藤田真司の気象予報士塾は、気象予報士試験合格をトコトン応援する通信型の塾(予備校)です。

無料メルマガ『めざせ!気象予報士・お天気キャスター』バックナンバー(第51話~第100話)


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  51、最新情報を押さえよ  ~専門知識試験の攻略法~
  52、苦手だと感じるものに挑戦してみる。
  53、半年後の試験に備えて
  54、合格を諦めない。
  55、学科合格なくして完全合格なし
  56、【特別対談】私たちはこうして気象予報士になった。
  57、新しい予報用語を学ぶ
  58、秘術? 学科試験免除期間を延長する方法
  59、実技試験での計算問題
  60、睡眠時間を削って勉強するのは有効か?
  61、実技試験攻略法 ~精読から速読へ~
  62、自分の言葉で天気予報を解説するために。
  63、実力とコネは自分で作る。
  64、写真やイラストの多い本から始めよう。
  65、ミニノート活用術
  66、二次試験まで、あと5か月。
  67,「お天気」と「気象学」のギャップに耐える。
  68,参考書を活用する方法。
  69,試験結果の分析から得られる教訓
  70,観察→分析→実行
  71,気象業界で仕事をしたい方へ(前編)
  72,気象業界で仕事をしたい方へ(後編)
  73,勉強の質と量を確保するために。
  74,転職の準備としての受験勉強
  75,気象予報士を志す学生さんへ
  76、走り続けることができた人だけ合格できる。
  77、少しずつ知識を積み上げる。
  78、過去問題ぐらいはマスターしておきたい。
  79、あの人はどのようにして気象予報士になったのか?
  80、講義録で勉強した人たち
  81、電車の中で過ごす時間を有効活用しよう。
  82、添削を受けることで文章力は磨かれる。
  83、買った本で勉強するべし。
  84、登ってみて初めて見える景色がある。
  85、作図問題の勉強法
  86、大切なのは暗記よりも、理解。
  87、アウトプットの作業で知識を定着させる。
  88、過去問題演習での注意点
  89、試験会場で心を落ち着ける方法
  90、合格して受験勉強を終えよう。
  91、「実行」のために「有言」する。
  92、勉強に終わりはない。
  93、マスコミに出るということ。
  94、出題された問題について勉強することが大事。
  95、自分を奮い立たせる方法を持っているか。
  96、その習慣、本当に必要ですか?
  97、効率的な学習のためにお金を遣う。
  98、忘年会の二次会には出ない。
  99、一年の計は年末にあり。
  100、種をまくから、収穫できる。

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51、最新情報を押さえよ ~専門知識試験の攻略法~
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専門知識試験が一般知識試験と異なるのは、
技術革新や制度変更に伴って、問題が若干変化することです。
例えば、1996年に出題された問題(平成7年度第2回)では、
15問のうち3問に、すでに現在の業務と合っていない部分が見られます。

気象予報士試験に出題される基礎的な気象学は、
すでに学説として定着したものばかりでしょうから、
それを根底から覆す新説が登場することは、・・・まあ無いと思います。

しかし、気象庁が行っている気象業務はどんどん変化します。
毎年、どこかの部分で技術革新が行われているのです。
具体的に思いつくままに挙げてみます。

*レーウィン観測の廃止(2004年)
*気象ロケット観測の廃止(2001年)
*気象衛星観測において3.8μm帯画像の提供を開始(2005年)
*気象レーダーのドップラー化(2006年~)
*非静力学モデルの運用を開始(2004年)
*台風の図表示を変更(2007年予定)
*ウィンドプロファイラ観測業務を開始(2001年)
*アンサンブル台風予報を開始(2007年度予定)
*領域モデル・台風モデルの運用を廃止(2007年度予定)

挙げたのは一部ですが、ここ数年だけでも、
かなりの変更が生じていることがお分かりいただけると思います。

一般知識試験の勉強、つまり基礎的な気象学を学ぶためなら、
10年前の本でも、大きな問題はないでしょう。
しかし、専門知識試験の対策として使う書籍は、
3年前に発行されたものでも、かなり訂正箇所が出てしまいます。
ですから、専門知識試験の勉強をされるうえで大切なのは、
なるべく新しい書籍を使うことが大切です。

また、書籍の場合はどうしてもタイムラグが生じますから、
予報業務の更新など最新の情報については、
気象庁のホームページを確認しておくと安心です。
「報道発表資料」という部分で公開されています。
試験対策のためであれば、これで問題ないはずです。

気象庁が毎年発行している『気象業務はいま』という書籍や、
財団法人気象業務支援センターが発行している書籍などを見れば、
近い将来に予定している技術革新などの情報も入手できます。
もし、ご興味のある方はご覧下さい。




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52、苦手だと感じるものに挑戦してみる。
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「趣味は何ですか?」と聞かれると、「本を買うことです」とよく言います。
買うくらいですから、読むほうも好きなのですが、
10冊買って、最後まで読み通す本は半分程度だったりします。

ですから、私の本棚を覗いてみると、
『ユリシーズ』『古事記』『アンナ・カレーニナ』『国富論』などが、
本棚の肥やしになったまま、背表紙が色あせかけています・・・。

「面白そうだ」と思って買うわけですが、
実際にページをめくってみると、これが難しい。
『ユリシーズ』なんて訳注だけで200ページもあるんです。
・・・本が届いた当日に挫折しました。

よく思い出してみると、私の読書ジャンルはもっぱらノンフィクション系で、
文学作品をまともに読了できたことがほとんど無いことに気づきました。
今まで読み終えられた作品は、武者小路実篤『友情』(高校時代に読んだ)と、
サマセット=モームの短編集(大学時代に読んだ)だけのような?
いずれも短いものだったから、読了できたのかも知れません。

学生時代のように、読書感想文のために無理やり読む必要もないのですから、
別に「読みやすい本」だけ手を付けていれば全く構わないのです。
でも、「多くの人が感銘を受けた名作」を知っておいても損はないだろう、
いや、その感銘をぜひとも味わってみたい!と思うのですね。

それが(読めもしない)本を買い続ける理由でもあったのですが、
昨年秋から決心して、ある作品に挑戦することにしました。

    ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』

上巻・中巻・下巻ともに600ページを超える大作です。
逆上がりのできない子供が、大車輪に挑戦するような気がしました。
これまで『罪と罰』『悪霊』に挫折していたのにも関わらず、
ネット上での「凄い!」「深い!」「最高!」という各書評、
そして新潮文庫の裏表紙に書かれた「世界文学屈指の名作」。
・・・また買ってしまいました。

買ったからには読み終えて、私も「最高!」と感じたい!
しかし、読み始めると、早速にも壁が立ちはだかりました。
ロシア人の名前は長くて覚えにくいゆえ、呼び方が時々変化するのです。
(例えば、「ドミートリィ」と「ミーチャ」は同一人物。)
私は何とか挫折しないよう、意味が分からなくなってきたときは、
ページを戻って読み返すように心がけたり、
作品の概要を紹介したホームページを見たりしながら、読み進めていきました。

あれから2か月あまり。
私の手元には読み終えた上巻と中巻、そして読み始めた下巻があります。
「最高!」と感じるほど、読み込めているわけではありませんが、
とりあえず内容を把握し、ここまで辿り着くことができました。
最後まで読むのは、まだ時間がかかりそうですが、
「本を買うだけ」の悪癖に、ストップをかけることができそうです。

読者の中には毎年、「今年こそは本格的に勉強を始めるぞ!」と誓いながらも、
仕事や他の学業のために、後回しになってしまっている方も、
きっとおられることでしょう。
初学者の方が過去問題集を紐解いたときに感じる拒否反応は、
きっと私がロシア文学を開いたときに感じたものよりも強烈だと思います。
しかし、適切な方法で勉強を進めていくことができれば、
決して手の付けられないような試験ではありません。
2007年は始まったばかりです。
年末に「勉強を始めて良かった!」と思える人が増えることを祈っています。




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53、半年後の試験に備えて
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【それぞれの学科試験の正答数が8以下だった方へ】
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自己採点で15問中の正答数が8問以下であれば、
その科目の勉強を基礎からやり直すことを強くお勧めします。
学科試験は5つの選択肢から答える問題ですから、
デタラメに答えても3問は正解する確率になります。
それを考慮すると、正答数が7~8問というのは、
実質的にその科目において3分の1程度しか理解できていない、
という可能性が高いと言えるのです。
基礎をしっかり復習したうえで、過去問題に取り掛かりましょう。
次回8月の試験で、少なくとも「一般か専門のどちらかに合格」を
目標とされるのが良いでしょう。
次の試験において、また全て不合格であれば、
気象予報士を目指すモチベーションが維持できなくなる可能性もあります。
逆に一つでも合格すると、気持ちに弾みが付いてきます。


【それぞれの学科試験の正答数が9~10だった方へ】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
特に正答数が10だった方は大変悔しい思いをされたかと思います。
学科試験に合格すると、その科目の受験は一年間免除されますから、
実技試験など他の科目に集中することができ、とても有利なのです。
ですから、学科試験を攻略する姿勢としては11問正解を目指すのではなく、
余裕で合格できる13問正解あたりを目指していけば良いかと思います。
そうすれば、つまらないミスや勘違いなどがあっても、
まず、合格圏から外れる心配はないでしょう。
正答数が9~10だった方は、科目内のいくつかの単元が、
まだ合格レベルに達していなかったことが考えられます。
必要であれば基礎から、基礎がすでに固まっている方の場合は、
過去問題の演習に励んで下さい。
少なくとも、過去10回分の過去問題は丁寧に演習することをお勧めします。


【学科試験に合格し、これから実技を初めて勉強する方へ】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
両方の学科試験に合格された方は、次の試験まで実技の勉強に集中できます。
ただ、初めて実技試験の勉強をされる場合、
見慣れない予報資料を目の前にして、面食らうことがあるかも知れません。
実技試験では、天気図(地上or高層・実況or予想)だけでなく、
レーダー・衛星画像・アメダス・エマグラムなどの資料も出てきます。
それらの資料から「何を読み取れば良いのか」を勉強するのが、
実技試験では大切であると言って良いでしょう。
まずは基本的な資料の見方をしっかり学ぶことが必要です。


【実技試験に挑戦中の方へ】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
実技試験で合格圏に達しない理由として2つが挙げられます。
 1,問題の意図を充分に読み取れていない。
 2,問題の意図や答えるべきことも思い浮かぶが、上手く文章にできない。
実技試験では起こりうる気象状況を頭に入れておく必要があります。
例えば、「山に向かって湿った空気が吹くとどうなるか?」といったことです。
それから、日本周辺を支配する気圧配置についても、
十分に理解しておかねばなりません。(冬型・夏型・台風・梅雨など)
これらの知識が不足していると、問題文を目にしてもピンと来ないわけです。
勉強がある程度進むと、2の状態になるのですが、
これを解決するには、過去問題演習が最も効果的だと私は考えます。
実技試験の記述問題の解答を初めて見てみますと、
自分では真似できない独特の文章のように映ります。
これに慣れ、自分でも同じような文章を書くためには、
問題と解答を丁寧に合わせていく勉強が良いでしょう。
私自身、解答の文章をノートに書き写す勉強をしたこともあります。
こうすることによって、要点を的確に書き綴る練習になったように思います。
なお、解答文を暗記してもあまり意味はありません。
思考法を理解することが大事だとお考え下さい。


試験後はどうしても気持ちが緩みますが、
1月の試験から8月の試験までは期間が長いため、
実力を大きく伸ばせるチャンスでもあるのです。
今回の試験で惨敗した方も、8月で飛躍できる可能性が大いにあります。
早く気持ちを切り替えることができれば、
そのぶんだけ、長く勉強時間を確保できることになるかと思います。




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54、合格を諦めない。
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私は気象予報士試験の講師という立場ではありますが、
「いったん気象予報士を目指したからには、何が何でも合格するまで頑張れ!」
と言うつもりは全くありません。

人生には楽しいことがいろいろあります。
その中の一つに「資格を取得してステップアップを目指す」というのがあり、
さらに数ある資格の一つが「気象予報士」なのです。
長くて100年の人生において、私たちは無数の選択肢から、
ごく限られたものだけを選んで生きているわけです。

ですから、「気象予報士試験に合格すること」は、
全ての人がクリアしなければならない目標でも何でもありません。
「何としても受かりたい」と思う方だけが挑戦すれば良いのであって、
他の分野に強い興味が移ったのなら、それを追求すべきです。
「気象予報士試験はやめて、行政書士試験に挑戦しよう」でも、
「資格試験はやめて、旅行でも行こう」でも良いではありませんか。

しかし、「気象予報士になりたい」という望みを強く抱きつつも、
「試験が上手くいかないから」というだけの理由で撤退するのは、
何とも勿体ないことだと思います。
何もかも捨てて、5年も10年も勉強しなければならない試験ではなく、
しかも一度合格してしまえば、一生涯にわたって有効な資格です。

気象予報士試験は、学科と実技に大きく分類できますが、
最初はとにかく学科試験に合格することだけを考えて勉強して下さい。
実技試験の勉強は、学科試験のどちらかに合格してからで良いと思います。

学科試験に合格すると、1年間はその科目の受験が免除になりますから、
免除が有効である間に完全合格を目指しましょう。
例えば、今回(2007年1月)の試験で一般知識試験だけ合格した方は、
次々回(2008年1月)までの完全合格を心に誓うのです。

そのためには、次回(2007年8月)での専門知識試験合格は、
どうしても譲れない絶対的な目標となります。
ここで専門知識試験に合格しておけば、
2007年9月以降は、実技試験対策に全力を注ぎ込むことができます。

また、実技試験の勉強は今からスタートするべきです。
次回試験で専門知識に合格してから実技の勉強を始めていたのでは、
明らかに時間不足だからです。
つまり、専門知識試験の勉強をメインにしつつ、
実技の基礎的な勉強を始めていくことを、課題にするのが良いでしょう。

何度も不合格を繰り返している方は、
悪い意味で「慣れて」しまっている恐れがあります。
惰性で試験を受けて「ああ、今回もダメだった」では、
時間も受験料も無駄になるだけです。
「昔、気象キャスターを目指して、ずっと予報士試験受けてたんだけど、
 試験が難しくて結局あきらめてしまったよ。」
これでは、なんとも悲しい話ではありませんか。
本当に気象予報士になりたいのなら、本気になるしかありません。




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55、学科合格なくして完全合格なし
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前回に発行したメルマガにおいて、私は次のようなことを書きました。

> 最初はとにかく学科試験に合格することだけを考えて勉強して下さい。
> 実技試験の勉強は、学科試験のどちらかに合格してからで良いと思います。

学科試験の勉強がいかに大切であるかを伝えたかったのですが、
今回はそれを裏付ける資料分析をご紹介したいと思います。

財団法人気象業務支援センターのホームページには、
合格者の受験番号が公開されていますが、
これを見ていますと、興味深いことに気がつきます。

ここからは、あくまでも私の推測ですので、
そのつもりでお読みいただきたいのですが、
6桁の受験番号を分析してみると、次のようなことが読み取れます。

最も左にある数字は、受験地を表しています。
1:札幌、2:仙台、3:東京・・・という具合です。

その右にある数字は、受験者によって「0・1・2・3」という、
4種類に分かれているのですが、
私の推測によると、おそらく次のような分類ではないかと考えています。

0:学科試験の免除が全くない
1:専門知識試験のみ受験免除
2:一般知識試験のみ受験免除
3:一般知識試験・専門知識試験とも受験免除

その視点で、今回の試験で合格された294人を分類してみますと、
次のような分布となりました。
(それぞれの値を四捨五入しているため、合計は100%になりません。)

0:18%
1:12%
2:20%
3:51%

ダントツで合格者が多いのは、一般も専門もクリアした受験生です。
今回の試験全体の合格率は6.3%ですが、
両方の学科試験に合格した受験生に限った場合、
その値は非常に大きくなるはずです。
これらのデータは公表されていませんので、推測の域を出ませんが、
受験番号の並び具合などを見ると、25%程度ではないかと思われます。
逆に言うと、学科試験に合格していない受験生の合格率は、
地を這うほどに低い数字であると考えられるのです。

