藤田真司の気象予報士塾は、気象予報士試験合格をトコトン応援する通信型の塾(予備校)です。

無料メルマガ『めざせ!気象予報士・お天気キャスター』バックナンバー(第351話~)


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  351、腰を落ち着けて実技の学習に取り組む。
  352、他人の失敗に学び、学習効率を高める。
  353、緩急を付けて学ぼう。
  354、良質な学習時間は、良質な空間から生まれる。
  355、忘年会の席で、受験生であることを明かそう。
  356、腹落ちする勉強で、実力を伸ばす。
  357、まずは「0」を「1」にする。
  358、先輩合格者の足跡から学ぶ。
  359、社会人受験生にとって大切な3つのこと
  360、気象予報士2020プラン
  361、これからの勉強で未来を変える。
  362、エンジンを冷やさない。
  363、「+気象予報士」でレア度を高める。
  364、良質なアウトプットは、充分なインプットから。
  365、勉強を習慣化させるために大切なこと
  366、答案添削を受ける際に大切な2つのこと。
  367、勉強はいつからでも始められる。
  368、学歴不問の気象予報士試験
  369、自分を奮い立たせられる人が合格する。
  370、人気キャスターの足跡から学ぶ。
  371、習慣化こそ、合格への近道
  372、実技試験の勉強とは、問題と解答例を○○○こと
  373、試験当日のパフォーマンスを高めるために。
  374、さあ、次の試験へのレースが始まった。
  375、勉強時間を絞り出す方法
  376、「すべき勉強」から「したい勉強」へ。
  377、気象予報士資格がもたらしたもの
  378、短期間で実技の実力を高めるための勉強法
  379、合格を勝ち獲るための「仕掛け」を作ろう。
  380、受験して、自分の「本気度」をはかる。
  381、本居宣長に教わったこと
  382、新年の決意の前に、時間の大掃除
  383、過去問題演習、どこまで遡る?
  384、試験直前にて、一番大切なこと
  385、短期集中型と長期持続型
  386、この仕訳が効率的な学習を生み出す。
  387、自分の中にアンテナを立てる。
  388、その先にある合格を目指して
  389、実技試験は、学科試験とここが違う。
  390、「何回やったか」ではなく、「どれだけ納得できたか」
  391、受験勉強は「投資」だ。
  392、ガッツリ勉強で基礎を固める。
  393、効率的な実技演習のために大切な3つのこと。
  394、合格せざるを得ない環境を作る。
  395、タブレット端末で学習効率を高める。
  396、先輩受験生が背中を押してくれる。
  397、過去問題は活用することに意味がある。
  398、残り20日間ですべきこと
  399、試験を上手く乗り越える方法を、前回の合格者から学ぶ。
  400、次の試験での目標の決め方


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第351話 腰を落ち着けて実技の学習に取り組む。
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今回は、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。

> 実技の過去問では はじめはかなり時間を要するため 投げ出したくなると思います。
> そこはぐっと堪えて まずは時間関係無しに解ききりましょう。
■Pさん(女性・20代・フリーアナウンサー・東京都)

実技試験の問題演習で、時間を計って解くことについては、
あまり意味の無いことだと、私は考えています。

そもそも、過去問題演習の最大の目的は、自分の実力を査定することです。
「解ける問題」と「解けない問題」の仕訳をする作業だと言っても良いでしょう。

もちろん、本試験では75分という時間制限がありますので、
その時間内に解く実力を身につけなければなりません。
しかし、「時間を計ること」と「速く解けること」に因果関係はありません。
せいぜい、気持ちが多少引き締まる程度です。

100mを全力疾走するときの速さは、それを計測するかどうかではなく、
ランナーの走力によって決まるものです。
同様に、問題を速く解けるかどうかは、受験生の実力によって決まります。

鉛筆を速く動かしたところで、生み出される時間は限定的です。
白紙の解答用紙に、解答例を書き写す作業をしてみると分かりますが、
5分ほどあれば、写せてしまいます。
これが答案筆記にかかる実質的な時間です。
つまり、75分のうちの70分は、問題文を読んだり、資料を読んだり、
解答要素を考えたり、文の構成を考えたりする時間です。
これらは、主として頭の中で行う作業ですが、
意識的に速めることは、おそらく難しいだろうと思います。

私自身の感覚として、自動車のアクセルを踏むかのようにして、
自分の頭の回転速度を速めることはできないです。
つまり、問題を解くスピードは、時間を計るかどうかとあまり関係しないのです。

むしろ、制限時間を設けて問題を解くと、
残り時間が少なくなったときに、乱暴な演習になりがちです。
この体験記でPさんがお書きのように、特に最初は長い時間を要するのであり、
とにかく空欄を埋めることに躍起になってしまうようでは、
何のための問題演習であるのか、分からなくなってしまいます。

時間がかかっても良いから、しっかりと問題に向き合うことが大切です。
また、問題を解くこと自体は、実力査定をしているだけであり、
例えて言えば、ダイエット中の方が体重を計ることと同じです。
計測自体には、減量の効果はないのであり、
食事によるカロリーコントロールや運動があって、初めて効果につながります。
同様に、演習で見つかった誤答問題を理解・納得することによって、
勉強による実力向上となるわけです。

誤答を正答に変え、疑問を納得に変える過程こそ、
合格に至るまでの道を縮める方法であると、私は確信しております。
実力が高まれば、解答までに要する時間は自然に短くなっていきます。




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第352話 他人の失敗に学び、学習効率を高める。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 先生はたくさんの生徒を見た上で、陥りやすい失敗の傾向を書いてくれています。
> しっかりと読んで、忠実に、書かれていることを守る。
> 意外と難しいですが、それに尽きるような気がします。
■Qさん(女性・23歳・大学生・東京都)


受験勉強の過程では、多くの人が足を突っ込んでしまう「穴」というのがあります。
例えば、空気塊の断熱上昇を考えたとき、その水蒸気圧が減少することは、
意外に知られていない箇所の一つです。

空気は、窒素や酸素や水蒸気などの混合気体であり、
我々が「気圧」と呼んでいるものは、混合気体の分圧の合計です。
よって、空気塊の上昇に伴って、気圧が減少すれば、
それと同じ割合で、水蒸気圧も小さくなるということです。
ただ、空気塊が飽和しない限り、混合比や比湿については保存されるので、
水蒸気圧も同じように考えてしまうというのが、「穴」なのですね。
この点を正確に理解していないと、断熱上昇によって変動した水蒸気圧の値から、
相対湿度を求めるような問題で、ハマってしまうことになります。

これはほんの一例であって、一般知識試験に限らず、
専門知識試験・実技試験においても、陥りやすい箇所があります。
こういった部分を強調して、注意を促せるかどうかというのが、
私のような「教材屋」の仕事であるわけです。

地図を持たずに旅に出ると、どの場所が危険であるかどうかは、
自分自身がその場所に近づいてみないと知ることができません。
もし、「危険箇所マップ」のようなものがあれば、
それを予め頭の中に入れておくことにより、対策をとることができます。
自分だけの経験ではなく、大勢の他人の経験を取り込んでいくことができれば、
より効率的に学習を進めていくことができるでしょう。

そもそも、合格体験記というのも、他人の経験を文章化したものです。
成功例に着目すれば、「合格体験記」ですし、
失敗例に着目すれば、「不合格体験記」です。

「こうすれば、上手くいった」という点に目が行きがちですが、
「これはダメだった」という点にも、有益な情報が含まれています。
例えば、Qさんの場合、初回の受験の失敗要因として、
過去問題を丸暗記してしまい、応用力を付けられなかったことを挙げておられます。
先輩受験生の失敗から学ぶことで、より効率的に合格を目指しましょう。




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第353話 緩急を付けて学ぼう。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 出掛ける頻度を少しは抑えましたが、
> たまには趣味のサッカー観戦や友人とご飯に行ったりしていました。
> その分、勉強する時と遊ぶ時のメリハリを意識し、
> 勉強時は集中するようにしていました。
■Zさん(男性・25歳・電機メーカー勤務(職種:動力設備管理)・三重県)


気象予報士試験に合格するためには、相当な量の学習が必要ですが、
それゆえに、オーバーワークにも留意しなければなりません。
頑張り屋さんの受験生は、ついつい無理をしてしまうのですが、
体力の限界を超えてしまうと、学習効率は大きく下がってしまいます。

例えば、猛烈な眠気が襲ってくる中で、シャーペンなどで手の甲を突きながら、
何とか目を開けていよう、という経験をされた方はおられませんか?
私は学生時代、授業中にそういった経験を数多くしました。
でも、痛みを体に与えるのも、眠い中で無理に起きているのも苦痛です。
そうまでして目を開けていても、授業の内容はろくに頭に入りませんでしたので、
結局、苦しいだけの無駄な時間を貪っていたということになります。

眠いのは夜の睡眠が足りていないからであって、
この点が解決されない限り、根本的に眠気を解消することは無理です。

同じように、受験勉強を頑張るからといって、
眠気と格闘しているようでは、すでに質の良い勉強時間ではありません。
こんな状態で2時間ダラダラと引っ張るくらいなら、
冴えた頭で30分勉強したほうが得られるものが大きいと思います。
頑張るためには、しっかりと休むことが大切だということです。

学生時代には眠気と格闘することが多かった私ですが、
今はしっかりと夜に睡眠をとることを心がけています。
頭が鈍ってくる夕食後には、基本的に仕事をしません。
本などを読んでダラダラ過ごし、だいたい9時頃には寝てしまいます。

その代わりに、朝5時に起きた後はお客様からのご質問に対して、
回答のためのメール執筆を、片っ端から進めていきます。
睡眠を十分にとった後の朝は頭が良く動くので、はかどります。
同じような理由で、授業収録を行う場合は午前中がメインです。

受験勉強についても同じです。
そもそも、未知なるものを開拓し、消化して自分のものにするという過程は、
かなり頭がシャッキリした状態でないと出来ないことです。
良いコンディションであるからこそ、良い学習成果が得られるのであり、
そのためには十分に休息することが必須です。
また、Zさんが述べておられるように、たまには気分転換も大切ですね。

平日は仕事などで手一杯という方は、夜遅くに無理をして勉強されるよりも、
休日に質の良い勉強時間を長く確保するほうが良いです。
よく学ぶために、よく休みましょう。




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第354話 良質な学習時間は、良質な空間から生まれる。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 家に帰ってからやろうと思うと、テレビを見たりしてくつろいでしまい、
> ヤル気が落ちる気がしたので、必ずカフェに寄るようにしていました。
■京男さん(男性・40代・マスコミ関係(放送局勤務)・東京都)

朝起きてから夜寝るまでの時間は、次の2つに大別できます。
 ・社会生活を行ううえで、投入しなければならない時間
 ・自分のために使うことのできる時間

前者の時間は、勤務・家事など、いわゆる「仕事」と呼ばれるものが多いですね。
学生さんが学校に通うことも、この中に含まれると言えます。

気象予報士試験の勉強は、ほとんどのケースで自発的に行うものですから、
後者の時間を使って、進めていくことになります。

ただ、「自分のために使うことのできる時間」といっても、その用途は数多いです。
冬物の服を買いたい、映画を見たい、学生時代の友人と呑みに行きたい、など、
人それぞれに、「○○したい」というのがあります。

受験生であれば、「気象予報士試験に合格したい」という気持ちは同じですが、
受験勉強は単純な娯楽ではありませんから、
「受験勉強したい」と感じる方は決して多くないと思います。
(もちろん、受験勉強が楽しくなることこそが、理想的ではあります。)

つまり、受験勉強のための時間を十分に確保するためには、
私たちが持っている「○○したい」を上手くコントロールすることが大切です。
自分の中にある「やりたいことリスト」の優先順位に忠実に動くだけでは、
なかなか受験勉強のための時間を取れないことが多いと思います。

受験勉強を着実に進め、実力を高めていくためには、
意識的に学習時間の管理を行っていくことが大切であり、
合格体験記を見ていても、これに成功している記述が多いです。
だからこそ、合格まで実力を高めていけたということですね。

上記で引用した、京男さんの合格体験記では、
勉強時間を確保するために、「勉強を行う空間」を重視されています。
例えば、自分の好きなテレビ番組を、横で家族が観ているという状況では、
意志の強い受験生であっても、勉強に集中できるはずがありません。
質の高い学習時間を得るためには、自分に適した空間が大切です。
それは、図書館や自習室のこともあれば、カフェや電車内、
ショッピングモールの中に設置されている椅子であったりするわけです。
もちろん、自宅における特定の部屋という方もおられるでしょう。

受験勉強を行う場所を決めておけば、
その場所に入ることで、自分の中の「スイッチ」が切り替わることになります。
限られた時間でも、学習に没頭することができれば、効率性はアップします。

先日に塾で懇親会があったのですが、
宴が終わってから、自習室へ向かうと仰っていた方がおられました。
質の高い学習時間を得るために、工夫されている方は多いようですね。

月が替われば、いよいよ年末となりますが、
忙しい時期だからこそ、時間あたりの価値を高めていきたいものです。




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第355話 忘年会の席で、受験生であることを明かそう。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 私はどちらかというと「不言実行」で、合格してから報告するタイプなのですが、
> 職場も含めて身近な人には、気象予報士を目指していることを途中から公言して、
> 良く言えば退路を断つようにしました。
> 最後まで諦めずにやり通せば、結果は自ずとついてくるということを、
> 子供にも示したかったというのも大きいですね。
■Uさん(男性・47歳・保険会社勤務・神奈川県)


その人の人物像を知るための手がかりとして、
「大金を何に投じているか」というのがあります。

決してお金持ちというわけではないのに高級車に乗っている人や、
化粧品だけにはカネを惜しまない人って、いますよね。
命の次に大事なお金だからこそ、その使い道で人の価値観が分かります。

同じように、その人の人物像を知りたいときに、
その人が何に多くの時間を投入しているか、に着目すると良いでしょう。
1週間のうち、20時間くらいをゴルフに使う方もいるでしょうし、
オンラインゲームに費やす方もいるでしょう。
もちろん、投入した時間に応じて、その分野での知見・技術も高いはずです。

気象予報士試験の難度は決して低くありませんが、
最終的に合格で受験勉強を締めくくれるかどうかは、
結局のところ、どのくらいの時間を投入できるかという要素が大きいです。
いくら頭脳明晰でも、ほとんど勉強しないのであれば、合格は不可能ですよね。

つまり、その人が持っている「自由に使える時間」を、何につぎ込むかによって、
対価として得られるものは違ってくるということです。
気象予報士試験に合格できた人は、私が知る限り例外なく、
受験勉強のために相当な時間を注ぎ込んでいます。
言い方を変えれば、その価値観・方針があるからこそ、合格に至るのです。

Uさんがお書きになったように、身近な方々に受験生であることを公言されることで、
後戻りできない仕組みができ、受験勉強に対して時間をより投入しやすくなります。

12月も半ばに入り、忘年会に参加する機会も多い時期となりました。
宴席で思い切って、受験生であることを公言されてはいかがでしょうか。
きっと受験生活を後押ししてくれる材料になることでしょう。




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第356話 腹落ちする勉強で、実力を伸ばす。
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今回も、合格を勝ち取られた方の合格体験記を一部引用して、
それに私がコメントを加える形でご紹介いたします。


> 今までと確実に違ったのは、過去問への取り組み方の質です。
>
> 過去問で、
> ■分からなかったなーと言う所
> ■なぜこのような解答になるのか
> ■なぜこのような質問をしてきてくるのか
> ■採点者がどう答えて欲しいのかと言う問題の意図
>
> と言うような点を注意深くゆっくり意識しながら解き、
> 付箋で一問ずつわからない点が出たら印をつけて
> すぐに藤田先生に質問すると言う事を繰り返し行いました。
■Tさん(33歳・フリーター)


年末年始に長めの連休を取れる受験生の方々にとっては、
1月の試験前に向けて、まとまった学習ができる貴重な機会だと思います。

「試験が近づくと、どんな勉強をすれば良いか」というご質問をいただきますが、
基本的に、学習のスタイルに変わりは無いのですね。

具体的には、このメルマガでも何度も書いていますように、
目の前の問題が解けるようになることを常に最優先に考え、
「疑問点の炙り出し」「炙り出した疑問点の解決」を繰り返すことです。

試験まで残り約1か月であることを考えますと、
大半の学習を過去問題演習に充てる方が多いと思われますが、
留意したいのは、演習の方法です。
焦りに任せて、力業で大量の演習をこなすような学習は非効率です。

試験が近い時期になると、気持ちがソワソワしてくるのは当然ですが、
ここで、冷静な分析・検証を欠いたまま、強引に大量の演習を行っても、
時間と労力に見合った成果を出すことは難しいです。

過去問題というのは解くこと自体が勉強なのではなく、
解くことを通して弱点を見つけ、それを克服することこそが勉強なのです。
机に向かって問題に取り込んでいると、何となく勉強している気分になるので、
これが大きな落とし穴なのですね。

Tさんはお書き下さった合格体験記の中で、
> 過去問に関しては10年分以上を何度も何度も繰り返しやり、
> 答えが暗唱出きるほどまでやったのにやはり実技がどうしても受からなかった
と、改善前の学習スタイルを振り返っておられます。


もちろん、当時のご努力は相当なものだったと思いますが、
問題と解答例の組み合わせを一問一答的に頭に入れただけでは、
合格の目安となる7割の正答を得ることは厳しいです。
ご承知のとおり、過去問がそのまま試験に出ることは無いのであり、
応用を効かせなければ解けない問題が多いからです。

応用が利くということは、その内容について「腹落ちしている」ということです。
強引に大量の演習を繰り返すことに対して、私が否定的な立場を採るのは、
納得できていなくても、過去問題に正答できてしまうからです。
解答例の内容を再現できても、応用力を伴っていなければ、
本試験の問題は満足に解けないにも関わらず、
それで実力が付いたと思い込んでしまう恐れがあるためです。

もちろん、1つ1つの疑問に対して、十分に納得するためには、
時間もかかりますし、労力もかかります。
だからこそ、年末年始にまとまった学習機会を活用できる方は、
これを活かして、さらに受験勉強を前に進めて欲しいと思います。
中身の詰まった過去問題演習ができるかが勝負です。




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第357話 まずは「0」を「1」にする。
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お正月に、今年の目標や決意を立てられた方も多かったと思います。
計画を立てることは大切ですが、もっと大事なのは、まず一歩を踏み出すことです。
「三日坊主」という言葉はネガティブな意味合いで使われることが多いですが、
よく言えば「フットワークが軽い」ということです。

とりあえず一度かじってみて、その感触で先に進むかどうかを決めれば良いのです。
面白そうだと感じれば、もう少し奥へ行ってみれば良いですし、
合わないと思えば、すぐに止めれば良いということです。

