさん(女性・16歳・学生・神奈川県)の合格体験記より


気象予報士資格を目指す多くの受験生にとって、日々の忙しい生活を回しながら、
受験勉強の時間を確保されることは至難の業だと思います。

そこでEさんが取った戦略は、1回の受験における科目数を減らすことでした。
これは実に有効な手段です。

「少しでも早く合格したい」と考えるのは、誰でも同じです。
ただ、受験科目数を増やせば、そのぶんだけ必要な勉強量も増えます。
そうなると、試験日までに確保できる勉強時間を増やさない限りは、
結局のところ、科目あたりの勉強が手薄になってしまうのですね。

学科試験の合格ラインは15問中11問正解です。
この中には、初めて出題されるような問題も含まれていますので、
それを除外した際に、かなりの正答率でなければ、合格できない仕組みになっています。
実技試験に関しても同様で、例えば当塾を経て合格を勝ち獲る受験生の多くは、
過去7~8年分の問題に対する理解度を相当に高める勉強をされています。

つまり、学科・実技ともに求められるハードルが高いので、
結果として、5%といった最終合格率になってしまうのですね。

ただ、学科試験に合格すると、申請により1年間は受験が免除されるのですから、
このシステムを最大限に活かして、勉強を進めていかれることが効果的です。

例えて言えば、一度に2人・3人の敵を相手に戦うのと、
1人の敵だけを相手に戦うこととの違いです。
敵の数、つまり目標とする試験を絞ることによって、戦いを有利にするのです。

「1試験で1科目の合格」というと、スローペースに見えるかも知れませんが、
これを実行すれば、3回で完全合格ということになり、十分に短期合格です。

受験サポートを仕事にしていて悔しさを感じることは、
「あれだけ頑張ったのに、何も結果が出なかった」といった事態になることです。
受験そのものを断念してしまいかねないほどのショックだと思います。
せっかく貴重な時間と労力を勉強に投入するのですから、
勝てる可能性をできるだけ高めていかれることが大切です。
1科合格より2科合格、2科合格より完全合格のほうが良いに決まっているのですが、
1科でも合格できることは、大きな前進なのです。

試験まで残り約1か月となりました。
冷静に考えますと、残りで行える勉強量は限られています。
こんなとき、「手当たり次第に過去問題を解き散らかす」というのが、一番の下策です。

複数科目の合格を目指して頑張ってこられた受験生の皆様におかれましては、
この時点で、現状の進捗を振り返られることをお勧めします。
そのうえで必要であれば、「重点的に集中する科目」を設定されることも1つの選択肢です。
良い形で受験勉強が仕上がることを願っております。




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第450話 出題予測は受験対策に含まれない。
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> 第57回は新傾向の問題があり、正直ほとんど解答できませんでしたが、
> 他の受験生のみんなも同じだと割り切りました。
■Iさん(女性・30代前半・ハウスメーカー事務・北海道)の合格体験記より


今回の第58回試験もそうでしたが、
学科・実技ともに、過去問題とつながりのある問題が多かったですね。

特に学科試験については、同じ内容が問われているものも見受けられました。
気象予報士として備えておくべき重要度の高い知識であれば、
複数回にわたり出題されることは、当然のことであると言えます。

実技試験に関しては、毎回の出題で採り上げられる事例が異なりますので、
まるまる同じ内容の問題が出てくることはありません。
ただ、過去問題演習が充実していれば、
「これは第○○回の実技1に出てきたのと似ているな」といったことに気付きます。
この気付きがあるからこそ、類推と応用がはたらくのであり、
結果として、短時間で適切な答案を書くことができるのですね。

この「類推と応用」にどれだけピンとくるかで、実技試験の勝負が左右します。
実技試験で「時間が足りない」とお悩みになる受験生は実に多いのですが、
「類推と応用」の利く問題が少なく、思考がグルグル回ってしまうからですね。
問題文を読んだ時点で、「これは○○と類似」と思い浮かぶくらいでないと、
あれだけの分量の問題を時間内に解いていくことは困難です。
「類推と応用」が利くかどうかは、過去問題演習の充実度で決まりますので、
過去問題演習が本質的に重要だということになります。

もちろん、過去問題演習をいくら頑張っても、新種の問題を短時間で解くことは困難です。
しかし、それに対する不安ゆえに出題予測をすることは、有効な対策では無いと考えます。
何が出題されるか全く分からない中で、時間と労力を割くのは非効率だからです。
また、新パターンの出題を事前に予測できた事例を、私は耳にしたことが無いです。

つまり、Iさんがお書きになったとおり、新傾向の問題に対する条件については、
「他の受験生のみんなも同じ」なのです。
そして、本試験で満点を取る必要は無く、合格点が取れれば良いのですから、
成すべきことは絞られます。
そうです。「基礎事項を固めたうえで、過去問題演習を充実させること」です。




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