学科試験合格者の完全合格率がこれほどに高い理由として、
次のようなことが挙げられます。

・実技試験に必要な基礎学力が充分に備わっている。→だから学科合格
・受験勉強において、実技試験のみに全力を注ぐことができる。

前号のメルマガで書きましたように、
最初は学科試験合格に全力を注ぐことがいかに大事か、
そして、学科試験に合格すれば完全合格は確実に近づく、
ということがお分かりいただけるかと思います。

今回の試験では、久々に合格率が6%を上回りましたが、
それでも9割以上の受験生が残念・・・という事実に変わりはありません。
学科試験にも合格できていないのにかかわらず、
「実技試験が分からなかった。これをどうすれば良いか。」
などと分析しているようでは、気象予報士試験を攻略することはできません。
学科試験(特に一般知識)の勉強を決してオロソカにするべきではないのです。




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56、【特別対談】私たちはこうして気象予報士になった。(SnowDropさんとの対談)
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【SnowDropさんプロフィール】 
Webページ「SnowDrop~独学で気象予報士を目指せ~」
管理人
無料メールマガジン「~独学で気象予報士を目指せ~1日1問模擬テスト」発行人
1981年 新潟県生まれ。
2002年 地元の高専を卒業後、そのまま専攻課程へ進学。
ヒートアイランド現象の研究に携わり、土木学会より学会賞を受賞。
2004年 気象予報士試験に合格。
2005年 Webページ「SnowDrop~独学で気象予報士を目指せ~」を開設し、
独学で気象予報士試験に挑戦する人々を応援し続けている。
現在は、地元の建設コンサルタント会社に勤務する傍ら、
土木と気象のさらなる融合を目指して奮闘中である。



【1,どのくらいの勉強量で気象予報士試験に合格できたのか?】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Snow:私が勉強を始めたのが2003年の7月頃からです。
   1日平均約1時間の勉強をして、2003年冬の試験を受けました。
藤田:結果はどうでしたか?
Snow:学科の一般知識のみ合格でした。他は玉砕です・・・(笑)
藤田:上出来じゃないですか。私が最初に受験したときは、
   全部落ちましたからね。(笑)
Snow:次こそは!!と思い2004年夏の試験に向け、
   平日の勉強時間は1日平均約1時間なのですが、
   休日に4時間くらい狂ったようにしていた記憶があります。
   一般知識の方は前回の試験で合格して免除になっているし、
   実技の勉強もかなりやっていたので、これはいける!!と思ったのですが、
   残念ながら学科の専門知識で合格ラインに達せず、
   実技試験は採点さえしてもらえませんでした。
   この試験の直後、私は目の前の壁のあまりの高さに少し鬱ぎみになり、
   3ヶ月間くらい全く勉強しませんでした・・・。
   ただ飲み会はよくしていましたが(笑)
藤田:ああ、分かる、分かる。
   「もう自分は一生合格できないんじゃないだろうか~」って
   思ってしまうんですよね。
Snow:そうなんですよー。
   でもここで諦めたら今まで使った参考書代と受験費用がもったいない、
   と思い再起しました!!
   そして最後の力を振り絞り2004年冬の試験に向け、
   1日平均約3時間の鬼のようなスパルタ勉強を決行しました。
   その結果、めでたく合格することができました。
藤田:受験勉強中の「飲み会」が良かったんじゃないですか?
   と言いますのも、大切なのは「スパルタ勉強」を長期間続けることが
   できるかなんですよね。
   いくら奮起しても、それが一時的なものであっては、
   この試験を突破することなどできないわけです。
   そのためには、ちょっとした息抜きも大事だと思うんですよ。
   頑張り続けるための「充電」って大事ですよね。
   もっとも、それが長くなりすぎて、
   「放電」になってしまってはダメなんですが。(笑)


2,【二人が合格まで勉強を続けられた原動力とは?】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Snow:私の原動力は一言に尽きます。「気象が好きだからです。」
藤田:それはお互いそうでしょうね。好きでないと勉強は続けられない。
Snow:いつもこんなに身近にあるのに気まぐれで未知なものって、
   他には無いと思います。とても魅力的です。
藤田:昔、朝焼けの写真を撮ることが好きだったのですが、
   同じ晴れた日の朝であっても、
   日によって空の色が違うことに気づきました。
Snow:朝焼けですか。すごく幻想的ですよね。
   藤田さんにとってはそれが原動力になったのですか?
藤田:いいえそれだけではありません。
   私の場合は「どうしても17歳のうちに合格したい!」
   というこだわりもありましたね。
   といいますのも、第4回気象予報士試験において、
   17歳で合格した方が話題になっていたのです。
Snow:・・・もしかして、その方は?
藤田:お察しのとおり、アカペラボーカリスト「RAG FAIR」の奥村政佳君です。
   ですから、私も何とか17歳のうちに合格したかったんですよ。
   私が合格したのは第5回気象予報士試験で、そのときの年齢は17歳11か月。
   本当にギリギリでした。
Snow:奥村さんのことはニュース番組でも話題になったことを覚えていますが、
   すると、藤田さんもいろいろ取材が殺到したんですか?
藤田:全くなし・・・。(笑)
   だからこそ、「一度テレビに出てみたいものだ」
   という思いが強まったのかも知れません。


【3,一人で勉強を続けるうえで大変だったことは何か?】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
藤田:私が気象予報士試験に挑戦しようと思い立ったのは、1994年の秋でした。
Snow:ちょうど初めての試験が実施されて間もない頃ですね。
藤田:そうです。今でこそ書店には「試験対策本」が、
   ずらりと並んでいますけれども、当時は非常に少なかったのです。
   東京堂出版から出ていた『天気予報の技術』を手に入れましたが、
   その内容の難しさには、本当に頭を悩ませました。
   分からない用語を調べるために、1万円くらいする事典も買ったのですが、
   調べた先に出てくる文章の中にも、分からない用語が・・・(笑)。
   「質問をしようにも相手がいない」という状況には参りましたね。
   仕方がありませんから、
   何度も何度も本を繰り返して読んだ記憶があります。
   そうすると、少しずつですが内容が分かってきました。
Snow:私も周りに気象予報士がいなかったため、
   一人で勉強することはもちろん大変でしたが、
   それよりも気象予報士試験を受験できる最低限の環境を
   つくることが大変だったのを覚えています。
藤田:といいますと、具体的にどういったことですか?
Snow:私が気象予報士試験を受けようと思ったのは、2003年の夏です。
   当時の私は20歳の貧乏学生でした。
   奨学金を少しだけ借りていましたが、親からの仕送りが全く無い状態で、
   食費・アパート代などの生活費すべてを賄わなければならず、
   アルバイトをする毎日でした。
藤田:それは大変な状況だったのですね。
   学費だけでも結構高いのではないですか?
Snow:学費は学校側に免除申請が認められたため、
   払わなくて良かったのはせめてもの救いでした。
   そんな過酷な貧乏生活の中で私が苦労したのは、
   価格の高い参考書を買うお金と高い受験料です。
藤田:気象関係の本って、一般の書籍に比べると高いですよね。
Snow:まぁ私の場合は中古のものばかりでしたが・・・(泣)。
   それと新潟県は受験地ではないので、
   一番近い受験地である東京までの交通費も洒落になりません。
藤田:まさに「身銭を切って」気象予報士試験に臨まれたのですね。
   受験料も学生にとっては決して安い値段ではありませんし。
   でも、それが「早く合格しなければ」という
   原動力につながったのだと思いますよ。


【4,気象予報士になってから、資格をどんなことに活かせているか?】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
藤田:私は17歳のときに試験に合格した後、縁あって大阪のテレビ局で、
   気象キャスターとしての仕事を始めることができました。
   そのときの年齢が20歳、大学2年生でした。
   調べたわけではありませんが、
   男性で気象キャスターの仕事に就いた人間としては、
   最も若かったのではないでしょうか。
   まして、私はタレントの素質も全くなかったわけですから、
   こういった仕事に就けたのは、
   気象予報士という資格のおかげだと思います。
Snow:現役の大学生のときに、キャスターとしてデビューされたのですね。
   大学を卒業された後はどうされたのですか?
藤田:ウェザーニューズという民間気象会社に入社しました。
   学生時代はキャスターの仕事だけでしたが、
   ウェザーニューズの社員になってからは、放送局における天気予報全般、
   つまり、アナウンサーが読む原稿を書く仕事なども行いました。
Snow:すごいですねー。文章力の無い私には到底できそうもありません。
   私の場合、直接的に資格は活かせていません。
   というよりも活かす努力をしていません。
   でも気象の知識そのものは仕事に活かせています。
藤田:SnowDropさんは、今どんなお仕事をされているのですか?
Snow:私の本業は道路などの土木構造物の設計の仕事です。
藤田:気象とは全く関係のないようなイメージですね。
Snow:意外にそうでもないんです。
   例えば、道路を設計するには雨水処理が非常に重要になってきます。
藤田:ああ、確かに雨水がたまりやすい道路ではスリップしやすいですよね。
Snow:少し、簡略化した説明になりますが、
   その道路がある地域の降雨特性等によって、
   側溝の規格や勾配、道路を横断する埋設管の大きさが決まります。
   まさに気象条件を踏まえた道路設計です。
   気象を勉強しなくてもこのあたりは技術者であれば、
   無難にできると思いますが、
   一歩進んだ理解をして設計をするとより良いものができると信じています。


【5,お勧めしたい参考書】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Snow:私のホームページでも紹介済みですが、
   その中でも、『一般気象学』(東京大学出版会)は、
   絶対に購入しておいたほうが良いと思います。
藤田:小倉義光先生のご著書ですね。私も受験するときに購入しました。
   今は改訂版が出ていてさらにパワーアップしていますね。
Snow:「気象予報士塾」の講師という視点から見て、この本はいかがですか?
藤田:この本の素晴らしいところは、
   初歩的な気象学をとても丁寧に解説してあることです。
   講師になってからも、蛍光ペンで線を引いて読んでいますよ。
Snow:まさに気象のバイブル的な書籍ですね。
藤田:私は著者の小倉先生にサインしていただきましたよ。(笑)
   ただし、この本は「気象予報士試験対策本」として、
   出版されたものではないですから、
   例えば、一般知識試験の「気象法規」や専門知識試験の範囲は、
   他の書籍で勉強する必要がありますね。
   あと、特に初めて気象を学ぶ方にとって、
   『一般気象学』は難しすぎる部分もあります。
   途中で挫折しないためにも、ナツメ社から出ている、
   『気象予報士試験 徹底攻略テキスト 改訂第2版』で、
   勉強されるのも良いかと思います。
Snow:それは言えてますねー。
   初めて気象を学ぶ人には、俗に「試験対策本」と言われるもので、
   かつ図や写真が多く載っているものをお勧めします。

SnowDropお勧め本→https://www16.plala.or.jp/SnowDrop/sankousyo.html


【6,防災士を取得した理由】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
藤田:SnowDropさんは気象予報士のほかに、
   「防災士」という資格を持っておられますね。
   この資格を取られたのはどうしてですか?
Snow:私が防災士を取得した理由は、気象予報士としての義務感からです。
   私は過去に7.13水害や新潟県中越地震などの様々な災害を経験しました。
藤田:両方とも、2004年に発生した大きな自然災害でしたね。
Snow:そうです。おまけにその年の冬には豪雪災害も起きました・・・。
   これらの経験で、私自身の防災の知識がゼロであることに気づいたんです。
   気象災害が多い現代に、気象予報士が防災の知識を持ち合わせていない
   ことに矛盾を感じたため取得しました。
   まぁ正直なところ、取得したことに若干の後悔はありますが・・・。


【7,将来の夢について】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Snow:私の将来の夢は起業することです。
   どんなに小さな会社でも構いませんが、
   気象と何か他の分野を組み合わせた形の業務をしたいと考えています。
   日本は平成5年に気象業務法が改正され、気象業務が自由化されました。
   その時、大手のシンクタンクでは、
   日本の気象業界は躍進すると言われていました。
藤田:「気象ビジネスは1000億円規模に達する!」
   と言われていたことを思い出します。
Snow:しかし、実際はどうでしょう?
藤田:私が奉職していた株式会社ウェザーニューズは、
   東証一部上場を果たしましたが、業界全体として見るならば、
   まだまだ民間気象会社は伸び悩んでいますよね。
Snow:そうですね。黒字経営のところなんか
   本当に数えるほどしかないんじゃないでしょうか?
   日本では気象情報が無料のものだという認識が蔓延しているので、
   もう気象情報の提供のみでコンスタントな利益をあげていくのは
   無理だと思います。
   気象分野以外の何か付加価値をつけなければならないと思います。
藤田:花粉症の方が「スギ花粉の飛散予報」という情報を重視するように、
   気象をベースにした総合的な情報が求められているわけですね。
Snow:7年前位からいろんなアイデアは蓄積してきましたが、
   もう少し時代を見据えて、
   「チャンス」があれば起業したいなと思っています。
   気象業界で一緒に戦う戦友も見つけなければなりませんし。
藤田:私にできることがあれば、ぜひ協力させて下さいよ。
Snow:そのときは宜しく!




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57、新しい予報用語を学ぶ
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2007年3月29日に、気象庁から「予報用語」についての改正が行われました。
本来の目的は天気予報をより適切に利用するためのものですが、
気象予報士試験受験にも役立つ情報が載っています。
印刷してファイルにまとめておく価値があると思います。
https://www.jma.go.jp/jma/press/0703/29b/yougo_henkou.pdf

「新しく追加される用語(P,22~31)」の中から、
試験勉強の上で、私が特に大事だと思った用語を挙げてみます。
(カッコ内の数字は『予報用語改正』のページ)

 ◎マクロバースト・マイクロバースト(P,22)
  積乱雲の下で起こる強い下降気流のことを「ダウンバースト」といいますが、
  その規模の大きさによって、2つの用語を使い分けます。

 ◎藤田スケール(P,23~24)
  2006年は北海道佐呂間町をはじめ、各地で竜巻による被害が相次ぎました。
  この用語は竜巻などの強い風の尺度として使用されています。
  気象学者の藤田哲也博士が1971年に考案したもので、
  強度に応じて、F0~F5の6段階に分けられています。

 ◎吹き寄せ効果・吸い上げ効果(P,24)
  台風などに伴って発生する高潮の原因はこの2つです。
  専門知識試験だけでなく、実技試験でもこの知識は必要です。

 ◎猛暑日(P,25)
  新しく作られた用語で、定義は「日最高気温が35度以上の日」です。
  「夏日(同25度以上)」「真夏日(同30度以上)」に加えて、
  暑さを示す指標として使用されることになります。

 ◎落雪(P,26)
  雪解けが進んだときに起こりやすい現象として、
  「なだれ(P,26)」「融雪(P,26)」に加えて、この用語が追加されました。
  特に雪の少ない地方にお住まいの方は、
  雪害については意識して勉強しておかれることをお勧めします。

 ◎ウィンドプロファイラ(P,27)
  試験においては用語そのものよりも、資料を読み取ることが大切です。
  ウィンドプロファイラが観測したデータは、
  専門知識試験だけでなく、実技試験においても問題が出ています。

また、今回の予報用語改正では、
「名称や説明などを変更した用語」も掲載されています。
全体として、用語の説明がより分かりやすくなっています。
例えば、「気圧」を簡単に説明できますか?
気象学の基本となる部分ですが、これが案外難しいですね。(P,2をご覧下さい。)

それから、「削除する用語」も掲載されています。
気象庁部内で使用する専門的な用語であることなどが、
削除の理由として書かれていますが、
気象予報士試験で不要というわけではありませんので、ご注意を。
「寒冷低気圧(P,31)」「ドライスロット(P,32)」「波状雲(P,32)」など、
試験でよく登場する用語が集まっています。
この部分もしっかり勉強しておかれることをお勧めします。




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58、秘術? 学科試験免除期間を延長する方法
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ご承知のとおり、気象予報士試験には、
「学科試験(一般・専門)」と「実技試験」があり、
学科試験のいずれかまたは両方に合格した場合は、
その試験の受験が1年間(次回と次々回)免除されるシステムになっています。

ただし、これは「申請を行って免除してもらう」のであって、
「受験を禁止されている」のではないのです。
具体的に申し上げますと、例えば第27回試験で一般知識試験に合格しても、
第28回試験・第29回試験で一般知識試験を受けることは可能なんです。