「全ての条件が整ってから、始めることにしよう」と考えていたのでは、
いつまで経っても始めることはできないと思います。

特に、気象予報士試験の勉強は、受験生の生命や財産には直結しないので、
「必要に迫られて勉強を始める」といったケースは少ないです。
(敢えて言えば、未経験で気象会社に就職するような方だけでしょうか)
ですから、ご当人の意志が大きな要素になります。

受験勉強未経験の方であっても、このメルマガをお読みになっている時点で、
もう「初めの一歩」を踏み出しておられるわけです。
よって、「次の一歩」に進まれると良いでしょう。
書店で入門書を立ち読みしてみる、ネットで検索してみる、
といったアクションを起こすことで、自分に合っているかどうかを診断するのです。
当塾のTwitterをフォローされれば、毎平日に問題と解答が届きますので、
それも「次の一歩」の1つです。

もし、興味がいっそう湧いてくれば、さらなる次の行動に移れば良いですし、
イマイチだと思えば、引き下がれば良いだけのことです。
目の前の木にぶら下がっている果実が美味しいかどうかは、
実際に口に入れてみないと分からないからこそ、
「一口だけかじってみる」というアクションが必要だということですね。

第50回試験で合格された方々も、
湧き上がってきた動機に対して、軽いフットワークがあったからこそ、
受験勉強の最初の一歩を踏み出しておられます。
勉強を始めるキッカケは、人それぞれです。
ここでは、5名の方の「初めの一歩」を引用してみました。

> 49歳の誕生日を迎えたあと、
> 「来年は50歳か。このまま仕事だけをして50代を過ごしていいのだろうか」と考えたのが、
> 勉強を始めるきっかけでした。
■Aさん(男性・59歳・テレビ局勤務・北陸地方)


> 人生の折り返しの年齢になり、また、体調を崩すなどし、
> 人生にやっておけばよかったという後悔のないようにしようとの思いで、
> 気象予報士の勉強に取り組み始めました。
■Cさん(女性・40代・放送局勤務・東京都)


> 勤めていた会社の経営が厳しくなっていた際、
> 今後の将来も考えて何か強みとなる資格が欲しい、
> 転職も視野に入れる事ができる資格を取ろうと考えました。
■Zさん(男性・25歳・電機メーカー勤務(職種:動力設備管理)・三重県)


> 気象予報士の方と仕事をしたことがきっかけで資格のことを知り、
> 気象を知れば現在の仕事にも役立つと思い勉強を始めました。
■京男さん(男性・40代・マスコミ関係(放送局勤務)・東京都)


> 小さい頃から空や星に興味があり、気象に関する知識を深めながら、
> 国家資格まで取得出来るなんて、一石二鳥だなと思ったからです。
■Uさん(男性・47歳・保険会社勤務・神奈川県)


おそらく、最初の一歩を踏み出した結果として、
それほど興味がかきたてられることもなく、
本格的な受験勉強を始めなかった方もおられると思います。
(むしろ、そういった方々のほうが多数派かも知れません。)
それで良いんです。

人が1年に使える時間と労力は限られていますので、
自分にとって価値や興味があると感じられるものだけに、集中できれば良いのです。
だからこそ、それを見極めるためのアクションが大切なのですね。

一方、中には気象予報士試験の勉強が上手くマッチして、
資格取得を経て、その後の人生が大きく変わる方もおられます。
そういった可能性を探るためにも、行動が必要になります。

まずは、「0」を「1」にしてみる。
そのうえで、撤退するか、「2」に挑戦するかを見極めれば良いです。




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第358話 先輩合格者の足跡から学ぶ。
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> 藤田先生が発行されている試験直前のメルマガにも記載されておりましたが、
> 栄養補給には「羊羹」がいいと言及されておりましたので、私も過去の合格者に肖ろうと、
> 今回初めて一口羊羹を持参して、試験開始前に食べました。これが効いたのかもしれません。
■Uさん(男性・47歳・保険会社勤務・神奈川県)


試験当日の栄養補給として、羊羹を推奨して下さったのは、
第49回試験で合格されたNさん(男性・34歳・会社員(海運関係)・東京都)です。

Nさんが書かれた合格体験記を、第50回試験で実践されたのがUさんです。
もちろん、試験合格は日々の受験勉強によって成されたものですが、
Uさんにとっては、当日のパフォーマンスをさらに高めてくれたのかも知れません。

いつも、この時期にメルマガで書くことですが、受験勉強の手を少し緩めたうえで、
体調を整えていくことに重点を置いていくことが大切です。

寒い時期に寝不足が続き、疲労を溜め続けると、
風邪などの感染症に罹りやすくなります。
インフルエンザも流行していますので、特段の注意が必要です。

試験日が近づくにつれ、受験生の緊張も高まる一方だと思います。
不安に押しつぶされそうになったときは、合格体験記を通して、
過去の受験生の成功事例に学ばれることが大切です。

当塾のホームページには、180名様以上の合格体験記を掲載しています。
1人分の合格体験記を3分で読んだとしても、9時間以上かかってしまう分量です。
ザーッと流し読みしていかれるのも良いですし、
新しい試験回だけを丹念にお読みになるのも良いでしょう。

物事を成功させるためには、上手くいった事例に着目し、
それを自分の糧にすることが大切です。
会ったことのない先輩受験生の言葉を支えにして、
ぜひ気象予報士試験の合格を勝ち獲っていただきたいと思います。




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第359話 社会人受験生にとって大切な3つのこと
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> 私は「1日1題」を目標に進めていましたが、
> 社会人でシフト勤務ということもあり、突発的な仕事が入ってきたり、
> 体が疲れている日もあり、綿密な勉強スケジュールを立てていても
> 思うように勉強時間を確保できないことが多々ありました。
> そんな時は無理して勉強せず、まず先に仕事を片付け、
> 体を休めて、試験勉強だけに集中できる時間・環境を作ることにしました。
■Nさん(男性・26歳・航空関係(シフト勤務)・大阪府)


2019年が始まって1か月が過ぎましたが、目標に対する進捗はいかがでしょうか。
「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がよく使われるようになりましたが、
社会人として気象予報士試験の合格を目指す受験生の方々にとっては、
「ライフ」の中に上手く「スタディ」を入れ込むことに苦心されていることと思います。

家の外での仕事や、家の中での仕事が、日々の生活における最優先事項であり、
それらを片付けたうえで、初めて勉強に取りかかれるわけですから、
勉強だけに専念できる学生の方々とは、ハードルの高さが異なります。
私自身も、決して褒められた学生時代を送っていたわけではなく、
「勉強ができる環境」がありがたい(有り難い)ことだと気付くのは、
それが手に入りにくくなってからですね。

とは言え、今さら昔に戻れるわけではないので、
何とかして日々の仕事と生活を回しつつ、受験勉強を上手く進めねばなりません。
そのために大切なことは、次の3つだと私は考えます。

 1.アクセルの踏み過ぎに注意。
 2.スキマ時間を最大限に活用すべし。
 3.勉強時間ではなく、勉強期間で勝負する。

まず1ですが、やはり体調が良いからこそ、勉強もはかどるというものです。
私は20代の頃に、無理を重ねた生活をしていたことがありますが、
喉や鼻の奥が頻繁に炎症を起こし、口内炎もよくできていました。
おそらく、「休む勇気」が無かったのだと思います。
今はできるだけ無理をせぬよう自覚し、風邪や口内炎もめっきり減りました。
Nさんも合格体験記で述べておられるとおり、
突発的な仕事が入って忙しくなることもあるのですから、
そういったときには、学習計画を柔軟に変更されることも大切です。

次に、2です。
学生時代に「受験勉強」といえば、机に向かって長時間取り組むものでしたが、
社会人受験生にとっては、それだけが受験勉強ではないということです。
もちろん、決まった場所で腰を落ち着けて取り組めるのは理想的ですが、
そんな(贅沢な)時間を確保できない方も多いはずです。
そこで、こうした「勉強時間」のイメージを取り払うことが大切です。
「勉強とはスキマ時間を使って行うのが基本」と考えるのです。
電車の中で、参考書を広げている人がいます。
車の中で、英会話のシャドーイングをしている人がいます。
待ち時間に、スマートフォンで講義を受けている人がいます。
以前から提案してきましたが、すでにイヤホン・ヘッドホンと言えば、
無線接続のタイプがスタンダードになりつつあります。
もし、二宮尊徳(金次郎)が現代の世に生まれていれば、
便利な機器を活用して勉強に励んだに違いないと私は思います。

そして、3です。
社会人受験生が1日に確保できる勉強時間は決して長くありません。
前述のスキマ時間をかき集めたとしても、
1日2時間の勉強時間を確保できる方は、少数派だと思います。
だからこそ、1日あたりの勉強時間ではなく、勉強期間を延ばすことが大切です。
気象予報士試験の合格のためには、相当な学習量が必要ですから、
「瞬間値」ではなく、「積算値」こそがものをいうのです。
積算学習量を積み上げるためには、無理のない範囲で、
受験勉強を上手く日々の生活に組み込んでいくことが大切です。

お気づきかと思いますが、1と2から3を導き出すという関係ですね。
日々の受験勉強にかかる負荷を小さくすることが、学習習慣の定着につながり、
結果として、毎日の勉強が試験合格に至るまで続いていく、という考え方です。

限られた時間と労力の中で、結果を出すためには、
明確な戦略を描くことが必要だと思います。
1月の試験直後の今は、8月の試験に向けて最も時間的余裕がある時期です。
この期間を大きなアドバンテージにしたいものです。




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第360話 気象予報士2020プラン
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1月の試験が終わって、ちょっと一休みされている受験生もおられる一方で、
この時期は、新たに気象予報士試験に挑戦される方も多いのです。

もうすぐやってくる春は、生活が新たに切り替わる季節です。
学生の方であれば、入学・進級・卒業があり、
社会人の方にとっては、異動が多い時期でもあります。

特に、今年は5月に新元号に切り替わるということもあり、
「新たな出発」という気持ちが、普段よりも強まりやすいかも知れません。

そこで、今回はこれから気象予報士試験にチャレンジする方へ、
合格に向けた行程をご紹介したいと思います。

目標の立て方は、人それぞれでしょうが、
これまでと同じように試験が実施されるとすれば、
考えられる最短ルートは、2020年8月試験での完全合格です。
ご承知のとおり、東京五輪が行われる時期とほぼ一致します。

学習の流れは、2019年8月試験で一般知識試験合格、
2020年1月試験で専門知識試験合格、
2020年8月試験で実技試験合格、という形を想定しています。

初学者の受験生が、まず目指すべきは一般知識試験の合格です。
よって、一般知識試験の学習に集中して、進めていかれると良いでしょう。

中には「一般と専門を同時並行で」とお考えになる方もおられます。
確かに、主に専門知識試験で出される問題内容が、
一般知識試験で出題されることもあります。

一方、専門知識試験の学習内容の多くは、一般知識試験の内容を土台としており、
順序としては、一般→専門で進めたほうが効率的です。
よって、まずは一般知識試験の学習を十分に進めたうえで、
目処が付いた時点で余裕があれば専門知識試験も、の方針をお勧めします。

学習法はいたってシンプルです。
基礎事項をがっちり固めた後で、過去問題演習の充実させることに尽きます。
過去問題の演習は大切で、学科対策には少なくとも10年分は必要だと考えます。

ただ、ベースとなる知識が無いまま、いきなり過去問題演習に入るのは非効率です。
基礎知識が抜けていると、問題演習の過程において、
問題と解答例を我流の論理で強引に繋ぎ合わせる癖が付きやすいからです。
これを後から修正するためには、1つ1つの知識を棚卸しして、
適切かどうかを検証する必要があり、かなり面倒くさいことになります。
まずは、網羅的に知識を習得していき、ある程度の知識が固まったうえで、
過去問題演習を行っていかれることをお勧めします。

2019年8月試験で、一般知識試験に合格できれば、
2020年1月試験で、専門知識試験の合格を目指すことになります。
ただ、期間が5か月しか無いので、可能であれば、
2019年8月試験までに、ある程度の基礎事項を学んでおかれたほうが有利です。
これが一般知識試験対策としても役立つかも知れないことは、前述のとおりです。

2020年1月試験で、専門知識試験に合格すれば、
7か月後の実技試験に向けて全力投球、という流れですね。

今(2019年2月)から勉強を開始して、2020年8月試験で合格すれば、
全体の勉強期間は1年半ということになります。
2~3年でも順調だと言えますので、1年半なら明らかに短期合格です。
ということは、一週間あたりの学習量を増やす必要があるということです。

当塾を経て合格された方々の合格体験記を見ていますと、
平日にスキマ時間を活用するといった工夫が大切なのは勿論のこと、
休日を活用し、週に一度くらいはガッツリと勉強時間を確保するなどして、
集中的に学習を進めるといった事例が多いですね。

もちろん、今回にご紹介したケースは、あくまでも「最短ルート」であり、
その道を駆け抜けるには、時間・労力・効率性が必要です。
受験生ご自身の環境に合わせて、合格プランを作ることが大切ですし、
途中で状況が変わったときには、計画の組み直しも必要だと思います。

気象予報士試験の難度はかなり高いので、トータルの勉強量は相当ですが、
だからこそ、合格を勝ち獲ったときの喜びは大きいと思います。
2020年の合格を目指して、一念発起してみませんか。




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第361話 これからの勉強で未来を変える。
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> 大学に入学して気象学と出会い、興味を持ったことが受験のきっかけでした。
> 学生時代のまとまった時間がとれる頃から勉強を始めたにも関わらず、
> 合格までに長い時間がかかってしまったのは、
> ほぼ独学で合格を目指したからだと思います。
■Kさん(女性・24歳・会社員(技術職)・北海道)の合格体験記より


「文系なので勉強についていけるか心配です」というご相談をよくいただきます。
確かに、気象予報士試験には、数学や物理の知識も必要ですので、
こうした分野の学習経験をお持ちの方は、そのぶんだけ勉強時間を短縮できます。

ただ、講師としての指導経験から、率直な感覚を申し上げますと、
理数系アドバンテージは、それほど大きくないという印象を持っています。

なぜなら、一口に「理系」「文系」といっても、
少し畑が違うだけで、勉強する内容はまるで異なるからです。
例えば、同じ理科系統でも、「天気(てんき)」と「電気(でんき)」では、
学習内容において、ほとんど重複は無いはずです。
(敢えて言えば、「雷」くらいでしょうか。)

それどころか、同じ「気象の勉強」と言っても、
気象予報士資格を取得するための勉強と、大学で気象学を専門的に学ぶことには、
具体的な学習内容において、かなりの違いがあります。

気象予報士試験は、学習範囲が広いのが特徴です。
基礎的な気象学だけでなく、法規の学習も必要ですし、
気象庁の観測業務や予報業務についての勉強も求められます。
天気図などの資料に対する解釈を文や作図で解答するといった能力も問われます。
これは、予報業務における現象の予想を行うための資格だからですね。

一方、高等教育機関での気象学は、研究者になるためのものです。
未だ解明されていない事柄を探求するための能力を身に付けることが必須です。
そのためには、高度な数学と物理学を徹底的に学ぶ必要がありますし、
英語で論文を読んだり書いたりする力も求められます。

つまり、「気象の勉強をしています」と言っても、
両者はかなり学んでいる部分が異なっているのです。

おそらく、「環境」「天文」「海洋」といった、
気象と近い分野を専門職種とする方々にとっても、
気象予報士試験に対する有利性は意外に小さいと思います。
まして、他の理科系分野であれば、なおさらです。

「文系だから圧倒的に不利かも・・・」と尻込みするのも、
「理系だから圧倒的に有利だろう」と舐めてかかるのも、適切な姿勢ではなく、
結局のところ、これからの受験勉強にどれだけのパワーを注ぎ込めるかが、
合否の結果に大きく関係してきます。

また、この体験記をお書きになったKさんは、
独学が回り道になったと分析されていますが、これは当然のことです。

独学を山登りに例えれば、単独登山です。
険しい岩場が出てきたときも、自分で攻略法を考える必要があります。
分岐点で複数のルートが出てきたときは、自分で地図を見て、
相応しいと思われる行き先を決めなければなりません。

一方、受験勉強において、すでに合格した人間のサポートを受けるのは、
例えてみれば、登山ガイドを雇うようなものです。
「この岩場を登るには、滑り止め付きの軍手があったほうが良い」とか、
「実はAルートよりもBルートを通ったほうが近道」といった、
コースを熟知した経験者だからこその意見を、自分の行動に反映できます。

「単独登山のほうが、登頂できたときの達成感が大きいのでは?」
という考え方があることに対して否定はしません。
ただ、誤解の無いように言っておきますと、
ガイドにおんぶしてもらって山に登っていくわけではないということです。
あくまでも、ガイドは荷物も持たずに、横にいるだけの存在であり、
受験生が重い荷物を背負って「山に登る」こと自体に何ら変わりは無いのです。

もし、受験勉強そのものが人生の目的であれば、
時間を気にすることなく、勉強を継続できると思います。
一方、資格取得を踏み台にして達成したい目的があるのならば、
合格はあくまでも通過点であり、もっと言えば出発点に過ぎません。
そういった志を持つ受験生の方々には、できるだけ早く合格を勝ち獲って、
進みたい道を歩んでほしいと思います。




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第362話 エンジンを冷やさない。
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> 日々コツコツと1題だけでも、1問だけでも、穴埋め問題だけでも続けていました。
> (#50回試験の時に燃え尽き症候群となって、合格発表まで勉強から離れていました。
> そのため、不合格後に勉強を始めるのがとても辛く、
> また、出来ていたはずの問題すら解けない日々が続いてしまいました。)
> 習慣を作るのも大変だけど、習慣を辞めて再び習慣化するのは更に大変でした。
■Kさん(男性・40歳目前・会社員)の合格体験記より


プロの演奏家やアスリートのドキュメンタリー番組などを見ていますと、
「1日でも練習を怠ると勘が鈍る」といった言葉が出てくることがあります。
これは、広く解釈すると、多くの人に当てはまることです。
身近な例で言いますと、週末の2日間休んだ後の月曜日は、
ちょっと気合いが入りにくいという経験をされる方も多いと思います。

気象予報士試験の勉強においても、似たようなことが言えます。
もちろん、受験生によって学習スタイルはさまざまであり、
仕事の忙しい平日を避け、週末に絞って勉強される方もおられるでしょう。
ただ、ハッキリと言えるのは、ブランクが大きくなるほど、
勉強を再開するときに大きな負荷が必要になるということです。

これは、自転車に乗ったときに、静止した状態から加速する場合と、
ノロノロであっても動いている状態から加速する場合を比べたとき、
前者のほうがより大きな力を要することと似ています。

合否が分からない段階で、勉強に手が付かないのは仕方ない面もありますが、
次回試験を受ける必要があることが明らかになった時点で、
ペダルを強く踏み込むことが大切です。