「免除申請ができるにもかかわらず、
 そんなことを行うメリットはどこにあるのか?」
と思われるかも知れませんが、
再び合格すれば、免除期間を延長できるのです。

先ほどの例を続ければ、第28回でも一般知識試験に合格すれば、
免除期間は第29回試験・第30回試験と伸びることになります。
免除期間が延びることによって、他の科目の勉強に集中できるわけです。

ただし、このやり方にはデメリットがあることも知っておく必要があります。
再び先ほどの例を用いて説明しますが、
一般知識試験の免除申請ができるにもかかわらず、
第28回試験で一般知識試験を受験し不合格だった場合は、
その時点で不合格が確定するということです。

つまり、もし他の試験(専門知識・実技)が合格ラインに到達していても、
一般知識試験を受けて不合格になってしまったばかりに、
(免除申請を行っていれば完全合格していたにもかかわらず!)
泣きを見ることになります・・・。

要は出願の際に免除申請を行わなければ、
試験実施者(財団法人気象業務支援センター)は、
その受験生を「受験免除者」とは見なさないわけです。

ちなみに、免除申請を行わずに受験して失敗しても、
「免除申請権」そのものが消失するわけではありません。
下の流れでご確認下さい。

1,第27回試験で一般知識試験に合格した
       ↓
2,第28回試験で免除申請を行わずに受験して失敗した
       ↓
3,第29回試験では免除申請を行って受験した。

今回の記事は、財団法人気象業務支援センター試験部に取材して作成しました。




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59、実技試験での計算問題
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実技試験における計算問題は、以前によく出されていましたが、
最近の出題頻度は極めて低くなっています。
これまでの計算問題の出題回数をまとめると次のようになります。

  *平成10年度までの出題回数(試験実施回数11回)・・・14回
  *平成11年度以降の出題回数(試験実施回数16回)・・・6回
(平成18年度第2回試験まで。ごく簡単な四則演算は除外してあります。)

明らかに出題傾向が変化していることが一目瞭然です。
しかも、単に出題回数が減っただけでなく、難易度も低くなっているのです。
平成11年度以降に出題された計算問題の内訳は次の通りです。

 ・上昇流hPa/h→m/sへの変換・・・100hPa=約1000mに気づけば簡単
 ・ノット(kt)→km/hへの変換・・ごく基本的な法則を覚えておくだけ
 ・擾乱の移動速度の算出・・・・・緯度10度=約1100kmを利用する
 ・相対湿度の算出・・・・・・・・一般知識「大気の熱力学」の基礎的事項
 ・海面上昇幅の算出・・・・・・・「1hPaで1cmの海面上昇」の鉄則を使う
 ・気温減率の計算・・・・・・・・気温減率の意味が分ければ、ただの割り算

かつては、さまざまな種類の計算問題が出題されていました。
中には、公式を覚えていなければ、
限られた時間で答えるのが困難と思われる問題も出されていたのです。

 ・地衡風・傾度風の計算
 ・海面上昇幅の算出
 ・擾乱・強雨域の移動速度の算出
 ・可降水量の計算
 ・水平方向の発散量・収束量の算出
 ・上昇流hPa/h→m/sへの変換
 ・水平方向の温度移流量の算出
 ・相当温位の計算

ここまで出題傾向が変化した以上、
もはや実技試験において計算問題は主たる課題ではないと考えるべきでしょう。
最近7~8年に出題された実技試験での計算問題は、
学科試験で合格できる実力があれば、
ほとんど特別な対策を必要としないと私は考えます。
つまり、計算問題よりも取り組むべき課題が数多くあるということです。




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60、睡眠時間を削って勉強するのは有効か?
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資格を取得するために勉強する人というのは総じて努力家です。
「勉強をしないと怒られる」といった学校の勉強と異なり、
本人の意志が大きな原動力になっているからです。
特に気象予報士という資格は、その傾向が特に強いと言えるでしょう。
誰かに強制されたわけでもないのに、
レベルアップを目指して勉強を続けるというのは、
非常にエネルギーのいることです。

また、気象予報士試験の受験生は、司法書士試験や公認会計士試験などと比べ、
試験勉強のみに1日を費やす人が少ない資格だと思われます。
司法書士や公認会計士ほど難易度が高くないことが、
仕事や他の勉強との「兼業」を可能にしていると言えるでしょう。
しかし、現実問題として、それは決して楽なことではありません。

受験生の中には、勉強時間を捻出するために、
寝る時間を削っている方もおられることでしょう。
しかし、私は睡眠時間を大幅に短縮することに対し、否定的です。
これは私自身の経験に基づいています。

10代後半~20代前半の私は、睡眠を削ることに非常な努力を傾けていました。
若者にありがちな発想でしょうが、「寝る時間が惜しい」と感じていたのです。
そこで、1日の睡眠時間を4~5時間にすることを目標にしました。
こういった生活をしていた時期は、高校時代(野球部と試験勉強)、
大学時代(テレビ出演と進学塾講師)とちょうど重なります。

当時の生活というのは、例えばこんな感じでした。
「○○さん、今度一緒にメシでも行きましょう。
 えーと、その日は午前3時にテレビ局入りしないとダメなんで、
 午前1時~午前3時なんてどうですか? では、当日はよろしく~!」
そんな真夜中に食事に付き合ってくれた友人も友人ですが、
まさに「早朝・深夜お構いなし」の日々を過ごしていたわけです。

さて、29歳になった今の私が当時の生活を振り返ると、
「睡眠時間を削った効果は、それほど大きくなかった」と総括します。

と言いますのも、確かに夜に寝る時間は短かったものの、
昼寝をする回数が実に多かったからです。
電車やバスの中、高校や大学の教室では、ほとんど寝ていました。
映画館でも、エンドロールまで保たなかったことがいかに多かったか!

つまり、夜に削った睡眠の多くが、昼間に回されただけのことなのです。
その代償は、昼間に猛烈な睡魔にたびたび襲われ続けた結果、
「高校・大学での授業が何も頭に入っていない」という形で、
払わされることになったのです。
学生時代は「学校の勉強など何の役にも立たない」などと考えがちですが、
もし、当時の私がきちんと勉強しておけば、
今、気象の英文資料を目の前にして、絶句することもなかったでしょう。

今の私は、当時とは全く異なった生活リズムです。
午後9時に寝て、午前5時に起きるという生活です。
8時間も眠れば「昼間に眠くて仕方がない」ということはまずありません。
つまり、昼間の時間全てを全力投球に使えるのです。

気象予報士試験を志す受験生の中には、
「睡眠時間を削って頑張るんだ!」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。
確かに、短期的には無理が利くこともあるでしょうし、
お仕事や他の勉強との兼ね合いから、そうせざるを得ない場合もあるでしょう。
しかし、人間が1日に使えるエネルギー量というのは、
概ね限られているのではないか、と思うのです。
つまり、何かを選択するためには、何かを捨てることも大事だということです。

また、手だけを動かすような単調作業ならともかく、
未知の事柄を学ぶ際には、スッキリした頭で取り組まないと効果が出ません。
寝ぼけ眼でコクリコクリと2時間取り組むくらいなら、
全力集中できる状況で30分間勉強したほうが結果が出ると思います。

くれぐれも「睡眠時間を削って頑張るボクって素敵☆」とはならぬようご注意を。
自分に酔っていた私自身の経験談です。




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61、実技試験攻略法 ~精読から速読へ~
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学科試験に合格した後、実技試験に取り組むことになりますが、
その内容の違いに、途惑われる方が少なくありません。
学科試験は単純に知識を問われるだけの内容で、しかも選択式であるのに対し、
実技試験は知識を組み立てた上で、記述で答案を作る問題だからです。

実技試験の受験生には3段階のレベルがあります。
勉強を始めたばかりを「レベル1」、合格に近い段階を「レベル3」とすると、
面白いことに両者は、ある面で似ている部分があります。
それは、問題に取り組むのに要する「時間」です。

「レベル1」の受験生は、実技試験の問題文を読んでも、
問われている内容が十分に理解できません。
これでは当然ながら、まともな答案を書くことはできないわけです。
結果として、答案を埋めることもできずに、時間を持て余すことになります。

実技試験の勉強を続けていくうちに、問題文の指示が分かり、
それを解くための気象資料を少しずつ読み取れるようになってきます。
これが「レベル2」の段階です。
75分の本試験に取り組んで「時間が足りなかった」と感じれば、
このレベルに達したと考えて良いでしょう。

さらに、合格に近づいたのが「レベル3」です。
問題文を熟読するだけで、どの資料を見れば良いのか短時間で見当を付け、
適切に解答を導き出せる水準です。
速く問題を解けるようになるため、時間が余るようになってきます。

まだ試験終了前にもかかわらず、試験会場から出てくる方がわりといますが、
おそらく「レベル1」か「レベル3」の受験生と思われます。

実技試験というのは、自動車の運転免許に例えれば「路上教習」だと思うのです。
実際に道路を走るためには、交通標識や運転ルールを覚える必要がありますが、
これは天気図などの気象資料の読み取り方に相当します。
つまり、実技試験を勉強するためには、
まず気象資料の読み取り方から学ぶことが大切なのです。

気象資料を読み取るための基礎知識が備われば、
あとは過去問題を解いていくことをお勧めします。
つまり、実際に道路で車を走らせていくということです。

最初はゆっくりで構いません。(実技の勉強に最低速度規制はありません。)
問題文の意味を着実に読み取ることから始めましょう。
ある程度、問題を考えた後は模範解答を読みます。
「この答案を作るためには、どの資料を見れば良いのか?」を考えながら、
気象資料を見比べていくのが良いでしょう。
つまり、正答者の思考を自分で再現していくことが大切なのです。
私が受験生のときには、模範解答をノートに書き写すこともしましたが、
これも同じ考え方に基づく勉強法だと言えます。

また、自分の答案を添削してもらうのも良い勉強になります。
周囲に気象予報士の方がいれば、お願いしてみると良いでしょう。
車の運転に例えれば、助手席にいる指導教官といった位置づけでしょうか。
受験生だった私自身はそれを受けられなかったために、
ずいぶん迷走(?)した記憶があります。

ゆっくりと勉強を続けていけば、少しずつ慣れてきます。
最初のうちは天気図の下に書かれている、
「太実線:850hPa気温(℃) 網掛け域:湿数3℃以下」といった凡例を見ないと、
天気図が読み取れないかも知れません。
しかし、慣れてくるうちに、そうしたことが不要になります。
つまり、スピードアップしていくのです。

ですから、最初からスピードを求めてはいけません。
それをすると、ただ雑になるだけです。
精読を重ねていくうちに速読ができるようになる、とお考え下さい。
今活躍している全ての気象予報士も、最初は「レベル1」だったのですから。




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62、自分の言葉で天気予報を解説するために。
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気象キャスターにとって大事なことは、勉強することだと思います。
最初に勉強すべきことは、放送用の原稿を自分で書くことです。

「いちいち原稿を書かなくとも、直接に話せば良いのでは?」
と思われる方もいらっしゃるかも知れません。
でも、それはなかなか難しいことなのです。

パソコンのハードディスクが空であれば、
印刷も音声出力もできないのと同じです。
「話す内容を文章で表現できる」からこそ、「話せる」のであって、
話す内容を書き言葉で表現できない人が、
限られた時間で的確な内容を話すことは困難です。

最近の天気キャスターは大半が気象予報士の資格を持っていますが、
試験に合格することと、放送用の原稿を上手く書くことは別の能力です。
気象予報士試験そのものは、理系の要素も含んでいるわけですが、
原稿作成には文系的な感覚が大事だと思います。

「南東からの高相当温位気流が強制上昇することにより、対流雲が・・・」
というのは実技試験の答案としては正しくても、
気象を専門的に勉強したことのない一般の方への解説として相応しくありません。
「暖かく湿った空気が山にぶつかることによって、雨雲がたくさんできる。」
といった表現に変換することが求められます。

こうした解説原稿をキャスター自身が作ることができなければ、
そのキャスターは他人が書いた原稿を丸読みすることになります。
慣れないうちは仕方がないでしょうが、いつまでも続けるのは面白くない。

ですから、まず気象キャスターとして必要なのは、
「自分の言葉で天気解説の文章を作ること」だと思うのです。
最初は時間もかかりますし、なかなか適切な表現が思い浮かびません。
原稿を読み返してみると、日本語として変な文章だったりします。
でも、これを乗り越えれば、正しい原稿が書けるようになり、
その時間がどんどん短くなっていきます。
天気予報の放送は時間との戦いですから、
「速く書ける」というのは、すごく大事な能力なのです。

放送原稿を書くことを相当に長く続けていると、
やがて紙という形で出力しなくとも、頭の中で原稿がまとまります。
気象キャスターの中には原稿を作らない人、
メモ程度しか作らない人もおられるわけですが、
決して最初からそれができたわけではないということです。

私自身もこれができるまで結構時間がかかりましたが、
自分の言葉で天気予報を伝えることは大事なことだと思います。
好きなキャスターの放送を録画して、原稿に起こしてみるのも、
良い勉強になることでしょう。




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63、実力とコネは自分で作る。
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「テレビやラジオの出演者って、コネで決まるんですか?」
というご質問をいただくことがあります。本当のところはどうなんでしょう?

そもそも、私自身が気象キャスターとして仕事をすることになったのは、
ある方が私を紹介して下さったからなんです。
もちろん、それで採用が決まったわけでなく、選考があったわけですが、
その方の紹介がなければ、選考そのものを受けることができなかったのです。
つまり、「コネ」ですね。

「コネ」という言葉には汚いイメージがつきまとうものですが、
現実の社会においては、普通にあることです。

例えば、私は本屋さんでアルバイトをしていたことがありますが、
アルバイト情報誌を見て、その本屋さんに入ったのではありません。
高校の同級生がすでにその店でアルバイトをしていて、
その人の紹介で、社長の面接を受けたのです。

そして、無事に採用されてアルバイト従業員になった後、
「藤田君の知り合いで、誰かおらんか?」と、社長から尋ねられたものです。
店の前に「アルバイト募集」という張り紙もあるのですが、
新しく入る人は、現従業員の知り合いである場合が多かったように思います。
これも一種の「縁故採用」ですね。

どんな業界でもそうでしょうが、人材を採用する際には、
「できるだけ優れた人物がほしい」と考えるのは当然です。
しかし、「いくらカネがかかっても良い。とにかく一番優れた人物を探せ!」
と言えるのは、お后選びをしている王子様くらいのものであって、
普通は「なるべく手間も費用もかからない方法で」という言葉が加わります。

つまり、コネ採用の利点というのは、
 1,信用できる人物による推薦が1つの保証になる。
 2,人材を集めるための手間と費用が少なくて済む。
という点にあるのであり、人を集めるときに必ず考えることなのです。

「公募(公開募集)」という方法は、いずれの利点も満たしていませんから、
公募によって集まってきた受験生の能力を見る際には、
筆記試験や面接によって、しっかり見極める必要があります。
それだけ、手間と費用をかける必要があるということです。

多くの入社試験や入学試験が、公募という形で行われるのは、
 1,手間と費用をかけても、良い人材を確保したい。
 2,「不公平なことをしている」と世間から見られたくない。
という理由なのであって、裏を返せば、
 1,公募を行わなくても、良い人材が確保できる。
 2,世間からの批判を浴びることがない。
などの条件が満たされれば、公募を行う必要がないわけです。

実際のところ、企業の中途採用は非公開のケースも多いようですし、
テレビ番組の出演者が公募で行われることは少ないと思います。
「○○放送局の出演者 2名募集」と就職情報誌には載ってませんね。
世間に広く募集をかけて、大規模なオーディションを行わなくても、
適切な人材が集まる方法があるからです。

つまり、「コネ」というものは、ある程度存在するものだと、
お考えになったほうが良いということです。
すると、「私はコネがないから諦めるしかない」と、
考える方が出てくるかも知れませんが、
コネがないのであれば、私がしたように、
自分を紹介してくれそうな人をたくさん作れば良いのです。
当然ですが、「業界関係者と不適切な仲になること」ではありません。

もし、気象キャスターになりたいのであれば、
その気持ちを強く表に出して、あちこち動いてみることです。
もちろん、こうすれば必ず結果が出るとは言えません。
「気象キャスターになりたい!」と望む人はたくさんいて、
そのための決まった手順など存在しない世界だと思うからです。
でも、動かないと、「人のつながり」ができないのもまた事実です。




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64、写真やイラストの多い本から始めよう。
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学校の夏休みが近いということで、
書店には夏休み関連の本がいろいろ並んでいます。
工作・自由研究・読書感想文といった宿題対策のために、
いろいろなガイドブックが発売されているのですね。
私などは読書感想文を書くのが昔からエラく苦手でしたから、
当時こういう本があれば、間違いなく飛びついていたように思います。

さて、いろいろな本の中で「天気」に関する本もありました。
手に取って中を見てみたところ、カラーのイラストや写真が豊富で、
しかも値段が1000円程度とお手頃です。
早速にも、次の2冊を買いました。

武田康男著『天気の自由研究』永岡書店
山内豊太郎監修『お天気まるわかりBOOK』成美堂出版

両方とも、小・中学生向けに書かれたのだと思いますが、
気象予報士試験の勉強にチャレンジしようか迷っている人にも、
読んで欲しい本だと思います。

おそらく、気象予報士試験に興味のある人の多くは、
地球が作る気象現象の美しさや不思議さを感じたことが、
1つのきっかけになっているはずです。

「朝起きたら、窓の外が一面の銀世界だった」
「夕立の後に、きれいな虹がかかっていた」
こういった現象を目の当たりにして、
素朴に「もっと地球について学びたい」と興味を持つ人は多いと思います。

しかし、気象予報士試験というのは、あくまでも国家試験であり、
気象予報士として充分な知識や技能を持っているかどうかが問われます。
当然ながら、天気変化のメカニズムを知るために、
ときには無味乾燥とも思える理屈も学ばなければなりません。
最低限の数学や物理の勉強も避けて通ることはできません。

ですから、初めて気象予報士試験にチャレンジする方が、
気象予報士試験対策の本を読むと、身構えてしまうのです。
「気体の状態方程式」「静力学平衡の式」といった見慣れない用語を前にして、
「こんなはずではなかった~」と困惑される方もおられるかも知れません。

ご紹介した2冊の本は、気象予報士試験に初めて挑戦される方にとって、
「架け橋」のような役割を果たしてくれると思います。

例えば、『天気の自由研究』のP,70には、
菓子袋が大きく膨らんだ写真が載っていて、
それは気圧の変化によって起こるのだ、ということが書いてあります。
このように、まず写真やイラストでイメージをつかめば、
「では気圧というのは何なのか?」と、さらに興味が持てます。

また、『お天気まるわかりBOOK』のP,11では、
「なぜ遠くの山は青く見えるのか?」という理由を説明しています。
いきなり、「散乱にはレイリー散乱とミー散乱があって・・・」
という話から始まったのでは、なかなかイメージが湧きません。
しかし、まず「なるほど!」と感じてから、
そのカラクリ(ここでは「レイリー散乱」)を勉強すれば、
頭の中にしっかりと定着するはずです。

もし、気象予報士試験に初めて挑戦しようと思っておられるのであれば、
カラー写真やイラストが豊富に載った本をめくることから始めて下さい。
これらの本で興味をさらに高めることができれば、
次のステップ、つまり少々難しい理論でも頑張って勉強できるはずです。




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65、ミニノート活用術
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気象予報士試験に限った話ではありませんが、
効率的に勉強を進めていくために大事なことは、
分からない部分を自分でしっかりと把握することです。

どの部分が納得できないか? どの部分がスッキリしないか?
これは、他人から容易に見て分かるものではありませんから、
自分できちんと把握して、解決しようと思わない限り、
分からない部分は、いつまで経っても分からないままです。

「分からない」を「分かった!」に変えるために、
参考書で調べたり、講師に質問したりすることは大事なことですが、
その前にやるべき重要なことがあります。
それは、「分からない部分を忘れてしまわない」ということです。

当たり前のことのように思えますが、これが大切です。
テキストを読んでいて、「この文章の意味が分からないな」と感じたら、
絶対にそのままにしておかないことです。
放っておくと、いつの間にか「分からなかったこと」自体を忘れてしまい、
レベルアップする機会を逃してしまいます。

ですから、分からない部分が出てきたときは、
すぐにメモする癖を付けておきましょう。
ここで大事なことは、できるだけ面倒くさくない方法を選ぶことです。
「メモをするのがおっくうだ」と感じるようでは、メモ癖が身につきません。

私の場合、コクヨ製の小さなノートを愛用しています。
コクヨの「キャンパスノート」はコンビニでも売っていますから、
皆さんもご存じだと思いますが、
このシリーズの中に、「縦10.2cm×横7.2cm」のミニノートがあるのです。
(↓の一覧表の一番下の「ノ-242A」という商品です。)
https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/campus/lineup/a.html

このノートの良いところを挙げてみますと、
 1,コンパクトで、軽いこと
 2,紙がバラバラにならないこと
 3,安いこと

まず、1は非常に大事です。
シャツやズボンのポケットにも収まりますから、
持ち運ぶ際のストレスが全くありません。
持ち歩いていることを忘れてしまうくらいの大きさ・重さこそ、
メモ帳として最適だと思います。

次に2ですが、いわゆる電話機の横に置いてあるような「メモ帳」、
つまり、紙を一枚ずつはがせるタイプのものは、
この条件を満たしていません。
以前、私はこういったメモ帳を持ち歩いていましたが、
毎日持ち歩くうちに、紙がバラバラになってくるのです。
それがイヤになって、持ち歩くのをやめてしまいました。
ノート型なら、紙が分離することもありませんから、
後から見返すことも簡単です。

それから3ですが、このミニノートは一冊50円ほどで売っています。
安いからこそ、無造作にバンバン使えるのです。
なまじ高価な手帳を買っても、大事に鞄の中に入れているだけでは、
ただのファッションでしかありません。

読者の皆さんの中には、「携帯電話でメモすれば良いのでは?」
とお考えになる方もおられると思います。
それが便利だと思う方は、そうされると良いでしょう。

私自身もメモ帳を忘れてしまった場合などは、
携帯メールを自宅のパソコンメールに送ることで、
メモ代わりにすることがあります。
ただ、指で文字を打つのが苦手なので、
やっぱり、紙とペンを使うのが一番楽だと感じます。

勉強で分からないことがあれば、どんどんメモしていきましょう。
そして、その内容が解決すれば、
ミニノートに残っているメモを、赤のサインペンで線を引いて消すのです。
赤のサインペンで消すことに快感を覚えるようになれば、
メモ帳を充分に活用できている証拠です。




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66、二次試験まで、あと5か月。
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試験が終わり、ほっとされている方も多いことでしょう。
猛勉強の疲れをとるために、ゆっくりと休まれるのも良いかと思います。

しかし、自己採点で不合格だった可能性の高い人は、
なるべく早い段階で勉強を再開されることをお勧めします。
来年1月の試験を良い状態で臨むためです。

1月の試験から8月の試験までの期間が、7か月あるのに対し、
8月の試験から来年1月の試験までの期間は、5か月しかないのです。
さらに、10月の合格発表を待ってから勉強を始めるのは圧倒的に不利です。
その時点で残された時間は3か月半しかありませんし、
試験後、1か月以上も勉強から離れていると、
間違いなく成績は下がっていると考えるべきです。

ちょっと極端な表現かも知れませんが、
大学入試で例えれば、今回の試験を「センター試験」、
来年1月に行われる試験を「二次試験」、
と捉えるくらいの気持ちが大切だと思います。

今回の試験で何も合格できなかった方は、
勉強に対するモチベーションを維持できるかどうか、
ご自身に問いかけてみて下さい。
もし、くじけずに勉強を継続していけるのであれば、
来年1月の試験で何か結果を出せるように頑張っていきましょう。
今回の得点によって、今後にするべき勉強法が異なります。
詳細は以前に書いた「53、半年後の試験に備えて」をお読み下さい。

今回の試験で「一般だけ合格」「専門だけ合格」の方は、
これで合格への階段を一段上ったことになります。
次のステップは、1月の試験で残りの学科試験に合格することです。
そうすれば、2月から実技試験の勉強に専念できますし、
8月で完全合格も視野に入ってくるでしょう。

今回の試験で両方の学科試験に合格された方は、
いよいよ実技試験の勉強に力を入れていくことになります。
ただし、これまで実技の勉強を全くしたことがない方が、
来年1月で合格するのは相当な努力が必要となるでしょう。
1月は「運良くいけば合格」、8月は「確実に合格」、
といったプランを立てるのが良いと思います。




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67,「お天気」と「気象学」のギャップに耐える。
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「天気に興味があるので、気象予報士試験に挑戦したいのですが・・・。」
このようなご質問をいただくことがよくあります。
もちろん、勉強をされるうえで気象に対する興味は大切です。
気象予報士を目指すのに、「天気なんて興味ない」では困ります。

ただ、「空に対する興味」だけでは、
勉強に対するモチベーションを維持できない恐れがあることにご注意下さい。
それだけ気象予報士試験が難関資格であるということであり、
学問としての「気象」が持つ、奥深さを意味することでもあります。

青い空・白い雲・心地良い風・清々しい空気・美しい虹・・・。
地球が織りなす美しい光景に魅せられて、
気象を学ぼうとお考えになる方も多いことでしょう。
それが勉強を始めるきっかけとなるのは良いのですが、
学問として、資格試験として、気象を学ぶことになれば、
ややこしい物理や数学についての勉強もしなければなりません。
気象予報士試験で要求される物理や数学のレベルは、
大学受験より難易度が低いとはいえ、学生時代に「文系」だった方にとっては、
苦痛に感じられる場面もあるのではないかと思います。

どんなことでも、そうだと思いますが、
「お遊び」で満足するだけなら、敢えて苦労をする必要はありません。
しかし、一定以上の水準に達したいと望むのであれば、
それなりの努力は避けられないのです。

例えば、趣味として野球を嗜むのであれば、
月に一回程度、ゲームを行うことで充分に楽しめるでしょう。
でも、甲子園に出場したいとか、プロの選手になりたいということであれば、
素振りや投げ込みといった、地味なトレーニングが欠かせません。

気象だって同じです。空を見るのが好きで、気象の図鑑を眺めているだけなら、
テレビの気象キャスターの解説を聞いているだけなら、
「静力学平衡」も「コリオリの力」も知る必要はありません。
しかし、気象予報士試験の合格を目指すのであれば、
自分自身が気象キャスターとなって解説を行いたいのであれば、
表面的な現象の裏に存在する理論を学ぶことが不可欠となります。

特に気象は、「現象」と「理論」の解離が大きい学問であると言えます。
それだけに、天気が好きな人ほど、
気象学の本を開いたときに途惑うことになります。
しかし、気象予報士試験の合格を目指すなら、ここから逃げてはいけません。
理論を学べば、それまでバラバラだった知識が、線で結ばれるようになります。
それは、もっと天気が面白くなることを意味するのです。




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68,参考書を活用する方法。
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大阪市内で「気象予報士試験講座」の授業を終えた後、
私は月に一度程度、大型書店に立ち寄ります。
もちろん、新しい気象関連の本が出ていないかをチェックするためです。

最近は特に気象予報士試験対策の本が充実してきました。
このように、質の良い参考書がたくさんあることは、
受験生にとって非常に有利なことなのです。
そして、何よりも大事なのは参考書を上手く生かすことです。
つまり、参考書に書かれた知識を適切に吸収し、
それを自分のものにすることによって、試験突破のための実力となるのです。
そこで、参考書を充分に生かす方法として、次の3つを挙げたいと思います。

1,自分のレベルに合った参考書を選ぶ。
2,買った参考書は必ず読む。
3,参考書を読んで理解した後は、自分で要点をまとめる。

では、順番に1つずつ見ていきましょう。


1,自分のレベルに合った参考書を選ぶ。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
参考書のレベルが現在の自分の実力に合っていなければ、
勉強を続けるのが苦しくなってきます。
例えば、小倉義光先生の『一般気象学』がいくら名著だと言っても、
気象を始めて学ぼうとする文系の受験生には、
決して勉強に適しているとは言えないと私は思うのです。

「早く合格したい」という気持ちが強い方ほど、
レベルの高い本を求めようとする傾向がありますが、「急がば回れ」です。
途中で挫折してしまっては、それこそ合格から遠ざかってしまいます。
やさしい本から始めて、徐々にレベルを上げていくのが良いでしょう。


2,買った参考書は必ず読む。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
当たり前のことですが、本を読まずに内容を理解することは不可能です。
(速読術の達人でも、中身はちゃんと読んでいるはずです。)
でも、本を買うことで満足感を得てしまうことって結構あるのですね。
はい、私もその一人です。オークションで落札した瞬間が一番うれしいです。
でも、そんなことを続けているうちに、いつの間にか、
書棚には読めもしない洋書が10冊以上並んでいます・・・。

本をたくさん買うと、自分の頭が良くなったような錯覚を覚えますが、
キチンと読まない限り、知識が増えることはありません。
持っている本の数が多いほど、目移りしてしまい、
結局、どの本も丁寧に熟読できなくなるものです。
極論を言えば、1冊しかない優れた参考書をボロボロになるまで、
トコトンまで使いこなすほうが、効果は上がりやすいと言えます。


3,参考書を読んで理解した後は、要点をまとめる。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
試験勉強をするうえで大切なのは、
詰め込んだ知識を自分の頭の中でキチンと整理することです。
丁寧な説明が書かれている参考書は、最初に勉強する上で非常に役立ちますが、
それを理解できた後は、結論だけを短くまとめたようなもののほうが、
試験対策としては有効であると思われます。

ちなみに、これをゼロから作成するのは大変ですので、
私が主宰する塾では、授業時にプリント教材をお渡ししています。
これを土台にして、講義内容などを書き込んでいくことで、
自分だけのオリジナル教材が完成するというわけです。
ある受講生の方のオリジナル教材をご紹介しましょう。

写真をクリックすると、別ウィンドウが開いて拡大表示されます。
(注1:受講生の承諾を得たうえで掲載しています。)
(注2:写真に写っている紙のうち、印刷文字が書かれた左半分のみが当塾配布分です。
    右側は受講生が紙幅を拡張し、講義内容等を書き込んでおられています。これも一つの活用法です。)




特に「自分でペンを動かす」という作業は大事だと思います。
「読む」という行為は、書物を通して授業を受けているようなもので、
言ってみれば、一方的に話を聞いているのと似ています。
しかし、ここに「書く」という行為が加わることによって、
より理解が深まることになります。
例えば、専門用語の意味を赤ボールペンで書き込んでおくだけで、
本を再読するときに、スムーズに読み進めることができます。
本の中に字を書くことに対して躊躇される方もおられるかも知れませんが、
勉強効率を薦めたいのであれば、書き込みは行うべきだと思います。




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69,試験結果の分析から得られる教訓
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以前にも調べたことがありますが、
財団法人気象業務支援センターが発表された情報をもとに、
今回(第28回試験)も「受験生の状況別合格率」を算出してみました。
サンプル数の最も多い東京会場をもとにした推定値です。

学科試験の免除なし・・・・・・約0.5%
一般または専門のみ免除・・・・約4%
一般・専門とも免除・・・・・・約20%

状況別受験者数は明らかではありませんが、
3つのケースを平均した合格率は約4%と、
発表された合格率4.3%に近い数字が出ましたので、
上記の試算は、かなり精度の高い推定値ではないかと考えています。

やはり、このデータから学ぶべきことは、
「学科試験の勉強が不十分では、完全合格は望めない」ということです。
特に一般・専門のどちらにも合格していない受験生の合格率は0.5%です。
この中には、以前に学科試験に合格していながら、
免除期間が過ぎたために、再挑戦された方も含まれていることでしょう。
おそらく、そういった方々を除いた合格率はゼロに近いと思います。

両方の学科試験に合格している方の完全合格率が非常に高いのは、
次のような理由が考えられます。

1,実技試験の勉強だけに全力を注ぐことができたから。
2,実技試験の勉強をするための基礎知識が豊富だから。
3,真剣に合格を目指す方ばかりだから。

まず1についてですが、学科試験(一般・専門)と実技試験の勉強を、
同時並行で行っていくのは時間的になかなか大変なことです。
例えてみれば、チャンバラで一人の敵だけを相手に戦うか、
二人または三人の敵と同時に戦うかの違いがあります。
特に次の試験までの時間が充分でない場合は、
合格を目指すべき試験を絞っていくことも一つの作戦です。