この合格体験記をお書きになったKさんも、
「合格発表まで勉強から離れていました」とありますように、
惜しくも第50回試験で合格に及ばなかったことが分かった段階で、
すぐに受験勉強を再開されています。
(これは、メールによる個別指導サービスの履歴からも確認できます。)

もし、Kさんが2018年10月の合格発表後も、
なかなか受験勉強を再開できなかったならば、
第51回試験での合格は厳しかったと私は分析しています。

資格試験の勉強には非情な一面があって、
全体の道のりを100としたとき、仮に到達度が95であったとしても、
表面的には0と同じに見えてしまうのです。
勉強の成果を直接的に示すものは、合格証だけだからです。
もちろん、勉強すること自体に価値があるのも事実ですが、
あくまでも資格を取得するという観点のみから見れば、
「3日で投げ出すこと」と「合格直前で諦めること」は等しく映ってしまいます。
実際には、0と95との距離よりも、95と100との距離のほうが、
圧倒的に小さいにもかからず、です。

気象業務支援センターの発表によりますと、
第51回試験での合格率は、わずか4.7%だったそうです。
逆に言えば、95.3%の方々は残念ながら合格に届かなかったわけですが、
可能であれば、合格という形で受験勉強を締めくくってほしいと思います。
難関だからこそ、通り抜けられたときの達成感は大きいです。




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第363話 「+気象予報士」でレア度を高める。
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> アパレルに携わっていることもあって日頃から天気予報を見て着る服を考えたり、
> 店頭のレイアウトの参考にするのは習慣です。
> この資格が仕事に直結するわけではないのですが、
> 興味がある天気予報に関わる資格ですし、
> 合格率が低い難しい資格であるからこそ目指してみようと思いました。
■Qさん(女性・43歳・アパレル会社社員(百貨店勤務))の合格体験記より


「気象予報士を目指している」という周囲の人に漏らすと、
「キャスターにでもなるつもりか?」といった反応が返ってくることもあると聞きます。

確かに、気象報道の仕事に携わりたいという目標を持った方も多いですし、
当塾を経て気象予報士になられた後、キャスターの仕事をされている方は、
私が確認しているだけでも20名以上にのぼります。

ただ、そういった方々は、全体から見ればほんの一部です。
そもそも、気象予報士を志す動機として最も多いのが、
「今の仕事に何らかの形で役立てたい」ということであり、
200ほどある合格体験記をお読みになれば、それを実感できると思います。

気象予報士の資格は、気象の専門職に就くためだけのものではありません。
天気は、誰にとっても大きく関係することだからです。

むしろ、気象業界で仕事をしたいということであれば、
「気象予報士資格は持ってて当たり前」は言い過ぎかも知れませんが、
少なくとも、「持ってて珍しい資格」ではないわけです。
言い方を変えれば、「持っていて有利になる」というよりも、
「持っていなければ不利になる」といった空気のほうが強いという感覚です。

一方、天気が我々の生活にこれだけ密接に関係するという事実がありながら、
全国の気象予報士資格を持つ人は、ようやく1万人を僅かに超えた程度です。
人口比で言えば、「1万人に1人以下」という稀少な資格です。

気象業務法が改正され、気象予報士の制度が始まって約25年が経ちますが、
前回の試験(第51回試験)でも135人しか合格していないのですから、
今後もその人数が爆発的に増えるとは思えません。

このように、気象予報士資格そのものが「レア資格」であるというのは、
それと何かを組み合わせることによって、さらに稀少性が増すことを意味します。

誰でも社会人としての経験を重ねれば、その道の達人になっているはずです。
おそらく、周囲で一緒に仕事をしている人も、同じような熟練度だと思いますので、
その世界での基準だけで見れば、稀有な人材とは言えないかも知れません。
しかし、そこに別の専門性(気象予報士とは限りません)が加われば、
その人だけのモノの見方・思考ができるようになり、レア度が高まるわけです。

この体験記を書かれたQさんは、アパレル業界で仕事をされています。
気象に関する資格を取得されたQさんだからこそ、
気象またはアパレルのいずれかの世界しか知らない人には、
見えないものがあるのだと確信しています。

また、昨年に当塾にて行った懇親会では、
医師で気象予報士資格を取得された方にもご参加いただきましたが、
通常のお仕事に加え、「気象と健康」という切り口でも活躍されているそうです。

「本業+気象予報士資格」という組み合わせが、
どんな効力を発揮するのかは、予測できないだけにワクワクします。
だからこそ、ぜひ多くの方々に気象予報士を目指してほしいと思います。




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第364話 良質なアウトプットは、充分なインプットから。
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> 耳にタコができるほど言われているかもしれませんが、
> 実技試験は一般・専門知識があやふやでは解けません。
> その知識があるのとないのでは、解答の着眼点が変わってくると思います。
> 解答に似た答えが書けても、得点になりにくいのではないでしょうか。
■Yさん(20代・フリーター・東京都)の合格体験記より


多くの受験生にとって、実技試験は「高い壁」であるとされます。
マークシート方式の学科試験ならば、消去法で選択肢を絞ることもできますが、
白紙に文や図を綴っていかねばならないのが、記述試験の難しさです。

「適切な答案を書くためには、どうすれば良いか?」といった悩みは、
多くの受験生にとって、解決すべき大きな課題であるわけです。

ただ、作文や作図の難しさは、単なる技術論で済むとは限りません。
もし、アウトプットすべき知識そのものに不足している部分があれば、
作文力・作図力を磨くだけでは、解決できないのです。

私は日々、多くの答案と向き合っていますが、
何らかの形で、知識を補強すべき部分があるケースはわりと多いです。

特に、実技試験において重要な学科範囲の知識として、
 ・大気の熱力学(一般)
 ・大気の力学(一般)
 ・気象災害(専門)
 ・防災気象情報(専門)
の単元については、特に重要度が高いと言えるでしょう。

もちろん、上記以外の範囲が、実技試験に出てくることも良くあります。
例えば、衛星画像やレーダーを適切に読み取るためには、
専門知識試験における、当該単元の学習が必要です。
また、先日の第51回試験の実技1では、問3(3)において、
数値予報モデルに関する知識も問われています。

実技試験の過去問題演習を行ったうえで、
誤答に対しては、何が原因であるのかを分析されることが大切です。
もし、知識の抜けがあれば、補強学習で埋めたいですね。

十分な知識を備えたうえで、作文や作図のトレーニングを積めば、
より効率的に実技試験の力を高めていくことができると考えています。




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第365話 勉強を習慣化させるために大切なこと
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年初から勉強を開始された方、新年度から勉強を開始された方、
そして、令和の始まりとともに気象予報士を志す予定の方もおられることでしょう。
最初の一歩を踏み出すことは、とても大切なことですね。

次に成すべきことは、勉強を習慣化させることです。
習い事であっても、上達する人というのは、それを続けられる人です。

試験勉強には、短期勝負のものと、長期勝負のものがあります。
100m走などのように、スタートからゴールまで全力疾走で走り抜けることで、
一気に実力を高め、合格まで持っていくのが短期勝負です。

一方、長期勝負というのは、フルマラソンを走り抜くようなものです。
どんな素晴らしいランナーでも、100m走のダッシュのまま、
42.195kmを走り続けることはできません。
途中でバテないように、その人に応じたペースで走り続けることが求められます。

気象予報士試験は、この長期勝負の部類に入ります。
受験生のほとんどは、仕事・家事・学業などを抱えておられる方で、
1日・1週間に費やせる勉強時間が限られているため、
なおさら長期的な計画を立てて、学習を進めていくことが求められます。

このとき、勉強を上手く進めるコツは、「頑張りすぎないこと」です。
もちろん、頑張ること自体は大切ですが、度を超すと継続の妨げになります。

多くの受験生が、勉強を始めたばかりの段階ではモチベーションも高く、
つい力を入れすぎて、勉強を進めてしまう傾向があります。
例えて言えば、マラソンのスタート時に、一人だけ先頭集団から飛び出し、
猛ダッシュで走っていくようなものです。
これをやると、習慣化が定着する前の段階でスタミナ切れを起こします。

先ほども触れましたように、もしゴールが100m先にあるのなら、
この手法で一気に合格を勝ち獲ることも可能なわけですが、
ゴールが50km先にあるのなら、それに応じた進め方が必要になります。
つまり、ある程度の余裕を持たせて走ることが大切だということです。

合格体験記を見ていますと、勉強時間がかなり多い方もおられますが、
これは勉強が軌道に乗ってからのことだと私は解釈しています。
慣れるまでは、少しずつ負荷を高めていくのが良いです。
受験勉強の習慣化に成功すれば、長時間の勉強もこなせるようになりますが、
初学者の方がいきなりハードな負荷を背負うと、潰れる危険があります。
バーベルの重さは、少しずつ増やしていくのが良いのです。

習慣化のためには、1回あたりの量を増やすことよりも、
短い時間でも良いので、回数を増やすことのほうが大切だと考えます。
極端に言えば、10分間であっても、テキストを広げる、スマホで講義を聴く、
過去問題に取り組むといったことを行われるのがお勧めです。
「なるべく勉強に全く触れなかった日を作らない」
「できるだけ勉強から次の勉強までの時間を短くする」
という点を大切にしながら、取り組んでいかれると良いと思います。

富士山に登ることを考えたとき、斜面にハシゴをかけて登るのは大変です。
しかし、富士山の周りをグルグル取り囲むように螺旋のスロープがあれば、
歩くときの負荷を小さくできることでしょう。
無理の無い範囲で進めることが、勉強習慣の定着につながると私は考えます。




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第366話 答案添削を受ける際に大切な2つのこと。
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> 藤田塾の売りはやはり、無制限添削だと思います。
> 恥ずかしがることなく、何度も添削をお願いすることが合格への近道だと思います。
> もちろん添削を依頼する前に、過去の添削結果の確認を忘れずに。
■Bさん(男性・40代・エネルギー会社勤務・東海地方)の合格体験記より


文や作図での解答が求められる実技試験では、
「答案の作り方」を習得していくことが求められます。
マークを塗りつぶすだけで解答できる学科試験と大きく異なるところです。

記述式の実技試験において効率的に実力を高めるためには、
Bさんが体験記で述べておられるように、答案添削を受けることが効率的です。

ただ、答案添削が大事だからといって、
やみくもに添削を受ければ良いわけでは無いです。
私は、2つの留意点があると考えます。

1つ目は、問題の理解度を充分に高めることです。
答案添削は、あくまでもアウトプット技術の向上を第一の目的としています。
アウトプットを行うための前提として、問題の理解が的確であることは必須です。
言い換えれば、「問題内容が理解でき、答案も作れる」という状況が前提です。
問題内容を充分に把握できていない状況で、
無理矢理に答案を作っても、あまり意味が無いです。
この段階で必要なのは答案添削ではなく、問題内容を理解することです。
(当塾の受講生であれば、「教材を受講する」「講師に質問する」ことです。)
つまり、添削は中級以上の受験生にとって効果的なトレーニング法なのです。

問題内容を充分に掴み、それに基づく答案が書けるようになった時点で、
答案の添削を受けることの効果が出てきます。
自分では気が付かなかった課題が炙り出され、
それを解決することによって、さらに実力を高めることに繋がります。

これが、2つ目の留意点につながってくるわけですが、
添削というのは、受けっぱなしでは全く意味が無いのです。
炙り出された課題は解決しない限り、弱点(=失点要因)のままです。
そして、私自身も痛感していますが、人間は実に忘れっぽい生き物です。
再演習で同じ轍を踏むことの無いよう、十分な復習が大切です。
課題を解決し、それを定着させてこそ、次回演習での正答につながります。

実際のところ、答案添削を活用して、実力をグイグイ高めていく受験生は、
この点(炙り出された課題の解決)が徹底していることで共通しています。
誤解されがちですが、数多くの添削を受けるから、実力が高まるのではなく、
添削結果を通して、その内容を自分のものにできるから、実力が高まるのです。

前回のメルマガで、受験勉強を螺旋状のスロープに例えました。
スロープ(坂道)であるから、頂上に近づくわけであって、
平坦な道をグルグル回っているだけでは、距離は縮まりません。
疲れるだけで効果の出ない勉強なら、しないほうがマシです。
大切な時間と労力を投入するのですから、結果の出る方法で取り組みたいですね。




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第367話 勉強はいつからでも始められる。
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> 20代からずっと釣りを趣味としており、
> 退職後は小型船を購入し、船釣りを始めました。
> 海では常に気象の急変に気を付けなくてはならず、
> 気象には若い頃から関心がありましたので、
> これを機会に気象予報士試験の勉強を始めようと思いました。
■M.Mさん(男性・72歳・無職・徳島県)の合格体験記より


「学生」という言葉を耳にすると、若い人を連想することが多いですが、
本来、人間は「生涯にわたって勉強する動物」だと思います。

生きていく過程で生じた課題を解決するために、学びは必要ですし、
何よりも、知らなかったことを新たに知ること、
気づかなかったことに新たに気づくことは、純粋に楽しいです。
例えば、私は毎日曜日に日本経済新聞に掲載される、
クロスワードパズルに取り組んでいますが、
答えがたくさん分かると嬉しいものです。

気象予報士試験に挑戦されるにあたって、
「年齢とともに、記憶力の低下を感じる」というお声もよくいただきます。
私は現時点で41歳であり、そもそも昔から暗記が苦手だったので、
(毎週月曜日にあった20問の英単語テストで、5問くらいしか正答できなかった。)
ご相談の内容を実体験として共有することはできないのですが、
実際にそういった悩みをお持ちの方は多いです。

もちろん、気象予報士試験には資料の持ち込みが認められていないので、
膨大な量の知識を頭に入れることが求められています。
よって、記憶力は高いに越したことは無いのですが、
この試験で求められる多くの事柄は、理解であり、納得です。
きちんと筋道を立てて、頭の中に収納できた知識は、
そう簡単に忘れるものでは無いと思いますし、
記憶が薄れても、再学習によって再び鮮明になるものだと考えています。

M.Mさんが合格体験記の本文で書かれている、
「覚えるより慣れろ」というメッセージは、強引に脳内に焼き付けるのではなく、
学習した内容が自分のものになるまで丁寧に理解に努めることが大切だ、
という意味だと私は解釈しています。

年齢を重ねるにつれて、若いときに比べると体力も低下しますので、
例えば、「3時間ぶっ続けで、気象業務法に取り組んだ」といった学び方は、
なかなか難しくなってくると思います。
長時間にわたって細かな文字を追うことが辛く感じる方も多いです。

そこで、1回あたりの勉強量をガッツリ行うことではなく、
「小刻みに」かつ「長期にわたって」、学習量を蓄積することをお勧めします。
また、「書かれた文章を読む」という学習法だけでなく、
オーディオブックのように、音声で耳から学習することも1つの手法ですね。

やり方に工夫を加えれば、勉強の負荷はもっと小さくでき、
勉強の成果はもっと大きくできると、私は確信しています。




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第368話 学歴不問の気象予報士試験
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> 小さいころからテレビに出る気象予報士に憧れていたが、
> 高校の進路選択の際に、気象予報士になる為には、物理が必須という話を聞き、
> 当時理系だったが、物理が壊滅的にできなかったので、
> よく調べもせず勝手に思い込みであきらめていた。
> 結局その後、別にやりたいことが見つかり、文系の大学に進み、
> 気象とは全く関係ない会社に就職したが、
> 業務上、天気図を見る機会があり、再び興味を持ち、
> またよく調べると文系でも合格できることを知り、挑戦するに至った。
■Dさん(女性・20代・会社員(貿易関係)・東京都)の合格体験記より


Dさんが「文系でも合格できる」とお書きになっていて、その通りなのですが、
むしろ、私が仕事を通して感じることは、
文系の方のほうが多数派ではないか、ということです。

個人の名前で仕事をされている方のプロフィールについては、
インターネットで大抵のことが分かる時代です。
例えば、気になる気象キャスターの経歴を調べてみれば、
理科系の高等教育(=大学など)を受けた方は少ないことが見えてきます。

資格試験によっては、特定の学歴や履修科目などを、
受験のための必須条件としていることがあります。
一方、気象予報士試験は学歴不問の資格試験であり、
学歴によって、受験が制限されることは一切ありません。
試験会場前で小・中学生の受験生も見かけることもあります。

もちろん、「学歴不問」とは、決して試験内容がユルいことを意味するのではなく、
それどころか、資格試験の中で、気象予報士試験の難度は高いと言えるでしょう。
ただ、その合否については、これからの受験勉強次第だということです。

難関資格だと世間で言われることが多いだけに、
「数学や物理をゴリゴリ勉強しないと受からない」というイメージさえありますが、
気象予報士資格を取得されたことで、新たな道に進んだ方々を見ていますので、
先入観だけで、挑戦を諦めることは勿体ないと思います。

これは私の憶測に過ぎませんが、気象予報士試験は、
「文系・理系といった区分にとらわれず、多くの人に挑戦してほしい」
という気持ちを込めて、作られているように感じます。
研究者として気象学を追求するためではなく、
「現象の予想」を行うための知識と技能を有するという目的に絞ることで、
試験科目から難解な数理的学習をできるだけ削り落としたように見えるからです。

決して簡単に合格できる試験ではありませんが、
数学や物理が苦手な方にとっても、挑戦する価値のある試験だと思います。
知識の足りない部分は、これから補充すれば良いからです。




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第369話 自分を奮い立たせられる人が合格する。
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> 自分の実力はここまでか、歳だから出来なくてあたりまえ、
> もう止めようかと何度も思ったが、
> 今まで費やした時間、費用、折角今までやって来たのに勿体ないという思いが、
> 私を机に向かわせたと思う。
> 私の場合のモチベーションの維持は夜布団の中で、
> 試験に合格し家族からあるいは職場の同僚から山の仲間から、
> すごいね、あの試験は合格率が低くて難しいでしょと、
> 言われる場面を想像するのが、次の日に机に向かう原動力となった。
■Fさん(男性・69歳・銀行定年退職後任期付地方公務員・岩手県)の合格体験記より


水が出るホースの口を指で強く押さえ、水勢を強くし、
暗闇に置かれたドラム缶に向かって、ひたすら水を放ち続ける。
気象予報士試験での勉強は、こんな話に例えることができます。

ホースから弧を描いた水は、ドラム缶に入っていきます。
満水になって水が溢れたときが、合格を意味するのですが、
現時点で、どれくらいの水が溜まっているのかは、確認できません。
まだ半分を過ぎた程度か、もう8割くらいに到達したか、
おおよその手応えは掴めるものの、正確な進捗は闇の中です。

特に、実技試験に関しては、自己採点自体が正確には行えないので、
ますます自分の立ち位置が上手く掴めません。
試験には冷徹な面があり、箸にも棒にもかからない出来であっても、
あと一歩で合格であっても、「不合格」という点では同じです。