2についてですが、「学科試験の勉強を充分にやりなさい」といったことは、
多くの参考書に書いてあることだと思います。
その理由は「学科試験に合格しないと、実技試験を採点してもらえない」
という、試験のシステム上の話だけではありません。
むしろ、「学科の知識が不十分だと、実技の勉強が進みにくい」
というのが、実質的な理由です。

例えば、一般知識の勉強において「放射」の概念が曖昧であれば、
専門知識の勉強で、「気象衛星による赤外画像」の意味が分かりにくく、
実技試験における「衛星画像の読み取り」が正しくできない、
といった具合です。

「学科の復習を丁寧にしたら、実技の勉強が進みやすくなった」
という受講生からのご感想をいただくことがありますが、
まさにそれを示しています。

3については「合格率の低さに悲観しないで」ということを述べたいのです。
確かに今回(第28回)の試験での合格率は4.3%で、
単純に考えれば「23人に1人しか合格しない」試験です。
それに対し、新司法試験(平成19年)の合格率は約40%でした。

分野がまるで違うので、単純に比べることはできませんが、
「気象予報士試験のほうが10倍難しい」と考える人はまずいないでしょう。
新司法試験の受験者は、法科大学院で2年~3年も勉強されているのです。
合格率と難易度は必ずしも連動するものではないことが、
お分かりいただけるかと思います。

気象予報士は世間でもよく知られた資格であり、
「学歴不問」「中学生や高校生でも合格した」という事実に、
「テレビのお天気キャスター」というイメージがあります。
このため、(善し悪しは別として)ミーハーな気持ちで受験される方が、
一定数おられると想像しています。
全体の合格率がここまで低い理由の一つではないかと私は考えています。

もちろん、難関試験であることは事実ですが、
真剣に勉強して試験に臨んだ方の合格率は、もっと高いはずです。
(ここで言う「真剣に勉強」とは、一時的に奮起することではなく、
 地道に長時間にわたって勉強を懸命に続けることを指します。)
学科試験から着実に勉強を重ねていけば、
きっと合格に到達できると、私は確信しています。




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70,観察→分析→実行
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かつて、「『学び』は『真似ること』から始まる」ということを、
大学の講義で耳にしたことがあります。
気象キャスターと塾講師を掛け持ちしていた私にとって、
大学の教室というのは、昼寝か読書の場でしたが、
卒業して6年経った今でも、この言葉は印象に残っています。

「○○を習得したい」と考えたときに、まず成すべきことは、
すでに習得した人間が、どのようにして成功したのかを知ることです。
そのためには、観察が欠かせません。
鉄棒の逆上がり・自転車の練習・縄跳びの二重跳びなどにおいて、
上手くできる人の技をじっくり観察された経験が、誰でもあるはずです。

気象予報士試験だって同じです。
メルマガなどで「勉強仲間を作りましょう」とよく言ってますが、
これは「真剣な受験生はどのくらい勉強しているのか」ということを、
実際に見聞きすることの重要性も含んでいます。

気象予報士試験は大学入試と異なり、絶対的な受験者数が少ないですから、
どうしても、一人で試験攻略を練ることが多くなります。
このため、「井の中の蛙」状態になり、
行うべき勉強量についても正確に見極めることが難しいのです。
(もっとハッキリ言えば、甘く見積もりがちになります。)
ですから、「試験に合格するために必要なこと」を、
意識して入手することが必要なのです。

「気象キャスターを目指すこと」ついても同様です。
試験というのはレールが引かれていますから、まだ攻略しやすいのです。
そのレール上を一生懸命に走れば、「合格」という名の駅に到着します。
しかし、キャスターになるために決まった道などありません。
つまり、自分で道を拓くことから始めなければならないのであって、
その点では、試験に合格することよりも難しいのです。

だからこそ、すでに気象キャスターになった人から、学ぶことが大事なのです。
直接にあって話を聞くのがベストでしょうが、なかなか難しいことですから、
「あの人は、どのようにしてキャスターになったのだろう?」と、
いろいろ調べてみると良いでしょう。
著書やインタビュー記事などで、経緯を公開されている方もいるはずです。
これらの情報は非常に貴重なもなのですが、
成功者の体験談というのは、ある意味で「自慢話」ですから、
なかなか気前良く、詳細を語っておられたりするものです。

もちろん、情報を入手するだけで満足していてはいけません。
仕入れた情報を分析・加工したうえで、実行することが大切です。
「見る」「聞く」だけではなく、
それを基にして「真似る」ことが「学ぶ」ことなのですから。




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71,気象業界で仕事をしたい方へ(前編)
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おかげさまで、当メルマガを発行してから3年近くが経ち、
購読されている方は700名以上になりました。(まぐまぐ+melma!)
「気象予報士」「お天気キャスター」という、
限られたテーマを取り扱っているメルマガであるにも関わらず、
これだけ多くの方にお読みいただけるのは、うれしい限りです。

「よくネタが尽きませんね。」とも言われますが、
発行日が近くなると、ワーワー言いながら頭を抱えているのですよ。
無料誌とはいえ、読者の皆様に役立つ情報をお届けすべきですからね。

読者の皆様は、どんな情報を知りたいと思っておられるのか?
そこで、Yahoo!を使って「気象予報士」と検索ワードを入れてみました。
そうすると、「気象予報士」と一緒に検索する言葉が自動的に出てくるのです。
これは「関連検索ワード」と呼ばれていて、合計10種類が出てきました。

1,気象予報士 試験
2,気象予報士 就職
3,nhk 気象予報士
4,気象予報士 求人
5,気象予報士 資格
6,気象予報士 合格率
7,気象予報士 独学
8,気象予報士 仕事
9,気象予報士 給料
10,気象予報士 根本

入手したい情報の種類は、大きく3つに分類できるようですね。
まず、1・6・7は、気象予報士試験についての情報を求めている方。
それから、3と10は、関心のある気象キャスターについて知りたい、
と思っておられる方の検索と考えられます。
残りの2・4・5・8・9については、
気象予報士の資格を生かした就職に興味がある方で、
ここでの10種類のうち、実に半分を占めていることが分かります。

実際、私自身もある週刊誌から、
「業界の給料」というテーマで取材を受けたことがあります。
多くの方にとって関心があるのは、おそらく次の質問でしょう。

質問:気象会社の給料ってどのくらいですか?
回答:私は450万円くらいでした。

正直なところ、私は気象業界全体の給与水準を知りませんし、
お世話になった会社の給与体系をベラベラ喋るのも憚られましたから、
素直に自分が受け取っていた年俸を答えました。
これを安いと見るか、高いと見るかは、人それぞれでしょうが、
新入社員のときから、この金額をいただけたのは良かったと思います。
私が勤務していたウェザーニューズは上場(東証一部)していますから、
『会社四季報』を見ると、全社員の平均年収が載っています。
2007年3集(夏号)には、521万円とあります。

このメルマガをお読みになっている方の中には、
「気象会社で働いてみたい」「気象業界へ転職したい」
「気象キャスターになりたい」と思っておられる方が多いはずです。

「就職のために気象予報士の資格を取るのだ」という方も多いでしょう。
しかし、大事なのは「資格」だけではありません。
それについては、次回のメルマガで述べることにしましょう。




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72,気象業界で仕事をしたい方へ(後編)
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読者の皆さんにお尋ねします。
料理人を目指す人が、調理師試験の勉強だけをしていて良いのでしょうか?
起業を志す人が『株式会社を作る方法』という本を読むだけで良いのでしょうか?
もちろんダメに決まっています。

料理人にとって調理師の免許は必要なものでしょうが、
それを取得しただけで料理人になれるわけではありません。
むしろ、自分の好きな料理店に飛び込んで、
雑用でも何でもして働きながら、料理技術を学ぶことのほうが、
優れた料理人になるために大事なことではないかと私は思うのです。

起業するために、株式会社の設立は必ずしも必要なものではありません。
業態にもよりますが、最初は個人経営で構わないことが多いのです。
起業とは「業を起こす」と書きます。つまり、大事なのは「業」の中身です。
中身が優れていれば、事業は拡大し、売上も増加することでしょう。
その時点で、法人化を考えれば良いのです。
中身が充実していないのに、箱のことばかり考えているようでは、
事業の立ち上げさえもおぼつかないと言わざるを得ません。

誰しも、「調理師」とか「代表取締役」といった、
名刺に刷り込めるような肩書を持つことを格好良いと感じます。
それを目標にして頑張ることも良いでしょう。
しかし、肩書を得ることが、中身を得ることになるとは限らないわけです。

気象予報士試験の勉強も同じです。
単なる趣味や生涯学習として、試験勉強をされるのであれば、
資格取得後のことをとやかくお考えになる必要はありません。
しかし、この気象予報士資格を就職や転職に生かしたい、
つまり、資格を取得することによる実利も得たいというのであれば、
試験勉強以外にするべきことがあるということです。

ここで注意しておかねばならないことがあります。
「気象予報士の資格を持っている」ということだけで、
就職や転職がフリーパスになることなど、あり得ない話だということです。
これはどんな難関資格にも言えることではないでしょうか。

仮に「取得すれば絶対に就職できる」と言われる資格があったとしましょう。
そういった資格試験には、必ず受験者が殺到することになります。
受験者数の増加に伴い、普通は試験合格者も増えることになりますが、
業界における雇用者数は急に増えるものではありませんから、
その資格を生かした専門職に就けない人が必ず出てくるわけです。
結局、その資格は「取得しても就職できるとは限らない資格」になります。

もちろん、気象業界を目指す方にとって、
気象予報士の勉強に取り組むことが大事であることは言うまでもありません。
しかし、気象予報士試験合格が「終着点」ではなく「経由地」であり、
先にある目標を持っている人にとっては、
その目標を達成するために考え、行動することが非常に大切です。
同じ目標を持った仲間をつくり、コミュニケーションを図ることで、
一人で行動するときよりも多くの情報が集まるはずです。

読者の皆さんの中には、気象予報士試験の勉強をするために、
スクールに通っておられる方も大勢いらっしゃることでしょう。
スクールを単なる勉強の場と考えるだけではなく、
受講生どうしで情報交換をする場と考えることも大切です。
合格後の目標や夢を語り合うことによって、
「今の自分が行うべきこと」を、より具体化させていくことができるからです。
それが試験勉強に対する原動力にもなるのです。




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73,勉強の質と量を確保するために。
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よく言われているように、勉強量は「質×時間」で表されます。
集中した状態で長時間の勉強を続けることができれば、
時間あたりの勉強効率が最も高くなるというわけです。
では、具体的に質と量を高めるためにはどうすれば良いのか?
私が思っていることを3つご紹介します。

 1,スキマ時間を勉強に活用せよ。
 2,疑問点を洗い出し、それを解決することを心がけよ。
 3,便利な道具が必ずしも勉強に役立つとは限らないと考えよ。

まず、1についてですが、
机に向かって「さあ、これから2時間みっちりやるぞ」だけが、
つまり、連続した長い時間だけが勉強時間ではないということです。
5分や10分の時間であっても、参考書を広げることはできるのです。
1日において、まとまった勉強時間を確保できれば理想ですが、
それができなくても、1日の中に勉強時間を溶け込ませることは可能です。
人と会う約束をしていて待っている時間や、電車に乗っている時間など、
ちょっとしたスキマ時間はいくらでも見つかるものです。
例えば、私は風呂に入っているときにCDやテープを聴くことがあります。
冬は長風呂で体を温めたいところですが、黙って入っているのは暇です。
テープやCDを聴いていると暇にならず、一石二鳥なのです。
スキマ時間そのものは決して長くありませんが、
1日のスキマ時間を全て勉強に充てれば、
意外なほどの勉強時間を確保できるものです。
勉強時間を増やすために、とかく睡眠を削りたがる人がいますが、
昼間に頭がボンヤリしてしまうほどに睡眠を削ると、
かえって勉強の質が悪くなりますし、何よりも体に毒です。
→関連記事「60、睡眠時間を削って勉強するのは有効か?」

次に、2についてです。
例えば参考書を広げるときに、漠然と読み進めるだけではダメです。
重要な箇所に線を引くことも大事でしょうが、
それよりも大切なことは、「疑問点を洗い出すこと」です。
普通は参考書をサラッと1回だけ読んだだけで、
その内容が完全に理解できるということはありません。
「よく分からない部分」が必ず出てきます。
その部分を解決してこそ、理解が深まり、実力がアップするわけですから、
絶対に放置していてはいけません。
本に付箋を挟んだり、メモするなどして、
どの部分が理解できていないのかをチェックすることが大事です。
つまり本を読むときは、次のサイクルを繰り返すことを意味します。
読む→分からない部分を見つける→分からない部分を解決する→再び読む
これを繰り返すことによって、少しずつレベルアップし、
やがて一冊の本全体の内容を理解することにつながるわけです。
→関連記事「68,参考書を活用する方法。」

最後に3についてです。
科学技術の進歩に伴い、便利な道具が数多くあります。
例えば、図書館で借りた本の中に重要な記事が載っていた場合も、
コピー機を使えば、簡単に記事を複写できます。
しかし、便利な道具は必ずしも勉強に役立つとは限りません。
コピーしてノートに貼り付ければ、1分で済みますが、
それだけで満足してしまって、記事を熟読しないのであれば、
頭の中には何も入らないことになります。
コピー機がなかった時代は、ノートに書き写していたわけで、
その作業は実に大変だったでしょう。
しかし、筆写することで必然的に記事をよく読むことになり、
きちんと頭に残りますから、勉強になるわけです。
昔の学者は本を書き写すことによって、本を手に入れていました。
おそらく、それ自体が勉強になっていたのだと思います。

もう一つ例を挙げましょう。
私は大学時代にMDプレーヤーで講義を録音したことがあります。
講義を収録しておけば、聴き漏らしたときも心配なないし、
家でも勉強できるだろう、そう思ったわけです。
しかし、その試みは失敗に終わりました。
まず「録音しているから、いつでも聴ける」という状態が、
気持ちの緩みを生み出し、講義中の居眠りが多くなりました。
では、録音した講義を家で聴いたかというと、そうではありませんでした。
自宅での1講義90分という時間は、教室にいるときよりも長く感じられ、
とても最後まで聴くだけの集中力が維持できなかったのです。
道具に頼ったために、勉強が頓挫してしまった例です。
逆に「授業の録音厳禁。ノートを取ることも一切許さん。」という状況なら、
先生の講義を一言も聴き漏らさぬよう、全神経を集中させ、
聴いた内容を必死で理解するように頭を働かせながら、
授業を受けたことでしょう。(スパイ養成学校みたいですね)

つまり、これらのことから言えるのは、
あくまでも自分の頭に知識を入れるのが勉強だということであり、
道具はそれを助けるものであるということ。
道具の存在が、勉強を怠けさせてしまうのであれば、
その道具は自分には合っていないということなのです。




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74,転職の準備としての受験勉強
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転職をする際の格言として「猿の枝渡り」というものがあるそうです。
猿が木から落ちることなく、枝から枝へ上手に渡ることができるのは、
必ず次の枝をしっかりと掴んでから、それまで掴んでいた枝を離すからです。
つまり、『転職先が決まるまで、今の会社を辞めてはならない。』というのが、
転職を成功させるための原則だそうです。
転職先も決まっていないのに、今の会社に辞表を叩き付けていては、
木から落ちてしまう危険が高いということですね。

現在、気象キャスターとして活躍されている方の中には、
キャスターになる以前に、現在とは違った仕事をされていた方もおられます。
いわば、気象キャスターに「転職」されたとも言えるでしょう。

ご存じのとおり、気象キャスターになるためには、
気象予報士の資格が非常に重要視されるようになっています。
これは法律で決まっているわけでも何でもありません。
しかし、「気象キャスターは気象予報士の有資格者だ」というのが、
すでに世間一般での認識になっていると思われます。
ですから、それまで気象を学んだことのない方が気象キャスターを目指すとき、
気象予報士試験の勉強からスタートするというのは、
自然な流れであると言えるでしょう。

ここで「猿の枝渡り」の法則を当てはめてみると、
会社勤務を続けながら、気象予報士試験の勉強をすることを意味します。
しかし、これは決して容易なことではありません。
気象予報士試験が難関であることは、メルマガで何度も書いてきましたし、
少しでも勉強をかじったことのある方であれば、何方でもご存じでしょう。
試験突破のためには、少なからぬ時間を勉強に充てる必要があります。