合格体験記の本文で書かれていますように、Fさんは合格まで7年を要しました。
決して短期合格ではなく、その間に何度も試験に失敗されているわけで、
上述のとおり、受験を諦めようと思われたことも振り返っておられます。
しかし、そうした感情を振り払い、受験勉強に立ち向かえたからこそ、
第51回試験での完全合格につながったわけですね。

そう考えると、最終的に合格を勝ち獲れるかどうか、というのは、
「合格したい!」という熱き志と大いに関係するのだと感じます。

もちろん、「適切な方法で受験勉強を継続する」ということが大前提です。
気合・根性・精神論・我武者羅で合格できるほど、甘い試験ではありません。

しかし、これだけの合格率の低さを考えれば、
推奨される理想的な方法で取り組んだとしても、
多かれ少なかれ、途中で躓くことが出てくるものです。

そのときに這い上がることができるか、
気持ちが土俵際まで追い詰められたときに踏ん張れるか、
この点が、「合格という形で、試験勉強を終わらせることができるか」どうかに、
大きく関わってくるように思うのです。

Fさんの合格体験記を読んで、私も寝床の中で、
通っていた高校に取材陣が押し寄せる妄想をしていたことを思い出します。
すでに第4回試験で、後にRAG FAIRで活躍した奥村政佳君が、
17歳で合格を勝ち獲っていましたので、私が第5回試験で合格しても、
最年少合格にならないことは分かっていましたが、
それでも期待を抱き続けることが、受験勉強のモチベーションになりました。

案の定というか、第5回試験後のマスコミの反応は皆無でしたが、
その妄想のお陰で自分が合格できたのですから、良かったのです。
動機というのは、他人に言いにくい下世話なものであるほど、
自分を支えてくれる効果は大きいようです。

試験まで残り2か月となり、受験勉強の濃度がますます高まる時期です。
ここからの頑張りで、さらに実力に磨きをかけていきたいですね。




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第370話 人気キャスターの足跡から学ぶ。
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Kiss FM KOBE(兵庫FM)の「辛坊治郎 Sunday Kiss」という番組を、
6月30日(日)の放送をラジコプレミアムで聴きました。
ラジコプレミアムで聴ける番組は、放送後1週間以内に限られますが、
YouTubeであれば、今も聴くことができるようです。

この回のゲストが、気象キャスターの蓬莱大介さんで、
今のお仕事を得るまでのエピソードを語っておられました。

蓬莱さんは関西を拠点に活躍されている気象予報士ですが、
全国ネットで放送されている番組にも出演されていますので、
関西在住でなくても、ご存じの方が多いと思います。

ちなみに、私は蓬莱さんと同じ放送局で仕事をしていましたが、
時期が重なっておらず、面識はありません。
それどころか、蓬莱さんが行う気象解説をほとんど見たことがないのです。
ただ、有名大学を卒業して、役者経験もあり、
スマートなルックスからの爽やかな語り口と素敵なイラストで、
高い人気があると聞いていましたので、
何となく、順風満帆で今に至るのかなと思っていたわけです。

ところが、番組を聴いて、意外な道のりを経ていることに驚きました。
芸能の仕事を辞めた後に、気象予報士資格を取得された後、
そこから気象キャスターになるまでに、かなり苦労を重ねておられます。

 ・無断でテレビ局の前で、気象解説のデモ映像を自撮りしていたこと。
 ・その自撮り映像を、あちこちで見せて売り込みをかけていたこと。
 ・大手気象会社の正社員になれなかったこと。
 ・気象キャスター界の大御所から、厳しい評価を受けたこと。

さらに、テレビ局で気象報道のスタッフ(裏方)として仕事を始めてから、
早朝の番組で、気象予報士として慣れない単発の解説を行った際に、
生放送で大失敗をしてしまい、番組から出禁を食らうというエピソードは強烈です。

ここで気持ちが折れてしまい、業界を去ってもおかしくないところですが、
その後に、同局の夕方番組の気象キャスターに就かれ、今に至るのですから、
それだけ高い壁を乗り越えるパワーがあったということだと思います。

試験に合格し、気象予報士資格を取得された方から、
「自分はキャスターに向いているのか?」というご相談を受けることもありますが、
まずは走り出してみることの大切さを感じます。
キャスターを目指す方にとって、この番組のトーク内容は役立つと思います。

たまたま私が、以前に同じ放送局で仕事をしていた関係で、
「お前が辞めなければ、今頃はあのポジションにいたのではないか?」
と冗談交じりに周囲から言われますが、それは無いと断言できます。
私も生放送で何度もやらかした経験がありますが、
出禁になるほどの失敗をしたときに、立ち上がれる自信は無いです。
やはり、未来を描く強い熱情があったからこそ、
失敗を成長に転換できたのだと思います。
もちろん、全ての気象キャスターが、同じ経験をしているわけでは無いですが、
ある世界で頭角を現すためには、それなりの覚悟が必要だな、とも感じました。




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第371話 習慣化こそ、合格への近道
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> 毎日30分でも1問でも勉強する事を心がけ、
> 日々の勉強を習慣化する事で継続できました。
■Kさん(男性・40歳目前・会社員)


気象予報士試験に合格される方々の特徴を一言で表すとすれば、
「受験勉強の習慣化」に成功されたということです。

世の中には、いろいろな種類の勉強があって、
短期的にガッツリ取り組むことで、勢いよくパスしていけるタイプの勉強と、
時間をかけてコツコツ取り組まねばならないタイプの勉強があります。

気象予報士試験は、後者に属すると考えます。
よって、「短期でガッツリ型」の勉強に慣れておられる方が、
その手法で、気象予報士試験の勉強に取り組むと、
成果が出ないうちに、スタミナが切れて、挫折してしまうことになります。

試験範囲が広く、それぞれの学習内容も奥深いので、
気象予報士試験対策で学ぶべき分量は、かなり多いです。
そのうえ、多くの受験生が本業(勤務・家事・学業など)をお持ちですので、
そこから勉強時間を捻出するというのが、特に大変なのですね。

つまり、上手く勉強時間を確保したうえで、それを習慣化できるか、
これが気象予報士試験の勉強を軌道に乗せるためのコツです。

習慣化のためには、合格体験記でKさんが述べておられますように、
少しでも良いので、毎日取り組み続けるということです。
言い方を変えれば、「勉強しなかった日」を作らないことが大切ですね。

一例ですが、「風呂から出た後に、30分取り組む」という方法があります。
おそらく、ほとんどの方が毎日入浴されると思いますので、
それと勉強をセットにすることで、習慣化するという作戦です。
同じような考え方で、「朝食の前に、30分取り組む」というのも良いですね。

勉強というのは分かることが多くなると、やる気が自然に湧き出てくるもので、
「もっと学びたい」「もっとレベルアップしたい」と思えるようになります。
この境地に辿り着くと、「受験勉強」という名が付くものの、
受験生当人の意識としては、「趣味」「娯楽」といった感覚に近くなってきます。
そうなると、意識しなくても「勉強優先のスケジュール管理」ができるようになり、
(例:優先度の低い集まりには顔を出さない。)
1週間あたりの勉強量も増え、好循環が生じます。
短期で実力を大きく伸ばし、合格を勝ち獲られる方々は、
早い段階でこの状態に持っていくことに成功しているのが特徴です。

仮に、今から受験勉強をスタートさせるならば、2020年1月試験が第1目標です。
(すでに2019年8月試験の受験申請は終わっています。)
これからの半年において、前半3か月で基礎学習に取り組んでいただき、
後半3か月を過去問題演習で実戦力を高めることに成功すれば、
一般知識試験の合格圏に突入することも可能だと考えます。




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第372話 実技試験の勉強とは、問題と解答例を○○○こと
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学科試験には、比較的スムーズに合格された方であっても、
実技試験の勉強で苦心されている方は、わりと多いです。

1つずつ知識を習得していく勉強も楽ではありませんが、
文や作図での解答が求められる実技試験は、難度が一段高いように感じます。

実技試験は、勉強法という点においても、学科試験と異なる部分があります。
過去問題を最大限に活用するという点では、共通していますが、
タイトルで挙げたように、「問題と解答例を○○○こと」が大切なのです。

もちろん、ご承知のとおり、「覚える」ではありません。
ただ、解答例を暗記すれば何とかなる、という受験生の気持ちも分かります。

実技試験の勉強に慣れない頃は、長い時間をかけて取り組んでも、
解答例のような答案文を作ることが、極めて困難であるためです。
「解答例のような答案をどうやって導き出せるのか?
これは予め解答例を丸暗記するしか方法は無いのでは?」
といった不安・焦りが高まってしまうのです。

そこで、問題に出てくる解答例をできるだけ覚えるようにしたうえで、
同じ問題に再度取り組んでみると、正答率が上がるので気分が良いわけです。
ただ、実際には、過去問題と同じ答案文を当てはめて正答できる問題は、
ほとんど存在しないので、本試験での得点が伸びないということになります。

○○○に入るのは、「むすぶ」または「つなぐ」です。
問題用紙の持ち帰りが認められていない試験や、
解答例が発表されない試験は多々ありますが、
気象予報士試験では、問題と解答例が全て公開されています。
このため、ある問いかけに対する正答例がどのようになっているかは、
1問1問確認することが可能です。

問題文から題意を読み取り、必要な指示を受け取って、
資料を参照し、解答要素を見つけたうえで、文章化する。
つまり、問題文から解答例に至るまでのルートを発掘し、
道筋を辿っていくことこそが、実技試験の勉強なのです。

試験問題である以上、その題意と指示に従っていけば、
終着点である解答例に辿り着くようになっています。
もちろん、文で解答するのですから、一言一句同じにはなりませんが、
同じような論旨で、日本語としても自然であれば、正答になると判断されます。
こうしたトレーニングを重ねることで、本試験への対応力を養うのです。

「問題と解答例をむすぶ(つなぐ)」ということは、
問題文だけでなく、解答例を参照することの大切を意味しています。

解答例は1つの例であって、模範解答とは限らない、
というご指摘もあるかも知れませんが、
私が実感するのは、ほとんどの解答例が優れた模範解答だということです。
ですから、基本的には解答例に対して大きな信頼を持って、
問題からの道筋を辿るトレーニングをされることをお勧めします。

「なぜ、このような解答例になるのか」
これが実技試験の勉強を進めるうえでの基本姿勢であり、
これに徹して学習を進めることこそが、
短時間で実力を高めるために必要なことであると考えます。




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第373話 試験当日のパフォーマンスを高めるために。
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> 落ちる原因を改めて多方面から分析したところ、
> 実力不足に加え当日の過度な緊張も大きく合否に影響していると考えました。
> 試験の回数を重ねるごとに、次第に当日の緊張が増していたので、
> 落ち着いて試験を受けられるように、
> 心の余裕を持って日々の生活を送れるように意識しました。
> 不合格が続いていたことで常に気が立っていたため、
> 敢えてジムやマッサージに行く回数を増やし、気を緩めることに徹しました。
> 試験前日に関しても、午前中に簡単に総復習を行なっただけで、
> 午後はカフェで小説を読んで過ごすなどリラックスできる状態を意図的に作りました。
> その結果、6回目の試験は、落ち着いて受験することができ無事合格することができました。
■Vさん(女性・20代・マスコミ関係・関東地方)


気象予報士試験に合格するためには、2つの条件があります。
 ・知識や技能を蓄積すること
 ・試験当日に実力を発揮できること

当然ながら、知識が欠けていれば、試験で解答できないので、
一生懸命にインプットを続けることは大切です。
しかし、いくら知識を詰め込んでも、試験当日のパフォーマンスが悪ければ、
持っている実力を十分に発揮することはできないです。

極端な例を挙げれば、前日に徹夜で勉強し、
その足で試験会場に赴くといった方法は、失敗する可能性が高いです。
当塾のホームページには、約200名の合格者による体験記を載せていますが、
その戦術で勝った事例は、未だに1つもありません。

学科試験の問題は、問題文の細部に正誤を判断する鍵が宿っていることが多く、
眠気で集中力が落ちた頭で、それを判断しようとするのは、あまりにも酷です。
また、実技試験で要求される、簡潔かつ論理が明快な答案文は、
頭がスッキリした状態でないと、短時間で作るのは困難です。

特に、この試験に対する「本気度」の高い方ほど、当日の緊張が増します。
合否によって、人生のルートが大変化する方もおられるのですから、当然です。

緊張感を持って、試験に臨むことは大切なことですが、
緊張しすぎて頭が上手く回らないこともあり、難しいところですね。

緊張をほぐす方法には、個人差があると思いますが、
私がお勧めするのは、Vさんがお書きになっているように、
直前でジタバタしない、ということですね。

何度も書いていますように、気象予報士試験は中・長期戦です。
言い換えれば、蓄積が物を言う試験です。
何か月も前から入念に学習を積み重ねてきた受験生が勝つようになっています。
例えれば、ティースプーン1本で、空のドラム缶に水を溜め続ける作業と似ていて、
短期的な奮闘だけでは、合格ラインに突入することは難しいのです。

試験日1週間前の時点で、受験生の実力のほとんどは決定しています。
後は、当日にベストコンディションで受験できるかどうか、のほうが重要な要素です。

気持ちに余裕を持つことができれば、筆記具や服装にも気を配れます。
特に、夏の試験会場では、エアコンが効きすぎている可能性もありますので、
それを想定した服装が準備できると、受験時の快適度が違ってきます。

実際に問題用紙に目を通したときに、普段と同じように、
冷静に問題文を読んでいけるかどうかも、大切なことです。
実力があるにもかかわらず、問題文の誤読で失点するのは残念なことです。
決して簡単ではないですが、「平常心」で取り組めることがベストですね。

この週末に受験される皆様にとって、Vさんの体験記は役に立つと思います。
当日に、最高の条件で受験できることを願っています。




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第374話 さあ、次の試験へのレースが始まった。
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まだ試験が終わったばかりですが、早くも次の試験まで5か月を切っています。
年1回しか実施されない国家試験も多い中で、気象予報士試験は年2回実施です。
合格を勝ち獲れる可能性が1年に2回もあるわけで、
与えられたチャンスをしっかりものにしたいですね。

よく知られていますように、1月試験から8月試験にかけては7か月ありますが、
8月試験から1月試験にかけては5か月しかありません。
つまり、試験までの残り時間が2か月も少ないのです。
そのうえ、10月の合格発表を迎えてしまえば、残り4か月弱です。

こうした時間的事情を考えますと、
1月試験は8月試験よりも短期勝負という色合いが強いです。
もちろん、8月までの学習の蓄積も大切なのですが、
試験が終わった後の走り出しも大きく差が付く要因です。

実技試験の場合、資料の読み取り方などの基礎的な学習を経て、
過去問題演習を丹念に進めていく学習を推奨しています。
これらの学習は分量が多いことだけでなく、
学科試験と異なり、「答案作成」というアウトプット力が要求されるため、
実力を高めるには、ある程度の時間が必要です。

学科試験についても、それぞれの学習範囲は広いです。
私が初めて過去問題を見たとき、問題の意味が分かりませんでした。
「題意は分かるが解けない」なら、まだ良いのですが、
題意そのものがチンプンカンプンという状態でのスタートでした。
つまり、過去問題演習に挑戦するためには、
土台となる基礎知識を十分に養っていく必要があり、
これに要する時間と労力は、決して小さなものでは無いということです。

確かに、試験が終わったあとは、のんびりしたくなります。
ただ、休んでいる時間が長いほど、出発に要するエネルギーは大きくなります。
エンジンが冷え切らないうちに、少しずつ動き始めていきましょう。
今週中には、気象業務支援センターから解答例が発表される予定です。




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第375話 勉強時間を絞り出す方法
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> 映像は1.5~2倍速で視聴(時にはランニングしながら映像を思い出して聞き)して、
> 子供達が寝静まった深夜にテキストを読んで次の日の視聴に備えました。
■Kさん(男性・40歳目前・会社員)


社会人受験生にとって最も大きな課題は、勉強時間の確保です。
仕事をしながら受験勉強を進めることは、簡単ではありません。

勉強時間を捻出するために最も直接的な方法は、今の仕事を辞めることであり、
実際に、そうして合格を勝ち獲られた方々も少数ながらおられます。
ただ、多くの受験生が目指すのは、仕事と受験勉強の両立だと思います。

貴重な時間を工夫して活用するためには、次の3つが重要だと私は考えます。

1.スキマ時間をかき集める。
2.複数の行動を同時に行う。
3.便利な道具を活用する。

スキマ時間の活用については、これまでのメルマガでも何度も触れています。
駅で電車を待つ時間や、スーパーのレジの行列に並ぶ時間など、
ちょっとした短時間でも活用できれば、勉強が一歩進みます。

また、電車に乗っているときに、ただボーッと立っているだけであれば、
その時間は移動のみに費やすことになるわけですが、
本を広げることができれば、「移動+勉強」という2つに活用できます。
Kさんが述べておられるように、イヤホンで講義を聴きながらランニングすれば、
その時間は、トレーニングと受験勉強の両方に使えているのであり、
時間効率が2倍になっています。

なお、同時に複数の行動を行う際には、組み合わせが大切です。
例えば、「テレビを見ながら受験勉強」というのは、頭に入りにくいです。
勉強と一緒に行うのは、あまり頭脳を使わないものが向いており、
例えば、湯船に浸かりながらの勉強というのも1つの方法ですね。
これから涼しくなってくると、入浴時間も長くなるので、お勧めです。

そして、スキマ時間を活用して、同時に複数の行動を効率的に進めるためには、
便利な道具を積極的に活用していくことが大切です。
例えば、先ほどのランニング中に講義を聴くといったことが容易になったのは、
再生機器の小型化やイヤホンの無線化という点が大きいです。
走っていても外れにくいランニング用のイヤホンも、いろいろ出ています。
また、映像や音声を1.5倍速や2倍速で再生できることも、便利な技術ですね。

風呂の時間を勉強に活用するといっても、紙の書籍を持ち込めば、
湿気でブヨブヨになり、すぐにカビが生えてきます。
入浴タイムを勉強の場にするためには、紙の書籍よりも、
防水機能のあるタブレット端末のほうが向いています。

勉強は継続が大切であり、手間のかかる方法では長続きしにくいです。
例えば、防水機能の無いタブレットであっても、
防水袋に入れれば、風呂の中で使うことも可能ですが、
毎回の出し入れが面倒ですし、操作性という点でも劣ります。
たまの海水浴で使う程度であれば、それでも良いと思いますが、
毎日の入浴時間を受験勉強に活用されるのであれば、
そのまま浴室に持ち込めるようなタブレットのほうが効率が良いわけです。

1日が24時間であるのは、誰にとっても同じであり、
金を出したからといって、1日を30時間に増やすことはできません。
ただ、時間を使う際の効率性については、投資によって高めることが可能です。
限られた時間を有効に活用して、受験勉強を進めたい方は、
1日を「濃くする」ことが大切だと思います。