例えば、夕方6時に会社の勤務が終わるとしましょう。
仕事を終えて疲れた体にアルコールでも入れたいと思うわけですが、
ベロベロに酔ってしまっては勉強になりません。
会社から真っ直ぐ家に帰って、夕食を終えた後、
1時間でも2時間でも、参考書や問題集と格闘せねばなりません。
もし、塾や予備校の類に関与するのであれば、
週に1回くらいは会社からスクールへ直行し、講義を受けることになります。
同僚が居酒屋やカラオケ店でワイワイ騒いでいたりしているときに、
将来の夢に向かって黙々と学び続けるわけです。

このように、仕事を続けながらも勉強を重ね、
気象予報士試験に合格した人を私は数多く知っています。
目標をしっかり設定し、自分を律して努力を続けることができれば、
気象予報士試験を突破することは可能であると考えます。

しかし、現在の仕事が極端に忙しく、
どうしても勉強時間を確保することが難しいのであれば、
今の環境を変えることも一つの手段ではないかと思います。

と言いますのも、『仕事で忙しい』というのは、
勉強を中断するための「正当でカッコイイ理由」になってしまうからです。
「遊んでいて勉強できていない」というのは、誰しも後ろめたさを感じます。
しかし、「仕事で忙しいから勉強できない」という理由ほど、
自分自身に対して、大義名分の立つ言い訳はありません。
後ろめたさを感じないぶんだけ、危険なわけです。
「中断」はやがて「永断」になり、目標は未達成のまま消えてしまいます。

趣味で気象予報士資格を取るのであれば、
現在の仕事を最優先するのが、一番正しい選択でしょう。
時間に余裕ができた段階で、ボチボチ勉強を再開すれば良いのです。
しかし、早く資格を取得してキャスターを目指したい、ということであれば、
会社を辞めて、勉強に専念するのも一つの選択肢であると思うのです。

例えば、長い人生の中で1年間を勉強に捧げることを考えます。
睡眠を充分に取った新鮮な頭で、毎日5時間の勉強を続けるのです。
日曜日だけを休日とし、残り週6日を勉強に充てれば、
1年間で約300日、つまり約1500時間を確保できます。
勉強量は時間だけで決まるものではありませんが、
適切な勉強法と適切な指導書(または指導者)が備わっていれば、
初めて気象の勉強をする人にとっても、
1500時間は気象予報士試験合格のために充分な時間であると思われます。

もちろん、会社を辞めてまで勉強に専念するというのは大きなリスクであり、
安易な気持ちで、それを選択するべきではありません。
まずは、何とかして勉強時間を捻出することをお考え下さい。




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75,気象予報士を志す学生さんへ
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このメルマガをお読みの方の中には、学生さんも少なくないと思いますので、
今回は「学生時代に気象予報士資格を取得する」ことについて書きます。
思えば、私自身も高校在学中に資格をいただいたわけですが、
その経験も踏まえて、学生には3つの有利な点があると考えます。

  1,中学~高校時代に学んだことを生かせる
  2,勉強時間を確保しやすい
  3,期限を定めて集中できる

1については、学科試験(特に一般知識)の勉強を行う際に言えることです。
やはり、高校時代に「地学」を履修された方や、
センター試験・2次試験で「地学」を受験科目にされた方は有利です。
少なくとも、導入部分の学習はスムーズに進むことでしょう。
また、地学そのものを学んでいなくても、
中学~高校時代に勉強した物理や数学の知識は役立ちます。
気象予報士試験では、基礎的な物理や数学の素養が求められるからです。

2については、「3つの利点」の中で最も大きな部分です。
学生ほど時間に恵まれている人々は、それほど多くありません。
平日の朝8時の時点で、布団の中にいる割合が最も高いのが、
大学生ではないかと思っています。(私もそうでしたからね。)
もちろん、単位に厳しい学部や学科もあるでしょうから、
一括りに「学生はヒマである」と断じるつもりはありませんが、
「気象予報士試験の勉強をしたい」と思ったときに、
社会人よりも一定の勉強時間を確保しやすいことは明らかです。
どんな資格試験であれ、「難関」とされる試験を攻略するためには、
充分な勉強量を確保しなければ、合格できません。
卒業して就職すれば、勉強時間の捻出に苦心することが多くなるはずです。

3については、心理的な後押しが期待できるということです。
「就職活動までに資格を取りたい」「卒業までに合格したい」という、
期限の付いた目標を、学生の皆さんは掲げておられることでしょう。
目標を達成せねばならない期日が決まっていれば、
自ずとそれに合わせる形で勉強スケジュールを組むことになります。
敢えて自分を追い込むことによって、頑張る気持ちを高めるわけです。
これは試験勉強だけでなく、多くの仕事にも言えるのではないでしょうか。
このメルマガも今回で75話を数えますが、ここまで続けて発行できたのも、
「隔週で発行する」という縛りがあるからです。
「不定期発行」であれば、おそらく続かなかったことでしょう。
社会人の場合、直接に仕事が絡んでいる場合を除き、
資格試験の勉強に対して明確な期限を設定することが難しく、
この点でも、学生に有利な部分があると言えます。

これまでに学生にとって有利な部分を述べてきましたが、
それらを生かして勉強に励めるかどうかは、その人次第です。
学生さんの場合、明確な目標が定まっていない方もおられることでしょう。
「なんとなく・・・気象予報士」という意識で勉強していても、
いたずらに時間が過ぎていくだけです。
学生時代に成すべきことを真剣に考え抜いて、
その結論が「気象予報士資格取得」なのであるならば、
あとは目標に向かって真っ直ぐに走り続けるのが良いと思うのです。

また、意欲的な学生さんの傾向として、
「あの資格も取りたい」「この資格も学びたい」といった、
幕の内弁当的な志向が見られます。
しかし、気象予報士を目指すのであれば、「選択と集中」をお勧めします。
ただでさえ、学校の勉強を抱えているわけです。
タコのように足を広げすぎると、どれも中途半端で終わる可能性があります。
いろいろなことに挑戦する気持ちは大切だと思うのですが、
「私は学生時代に、これを勉強した!」と胸を張って言えるような成果は、
決して片手間で得られるものではないということです。




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76、走り続けることができた人だけ合格できる。
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気象予報士試験を陸上競技に例えると、「マラソン」であると言えます。
短い期間での集中した勉強で結果が左右される短距離走ではなく、
長期間に及ぶ勉強の積み重ねが合否を決める長距離レースなのです。
長距離レースを成功させるためには、大事なことが2つあります。

 1,ゴール(試験合格)までの長期的な計画を立てる
 2,計画に沿って、着実に勉強を進める

まず、1は計画を立てることの重要性です。
気象予報士試験は、学科試験から順番に合格していくことができますから、
「一般知識試験→専門知識試験→実技試験」と学習計画を立てやすいのです。
誰でも「一気に全ての試験に合格したい」と望むものですが、
自分の勉強量がそれに追いつかなければ、結果は出ません。
目標を限定したほうが勉強範囲が小さくなるため、達成しやすくなるのです。

次回試験での目標が決まったら、
今度は目標を達成するために成すべき具体的な勉強量を考えます。
例えば、一般知識試験合格のために、過去問題全てを演習することを考えれば、
15問×29回=435問もあるわけです。
一日の勉強で5問ずつ取り組めば、87日かかることになります。
次の試験まで半年ほど残っているならば、
このプログラムを2回繰り返して勉強するのが良いだろう、
といった感じで計画を立てていくわけです。

2は、勉強習慣を付けることの重要性です。
油のように一時に激しく燃えるような勉強はお勧めできません。
例えば、睡眠時間を削った無茶な勉強は続かないのです。
炭のように長く燃え続ける勉強が理想的です。

また、やる気の炎は一度消えてしまうと、再点火するのが難しくなります。
消えていた時間が長いほど、燃えにくくなっていきます。
勉強しないことが、習慣として定着してしまうからです。
中には、試験直前になって慌てて猛勉強を始める方がおられますが、
この時点で走り出しても、間に合わないことが多いのです。

「気象予報士試験はマラソンである」と最初に述べました。
合格率5%である気象予報士試験を、1000人で行うマラソンレースに例えると、
上位50人の選手だけが入賞、つまり合格を手にすることができるのです。
後方にいる選手が35km地点からラストスパートをかけても、
上位陣に食い込んでいくことは、もはや困難です。

今日、気象予報士試験が終わったわけですが、
それは同時に、次のレース(試験)が始まったことを意味します。
次の試験に取り組む必要のある方は、
明日からでも勉強を再開されることをお勧めします。
次のゴールを目指して、計画を立てていきましょう。




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77、少しずつ知識を積み上げる。
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昨日(2008年2月9日)は、奈良でも雪が積もりました。
奈良県の平野部では北風に乗って小雪が舞うことはあっても、
街が雪化粧するほどの積雪は珍しいのです。
子供のときの私にとって、雪が積もることは心を躍らせる出来事でした。
どんなときに雪が降るのか? どんなときに雪は解けずに積もるのか?
こういった興味が、気象の勉強を始めたきっかけとなっています。

空から落ちてくる一つ一つの雪片は小さなものですが、
一定の強度で長時間降り続くことで、景色を真っ白に変えてしまうわけです。
勉強もこれと似ているような気がします。
少しずつでも継続して学んでいくことによって、
着実に頭の中に、知識が積み上がっていくことでしょう。
解ける雪よりも、新たに降る雪のほうが多ければ、
積雪が深くなっていくのと同じように、
忘れてゆく知識を上回る勉強を続けることができれば、
驚くほどの蓄積が出来上がるに違いありません。

このメルマガでも、何度かご紹介しましたが、
私は昨年春(2007年4月)から、小さなメルマガを発行しています。
気象予報士試験に関連する簡単な問題を一つずつ、
土日祝日を除く毎平日にお送りしてきました。
風邪をひいたときに、お休みしてしまったこともありますが、
それを除けば、ほぼ休刊することなく発行を続け、
お陰様で200回を超える発行を行うことができました。
もちろん、これからも発行を続けていきます。

メルマガ誌上で問題を配信する理由は、
もちろん気象を勉強する面白さを知ってほしい、
毎平日の配信によって勉強習慣を付けてもらいたい、ということなのですが、
実は私自身のためということでもあります。
問題のネタを考え、資料を調べることで、作成者である私も勉強になるのです。
講師という立場である私にも、分からないことはたくさんあります。
むしろ勉強が進むほど、知らないことが増えたように感じることさえあります。

知らないことを解決するためには、勉強するほかありません。
勉強の面白さは、叩けば門が開くこと、
つまり、自分が学ぶことで疑問点を解決できることにあると思います。
最先端の研究であれば、解明されていない未知の事項も多いでしょうが、
少なくとも、参考書に載っているような内容であれば、
定説が確立されているものがほとんどであると言えるでしょう。

特に気象予報士試験に出題される問題は、
正誤をハッキリさせなければならないため、
定説の定まっていない問題は出ないと考えるのが自然です。
つまり、適切な方法で継続的に学ぶことができれば、
内容を習得していきやすいのが資格試験の勉強であると言えます。
「少しずつ」を続けることを大切にしていきたいものです。




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78、過去問題ぐらいはマスターしておきたい。
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気象予報士試験に挑むうえで、過去問題演習は必須であると私は考えます。
過去問題を分析してみると、傾向の似た問題が何度も出されているからです。
これは学科試験・実技試験の両方に当てはまることです。
書籍やCD-ROMという形式で過去問題が市販されていますから、
実際に確認されると良いでしょう。

ここで一例を挙げてみます。
平成19年度第1回試験の「実技1」における、問5(2)の問題をご覧下さい。
この問題は、平成16年度第1回試験の「実技1」における、
問5(3)の問題と非常によく似ています。
ハッキリ言って、問題を解くために必要な思考法はまるで同じです。

ここまで似ている問題はそれほど多くないものの、
出題意図や傾向に類似性が見られる問題は、数多くあります。
過去問題演習を熱心にされている読者の皆様はご存じのことでしょう。
ですから、過去問題の演習を丹念に行い、
さらにその問題の周辺知識についても一緒に学んでおけば、
本試験で「過去問に似た問題」に出くわす可能性が高いということです。

私が過去問題演習を重要視するのは、
過去問題演習の充実度が、試験の合否を大きく左右すると考えるからです。
気象予報士試験には、過去に一度も出題されたことのない問題も出ますが、
そういった問題は、多くの受験生が頭を悩ませるはずなのですね。
結果として、こうした目新しい問題による受験生の点数差は、
それほど大きくならないと想像できます。

点数差が広がるのは、試験全体の多くを占める「過去問に似た問題」です。
過去問演習をキッチリ行っている受験生ほど着実に得点できるでしょうが、
過去問題演習量の不足している受験生にとっては、
これらの問題も「初めて見る問題」として目に映ることでしょう。
ここで受験生の得点に大きな差が付くはずだと私は確信しています。

「次の試験で、どんな目新しい問題が出るか」を予想することは、
一部(新しく導入される予報技術など)を除いて、非常に困難です。
そんなことを予想するよりは、過去に出されたことのある内容について、
着実に理解できるように学習を重ねたほうが、明らかに得です。

毎回の気象予報士試験の問題に過去問題との類似性が見られるのは、
試験の難易度が概ね均一化していることの現れと言えるでしょう。
ご存じのとおり、気象予報士に求められる技能は、
気象資料を適切に解釈して現象の予想を行うことであり、
「斬新なアイディア」や「奇抜な独創性」は不要なのです。

学者として気象を研究するのであれば、独創性も必要かも知れませんが、
少なくとも気象予報士試験では、そういったことは求められていないわけで、
気象予報士に必要な知識・技能を習得していると試験で判断されれば、
「気象予報士試験合格」がもらえるわけです。

ですから、過去問題と似た問題が出るのは当然のことであると言えますし、
どのような知識や技能が気象予報士に求められているかは、
過去問題を分析すれば見えてきます。
良質の模擬問題が存在するのであれば、それで勉強するのも良いでしょうが、
すでに過去問題が豊富に存在する以上、
まずはそれを使って勉強することが望ましいと考えています。




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79、あの人はどのようにして気象予報士になったのか?
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試験で結果が出なかったり、勉強が思うように進まなかったりすると、
どんな人であっても、辛く感じるものです。
私自身、2回目の受験に失敗(専門知識のみ合格)したときには、
「もしかすると永久に合格できないのではないか」と思いました。
今にして思えば、難関資格である気象予報士試験において2度の不合格など、
大半の合格者が経験するであろうことだと思われますが、
目の前の試験結果は、それほどに人を落ち込ませてしまうわけです。

こんなときに、気象予報士として活躍している人が、
どのようにして試験を突破したのかを調べてみるのも良いでしょう。
気象予報士を志したからには、目標にする気象予報士がいるはずです。
その多くは、テレビ・ラジオなどで活躍するキャスターだと思います。

今はネット上にいろいろな情報が溢れている時代です。
ちょっとした調べ物をする際に、私は「ウィキペディア」をよく使います。

ご存じの方も多いかと思いますが、
このウェブ上の百科事典には、たいていのことが載っています。
例えば、世界遺産「石見銀山」へ今度行こうと思っているのですが、
これについても詳細な記事が載っていて、とても勉強になります。

また、従来のCD-ROM百科事典と大きく異なるのは、
歴史人物ではない著名人についての記事が数多く載っていることです。
目標にしている気象予報士の名前を入れて検索してみるのも良いでしょう。
中には、「○度目で気象予報士試験に合格」とか、
「試験勉強のため、□□まで予備校に通っていた」といった、
気象予報士試験の受験時代における苦労話が載っていることもあります。
ウィキペディアは、誰でも記事を執筆することができるので、
中には誤った情報も含まれているかも知れませんが、
大まかな人物像を知るためには、最も手っ取り早い方法だと思います。

テレビやラジオで颯爽と解説を行う気象キャスターの姿を見ると、
何もかもが順風満帆で、泥臭い部分など見えないかもしれません。
でも、それは「見せてないだけ」であって、実際には努力と苦労を重ねた結果、
試験に合格し、キャスターの仕事を手に入れた方も多いわけです。
実際に、私はそういった方々を数多く見てきました。
「あの方は、今は気象キャスターとして活躍しているけれども、
 あのとき挫折して諦めていれば、今の姿は無かったのだろうな。」
としみじみ思うことさえあります。