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第376話 「すべき勉強」から「したい勉強」へ。
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> 気象に対する思いはあったものの、いつの間にかそれをしまい込んで、
> 他の勉学や仕事、そして子育てに振り回され、年が過ぎていきました。
> そんな中、書店で気象予報士の試験問題をパラパラと立ち読みしてみると、
> まあ、全くわからないことだらけ・・。
> 自分の気象への思いがよみがえるとともに、
> 本来自分がやりたかった気象で何か貢献したいという思いが強くなり、
> 問題がわからない悔しさも相まって、
> 気が付いたら気象予報士試験のテキストを購入していました。
■Cさん(55歳・会社員(製薬関係)・山口県)


私が学校を卒業して、そろそろ20年が経ちます。
今にして思うのは、学校で勉強しなければならない科目の多さです。
主要教科と副教科を合わせると、10種類くらいになるでしょうか。

中には、「どの科目も好き」という人もいるかも知れませんが、
多くの人にとって、好みと苦手があると思います。
もちろん、若いときに広い分野についての基礎をしっかり学ぶことは大切ですが、
子どもたちを見ていると、なかなか大変だなと思ってしまいます。

また、社会人になると、「仕事のための勉強」というのが入ってきます。
仕事を進めるために、昇進するために、資格が必要なこともあります。
こうした目的で、気象予報士試験に挑戦されている方もおられます。

勉強と言いますと、何かの「形ある目的」のために行うというイメージが強く、
具体的には、単位取得であったり、卒業であったり、昇進であったりします。
もちろん、そういった目的での勉強も大切ですし、
私自身が資格取得に向けて頑張る方を支援する仕事に携わっているわけですが、
一方で、「自分がやってみたい」と思える勉強にも取り組んでみたいものです。

Cさんの合格体験記で、勉強を始めた動機の部分を読んでいますと、
50歳から天文学を学び始めた伊能忠敬と重なるところがあります。

若いときには、時間的にも金銭的にも余裕が無い中で、
とにかく目の前の課題を片付けることに精一杯だった方でも、
年齢を重ねるとともに、仕事でも一定の成果を収め、
そこそこの余裕が出てきた、という方もおられることでしょう。
そういった方にこそ、「すべき勉強」だけでなく、
「したい勉強」にも取り組んでいただくことをお勧めします。

その学習内容が、ご当人にとって「したい勉強」であれば、
「この歳で初学者はツライ」「記憶力の衰えが・・・」といった心配も無用です。
そもそも、「すべき勉強」とは違って、「したい勉強」であれば、
厳しく自分を追い立てて取り組む必要もありません。
後の結果論として、その成果が世のため人のためになるケースもあるでしょうが、
第一には、「自分がそれをしたい」と感じられるために行う勉強です。
おそらく、伊能忠敬の最初の動機もそうなのだろうと私は想像しています。
だからこそ、自らの好奇心・探究心を刺激することが、学びの原動力となります。

まずは、書店で気にいった本を探してみることをお勧めします。




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第377話 気象予報士資格がもたらしたもの
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> 私は、気象予報士試験で勉強した知識は地域活動で役に立つと考えています。
> スマホやパソコンで気象情報が十分に得られない高齢者の方に情報を届けたり、
> 何もない時こそ災害を想定してシュミレーションしたり、
> 地域でどんな活動をするのがいいか日々考えています。
■Pさん(女性・40歳・幼稚園職員、高校非常勤講師、主任児童委員・島根県)


気象予報士資格を持っている人のうち、
実際に気象会社などで、予報業務に携わっている人の割合は少ないとされます。

平成25年度に気象庁が実施した調査によると、
気象に関係する業務に就いているのは、
就業している気象予報士の3割程度だそうです。
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/minkan/yohoushi.html#6

気象予報士は医師や法曹と違い、『プロ率』の低い資格なのは事実ですが、
「だから気象予報士資格は価値が低い。」といった、
マイナスの評価をするのは、正しくないと私は考えています。

1993年における気象業務法の改正は、「天気予報の自由化」ともいわれます。
それまで気象庁だけが行ってきた一般向け予報について、
予報業務の許可を受けることで、気象庁以外の者も行えるようになりました。
その際に、予報の品質を担保するために導入されたのが、気象予報士制度です。

法的には、予報業務における「現象の予想」を行うのが気象予報士の役割です。
しかし、気象の専門家ではない一般の方々から見れば、
「気象予報士≒テレビの気象解説キャスター」というイメージで捉えられています。
マスコミを通しての解説業務に気象予報士資格は不要ですが、
「気象キャスターには気象予報士資格がつきもの」という世間の認識により、
気象解説業務の質が、より充実したのではないでしょうか。
これは、法改正・資格新設が生み出した、二次的な効用ですね。
各番組が競い合って、分かりやすくかつ奥深い解説を行うことは、
視聴者の利益につながっています。

そして、もう一つ着目すべきことは、気象予報士資格の存在によって、
気象に関する一定の知識や技能を身に付けた人々が、
広く日本国内で浸透し続ける、という成果ももたらしているということです。

気象予報士制度が始まる前であれば、
有資格者水準の知識や技能を持つのは、気象台職員や気象研究者といった、
専門的職業に携わる人などに限られていた可能性が高いです。
しかし、国家試験として学習カリキュラムが定まり、
試験に合格することで専門家としての入り口に立てるシステムができたことで、
気象に通じた人材は、明らかに増えていると言えます。
例えれば、ある程度の高度まで、登山道が整備されたということです。

多くの気象予報士は、気象とは直接に関係しない職業を持ちますが、
荒天が予想される状況などで、自らの知識や技能を役立てることができます。
特に、この合格体験記の筆者であるPさんのように、
主任児童委員として地域活動と深く関わる仕事をされている方であれば、
より多くの人の安全に貢献することができることでしょう。
「役立ちたい」という意志と、「役立てる」能力を兼ね備えておられるのですから。
もちろん、試験合格後も研鑽を積んでいかねばならないのが気象予報士ですが、
プロとして気象業務に携わることだけでなく、
日々の生活の中で身の回りの人たちに役立てることも、
気象予報士の大切な役割なのです。

1994年に最初の気象予報士試験が行われて25年経ちましたが、
気象予報士資格を持つ人は、全国でようやく1万人を超えたところです。
単純計算では、「人口1万人に1人」という割合であり、
「近所に住んでる気象予報士」という水準からは、まだ遠いように感じます。
天気に関する勉強をする人の裾野がもっと広がれば、
気象災害に強いまちづくりにつながると思います。




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第378話 短期間で実技の実力を高めるための勉強法
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> 自分も教育に携わっている分、試験問題のクオリティにも驚かされました。
> 本当によくできた試験だと思います。
> この試験の作成に一体どれほどの労力が要るのでしょうか。
> 気象学という学問、試験問題を通した問題作成者との対話を楽しむことが、
> 合格への道だと思います。
■Tさん(男性・20代・教員・福井県)


この合格体験記をお書きになったTさんは、
高校で理科の先生として教鞭を執っておられますが、
気象予報士試験の品質の高さについては、私も同感です。

「品質が高い」というのは、いろいろな視点から言えることですが、
実技試験対策として見た場合、「解答例に高い信頼が置けること」を指します。

実技試験の記述問題は、キャッチボールに例えられます。
問題文を正確に読み解くことこそが、解答例の内容を決定することになるからです。
言ってみれば、「何が解答要素であるのかは、問題文の中に埋まっている」のであり、
適切に問題文を読み、それに基づいて資料を読み解けば、
要求されている解答要素が何であるかが見えてくるということです。
宝の在処を知るために、暗号文を解読するのと似ています。

問題文が出発点で、解答例が到着点です。
その間を結ぶ経路がどのようになっているのかを理解するのが、実技の勉強です。
 手順1.問題文を正確に読み、題意を把握する。
 手順2.題意に基づいて、資料を読み解く。
 手順3.資料から得られた解答要素を文章化する。
この過程を、十分な知識を用いて切り拓いていく、というのが、
「実技試験の問題を解く」ということなのです。

もちろん、この過程は複雑であり、習得には時間を要します。
その際に、必ず押さえていただきたいのが、
問題文と解答例をじっくり読み込むということです。
先ほどの表現を用いれば、出発点と到着点を正確に掴むことです。

もし、ある問題文と、それに対する解答例の内容がチグハグであれば、
受験生の皆さんは混乱することになります。
例えてみれば、暗号地図を読み解いたときに、
富士山の山頂に宝が埋まっていることが論理的に導かれるにもかかわらず、
実際には日本海の海底に宝が沈んでいたとすれば、
「この暗号地図は間違っている!」と叫びたくなりますよね。

しかし、冒頭で申し上げましたように、気象予報士試験の解答例の大半は、
模範解答と言い切って良いものだと私は考えます。
つまり、問題文を正確に読み解き、資料とともに論理を追っていけば、
導かれる答案の論旨は、解答例と概ね同じようなものになるのです。
(もちろん、表現法は多種多様ですから、文体まで一致するとは限りません。)

ということは、実技試験の受験勉強においては、
解答例の内容に全幅の信頼を寄せたうえで、
問題文と解答例を結ぶ経路を理解することに努めるのが、
最も効率的な学習法であると言えるわけです。

言い換えれば、もし受験勉強の過程において、
「この解答例は間違っているのでは?」という疑いが生じた場合、
そのほとんどは、知識不足か思考過程の誤りに原因があるということです。
この時点で、ご自身の知識を補強し、思考過程を修正することこそが、
レベルアップのために大切な勉強です。

短期間で実技試験の実力を伸ばしていかれる方は、
この点をしっかり押さえたうえで、必要なスキルを磨いておられます。
具体的には、「知識」「問題文と資料の読解」「答案作成力」の3つですね。

気象予報士試験がよく練られた試験であるからこそ、
過去問題や解答例は、受験生にとっての最高の教材となります。
気象業務支援センターのホームページでは、
過去5年分もの問題と解答例も、無料でダウンロードできます。
(以前は3年分でしたが、増えましたね。)
これを積極的に活用することこそが、合格への近道であると確信しています。




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第379話 合格を勝ち獲るための「仕掛け」を作ろう。
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> 今回、12回目の受験での合格でした。
> その間幾度となく心が折れそうになりましたが(実際には何度も折れましたが)、
> 会社の同僚、部下に気象予報士を目指していると宣言し安易に止められない状況
> (途中で投げ出したら部下に示しがつかない状況)をつくりモチベーションを保ちました。
> また、数年前からは、これだけ時間を費やしお金をかけて、
> 今止めるのはもったいないという気持ちもありました。
■Yさん(男性・55歳・化学メーカー勤務(営業職)・東京都)の合格体験記より


今から20年以上も前の私は、コソコソと気象予報士試験を受けていました。
高校で野球部員だったので、試験が行われる日曜日でも練習や試合があります。
そこで、「コンタクトレンズの検診に行く」と嘘をついて、受験したのです。

たまたま運良く3度目の受験で合格できたから良かったものの、
もし失敗が続いていれば、ひっそりと受験から撤退していたことでしょう。
誰にも知られず受験していれば、撤退に要する心理的コストもゼロです。
つまり、コッソリ受験は、挫折・諦めにつながりやすいのです。

一方、周囲に高らかと受験宣言し、ビッグマウスで合格予告をしていれば、
受験が上手くいかなくても、撤退するには「恥」という大きなコストを抱えます。
まして、部下や後輩といった人々を前にして、挫折を認めるような振る舞いは、
上司や先輩という立場として耐え難いもの。

世間でも知られた難関資格に向かって、仕事の傍らでの受験勉強ですから、
合格が簡単なことでないのは、周囲の人もよく分かっています。
だからといって、途中で諦めるのは、将棋で旗色が悪くなったことに腹を立て、
盤をひっくり返すような行動のようで、カッコ悪いわけですね。

Yさんは、それを逆手に取り、敢えて逃げられない環境を自ら作ることで、
合格まで受験勉強を続けることに成功されたわけです。

「12回目の挑戦での合格」とは、不合格が11回続いたことを意味します。
つまり、不合格・不合格・不合格・不合格・不合格・不合格・不合格・
不合格・不合格・不合格・不合格のあとに、「合格」です。
実際に心が折れたことも何度かあったとのことですが、
そのたびに立ち上がれたのは、「仕掛け」の効果が大きかったに違いありません。

また、合格することを目的として投入した時間と経費は、
結局のところ、合格を勝ち獲ることでしか、心理的にペイしないように思います。
例えば、「2回目での合格」と「12回目での合格」との違いは、
「12回目での合格」と「11回目の不合格で断念」との違いに比べると、
圧倒的に小さなものだと私は感じます。

短期で合格できることに越したことは無いですが、
最終的に「合格」で受験勉強を締めくくることができるかどうかで、
これまでの労力が報われるのだと思います。

もちろん、気象予報士資格の取得自体に興味を失ってしまえば、
惰性で受験する意味などありません。
その時間と労力と費用を他のものに使ったほうが、有意義です。
しかし、気象予報士資格を望まれるのであれば、挑戦を続けることが大切ですし、
試験での勝率を高めるような方策を模索していかれることに、
大きな意味があるのだと考えます。




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第380話 受験して、自分の「本気度」をはかる。
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第53回試験の受験申請の受付は、11月29日(金)までです。
すでに受験手続きを済ませた方も多いかと思いますが、
中には迷っておられる方もおられることでしょう。
特に、これまで1回も受験されたことのない方にとっては、
初受験が心理的な壁になっているように思います。

「気象予報士試験に興味はあって、本も1冊買ってみたが、
 本格的な受験勉強を始めたわけじゃない。
 試験の難度が高いので、軽はずみに受験しても失敗するだけだろう。」
こういった理由で、受験を躊躇っている方も多いのではないでしょうか。

確かに、その分析は正しいです。
試験日(2020年1月26日)まで残り2か月という現時点において、
ほぼ初学者の方が、一般知識試験だけでも合格することは、至難の業です。
しかし、合格の可能性が低くても、受験を経験されることをお勧めします。
なぜなら、自分が「本気モード」になるかどうかを試せるからです。

実際に受験手続きを行ってしまい、
スケジュール帳に「気象予報士試験」と書き込んでしまうと、
意識が切り替わるということを、よく耳にします。
「年明けの1月26日に試験を受けるのだ」ということが確定してしまうと、
「そのために、何を勉強すれば良いのか」という意識が働くのです。

受験生の中には「実技を含めた全ての試験科目を勉強し終えてから受験する」
と仰る方が稀におられますが、実際に合格された方に出会ったことがありません。
一見すると合理的で、理屈のうえでは受験回数も少なくて済むはずですが、
短期的目標を掲げることの大切さを無視しているので、上手くいかないのです。

もちろん、受験申請には費用がかかりますが、
可能であれば、まずは受験手続きを済ませてしまい、
試験日に向けたルートを作ってしまったほうが良いです。

そうすることで、「一般知識試験に合格する」という明確な目標ができ、
「合格するためには過去問題演習の充実が必須だ」、
「過去問題演習を進めるためには、基礎知識の学習が必要だ」というふうに、
逆算の思考が働き、現時点で成すべきことが見えてくるのです。

また、実際に試験会場で受験することでしか感じられない「空気」があります。
15問の一般知識試験を、わずか60分で解かねばならないという焦り、
隣の席の受験生の貧乏ゆすりで集中力がかき乱される苛立ち、
5つの選択肢を2つまで絞り込めたものの、1つに確定できない悔しさ、
受験終了後に早く正答が知りたいというドキドキ感、
これらは当事者として受験に関与しなければ、実感できないことです。

こうしたキモチが、次の試験に向けて「本気の受験モード」へと駆り立てます。
狭き門である気象予報士試験を突破できるかどうかは、
結局のところ、受験生が熱情を持てるかどうかにかかっています。
いかに緻密な工程表を作ったところで、
それを実践できるかどうかは受験生本人の意欲次第だからです。

中には、受験手続きを行ったものの、
特に気持ちが燃え上がることもなかった、という方もおられることでしょう。
それは、現時点で気象予報士試験にご縁が無かったということであり、
他の世界で頑張られたほうが良いことを意味しています。
早く見切りを付けることも、大切なことの1つです。

難しい試験であるだけに、合格には多くの時間と労力を要します。
人生の一時期を、「ガチの受験生」として過ごすことが求められています。
自分にとって、それだけの対価を支払う必要があるかどうかは、
実際の受験を経験してみることで分かることが多い、と私は考えます。
そのために、次の試験を受けてみる意義は大きいです。




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第381話 本居宣長に教わったこと
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三重県松阪市へ行ってきました。
奈良からですと、近鉄特急を使って1時間半ほどですが、
私が松阪駅で下車したのは20年近くぶりです。
前回は大台ヶ原登山(大杉谷)のために、バスに乗り継ぎました。

今回の目的は登山ではなく、「本居宣長記念館」です。
駅からしばらく歩くと、松阪城跡が見えてきます。
天守閣はありませんが、石垣の上からは町並みが一望できました。
その近くに、本居宣長記念館はあります。

本居宣長といいますと、江戸時代の国学者で『古事記伝』を著したことは、
中学校の社会科(歴史)の授業でも習います。
奈良時代に編纂された『古事記』は、現存する最古の歴史書であり、
今でこそ、いくつもの現代語訳が出ていますし、マンガ版もあります。
読む気になれば、いつでも親しむことのできる書物になっています。
しかし、『古事記』が書かれた時代には、ひらがなやカタカナがまだ存在せず、
日本語の音を示すのに、全て漢字が使用されていました。
このため、江戸時代には平易に読めなくなっていたのだそうです。

古き日本人の心を知りたいという思いで、宣長は松阪で古典研究に取り組みます。
34歳のとき、私淑する賀茂真淵が松阪を訪れていることを知り、
宣長は真淵が泊まっている宿へ押しかけていくのです。
当然、紹介状など無かったわけですが、真淵は宣長を温かく迎え入れます。
真淵自身も、日本古代の精神を知りたいために、万葉集を研究していたのです。
宣長の古事記研究を応援するため、真淵は自らの学問の成果を授けます。

実は、宣長が師である真淵と対面したのは、生涯この一度限りです。
(このエピソードは「松阪の一夜」として、戦前の教科書にも載っています。)
以降は、全て手紙の往復により、真淵が亡くなるまで、宣長は教えを受け続けます。

本居宣長記念館では、実際に2人がやり取りした文通の書面も見ました。
まさに、江戸時代における「通信教育」ですね。
真淵の遺志を受け継いだ宣長が、35年という歳月をかけて、
ついに完成させたのが、『古事記伝』です。

本居宣長といえば、国学者として知られていますので、
朝から晩まで古典研究だけを行っていたのだろうと、何となく思っていましたが、
本職は医師だということを、記念館で初めて知りました。
昼間は診察を行い、ときには5kgもある薬箱を抱えて往診も行ったそうです。
仕事をしっかり終えた後に、研究に取り組むという生活です。

定まった職業があったからこそ、生活費だけでなく、
学問に必要なお金もまかなうことができたわけであり、
宣長は弟子に対しても、仕事を大切にすることを説いていたそうです。