今回の試験で合格できなかった人の中にも、
将来、気象予報士として活躍する人が間違いなくおられるはずです。
未来を信じて頑張りましょう。




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80、講義録で勉強した人たち
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気象予報士試験の予備校講師という立場にある私ですが、
大学での学部は理学部ではなく、文学部です。
文学部において教育学を専攻していました。
教育学といっても、教師になるための勉強ではなく、
教育史を、具体的には戦前の学校教育制度(学制)を調べていたのです。

戦前の学制は、現在の学制とは大きく異なっていました。
今は、中学校も義務教育となっていますが、
戦前において、中学校(旧制中学)や高等女学校へ進学する人々は、
小学校(尋常小学校)卒業生のごく一部に過ぎなかったのです。

例えば、大正13年(1924年)における中学校の生徒数は約27万人、
高等女学校の生徒数は約25万人です。(※1)
中学校も高等女学校も5年制でしたから、
両者を合わせた1学年あたりの生徒数は10万人余りということになります。

これに対し、現在における大学の学生数は約250万人ですから、
1学年あたりの学生数は60万人余りとなります。(※2)
総人口の違いもあり、単純には比較できないものの、
大正時代において、中学校や高等女学校を卒業することは、
かなりの学歴エリートだと見られたはずです。

日本全体が現在よりも貧しかった当時は、
進学を諦めざるを得なかった人々も多かったことでしょう。
しかし、上級学校への進学を断念することは、
学びそのものを放棄することと必ずしもイコールではなかったのです。
学校へ行かなくても勉強できる手段、それが「講義録」の存在です。

「講義録」というのは、今で言うところの通信教育のことで、
その受講生数は相当に多かったようです。
例えば、早稲田中学校講義録の受講生数は、
大正13年において、約16万人にも上っています。(※3)
講義録を提供する会社・学校は数多くありましたから、
講義録で勉強する人々の総数は、
中学校・高等女学校の生徒数を上回っていた可能性もあります。
事情あって進学できなくても、勉強を続けようとした人がいかに多かったか、
講義録の受講生数は、それを示しているように思います。

時代は流れ、現在では「講義録」も進化しました。
NHKや放送大学では、テレビやラジオを通して、
自宅にいながら多くの授業を受けることができます。
また、DVDやインターネットを使った通信教育も数多くあり、
「学びたい」という意欲に応えるツールは豊富になっています。
あとは、これらをどう生かすかということです。


◆参考文献◆
※1:文部省編『学制百年史 資料編』
※2:文部科学省編『文部科学白書2006』
※3:竹内洋著『立身出世主義』NHK出版




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81、電車の中で過ごす時間を有効活用しよう。
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先日、高校時代からの友人と会う機会がありました。
人事異動で新しい職場に移ったとのことで、
それに伴い、マイカー通勤から電車通勤に変えたのだそうです。

「電車通勤は、車内での勉強時間を確保できるのが良い。」と彼は言います。
読書と仕事の準備に充てるため、わざわざ各駅停車に乗るとのこと。
急行よりも時間がかかりますが、そのぶんだけ車内は空いていて、
座席に腰掛けて、ゆっくりと本を広げることができるらしいのです。

電車の中といえば、携帯電話を開くのが習慣になっている方が多いでしょう。
最近の携帯電話は、実に多機能です。
メール・テレビ・ゲーム・ウェブなどが使えて、
もはや「電話」というよりは、「超小型パソコン」といった感じですね。
ちょっとした空き時間を埋める道具として、
携帯電話ほど適したものは無いかも知れません。

そんな中で、私は携帯電話をあまり使いません。
数ある機能の中で、最もよく利用しているのは「時計」だと思います。
朝5時に起きる際には、振動アラームをセットしています。
携帯電話といえば、「メール機能」を重宝している人も多いと思いますが、
私の場合、携帯電話からメールを送信するのは週に2~3通程度です。

携帯電話なら、移動中もメールの送受信ができて便利ですが、
私は敢えて「業務としての携帯電話メールの使用」を制限しています。
ビジネスで使用するメールの大半は、パソコン(PC)を利用しているのです。
「携帯かPCか」これは好みの問題と受け取られるかも知れませんが、
私はPCメールを利用する3つの合理的な理由を挙げることができます。

 1,充実した文章作成ができる
 2,送受信メールの一元化
 3,セキュリティ対策を講じやすい

まず1ですが、「入力の速さ」という点では、
推測変換機能によって、携帯メールはPCメールに劣らなくなったと思います。
しかし、キチンとした文章を作るには、他のツールも必要だと考えます。
特に業務としてメールを使用する場合は、
過去にやり取りしたメールを簡単に確認・引用できると便利ですし、
用語や言い回しが誤っていないか確認できることを重視します。
これらについては、パソコンを使ったほうが圧倒的に便利です。
大きな画面で一覧性にも優れていますし、
メールソフトを立ち上げたまま、ブラウザでネット辞書を使用できるからです。

次に2です。
過去の送受信メールは、できるだけ1か所で管理するのが便利です。
これは紙媒体でも同じで、複数の引き出しに重要書類が少しずつ入っていると、
あちこちの引き出しをひっくり返して探し出さねばなりません。
「あのメールは携帯に入っていたか、それともパソコンの中か?」と、
いちいち考えて探すのは面倒なことです。
そこで、重要性の高いメールは全てPCメールに送ってもらうようにしています。
私は1996年からパソコンを利用しているのですが、
送信メール数だけで9000通ほどありました。
受信メールも含めると本当に膨大な数です。
これだけのメールを平気で保存できる容量の大きさも、
パソコンの利点であると言えるでしょう。

最後に3です。
軽くて小さい携帯電話は、持ち運びに便利ですが、
それは同時に、紛失・盗難の可能性があることを意味します。
送受信メールやアドレス帳が流出してしまう状況は何としても避けたいもの。
そういったことに備え、私の携帯電話は顧客アドレス帳を作成していません。
もし、携帯電話の中に重要情報をたくさん抱えておられる方は、
パスワード機能を利用するようにされるか、
これを機会に、パソコンに移して管理されることをお勧めします。
(もちろん、パソコンのセキュリティ対策も必要です。)
また、電車の中で携帯電話を開くということは、
知らぬうちに、誰かに画面を見られていることも考えるべきです。
のぞき見防止用のため、画面に貼る特殊フィルムも売られていますから、
こういったものを利用されるのも良いかと思います。

さて、話は電車の中での過ごし方に戻ります。
もし、気象予報士試験の勉強時間を確保したいと思っておられる方であれば、
電車の中では携帯電話を封印すべきです。
最初に述べたように、最近の携帯電話は多機能で、
いくらでも楽しめるようにできています。
これを使えば、少々の長い時間でも簡単に潰せるということです。

通勤・通学に電車の中で過ごす時間が長い人も多いでしょう。
その時間が長いほど、有意義な勉強時間を確保できます。
超満員電車であれば、勉強どころではありませんが、
座席に座れるか、座れなくても自分の周辺空間を確保できる程度であれば、
書物を広げることをお薦めします。
多くの人にとって、電車に乗ることは習慣となっているでしょうから、
「電車の中では本を読む」というルールを作ってしまえば、
勉強習慣を定着させやすいのです。

ちなみに、私も受験時代に電車内学習を実践していました。
野球部仲間が途中の駅で下車して、一人になったときは、
カバンから汗と泥にまみれたシャツをかき分けて、
底に埋もれている『一般気象学』(少し砂だらけ)を取り出したものです。

電車内学習に慣れてくると、手ぶらで車内に座っていることに、
何か物足りなさを感じるようになってきます。
ここまでくれば、しめたものです。




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82、添削を受けることで文章力は磨かれる。
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実技試験の難しいところは、記述で解答する問題が多いことにあります。
5つの選択肢から選んで解答する学科試験と大きく異なるのがこの点です。

実技試験で最も重要なのは、天気図などの気象資料の読み取りですが、
受験生の中には、これができるようになっても、
「解答内容を文章化するのが上手くいかない」と仰る方もおられます。
今回は、これについて私が考えていることを書いてみたいと思います。

 1,解答したいことを箇条書きで挙げてみる。
 2,書いた文章は自分で熟読する。
 3,添削を受けることが上達の秘訣。

まず、いくら文章力に自信のない人であっても、
述べたいことについて箇条書きで挙げることくらいはできるはずです。
例えば、実技試験で「60字程度で述べよ」とあれば、
2つか3つくらいの項目が浮かぶのが普通です。
それをハッキリと挙げることができないのであれば、
そもそも気象資料の読み取りが充分にできていない可能性が高いですから、
まずは、その学習から始めることをお勧めします。

もし、箇条書きで挙げることができるのであれば、
それらを文章としてつないでみれば良いわけです。
ここで大事にしたいことは、書いた文章を自分で読んでみることです。
自分で読んで意味の通らない文章であれば、
他人(採点者)が読んで分かるはずがありません。

実技試験での記述試験では、美しい文章が求められるわけではありません。
論理的で読みやすい文章であれば良いのです。
それは文才といったものではなく、
トレーニング次第で向上させることができるものだと思います。

文章力を高めるための最も効果的な方法は、
自分の書いた文章について、添削をしてもらうことだと考えます。
それは、私自身も添削を受けることによって、
以前よりもマシな文章が書けるようになった経験があるからです。

私が気象キャスターの仕事を始めて間もない頃、
当時の上司から徹底的に気象原稿の添削を受けたことがあります。
「これなら問題ないだろう」と思って書いた原稿であっても、
何か所にもわたって、辛辣なコメントを付けられました。
もちろん、指摘された内容は決して理不尽な内容でなく、
全て自分で納得できるものばかりでした。

自分が書いた文章の修正を受けることは、決して愉快なことではありません。
しかし、私は半年以上にわたって、この上司からの添削を受け続け、
その後に原稿書きで苦労することは滅多になくなりました。
上司が異動になった後は、私自身が新米の気象予報士に対して、
同じような原稿添削を行うようになったのです。

私が書いたメルマガやホームページの文章について、
美文だとか、名文だとか言われたことは一度もありませんが、
「論旨が明らかで読みやすい」という評価をいただくことはあります。
昔に受けた文章添削のおかげなのかも知れません。




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83、買った本で勉強するべし。
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他人から借りた教材で勉強しているようでは、
実力を伸ばすことはできない、私はそのように考えています。

たしかに気象予報士試験関連の書籍は、決して安いものではなく、
2000円~3000円くらいの値段が付いているものは珍しくありません。
それでも、自分で買った本で勉強するべきなのです。

その理由は、「自分の本でないと自由に活用できない」ということです。
教科書・参考書というのは、キレイなままで使うものではないと考えています。
必要あれば、蛍光ペンで線を引き、赤ボールペンで書き込むべきなのです。

大事だと思った文章に線を引いておくと、
後でパラパラとめくったときに、その箇所をすぐに見つけることができます。
もし、線を引いてなければ、記憶を頼りに最初から斜め読みする必要があり、
すごく時間が無駄にかかってしまうのです。

本に出てくる用語が分からなかったときは、
事典(辞典)などで調べて、その意味を赤ボールペンで書き込みます。
また、本の文章だけでは内容を充分に理解できなかったときは、
「?」を書き込むこともありますし、
何らかの方法で解釈できたときは、「注釈」を書き入れておくのです。
これらの作業を行うことで、疑問点が明らかになり、
1度理解できた事柄については、2度悩むことがなくなるわけです。

さらに、場合によってはページの角を折ることもあります。
私がこれをするのは、面白そうな参考文献が紹介されているときです。
気象に限らず、何かに興味を持って本を読む際には、
その本の中で紹介されている別の本も読むことで、知識が広がります。

このように、本を使って勉強する際には、
ただ、キレイに読むだけでは、充分に活用できないと私は考えます。
私の場合、「これは素晴らしい本だ」と思ったものほど、
その本の中身は蛍光ペンとボールペンで「汚れて」いるのです。
他人や図書館で借りた本で、こんなことはできません。

あくまでも「読む」「中身を知る」ことが目的の本(小説など)であれば、
図書館や友人から借りるのも良いと思います。
しかし、「その本の内容を理解して頭に入れる」ということが目的なら、
お金を出して、自分のものにしてしまうことが大切です。

購入する本は別に新品でなくても良いのです。
「ピカピカの本でなくても、ちゃんと勉強できれば良い」
と考えるのであれば、古本を買うのも良いでしょう。

私は気象の本を100冊以上持っていますが、
古本として購入したものも数多くあります。
特に定価の高い本であれば、値引き金額も大きくなりますから、
AmazonやYahooオークションなどで探してみるのも良いでしょう。
ただし、最新の情報が求められる分野については、
その出版年を確認されることをお勧めします。




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84、登ってみて初めて見える景色がある。
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見たこともない食べ物が皿の上に置かれています。
これは美味しいのか、不味いのか?
いくら見つめていても、その味を知ることはできません。
食べてみることで初めて判断できるのです。

「~をするほうが良いのか」「それとも、しないほうが良いのか」、
何か物事を始める際に、ひたすら悩む人がいます。
しかし、熟慮を続けても結論が出ないことが多いのです。

気象予報士試験の勉強や、気象キャスターを目指すことも同じです。
その勉強が自分に合っているのか、その仕事が自分に合っているのか、
結局は実際に始めてみなければ、よく分からないのです。

気象予報士試験に興味を持ったのであれば、
簡単そうな本を1冊買って勉強を始めてみればいいのです。
それで続けられそうだったら、それで良し。
ツマラナイと感じたら、別の本を買うか、勉強から撤退すればいいわけです。

1994年、大学入試の心配をしなくていい高校に在学していた私は、
高校1年のときに気象予報士試験の勉強を始めました。
勉強などというと少し大袈裟で、
実際には、一風変わった趣味といった感覚で始めたような感じです。
「資格取得」と「その後の将来」を絡めて考えたことは無かったのです。

「気象キャスターになりたい」と思うようになったのは、
気象予報士試験に合格してからのことです。

私は20歳でキャスターのお仕事をいただき、
27歳からは気象予報士塾の講師として、人前で話をする商売をしています。
そういった経歴だけを目にされると、私がいかにも子供の頃から、
「明るく話芸に長け、友達に囲まれた少年」を想像されるかも知れませんが、
もともと性格は内向的で、本を読んでいるのが好きな少年でした。
この性格は基本的に今も変わっていません。
その私に「テレビでキャスターをやりたい」と思わせたのは、
やはり、気象予報士試験合格としか考えられません。

この時期、試験勉強を始めて間もない方であれば、
「次の試験を受験しようか」と迷う方もおられるでしょう。
受験料は決して安くありませんが、
事情が許せるのであれば、受験されることをお勧めします。

「奇跡の一発合格」のために受験を勧めるわけではありません。
まぐれで完全合格できるほど甘い試験でないのは、
受験を経験した人なら誰でも知っていることです。
そうではなくて、受験手続きをすることで、
自分の意識を変えることが大事だと考えているのです。

実際に受験手続きを行い、「試験まで○○日」と意識すれば、
自分の中のスイッチが「ON」になります。
参考書を読むときにも、問題集を解くときにも、
受験生としての立場で接するようになります。
気持ちが高まることで、勉強内容が充実してくるわけです。

また、試験会場の空気も、実際に受験してみて初めて分かることです。
隣に座った受験生が、ボロボロの参考書を熱心に読んでいるのを見れば、
「この程度の勉強量ではイカン!」と実感できるでしょう。

初めての受験で、試験問題の難しさに衝撃を受けるかも知れません。
「とてもじゃないが、この試験を攻略するのは無理だ。」と感じたのであれば、
気持ちを切り替えて別の道に進むのも、1つの選択肢です。
逆に「何としてでも合格してやる!」と闘志を燃やす人もいるでしょう。
どちらにしろ、試験を経験することで次の行動が生まれるわけです。

このメルマガでは、いろいろな情報を載せていますが、
「知っている」と「実感している」は別物です。
自分の気持ちを変えるためには、実感することが必要なのです。




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85、作図問題の勉強法
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今はインターネットを使えば、無料で数多くの天気図を入手できますが、
一昔前までは、ラジオを聴いて自分で天気図を書くことが、
最新の天気図を手に入れるための手段でした。