毎日の仕事に追われていると、「どうやって勉強と両立するか」という、
問題解決の方法という視点で見てしまいがちです。
もちろん、リアルな毎日を過ごす中で、それは正しいことなのですが、
「仕事があるからこそ、勉強にも打ち込むことができる」というアドバイスは、
私に大きな気付きを与えてくれました。




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第382話 新年の決意の前に、時間の大掃除
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> 合格して振り帰ってみれば、正しい学習法により、
> 毎日短くとも勉強を継続していれば特別・無理な学習など必要なく、
> 合格可能な学力を身に付けることができるのである。
■Rさん(男性・47歳・鉄道会社勤務(経理担当)・兵庫県)の合格体験記より


カレンダー(暦)は人類の偉大な発明品だと私は思うのです。

本来、時の流れに色は付いていないわけで、
大自然の中で過ごしていれば、12月31日に昇ってくる太陽と、
1月1日に昇ってくる太陽に、見た目の違いはありません。

そこで、「昼と夜のワンセットで1日」としたうえで、
「日」のまとまりを「週」「月」「年」とし、時の流れに目盛りを付けたのですね。

週があるからこそ、「5日働いて2日休む」というリズムができやすいですし、
年があるからこそ、「今年の目標」を考えることができます。

この時期に、クリスマスや正月があるのも、
冬至を過ぎて、再び太陽が出現する時間が長くなり始める、
ということと関係していると聞いたことがあります。

年が明ければ、いよいよ気象予報試験が目前ですが、
1月の試験だけでなく、その後の8月の試験に向けて、
受験準備を進めておられる方も多いと思います。

年初に決意するための目標は、年末のうちに考えておかれる必要があります。
そして、決めた目標を実現するためには、アクションを起こすことで近づきます。

Rさんが合格体験記で述べておられるように、受験勉強は継続こそが大切です。
「3日で合格できる魔法の学習法」といった、美味しい話はありません。
要は、「続けられるか、続けられないか」の問題です。

受験勉強を継続させるために、大切なことの1つは、
「忙しくなりすぎない」ということですね。

ちょうど大掃除のシーズンで、不要なものを片付ける機会ですが、
時間に関しても、合わせて「断捨離」されると良いです。
受験勉強に要する時間を上手く組み込むためには、
何かに費やす時間を捨てることが大切です。

2020年が、受験生の皆様にとって、
大きな飛躍の1年となることを願っております。




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第383話 過去問題演習、どこまで遡る?
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資格試験においては、出題の範囲が定まっているものですが、
具体的にどんな問題が出るのかを知るためには、過去の試験を見るのが最適です。
たくさんの過去問題に触れてみますと、何度も出題されている箇所があり、
どの点を重点的に学習すれば良いのかも分かります。
過去問題演習こそ、合格に直結する大切な勉強です。

1994年(平成6年)に、最初の気象予報士試験が行われてから、
すでに25年以上が過ぎ、50回以上の試験が実施されています。
私が受験生だった頃(第3回試験~第5回試験)は、過去問題の数も少なく、
合わせて模擬問題集も使いながらの受験勉強が必要でしたが、
今では勉強するための過去問題が豊富にあります。

これまでに出題された問題全てに取り組むことは理想的ではありますが、
多くの受験生は、限られた時間で受験勉強に取り組んでいます。
つまり、最小の労力で、最大の効果が得られることが望ましいわけです。
そういった視点で見たとき、過去問題集はどれくらい行えば良いのか、
これまでの指導経験に基づいた、私の意見をご紹介します。

 ・学科試験:最低でも10年分
 ・実技試験:7~8年分

いずれも、現在から遡る形での分量となります。
長い期間を経て、問題の内容も少しずつ変化が見られますので、
次に出題される試験問題は、最近の試験のほうが傾向が似ているのです。
特に、実技試験については、この傾向が顕著です。

まず、学科試験については、最低でも10年分は必要です。
年に2回試験が行われますので、10年分=20試験分=各300問です。
これらの問題について、丹念に学習をすることが大切です。
正誤問題では、単に正答番号が分かれば良い、というレベルでは不十分で、
誤った選択肢においても、誤りである理由も含めて学習することが重要です。

なお、技術革新や制度変更に伴う形で、
すでに問題内容が、現状に合わなくなっているものも見られます。
特に、専門知識試験は性格上、このような「劣化した問題」が多いですから、
最新情報をしっかりと入手・確認される必要があります。

実技試験については、過去7~8年分程度まで遡れば良いです。
7~8年分=約15試験分=約30題となります。
年数だけを見ますと、学科試験よりも少ないですが、かなりヘビーです。
たった1題であっても、全て納得できるまで勉強するためには、
ものすごい時間と労力が必要になるのであり、
これは実際に取り組まれた方であれば、強く実感するはずです。

多くの問題が正誤判断だけで済む学科試験と異なり、
問題文読解・資料解釈・答案作成という過程を経て解く実技試験は、
その攻略に相当のエネルギーを要します。
もちろん、単に「問題にあたる」ということであれば、簡単です。
しかし、「解きっぱなし」では、何の勉強にもならないことは、
これまでのメルマガで、何度も触れてきたとおりです。
例えれば、作りかけの料理の味見だけして、何もしないのと同じだからです。

「課題を炙り出す」→「炙り出された課題を解決する」というサイクルによって、
実力は高まっていきます。(もちろん、学科試験にも言えることです。)
この地味な受験勉強を積み重ねた方だけが、合格を手にできるのです。

私はこれまで15年近くにわたって、受験指導を行ってきましたが、
合格された方々の大半は、過去7~8年分の問題演習を仕上げています。
具体的には、ほぼ全て理解できたうえで、正答できるというレベルです。

過去問題演習を充実させることにより、
2020年の1月と8月に行われる気象予報士試験において、
皆様の目標が達成できることを願っております。




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第384話 試験直前にて、一番大切なこと
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試験日まで残された時間がわずかとなった今、
最も大切なことは、「当日のパフォーマンスを高めるための準備」です。

「試験開始5分前に確認したことが出題された!」といったドラマチックな話は、
当塾に寄せられた200本以上の合格体験記には見当たりません。
劇的な出来事は、そう頻繁に起こるものではないということです。

むしろ、ちょっとした下準備や心がけといった、地味なエピソードが、
当日に実力を発揮するためには、大切なことだと考えます。
具体的には、次のようなことですね。

 ・しっかり睡眠を取る。
 ・体温調整をしやすい服装にする。
 ・試験会場への交通ルートを事前に確認する。
 ・時間に余裕を持って出かける。

ご存じのとおり、気象予報士試験は、時間との闘いです。
学科試験であれば、15問を60分で解かねばなりません。
つまり、1問にかけられる平均時間は、たった4分です。
実技試験においても同じで、75分以内に問題を解き終えられない方が多いです。

時間がいくらかかっても良い、というタイプの試験ではなく、
限られた時間内に、頭脳をフル回転させながら解くことが求められています。

もちろん、これまでの受験勉強の蓄積がものをいう試験ですが、
合わせて、当日のコンディションも重要です。

寝不足で、服装が暑すぎて(もしくは寒すぎて)、
試験会場への経路に迷い、開始時刻ギリギリに駆け込んでくるようでは、
その人が持っている実力を、十分に発揮できるようには思えません。
もし、72点の実力を持っているのに、2割ダウンしたとすれば、58点です。

しかも、全体の試験時間は長いのです。
午後の実技試験だけでも、75分+75分=2時間30分です。
仮に10分間だけならば、コンディションが少々悪くても、全力投球できるでしょう。
しかし、2時間30分にもわたって、アクセル全開で駆け抜けるためには、
不調となる要素をできるだけ避けなければなりません。

特に今の時期は、風邪・インフルエンザなどで体調を崩す方も多いです。
夜中遅くまで勉強するよりも、体調を整えられたほうが得だと思います。

今まで中長期にわたって、コンスタントに受験勉強を頑張ってきた方ほど、
この時期には、落ち着いて構えておられる方が多いように感じます。
だからこそ、当日も普段通りに実力を発揮できるのだと思います。

全ての受験生の皆様が最高の状態で、当日を迎えられることを願っています。




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第385話 短期集中型と長期持続型
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第53回試験が終わって、1週間が過ぎました。

「やれるだけのことはやった」という気持ちで、
真っ直ぐに合格発表日を待つ方もおられるでしょう。
一方、「もう少し勉強できていれば・・・。」という方もおられると思います。

世の中には、いろいろな種類の試験勉強がありますが、
短期集中型の試験と、長期持続型の試験に大きく分類できると、私は考えます。
例えば、学校の定期テストは前者で、入学試験は後者だと言えます。
気象予報士試験は、どちらかと言えば、後者に分類されます。
おそらく、数ある試験全体からすれば、短期集中型のほうが多いと思います。

私は昨年に、乙種危険物取扱者(第3類~第6類)の資格を取りました。
当塾を経て気象予報士になられたお客様が、
乙種第4類を取得されていたので、自分もやってみたくなったのです。

乙種第4類の試験は、1か月程度の受験勉強で合格できました。
その後に、第3類・第5類・第6類を同時に受験したのですが、
これらは法令・物理化学の科目が免除されるので、
学習範囲を絞り込むことができ、10日ほどの勉強でした。
3科とも合格最低点での合格でしたので、運が良かったのですが、
直前に取り組んだことが、集中力を高めてくれたように思います。

敢えてギリギリまで放置しておき、限られた時間の中で、
焦りを集中力に転換させ、一気に合格水準まで引き上げる。
そういった面も意識していました。

同時に、気象予報士試験ではこの戦術は使いにくいな、とも感じました。
それは試験勉強の範囲が広いためです。
学習量の例として、当塾の教材の分量で表現しますと、
一般知識試験の基礎事項の範囲だけで、50時間近くの講義を設けています。
つまり、画面中の私は、まるまる2日間ほど喋りっぱなしということです。
さらに、実際の問題では、基礎を土台にした応用問題も出てきますので、
習熟にはある程度の時間を要することになるわけです。

実際には、長期持続型の試験であるにもかかわらず、
短期集中型の試験だと見なして、受験勉強に取り組まれると、
試験日までに間に合わないとか、全体をカバーできるまでにバテてしまう、
ということが起こってしまいます。

同じ努力をするのであれば、適切な手法で頑張られたほうが、
リターンが得られる可能性を高めることができます。
気象予報士試験の場合であれば、「期間」を味方にすることが重要ですね。

勉強量は、「効率」と「時間」の掛け算で示されると考えます。
ここでの「時間」とは、「1日平均の勉強時間」×「日数」ですから、
日数を長く取れるほど、有利だと言えます。
この数字が「50」であるか、「100」であるか、
それとも「200」であるのかの違いは大きいです。

特に、日々のお仕事が忙しいビジネスパーソンの方々にとっては、
「1日平均の勉強時間」をかさ上げすることは、かなり厳しいと思います。
仕事があっての受験勉強ですし、家事があっての受験勉強だからです。
ここで無理な目標を立ててしまうと、まず続きません。
例えれば、マラソン大会で全力疾走しているのと同じであり、
続かないような学習計画は、立てるだけ無駄です。
持続できる程度の範囲で、負荷をかけ続けることが大切ですね。

これが決して簡単なことでないことは、私自身が痛感しています。
私が昨年秋に受けたTOEICスコアは335点でした。
デタラメにマークしたのか?と思われてしまいそうなスコアですが、
この試験も気象予報士試験と同じく、長期持続型の勉強です。
私も時間を見つけて、持続的に取り組んでいきたいと思います。
2020年は、まだ11か月残っています。一緒に頑張っていきたいですね。




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第386話 この仕訳が効率的な学習を生み出す。
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> 「実力 =(練習量×やる気×◯◯)+ 才能」
> ◯◯に入る言葉は何だと思われますか。
■Tさん(男性・20代・教員・福井県)


○○に入る言葉は「効率」なのだそうです。
確かに、いくら長い時間をかけても、高いやる気がみなぎっていても、
非効率な手法で取り組んでいては、思うような効果は出ないですね。

では、気象予報士試験のための効率的な学習とは、
具体的にどんなことを指すのでしょうか。
「集中できる自習室」や「分かりやすい教材」を挙げる方もおられることでしょう。
もちろん、環境や道具を整えられることも、効率的な学習のためには大切です。

と同時に、私はもっと根本的に重要なことがあると考えます。
それは、「解決すべき課題とそうでない課題を区別すること」です。

どんな勉強でもそうだと思いますが、頑張って取り組むほど、
いろいろと分からないところが出てきます。
勉強が進むほど、気付きが増え、分からない点がよく見えるようになるからです。
「分からない部分が全く存在しない」というのは、何も取り組んでいない証拠で、
受験勉強の森に奥深く立ち入っていくほど、不明点は多くなってくるものです。

だからこそ、頭に浮かんできた疑問全てを解決しようとすると、
残念ながら、時間が足りなくなってしまいます。
そこで、「解決すべき課題」と「解決不要の課題」の仕訳が必要になるのです。

もちろん、純粋な学問であれば、自由に思索を広げ深めるのが良いでしょう。
アインシュタインは、脳裏に浮かんだ疑問にトコトン向き合ったからこそ、
(自分が光速で移動しているとき、鏡に自分の顔は映るのか、など)
「ニュートン力学っておかしいんじゃね?」ということに気付いたわけです。

しかし、気象予報士試験のような「ライセンスのための勉強」においては、
合格が受験生にとっての最大の目的となります。
資格が手に入るからこそ、次の進路が見えてくるためです。

こうした受験勉強の過程における「効率性」とは、疑問に直面したときに、
解決すべき性格なのか、保留しておいて良い性格なのかを見極めることです。
そして、前者の疑問を全力で解決し、後者の疑問をいったん棚上げすることが、
限られた時間と労力で戦う受験生には求められるのです。

この仕訳を行うための手法・視点はシンプルで、
「目の前の過去問題が解けるかどうか」を基準にすれば良いです。
気象予報士試験の受験勉強での当面の目標は、過去問題演習の充実にあり、
これに対する障壁になっている疑問は、必ず解決しなければなりません。
一方、過去問題を特にあたって支障の無い疑問は、
少なくとも受験勉強においては、優先度の低い疑問です。
合格して気象予報士になられた後で解決されても遅くはないと言えます。

生じた疑問を上手く仕分けたうえで、
受験勉強を前に進めるために必要な疑問だけを積極的に解決していけると、
より効率的に進めることができると確信しています。




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第387話 自分の中にアンテナを立てる。
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> ある語学の先生が「新しい言語を習得すると、新しい自分を発見できる」と、
> おっしゃっていましたが、それは言語だけではないと思います。
> 気象予報士という新しい人生の軸足を手に入れることは、
> 自分の視野を広げ、自信につながると思います。
■Bさん(男性・30代・公務員(航空関係)・埼玉県)


私が1996年(平成8年)に気象予報士資格を取得した後、
まず親にねだったのは、パソコンでした。
当時、デスクトップパソコンが30万円くらいしました。
さらに、天気図などの情報を得るために、有料契約を行いました。
もちろん、ダウンロードのためのダイヤルアップ接続料金も必要でした。
(接続の際の「キュルルルー」といった音が懐かしいですね。)

今なら、同じ水準の資料を入手するための費用は、格段に安くなっています。
2年ほど前に私が買った10インチタブレットは13,980円でしたし、
気象庁ホームページでは、数値予報天気図がタダで見られます。

かつては、わざわざ気象台へ足を運んで、
所定の手続きを経なければ閲覧できないような資料についても、
今では、PDFファイルなどの形で無料ダウンロードでき、
時や場所を制限することなく、読むことができます。
たった20年で、一次情報を入手するための壁は、驚くほど低くなっています。
おそらく、他の業界でも似たような状況ではないでしょうか。

ただ、資料やデータの入手自体は容易になったとは言え、
そこから有益な情報を引き出すには、知識や技能が必要です。
この点については、今も昔も変わりが無いですね。
天気図も同じで、知らない人が見れば、単なる「模様」ですが、
トレーニングを受けた人が見れば、有益な情報を引き出せます。

電波が上空を飛んでいても、アンテナが無ければ、
そこから情報を入手することはできないことと同じです。

もちろん、Google検索をすれば、大量の資料は出てきますが、
資料内容を解釈するためにも、そもそも何を検索すれば良いのかについても、
自分の中にアンテナを必要とします。

Bさんが述べておられますように、新しい資格を得ることは、
自分自身の世界を広げることにつながります。
それは、アンテナの数が増えることであり、アンテナの感度が高まることです。

気象予報士を志す方々の動機や目的はさまざまですが、
受験勉強を通して、アンテナの感度が高まることは共通しています。
これは勉強による大きな利益ですね。
情報の入手そのものが容易になった現在だからこそ、
アンテナ磨きが、より大きな価値を持つのだと思います。




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第388話 その先にある合格を目指して
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> 嬉しすぎてこの日はご飯も喉を通らず、夜も眠れず…
> この感動を、ひとりでも多くの受験生に味わっていただきたい。
> 諦めなくてよかったです!
■H.Uさん(女性・40代・看護師・京都府)


試験合格の喜びは、「他で置き換えることが難しい喜び」の1つです。
それは、誰かによって「与えられる喜び」ではなく、
自分自身で「勝ち獲る喜び」だからだと思います。

合格体験記でお書きのように、
H.Uさんの受験生活は決して順風満帆なものではありませんでした。

今回の第53回試験で、当塾を経て合格された元受講生の中には、
たった2回の受験で完全合格された方々もおられますが、
H.Uさんは実に11回目のチャレンジでの合格でした。
「七転び八起き」ではなく、「十転び十一起き」ですね。
しかも、途中で2年程度のブランクもあり、
勉強開始からの期間は、7年以上に及んでおられます。

私も2月に甲種危険物取扱者試験を初めて受けましたが、
10日ほど前に不合格通知が届きました。
3科目の試験で、いずれも正答率60%以上で合格なのですが、
「法令:73% 物理・化学:90% 性質・消火:55%」で、不合格でした。
性質・消火の科目では20問出されますので、あと1問足りなかったのです。
しかし、1問と言えども、実力不足・勉強不足であったのは間違いないわけで、
悔しいですが、次の試験に向けて、頑張っていこうと思います。

初受験でも不合格になると凹むものですが、
それが何度も続くと、ダメージが積み重なるものです。
試験勉強を投げ出したくなる気持ちにもなることでしょう。
H.Uさんのように、受験から距離を置く期間を設けるのも、1つの方法です。

ただ、その間も「気象予報士になりたい」という気持ちが続いているのであれば、
近いうちに、ぜひ受験勉強に戻ってほしいと思います。
なぜなら、冒頭で申し上げたように、合格の喜びを味わうためには、
合格することが必須となるからです。

もし、H.Uさんが10回目の不合格の際に、受験を諦めてしまっておられれば、
当然ながら、今回に合格通知書を手にされることは無かったわけです。

今回の試験で、合格された方は、受験生全体の5%程度に過ぎません。
残りの95%弱の方々は、今回の試験では合格を勝ち獲れなかったわけですが、
次の試験での合格者のほぼ全ては、皆さんの中から生まれます。
ぜひ、H.Uさんのように、「ご飯が喉を通らないほどの嬉しさ」、
「夜も眠れないほどの嬉しさ」を味わってほしいと思います。




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第389話 実技試験は、学科試験とここが違う。
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> 受講前は主に過去問をひたすら解いて解説を読むだけで、
> なんとなく理解したような気になっていました。
> 私がこれまで実技に落ちていたのは
> この「なんとなく」の部分を放置していたからだと思います。
■Zさん(男性・31歳・自営業・東京都)


実技試験と学科試験の違いは、解き方に現れています。
学科試験は、「5つの選択肢から正しいものを選ぶ」という形式であり、
多くは「明らかにおかしいと判断される選択肢を消す」という戦術を採ります。
例えば、(a)(b)(c)の3つの文章の正誤を判断するという問題があり、
ここで「(a)は誤」であることを見抜ければ、
(a)を「正」としている選択肢を消すことができます。
このように、5つの選択肢から、合わないものを削り出すことによって、
最終的に1つの選択肢を選ぶというのが、学科試験の解き方です。

もちろん、学科試験にもさまざまな出題形式があり、
計算を正確に行わなければ、正しい選択肢を選べない問題もあります。
ただ、必ず言えるのは、5つの選択肢のどれかは絶対に正しいのであり、
言い換えれば、「問題文の中に、すでに正答が埋まっている」ということです。

一方、実技試験に出てくるほとんどの問題は、記述式です。
つまり、「正しいものを選べ」という問題ではありません。
マークシート方式であれば、適当にマークしても20%の確率で正答できますが、
記述試験の答案用紙には、マス目や白地図が書かれているだけです。
自ら答案を作らない限り、正答は得られません。

学科試験に出てくる正誤問題では、少なくとも誤った問題文に対しては、
「ん?(何かおかしい)」と気付くだけで、解答の手がかりが得られます。
しかし、実技試験においては、自分で答案を作っていく必要があるので、
知識の正確性がより高く求められるのです。
これを養成するためには、より突っ込んだ学習が必要になります。
Zさんが従来の勉強に手応えを感じられなかったのは、このためですね。
解説をざっと流し読みするよりも、しっかりと納得できるまで取り組んだほうが、
知識の定着がより強固なものになることは明らかです。

また、実技試験の学習を効率的に進めていくためには、
インプットの学習だけでなく、アウトプットの学習も重要となります。
具体的には、自分で作った答案における課題点を洗い出し、
それを解決していくことで、アウトプットの質を高めていくことが大切です。

インプット学習が得意だからといって、アウトプット学習も得意だとは限りません。
「学科試験は受かるが、実技試験で跳ね返されてしまう」という受験生は、
アウトプット学習において、改善点を抱えている可能性があります。

インプットの精度に磨きをかけ、同時にアウトプットの学習に力を入れることで、
実技試験の実力に、より磨きをかけていけると確信しています。




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第390話 「何回やったか」ではなく、「どれだけ納得できたか」
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> 第52回で専門知識を受験した時、
> 過去問は過去10年間分どの回も最低5回は繰り返し勉強しましたが、
> 実際の受験会場で全く応用ができない状態となってしまいました。
> 今、思い起こしてみると、繰り返すうちに「解答」を記憶してしまっており、
> 何故それが答になるのかというプロセス、
> 論理の道筋についてきちんと理解していなかったことが原因であると分かりました。
■Cさん(男性・60歳・金融関係・神奈川県)


「合格体験記」の多くは、「不合格体験記」でもあります。
もちろん、「このように勉強して、上手くいった」というメッセージも大切なのですが、
「このような方法で、失敗した」というメッセージも同じくらい貴重です。
自分自身の経験のみから学ぶだけでなく、他人の経験も糧にすれば、
失敗する回数を減らすことができ、効率的だからです。

今回は、学科試験における過去問題演習を考えます。
「過去問題演習が大事」というのは、言うまでも無いことですが、
方法を間違えると、勉強時間を無駄にすることになります。

Cさんが仰っているように、筋道を立てて解答を導き出すという点について、
徹底的に理解することに大きなエネルギーを投入せねばなりません。

問題演習を進めていると、理解に苦しむ箇所が必ず出てきます。
このときに不安になる受験生が多いのですが、
「受験勉強の途中で分からない部分が出てくるのは当たり前」と考えて下さい。
この疑問を解決すると、1つレベルアップするのです。

「分からない」に耐えられなくなって、安易にやりがちなのが、丸暗記です。
もちろん、受験勉強の過程においては、覚えたほうが効率的なものもありますが、
やみくもな丸暗記は苦痛ですし、応用が利きません。

問題演習の過程で生じる疑問のうち、かなりの部分を占める要因は、
基礎事項の学習に抜けがあることによります。
引っかかったときは基礎学習に戻り、土台を固めてから再び問題演習に戻る、
というふうに、基礎と応用を行ったり来たりしながら、
学習を進めていかれると良いです。

このように考えますと、過去問題演習において、
「最低5回は繰り返し」といったことに、あまり意味が無いことが分かります。
もし1回の演習で十分に納得でき、頭に入ったのであれば、それで良いですし、
10回演習しても、根本的な理解に至っていないのであれば、なお不足です。
単なる回数に固執してしまうと、レベルアップの「手段」であるはずの演習が、
いつの間にか「目的」になってしまいがちです。

その後、Cさんが行われた勉強についても、体験記で紹介して下さっていますので、
ここに引用しておきます。(Cさんは第53回試験で、専門と実技に合格されました。)

> 第53回を受験するときは、過去問勉強は回数を追うことなく、
> この説明だとどういう理由でどの解答にたどりつくのかを意識して、
> 問題を解くように心がけました。
■Cさん(男性・60歳・金融関係・神奈川県)





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第391話 受験勉強は「投資」だ。
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> 気象(天気)とは一生の付き合いであり、
> それを知ることで自分にとって生涯プラスになるのではないか。
> そう思って気象予報士を志しました。
> また所謂難関資格と言われている点で、挑戦したいという気持ちもありました。
●Lさん(男性・35歳・会社員(休みは不定期)・関東地方)


勉強のことを、「投資」に例えることがあります。
両者に共通しているのは、「種まきと収穫の時期が異なること」ですね。

資格試験の勉強のためには、時間が必要です。
労力も必要です。そして、お金も必要です。
言うまでもなく、時間も労力もお金もすごく貴重なものであり、
他のことに使えば、ほぼ確実にリターン(欲しいもの)を得られます。
(例:「遊び」「食事」「旅行」など)
これらに使える時間・労力・お金の一部を敢えて削ったうえで、
将来のために投じる、というのが受験勉強です。

投資においては、必ずリスクがあります。
例えば、買った株の会社が潰れてしまうとか、
そこまでいかなくても、株価が値下がりしてしまうこともあります。
資格試験の勉強においても、これと少し似ている部分があり、
具体的には、「勉強はしたが、資格は取れなかった」というリスクです。

もちろん、勉強というのは、数字で全てが決まる金銭の投資とは異なり、
試験の合否だけで測れない部分があります。
(例:「合格に至っていないが、学んだことは役に立った」など)
ただ、多くの受験生は資格取得を1つの目標点として頑張っておられるのですから、
「試験に受からない」というのは、明らかに起こってほしくないことです。

このように、時間・労力・お金の先行的な持ち出しを伴い、
さらには、不合格のリスクを抱えながら、取り組むのが受験勉強です。
受験生が不安な気持ちになることがあるのも、当然ですね。

しかし、いったん資格を取得できれば、そこからはリターンが続くことになります。
どのようなリターンが得られるのかは、その人の活用の仕方次第ですが、
自分の中に「実が毎年なる木」を持っているというイメージですね。

資格取得後は、大小の差こそあれ、リターンが続くのですから、
早く取得したほうが、リターンの期間は長くなります。
気象予報士資格も含め多くのライセンスは、一度取得すれば、ずっと使えます。
更新制度がある場合でも、その負荷は取得時に比べて小さいです。
資格取得に必要な時間や労力が同じであると考えるならば、
できるだけ早いうちに資格を取ってしまったほうが、
それによる利益を長期にわたって受けられるということです。

ちなみに、受験勉強と投資には、明らかに異なる部分もあります。
受験勉強においては、時間や労力などをたくさん投じることによって、
リターンが得られる可能性を高めることができるという点です。

今すぐには成果が得られないものに対して頑張ることは、けっこう大変です。
でも、「未来の自分」は、「過去の自分」でできていることを考えると、
何かを仕込んでおけば、後で収穫できることになります。




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第392話 ガッツリ勉強で基礎を固める。
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> 少し読んではネットで用語や数式を検索して、いろんな説明を読み、
> なんとなく理解したら次を読み進め、またよくわからなくなり…と
> “一歩進んで二歩下がる”ノロノロ学習。
> 理解が進まないので旅行だ体調不良だ仕事が忙しいと理由をつけては勉強を中断してしまい、
> 半年ほどは何度も挫折しそうな場面がありました。
●Pさん(女性・30代・テレビ局勤務・東海地方)


> 一日の勉強時間よりも大切にしていたのは「毎日勉強すること」です。
> どんなに疲れていても5問解いてから寝る、ノートを読み返してから寝るなど、
> 必ず気象について触れていました。
> (勉強を一日サボると、脳内が一週間分リセットされるという気持ちでやっていました)。
●Vさん(男性・22歳・国立大学理学部海洋自然科学科(生物)4年次・沖縄県(出身は東京都))


「お天気の勉強」というと、何となく親しみやすいイメージがあるのですが、
気象予報士資格は、気象庁の予報官に代わって「現象の予想を行う」という、
プロフェッショナルとしての仕事を想定したものですから、難しい勉強も出てきます。

もちろん、気象予報士は研究者になるための資格ではありませんので、
大学で勉強するような高度な数学の知識は必要としませんが、
それでも、理解し習得せねばならない専門的知識は数多いです。

「雲の形を見て、天気を予想する」といった勉強かと思えば、
いきなり一般知識試験の学習で、「温位」だとか「比湿」だとか「仮温度」だとか、
今まで見たこともないような用語が出てくると、
学習意欲が萎えてしまう方もおられるかも知れません。

この試験の勉強では、「基礎学習」と「過去問題演習」が二本柱です。
基礎事項がキチンとできていなければ、過去問題演習の効率は低いです。
そこで、まず基礎学習を定着させ、この試験で必要な知識・考え方を、
しっかりと身に付けることが大切なのですね。

基礎を固める際に大切なのは、「忘れてしまう前に勉強する」ということです。
どんな勉強でもそうだと思いますが、易しい基本概念から徐々に積み上げて、
少しずつ難しい事柄の学習へ進んでいくことになります。
つまり、発展的な学習をするためには、その土台が盤石であることが大切なのです。
もし、基本をしっかりと学べなかったり、
勉強の頻度が少ないことで忘却量が多かったりすると、
なかなか土台を固めることができなくなります。

イメージとしては、戦国武将が最前線に城を築くことを想像してみて下さい。
工事中の現場を、敵に破壊されてしまわないためには、
基礎となる工事をいち早く固めてしまうことが大切ですね。
大枠を作る過程で、ダラダラと長い時間かけ、チンタラ作業をしていては、
夜襲をかけられてしまい、また最初からやり直しです。

この試験の勉強も、これと少し似たところがあって、
基礎事項については、ガッツリ集中して固めてしまったほうがお勧めです。
私もそうですが、人間は忘れやすい生き物ですので、
前に勉強した基礎内容を覚えているうちでないと、応用事項を積み上げられません。
具体的に言えば、勉強と勉強の間の時間は短いほうが良いのであり、
短時間であったとしても、毎日取り組むことが大切だと言えます。
個人差があるかも知れないですが、「日曜日だけ7時間」という取り組み方よりも、
「毎日1時間ずつ」のほうが良いと私は思います。

前の学習内容が頭に残っているうちに、次の内容に取り組めば、
勉強をスムーズに進めていきやすくなります。
ひととおりの基礎内容を押さえ、いったん全体像を掴むことができれば、
それ自体をゴッソリ忘れてしまうことは、そう起こらないものです。

もちろん、試験の合格のためには、細部の知識の正確性が要求されますので、
過去問題演習を緻密に進めていくことは必須となりますが、
この段階に進んでいくためにも、まず全体像を固めることが重要ですね。
忘れないうちに、集中的に取り組んでいきましょう。




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第393話 効率的な実技演習のために大切な3つのこと。
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> 52回試験で、ここで完全合格したいと意気込みましたが、
> 結果がついてきませんでした。
> 実技の過去問演習では点数が取れるのに、
> 過去何年分も繰り返し演習したのに何でだろうと途方に暮れてしまいました。
●Qさん(女性・30代・TVリポーター・九州地方)


気象予報士試験の勉強において、過去問題演習が重要であることは、
多くの受験生がよくご存じかと思います。

ただ、過去問題演習に時間と労力をかけても、成果の出方に差があるのも事実です。
合格を勝ち獲られる受験生は、どんな点に力を入れて過去問題演習をされているのか、
受験生を支える講師の立場から、ご紹介しましょう。
今回は実技試験に特化し、3つの点に着目します。


【1.やみくもに量を追わない。】

問題の演習回数が5回になろうと、8回になろうと、
ツボを押さえた勉強ができていなければ、効能は薄いです。
強引に演習量を増やすと、解答例の内容が頭に焼き付いてしまいますので、
本質的な理解に至っていないのに、演習の正答率だけは上がるという、
とても面倒臭いことが起こってしまいます。
理解を伴っていなければ、初見の本試験で正答率が下がるのは当然のことで、
引用したQさんの合格体験記でも、同じことが生じていた可能性があります。
「何回演習したか」ではなく、「どれだけ習熟度が増したか」が重要であり、
そのためには、1つの問題とじっくり向き合うことが大切です。

ご承知のとおり、過去問題演習を行う意義というのは、
本試験で出される可能性のある類題に対する対応力を付けることにあります。
実技試験では、完全に同じ問題が出てくることはありませんが、
過去問題と共通した視点・切り口で解釈できる資料は、よく出てきます。
資料解釈のパターンが増えることは大切ですね。

ただ、資料解釈が共通していても、問題文での指示が異なっていれば、
その指示に合わせた解答が求められているのであり、
ここで、自分で答案を作れるかどうかも、正誤を分けることになります。
解答例を暗記するほど過去問題をやりこんでいても、
理解度が追いついていなければ、ピントの合った答案を書くことは困難です。
納得できているからこそ、題意に沿った答案を書けるのですね。


【2.目の前の問題を解くために全力投球する。】

結局のところ、実技試験の勉強とは、どれだけ過去問題を習得できるかが全てです。
逆に言えば、問題として出されていないことは、優先度が低いのです。
「天気が好き」という受験生にありがちですが、
問題資料の中にある、設問と関係しない部分について、
「あーでもない、こーでもない」と長考されることは、
「趣味」としては楽しいかも知れないですが、
受験勉強とは切り離して捉えることが大切です。
天気好きであることは、学習の動機付けになるという利点がありつつも、
それゆえに、受験勉強の脱線を引き起こす可能性もはらんでいます。

短期間で実力をグイグイ高めていく受験生は、
とにかく目の前の問題が解けるようになることに最優先で取り組みます。
一方で、問題と直接に関係の無い部分についてはドライであり、
問われたことを理解することだけに全力投球されるのが特徴的です。
天気に対する思い入れがそれほど強くないことに対して、
この試験勉強でのマイナス要素だと捉える受験生もおられますが、
だからこそ、受験勉強の効率性につながることも多いです。


【3.必要に応じて基礎学習に戻る。】

2でご紹介したように、目の前の問題を解くことに集中して取り組んでいると、
知識の補強が必要だと気付く箇所が出てきます。
このときに、基礎学習に引き返す勇気を持つことが大切です。
「温度風の意味がよく分かっていないかも・・・。」
「鉛直安定度に関して、整理できていないようだ。」などと気が付いても、
該当する学科試験に合格していれば、おっくうだと感じてしまうものです。
もちろん、学科試験と実技試験は別の試験ですが、
実技試験は「総合試験」という性質を持ち合わせているのですから、
それを攻略するうえで必要な箇所は、学科の合否と関係なく、
押さえておくことが大切です。

こういった場合に一番やってはいけないのは、
本質的な理解に踏み込まずに、我流の解釈で辻褄合わせをすることです。
受験勉強の過程で、知識の欠損に気づけたのは幸運なことです。
気づいたのが試験会場でじゃなくて良かった、と思えます。
実技試験では、資料解釈ではなく知識で解く問題も出てきます。
いくら作文が上手くても、知識が無ければ正答できません。
知識を増やすことは、実技試験の底上げにもつながるのです。




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第394話 合格せざるを得ない環境を作る。
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> 上司や家族に「受かるまでやり通す」と何度も公言し,
> 合格するまで受け続けなければならない環境があったからこそ,
> 勉強を継続できたと思う。
●Tさん(男性・31歳・技術系・東京都)


気象予報士試験の受験サポート業を15年以上続けていますが、
「三度の飯より勉強が好きで、知らぬ間に受かっていたよ。」
と仰る方には、出会ったことがありません。

これだけの狭き門ですから、合格を勝ち獲られた方々の多くも、
程度の差こそあれ、苦労を伴いながら、ゴールに辿り着いたという感じです。
2~3回は落ちるのが当たり前の世界で、
例えば、Tさんの場合は、8回の受験を経て、合格を勝ち獲られています。

5回も6回も受験して、成果が出なければ、心が折れそうになるのが普通ですが、
数多くの不合格を経ても、合格まで勉強を続けることができたということは、
何らかの理由で、気持ちを立て直すことに成功した証拠です。

多くの人にとって、士気を奮い立たせる1つの要素は、大きな野心でしょう。
敢えて「夢」といったキレイな言葉ではなく、「野心」と表現しました。
気象報道の世界で働きたい、難関資格を周囲にひけらかしたい、
といった欲望が、受験勉強を後押ししてくれます。
「気象災害の軽減に寄与したい」というのも、もちろん立派なことですが、
もっと個人的で、かつ下世話な動機のほうが、
勉強の原動力となるエネルギーが噴き出してくるように思います。
受験生を燃えさせる内側からの燃料ですね。

一方、受験生を駆り立てる外側からの燃料もあります。
それが、周囲の人々からの眼差し(視線)です。
Tさんは、上司やご家族の方々に対して、
「受かるまでやり通す」と何度も明言されています。
合格率5%の試験を目の前にして、簡単に言えることではないです。
実際、私自身も受験していたことを、家族以外に知らせたことはありません。

しかし、敢えて退路を断つという荒技は、
受験勉強を進めるにあたって、強烈な原動力になります。
「落ちれば大恥をかく」と「落ちても誰も気付かない」という環境の違いは、
「100人の前でスピーチ」と「密室で1人でスピーチ」ほどの差があります。
背負うものが、まるで違うということです。

特に社会人受験生の場合、勉強だけに専念することは困難であり、
日々の生活と常に調整を続けながらの受験生活になります。
これは、受験勉強をやめる言い訳も多くなってしまうとも言えます。
そんなときに、バッターボックスでホームラン予告をする打者のように、
高々と合格宣言をすることは、大きなプレッシャーがのしかかりますが、
同時に、受験生活を大きく後押ししてくれるように思います。




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第395話 タブレット端末で学習効率を高める。
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> 解答例、自分の解答、根拠はiPadのノートアプリを使ってまとめ、
> いつでも見れるようにしていました。
> この方法ならスクリーンショットなどの写真も気軽に貼ることができ、
> 情報の上乗せもしやすく紙代、インク代がかからない分オススメです。
> (ちなみに、私は気象予報士試験のためにiPadを購入しました。)
●Dさん(男性・22歳・国立大学理学部3年・近畿地方)


ここ10年ほどで、勉強スタイルに「革命的」とも言える変化が起こっています。

決まった日・時間帯に教室に通って、授業を受けるというのが、
昔から変わらぬ学びの方法でした。
実際にこの目で見たわけではありませんから、あくまでも想像ですが、
江戸時代における、寺子屋や藩校も似たようなものだったのでしょう。

時代が、明治・大正・昭和へと移り変わり、平成に入る頃になると、
VHS(ビデオテープ)を使った学習が広く普及していきます。
ただ、再生には大型の機器が必要だったのであり、
それゆえに、勉強は自宅などの定まった場所で行う必要がありました。

その後、VHSはDVDに変わり、持ち運びできる再生機器も出てきました。
ただ、あくまでもポータブルプレーヤーは、映像再生に特化した機械であり、
勉強において、合わせて用いることの多いテキストについては、
別に用意する必要があったわけです。

受験勉強を上手く進めるコツは、その習慣化にあります。
通勤や通学における電車の中という時間を、活用しようと思っても、
勉強道具だけで重い荷物になってしまうようではストレスが大きく、
実際問題として、習慣化するのが困難だと感じます。

しかし、冒頭で触れましたように、ここ10年で環境は激変しました。
アップル社からiPadが発売されたのが2010年です。
画面を指でなでるだけで、文字が拡大したり縮小したりするのが面白くて、
家電量販店の展示商品を触っていたことを思い出します。

その後、iPadだけでなく、各社からAndroidタブレットが発売されるようになり、
性能は高くなる一方で、価格帯は広がっていきました。
今でもiPadと言えば、タブレットの中でも高級機種の部類に入りますが、
Androidタブレットの中には、1万円を切る製品も出ています。

タブレット端末の素晴らしい点は、単なる映像再生機器に留まらないことです。
PDF形式に変換した文書を保存しておき、本のように読むこともできます。
本にマーカーで線を引くのと同じ感覚で、PDFにもマーキングできます。
さらに、紙の書籍には無い便利な機能が、「検索」です。
調べたい用語を自由に入力すれば、すぐにヒットします。
紙の書籍であれば、索引が付いているものも多いですが、
索引に存在しない用語であれば、紙をめくって探すしかありません。
検索機能は「探す」という作業を大幅に短縮してくれる、優れたツールです。

最近は安価なタブレット端末でも、LTEモデルが多いです。
つまり、携帯電波が届く範囲であれば、どこでも通信可能だということです。
しかも、格安SIMの普及で、通信コストは従来より大幅に安くなりました。
もし、移動を伴う受験勉強にタブレットを活用することをお考えであれば、
LTEモデルを強くお勧めします。(SIMフリーの機種がいろいろ出ています。)
勉強中に気になったときに気象庁のホームページを閲覧するといったことが、
Wi-Fi環境を気にすることなくできるのは、学習効率を高めるために必須です。

また、これは当塾の受講生の皆様に限った話ではありますが、
勉強の疑問をメールですぐに送ることも、LTEタブレット1つで可能です。
タブレットにはカメラが付いていますから、答案の写真を撮り、
メール添付すれば、添削依頼もすぐにできます。

もちろん、今までご紹介してきた機能は、スマホにも備わっているのですから、
これを受験勉強に活用されるのも良いでしょう。
ただ、PDFを熟読することは、より画面の大きなタブレットが適しています。
また、スマホにSNSなどの通知が頻繁に入ってくるのが気になって、
受験勉強に集中できない方もおられると思います。

そこで、「受験勉強専用タブレット」を用意するのも1つの方法です。
私は7インチと10インチのタブレットを持っていますが、
10インチであれば、A4版のPDFを全体表示しても、ストレスなく読めました。
7インチでも、画面を横にすれば、10インチと同程度の大きさで表示できますが、
全体を見ていくためには、縦スクロールが必要になります。

一方、例えば、電車の中で立ったまま片手で持つことを想定すれば、
小さなタブレットのほうが適していると言えます。
見やすさ・重さのいずれを優先するか、迷うところですね。
10インチと7インチの間を取って、8インチを選ぶのもアリだと思います。
座って勉強できるのであれば、10インチ以上の大画面でも良いでしょう。

多機能で、携帯性の高いタブレット端末による受験勉強は、
現代だからこそ、可能になった学習スタイルです。
高い向学心を持つ方が、便利な道具を最大限に活用されることで、
学習効率をもっと高めることができると、私は確信しています。




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第396話 先輩受験生が背中を押してくれる。
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> これまでの数ある元塾生の方々の合格体験記の中から、
> 自分にも合う勉強方法や参考になるアドバイスを抽出して、
> 自分に足りない部分の洗い出しなども行ないました。
> また、合格された方々ほとんどが試験勉強にたくさんの時間をかけ、
> 苦労された内容を読むと、「まだまだ自分は頑張りが足りない」と感じられ、
> 大いにモチベーションを上げることができました。
●MAVさん(男性・46歳・アウトドアショップスタッフ・神奈川県)


毎年3月と10月の合格発表の後、私は元受講生の皆様に、
合格体験記のご執筆をお願いしています。
おかげさまで、これまでに200名を超える方々による体験記が集まっていますが、
拝読していて思うのは、合格に至る道は全て異なるということです。

もちろん、誰でも初学者からスタートし、実力を高めながら、
合格を勝ち獲っていかれるという過程は共通しています。
例えれば、「気象予報士試験」という山に登頂する点では同じです。
しかし、受験生の装備・体力・歩くペース・辿るルートには違いがあり、
それゆえに、受験生が持つ悩みもさまざまです。

最初の関門である、一般知識試験の学習内容が苦手な方、
学科試験は比較的スムーズにパスできたものの、実技の壁にぶつかる方、
仕事や家事との両立に苦心される方、
試験までの残り時間が少なくて焦る方、
度重なる不合格で心が折れそうになっている方、
学習にムラがあってペース配分で苦労されている方、などです。

実際に気象予報士試験に合格された方の話を聞くのも有益ですが、
あくまでも、その方の受験成功談であって、
必ずしも、自分と同じ課題を抱えていたとは限りません。

そこで、MAVさんが述べられているように、
多くの方の合格体験記に目を通していかれることが大切なのです。

私が元受講生の皆様に、合格体験記のご執筆をお願いする際に、
特に力を入れて書いていただきたい点として、
 ・勉強時間の捻出方法
 ・最も効果があった勉強法
 ・挫折しそうになったときの解決法
などを挙げています。
これらは多くの受験生の皆様が知りたいと思う部分だからです。

数多くの合格体験記があれば、自分と似た立場にあった方も見つかることでしょう。
その体験記を、近似的に「未来の自分」に置き換えてお読みになれば、
課題を解決する糸口も見つかるはずです。

長い受験生活では、緊張が緩むときも、勉強に躓くこともあります。
そんなとき、先輩受験生の失敗談と成功談から学ぶことができれば、
合格までの道のりを短縮してくれると、私は確信しています。




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第397話 過去問題は活用することに意味がある。
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早いもので、第54回試験まで残すところ、約1か月となりました。
これから試験までの時間を有効活用することは大切ですね。

試験が近い中で、最も大切な勉強は過去問題演習です。
過去の本試験で出された問題に取り組むことによって、実戦力を高めます。
ただし、過去問題の演習を進めるためには、基礎が固まっていることが大切です。
不足している知識があれば、面倒でも基本学習に戻る必要があります。

もし、基礎力が大幅に不足している場合、
残念ながら、試験日までに間に合わない可能性が高いです。
狙っている科目全ての合格を勝ち獲られるのが理想的ではありますが、
状況によっては、目標とする科目を絞るという選択も必要になると思います。

なお、過去問題の演習にあたって、
「力試しのために、前回の試験は直前まで温存しておくのだ」
という戦術を採られる方がおられますが、全くお勧めできません。

そもそも、「力試し」とは、現時点での実力を査定する行為ですが、
これを行うこと自体は、実力の向上には寄与しません。
例えて言えば、ある場所の気温を測ったからといって、
その測定行為自体に、気温を上げる効果も下げる効果も無いのと同じです。

前回試験の問題を模擬試験代わりにして、それで合格点を超えていれば、
もちろん嬉しいことですが、慢心してしまっては逆効果です。
一方、合格点に届かず、悲観して勉強に手がつかなくなるのも本末転倒です。
そもそも直前期の実力など知る必要が無い、というのが私の考え方です。
知るかどうかに関係なく、決まった日に試験を受けねばならないからです。

過去問題はリトマス試験紙のような使い方をするものではなく、
自分の実力を高めるために、ボロ雑巾のごとく使い倒すものです。

問題と向き合って、適切に解けない部分を全部炙り出していき、
炙り出された課題を片っ端から解決していくことこそが、「実戦的受験勉強」です。
「この回の試験で、もう解けない問題は無いな」というところまで活用するのです。
ここまで解法を理解し尽くすからこそ、本試験の際に、
「第○○回に出てきた問題と同じ考え方だな」ということに気付くのであり、
合格に必要な点数を積み上げていくことができます。

もし、最近の過去問題で、まだ演習されていないものがあれば、
すぐに手を付けて、そこから知見を絞り出し、ご自身のものにするべきです。
本当に納得できたものだけが、本試験の最中において、力になってくれます。
残り1か月での受験勉強が上手く進むことを願っています。




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第398話 残り20日間ですべきこと
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> 今から思えば、当たり前のことなのですが、
> 心が折れかかっていた時は、まだ見ぬ問題に恐怖を覚えておりました。
> 難しい問題は、大半の受験生はできない。
> できる問題を落とさないことだ。その通りだと思います。
> それからは、過去問題を中心に勉強を始め、
> 特にケアレスミスのないように意識して、丁寧な文字を書く事に心がけました。
■Jさん(男性・57歳・公務員・埼玉県)


試験が近づいてきますと、「どんな問題が出るのか」ということが気になってきます。
真剣に合格を目指す受験生であれば、当然に湧き上がる疑問なのですが、
「出題予測をするのは時間の無駄」だと私は考えます。

学科試験であれば、各分野から概ね均等に出題されます。
例えば、15問中全てが法規の問題だったということは無く、法規は4問だけです。
つまり、どの分野にも力を入れて勉強した人が、合格できる仕組みになっています。

実技試験については、どんな事例が出題されるのか気になりますが、
あまり強く意識しても、仕方が無いことです。
そもそも、「20XX年○月□日の事例が出ますよ」ということが、
事前に分かっていたとしても、点数にはあまり関係しないと私は考えます。
なぜなら、正答できるかどうかは、事例を記憶していたかどうかではなく、
出題者の問いかけに答えられるかどうかで決まるからです。

Jさんも上記の体験記で述べておられますように、
これまで出されたことの無い論点が出てくれば、誰もが頭を抱えるわけです。
これに対して時間無制限で挑めば、正答に辿り着くかも知れませんが、
75分という限られた時間での勝負ですので、差が付きにくいのです。

一方、出来不出来の差が決定的に付くところがあります。
それは、過去問題と類似した着眼点が求められている問題です。
学科であれ、実技であれ、過去問題との類似点はゾロゾロ出てきます。
なぜなら、そもそも資格試験というものは、そういう性格を持つからです。
見たこともない珍奇な問題で、独創性や発想力を試す必要など無く、
「気象予報士に相応しい知識と技能」を満たしているかが問われています。

では、具体的に「気象予報士に相応しい知識と技能」は何かといえば、
過去に出された本試験を見ることで、出題者の意図が分かるわけで、
これを使って、まずは「型」を理解し、習得するのが、王道の学習です。

試験が近づくに連れて、緊張度も高まってきますし、
「何か直前期らしい勉強をしたほうが良いのではないか」とも思えますが、
基本的に、これまでの学習(基礎固め・過去問演習)を続けていかれると良いです。
暗記物だけは、直前に重点的に行っておかれることをお勧めします。

「寝ずに受験勉強」とか、奇抜なことをすると自滅します。
成すべき課題を着実に消化していく、この繰り返しが大切です。
残り20日間、良い形で受験勉強が仕上がることを願っています。




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第399話 試験を上手く乗り越える方法を、前回の合格者から学ぶ。
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試験が目前に迫った今、真剣に合格を目指す受験生であれば、
多かれ少なかれ不安や迷いを抱えておられるというものです。
そんなときこそ、半年ほど前に同じ立場にあった元受験生の経験が役立ちます。
今回は第53回試験で合格された3人のメッセージをご紹介します。


> 自分がどういうところでケアレスミスをしやすいのか、
> というのをA4にまとめ、試験直前にみるようにしました。
■Qさん(女性・30代・TVリポーター・九州地方)


試験直前期においては、「攻めの勉強」よりも「守りの勉強」が大切です。
手を付けたことのない過去問題を攻略することよりも、
これまでの受験勉強を振り返って、確認を行っていくほうが得策です。

特に、Qさんが述べておられるように、ケアレスミスの洗い出しは重要です。
今までのノートや答案を見返すことで、どんな失策が誤答につながったのか、
振り返っていかれると良いでしょう。
「特徴」が問われているのに、答案文の文末が「~から。」になっていたり、
穴埋め問題で「( )雲」となっているのに、「積雲」と解答してしまったり、
ちょっとしたチグハグな解答が、失点を招くことになります。
逆に言えば、これらを回避すれば、得点の上積みができるわけです。
新しい得点源を開拓するのではなく、失点源を潰すことが大切ですね。


> 体調管理はすべての基礎であると考え、
> 試験前は特に最大のパフォーマンスを発揮できるよう、栄養価の高い食事を心がけ、
> 睡眠時間も多く確保していました。
■長谷川麻衣さん(女性・20代・会社員・東京都)


一流のスポーツ選手は、試合のときに最高のパフォーマンスを発揮できるよう、
心身を整えることを大切にしていると、耳にしたことがあります。
試験も一発勝負という点で、スポーツのトーナメント試合と同じであり、
実力が高くても、当日のコンディションが悪ければ、
それに見合った得点を叩き出すことは難しいです。

試験前になると、焦りも加わって、気分が高揚してきますので、
受験勉強を頑張りすぎてしまわれる方もおられると思いますが、
長い試験時間において十分に力を出し尽くすためには、体調管理が大切です。
特に、筆記試験のような知的格闘技の場面では、
長谷川さんのように睡眠時間をしっかり確保されることが重要ですね。
8月の試験では、厳しい暑さによる体調不良が起こりやすいので、
直前期に無理をせず、コンディションを整えていきましょう。


> 当日は気負わないように心がけ、
> 試験前と実技1と実技2の間の時間も好きな音楽を聴いたりして、
> 持ち込んだまとめノートや単語帳などはほとんど見ませんでした。
■MAVさん(男性・46歳・アウトドアショップスタッフ・神奈川県)


試験会場に入った後は、いかに平常心を保つかが大切です。
大勢の受験生がひしめき合っている中で、それは難しいことですが、
普段どおりの自分でいられるのが理想的ですね。

会場で何をすべきなのかは、それを基準にされると良いです。
MAVさんは好きな音楽を聴くことが、平常を保つ手段だったのでしょう。
もちろん、これは受験生によってさまざまで、
マンガであったり、スマホゲームであったりするかも知れません。
もし、愛用の教材を眺めることで心が落ち着くのであれば、それがベストです。

会場内で参考書などを読み込んでいる人を見ると、
それだけでプレッシャーを感じてしまうかも知れませんが、
この僅かな時間で合否の差が生じてしまうほど、軽い試験ではありません。
今までの蓄積を信じて、その成果を答案として出し尽くしましょう。




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第400話 次の試験での目標の決め方
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8月の試験が終わったばかりですが、すでに来年1月試験まで残り5か月です。
1月試験~8月試験の期間に比べると、2か月程度も短いだけに、
限られた期間で集中的に学習を積み上げていくことが必要になります。

次の試験に向けて、どの科目の合格を目標にするかで迷う方もおられるでしょう。
もちろん、できるだけ数多くの合格を得られるのが理想的ですが、
手を広げすぎて、いずれの科目も試験に間に合わなくなっては本末転倒です。

そこで、まず今後に確保できる総学習時間をざっと求めてみましょう。
仮に1週間で10時間の勉強時間が確保できるとすると、
10時間×4週間×5か月=約200時間というのが、1月までに投入できる時間です。
もし、1週間で確保できる時間が15時間であれば、約300時間となります。

そのうえで、取り組むべき試験に対して、必要とされる勉強時間を試算します。
正確に求めることはできませんが、ざっとした数値を掴むことは可能です。

例えば、実技試験の勉強であれば、1回の試験で2題が出題されますが、
このうちの1題を学習し終えるのに、どれくらいの時間がかかるのかを考えます。
まず、1題を解くのに2時間(習熟度によりますが、制限時間を大幅に超えます。)、
その後の答案分析で炙り出された課題の解決に5時間を要すると考えれば、
1題を仕上げるのに、7時間かかることになります。

仮に、過去7~8年分の過去問題(30題)を仕上げることを目標とすれば、
7時間×30題=210時間となり、ざっと200時間が必要だと求められます。
ここで、もし基礎事項における不安箇所の復習を行う必要があれば、
さらに必要な時間は増えることになります。

学科試験についても同じように考えます。
単元ごとの基礎事項の学習に、あとどれくらいの時間を要するか、
過去問題演習を仮に10年分(300題)行うとすれば、
それにどれくらいの時間を要するかを見積もっていかれると良いでしょう。
学習に要する時間は個人差が大きいですが、
今までの受験勉強で費やした時間が参考になると思います。

このようにして、「使える時間」と「要する時間」を比較することで、
次の試験に向けた目標が定まってきますので、
これをもとにして、受験勉強を再開されると良いです。
もちろん、目標はあくまでも暫定的なものであり、
実際の進捗に合わせて、必要があれば、軌道修正されることが大切です。




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