私が始めて天気図を書いたのは小学5年生のときです。
「1989年」と書かれた天気図が今でも残っています。
https://rojiura.jp/make-play.htm#13

自分で天気図を書く際に最も苦心したのは、等圧線でした。
なかなか上手く滑らかに引けなかったことを思い出します。

「受験英語の神様」とも称される伊藤和夫先生(故人)は、
「言語の習得は理解が半分、理解した事項の血肉化が半分である。」
と述べておられます。(『英文解釈教室』はしがき)

それをパクる形で、作図が上手くなるための要素を表せば、
「作図が上手くなるためには、理解が半分、慣れが半分である。」
となるかと思います。

最初に勉強すべきことは、「作図の理屈」です。
「マニュアル」と言っても良いでしょう。
どのようにすれば等値線が引けるのか、前線を解析できるのか、
それらのルールについてしっかり学んで下さい。
いくつかの書籍に載っていますし、私が主宰する塾でも講義を行っています。

「作図の理屈」を学んだ後は、それを実践することです。
すでに数多くの気象予報士試験が実施されていますので、
過去問題を使って勉強されるのが良いでしょう。

最初から上手く作図できる人などいません。
慣れないうちは、解答例の作図をじっくりとご覧になり、
「なぜ、このような等値線になるのか」ということを観察して下さい。
解答例の作図が理屈と一致していることを確認するのです。

それが終わった後は、解答例を横に置いて、
解答例の模倣を始めるのが良いでしょう。
書道教室でお手本を見ながら筆を運ぶことと同じです。
もちろん、無意識に丸写しをするのではなく、
自分で作図の理屈を意識しながら、書くことが大事です。

その次のステップとして、今度は解答例を見ることなく、
解答例を再現できるように、練習していきましょう。
なお、作図練習を行う際には、
問題用紙のコピーを何枚も取っておかれることをお勧めします。
原本に直接書き込んでしまうと、一回しか練習できません。

作図問題は過去に数多く出題されていますから、
できるだけ多くの問題について、練習されることが望ましいでしょう。

私がそれなりに納得できる天気図を書けるようになるまで、
100枚くらいは書き続けたように記憶しています。
仮に、20種類の作図過去問題を5回ずつ練習すれば、のべ100回です。
何回練習すれば上手くなるか、というのは個人差があると思いますが、
作図の理屈を血肉化させるためには、慣れが必要だということです。





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86、大切なのは暗記よりも、理解。
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以前、あるキャスターの方と食事をしたときのことです。
その方は気象予報士だけでなく、法律関係の資格もお持ちなので、
気象法規についても詳しく知っておられます。

「藤田さん、気象業務法第24条の24で、
 『登録事項の変更の届け出』という規定があるのを知っていますよね?」

「気象予報士の氏名や住所に変更があった場合に、
 気象庁長官に届け出なければならない、という内容でしたね。」

「そうです。あれってキチンと届け出なかったときに、
 罰則があるかないか、ご存じですか?」

「・・・たしか、罰則は規定されていなかったはずです。」

「仰るとおりですが、ちょっと自信なさげですね(笑)。
 実は、条文を見れば、そのことはすぐに分かるんですよ。」

「どの部分を見れば良いのでしょう?」

「『遅滞なく、その旨を気象庁長官に届け出なければならない。』にある、
 『遅滞なく』という部分です。この表現って曖昧でしょう?」

「3日くらいかなと思う人もいれば、1か月程度と思う人もいるでしょうね。」

「そうなんです。条文に『遅滞なく』とか『すみやかに』と書かれていた場合、
 その内容に違反したかどうかを、客観的に決めることができないわけです。
 ですから、罰則は設けられていないんですよ。」

この話を応用して、気象業務法第22条の内容に当てはめてみましょう。
第22条は、予報業務の許可を受けた事業者が業務を廃止・休止する際に、
気象庁長官に届け出なければならない、といった内容ですが、
その期限が『(廃止・休止した日から)30日以内』と定められています。

これだと、遵法者と違反者の区別が明確ですから、
違反者に対して罰則があるのでは?と推測できるわけです。
実際に、気象業務法第50条に罰則が規定されています。

一般知識試験には、15問のうち4問の法規問題が出てきます。
「大気の熱力学」や「大気の力学」が難単元として知られていますが、
「気象法規」を苦手とする方も少なくありません。

法規の勉強をする際に、条文の丸暗記をする必要はないのです。
いくら出題法規の範囲が限られているとはいえ、
一つ一つを棒暗記する方法では、全てを学習する前に挫折する恐れが大です。

法律や規則があるのは、それが必要とされたからであり、
それを作っているのは生身の人間です。
「法律が作られた目的」を考えながら勉強することができれば、
単純暗記を必要とする部分を、かなり減らせるはずです。

例えば、気象業務法において「予報業務の許可」に関連する内容が多いのも、
天気予報が社会に与える影響が大きいからですね。
そこで、あらかじめルールを設けてあるのだ、と考えるわけです。
そうすれば、予報業務の許可を受けるために必要な事項、
違反者に対する制裁・罰則の規定なども、頭に入りやすくなるはずです。

円周率のように、規則性のない数の羅列を暗記するのは大変ですが、
意味や理由付けのできる話であれば、記憶に残りやすいですよね。
法規の学習は、内容を充分に理解することから始めるのが良いでしょう。




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87、アウトプットの作業で知識を定着させる。
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高校時代、たしか毎週月曜日だったと思うのですが、
英語の単語テストというものがありました。
単語帳数ページ分がテスト範囲で、テストには20問が出題されます。
多くの生徒が20点中15点以上の得点を取るのですが、
いつも私は5点以下だったと記憶しています。
英語に限らず、元素表だとか、古文における動詞の活用だとか、
とにかく暗記を要する作業が極めて苦手でした。

「頑張って覚えると、頭の中に記憶の回路ができるので、
 物覚えも良くなるのだよ。」
と英語の先生が仰っていたのを覚えています。
しかし、そうは言われても、
エスカレーター式で大学に進学できる学校にいた私は、
勉強に対する気力そのものが低下していましたから、
歯を食いしばってまで暗記に勤しむことがどうしてもできませんでした。

このように、記憶力に自信のない私は、
「定期テスト前に教科書を丸暗記した」と友人から聞かされて驚き、
放送業界に入った後は、3分に及ぶ「放送原稿」を、
丸暗記するキャスターを見て驚いたものです。

気象予報士試験の勉強は、大量の暗記を必要とはしないものの、
「なかなか知識が頭に定着しない」とお悩みの受験生も多いことでしょう。
大人になってから行う勉強は、周囲から強制されるものではないだけに、
忍耐・根気・辛抱・苦痛・我慢などを伴う勉強は、なかなか大変なものです。

ここで受験生の皆さんに、1つの方法をご紹介しましょう。
それは「アウトプットの作業をすることで記憶の定着を図る」ことです。

1つの分野について学習が終われば、
習得した知識を、テーマごとに紙に書き出してみて下さい。
分量はA4用紙片面、もしくはノート1ページ程度が良いでしょう。
例えば、「ハドレー循環」をテーマにするならば、
「熱帯収束帯」「貿易風」「亜熱帯高圧帯」「亜熱帯ジェット気流」など、
いくつものキーワードを必要とします。
言葉だけでなく、図や表などを書き加えると良いでしょう。

こうして習得した知識を可視化することで、
知識の不足している部分や、理解の曖昧な部分が明らかになります。
知識や理解が不十分であると、その部分のアウトプットができない、
つまり、「白紙」という形で現れるからです。

ある気象キャスターは、放送前にモニターを見ながら、
放送内容を何度も繰り返して口に出しておられました。
事前に話す内容をアウトプットすることで、頭の中が整理されます。
そして、話の内容に飛躍や論理的矛盾がないか、
分かりやすい説明になっているかどうか、
といったことを確認されているのだと感じました。

知識の定着を図るためには、ただ注入するだけでなく、
それらを消化しやすいように、整理することも大切だということです。




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88、過去問題演習での注意点
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初めて解く過去問題を前にして、良い点数を取ることは、
勉強を続けていくうえで、大きな励みになります。
しかし、過去問題の点数に一喜一憂し過ぎるのは考えものです。

確かに初見の実技問題で70点取れるのは喜ばしいことです。
しかし、それで気象予報士試験に合格できるわけではありません。
試験会場で受ける本試験に合格しなければ、資格は取得できないわけです。

過去問題演習を行う意義は、これまでの出題傾向を把握し、
解法を理解したうえで、蓄積していくことにあります。
その視点に立てば、着目すべきことは、
70点を得られたことではなく、30点を失ったことです。

解答用紙には「×」が付くだけのことですが、
「×」が付いた理由は、受験生によって異なります。

・問題の内容が分からなかった。
・問題内容は分かったが、その解法が見えてこなかった。
・時間切れで、問題に取り組めなかった。
・問題文を読み違えていた。
・問題にある資料の読み取り方が分からなかった。
・解答は思い浮かんでも、適切な文言が思い浮かばなかった。
・解答を求められていないことを答案として書いてしまった。
・答案の中に誤字脱字や日本語としておかしな文があった。

前半の5項目は全ての試験に対して、
後半の3項目は実技試験に対して考えられる「×」の要因です。

次に似たような問題が出たときに正答するため、
克服すべき課題は、誤答の種類によってさまざまです。
そして、自分の弱点を分析し、それを解消するのは、
受験生自身が行わねばならないことです。
実力が伸びるか否かは、これができるかどうかで決まります。

自己採点で○を付けるのは嬉しいものです。
逆に、自分の答案に×を付けるのは誰でも辛いものです。
しかし、大事にするべきことは×の付いた問題であり、
ここから目を背けるべきではありません。
「本当は分かっていたんだけど・・・」「うっかりミスだった。」
といったゴマカシをしているようでは、何度でも同じところで失敗します。

初めての問題演習で70点取ることよりも、
100点を取れるまで何度も演習を繰り返すことのほうが、
本試験の準備のためには大事なことなのです。




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89、試験会場で心を落ち着ける方法
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試験に対する緊張の度合いは、その試験の重要度に比例します。
自分にとって大事な試験であるほど、緊張度は高まります。

私が最初に大きな試験を受けたのは、中学入試のときでした。
2つの中学校を受けたのですが、「滑り止めの学校」を受験したときは、
ハッキリ言って、塾で模擬試験を受けている気分で合格しました。

しかし、その後に受けた「行きたい学校」の入試の際には、
想像以上の緊張感に襲われたことを思い出します。
特に算数の試験の際には、頭が真っ白になってしまうほどでした。
実は、その学校の偏差値は「滑り止めの学校」より低かったのですが、
そんなことは本番では関係ありません。
事前に「9倍」という競争率が公開されていたことも影響してか、
「失敗したらどうしよう」という思いが、激しい緊張感につながったようです。
それだけ、その中学校に入りたかったということですね。

まあ、何とか合格できたから良かったものの、
試験における過度の緊張感は、間違いなく実力を下げる方向に働きます。

もちろん、気象予報士試験でも同じことで、
「放送局のアナウンサーも受けに来ているかも?」といった、
ミーハーな気分で受験していれば、お気楽なものですが、
半年に一回の真剣勝負として試験に臨んでいる受験生は、
多かれ少なかれ、気分が高揚するものです。
高まる緊張をほぐし、できる限り平常心で試験に臨めるようにすることこそ、
試験前において第一に成すべきことです。

中学入試のときにも、気象予報士試験のときにも、
分厚~い参考書を広げている受験生を私は数多く見かけました。
試験前に参考書を読みふける最大の理由は、
「最後まで諦めずに、知識を吸収する」ということだと思いますが、
土壇場で足掻いても、そう知識量など増えるものではありません。
今まで続けてきた勉強時間に比べれば、試験前の数十分など微々たるものです。
そんな小さな可能性にかけるよりも、
自分の潜在能力を最大限に引き出す努力をしたほうが、得だということです。

「参考書を読むほどに心が落ち着く」というのなら当然良いのですが、
「参考書を読むほどに不安が高まる」のであれば、絶対にやめておくべきです。

試験会場では、「平常心を取り戻す」ことに気を配りましょう。
例えば、試験とは全く関係のない本・雑誌・新聞などを持ち込んで、
のんびりとページを捲るのも良いでしょう。
漫画本などは、こういったときに最適ではないでしょうか。
できれば、普段から読み慣れているものが一番良いでしょう。
私なら、『浦安鉄筋家族』や『ミナミの帝王』あたりを選ぶと思います。

大事なことは、試験会場の教室内で、
ボロボロの『一般気象学』を読む受験生を見ても、うろたえないことです。
試験は受験生どうしの戦いではありません。
受かるも落ちるも、自分の振る舞いで全てが決まるのです。
自分に合った緊張解消法で、普段どおりの実力を出せるようにしましょう。




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90、合格して受験勉強を終えよう。
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いよいよ試験まで1週間となりました。
試験を受ける皆さんにお伝えしたいことがあります。
それは、合格を手にしたうえで受験勉強を終えて欲しいということです。

北京オリンピックを見ていますと、
この大舞台を最後にして、現役生活に終止符を打つ選手も多いようです。
中でも、自分が満足できる結果を残せたうえで引退することは、
1つの理想であるに違いないでしょう。
仮にメダルが取れなくとも、予選敗退であったとしても、
「日本代表として五輪出場を果たせた」というだけで、
満足できる競技者人生だったと感じる選手も多いはずです。

しかし、気象予報士試験という舞台を考えたとき、
「満足できる結果」=「合格」以外に考えられないはず、と私は思っています。
受験制限のない試験において、「受験できただけで大満足」は無いでしょう。
つまり、受験生が「試験のための勉強」を終えるのは、
合格したときか、(もちろん合格後も勉強そのものは続けるべきでしょうが)
嫌気がさして諦めてしまったとき、のどちらかなのです。

もちろん、気象の勉強に対する興味が尽きてしまえば、
受験などやめて、さっさと新しいことを始めれば良いのですが、
もし、「気象予報士になりたい」という気持ちが残っているのであれば、
決して勉強を諦めるべきではないと思います。

試験日は、気持ちに大きな区切りが付く瞬間でもあります。
試験前日までトイレにまで参考書を持ち込んで勉強していた人でも、
試験が終わってしまうと、本に見向きもしなくなる場合があります。
それで試験に受かっていれば良いのでしょうが、
合格するのは受験生の約5%というのが、気象予報士試験なのです。

「試験前に何を言うか」と思われた読者の方もおられるかも知れません。
今回は受験生の約95%を占める方々に向けたアドバイスを書いています。
試験後に発行するメルマガに書いたのでは、
気持ちが切れてしまって、このメルマガを開かない方もおられるだろうと思い、
敢えて、この時期に書いているのです。

要は「勉強のペースに波を作ってはいけない」ってことです。
おそらく、最近1か月くらいで、
火がつき始めたように勉強を始めた方がおられるはずです。
それで合格すれば、「短期集中で要領よく受かった」となりますが、
全体として見れば、本試験に間に合わない方が圧倒的に多いのです。
気象予報士試験は、それくらい難度の高い試験だということです。

短期的に集中しすぎると、その反動で試験後に勉強が手に付かなくなります。
そして、次の1月試験が近づく年末あたりになって再び猛勉強・・・。
これは努力の仕方が間違っていると言わざるを得ません。
何度も何度も受験しても、一向に結果が出ない場合は、
「勉強のペースに大きな波がある」ことが一因として考えられます。

試験が終わって、自己採点を行ったうえで、
このメルマガをもう一度お読みになることをお勧めします。




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91、「実行」のために「有言」する。
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先日(2008年8月27日)、日本経済新聞朝刊の1面に、
株式会社ウェザーニューズに関する記事が写真付きで載っていました。
入社して僅か1年余りの社員によって開発されたシステムが、
大きな成果を上げたという内容で、
その成功は、この会社の社風にあると記事は分析しています。
記事を引用してみます。

> 「不言実行」より「有言不実行」。
> 同社は三カ月おきに自分の目標を広く宣言することを社員に求める。
> こっそりやって成功するより、大見えを切って失敗する方が評価が高い。
> 一人で閉じこもっては顧客が欲しがるサービスは生み出せない。
> 周囲を巻き込む手法を社風にまで高める。
(『日本経済新聞』8月27日朝刊・1面「働くニホン」より一部引用)

この考え方は、私がウェザーニューズに在職していた当時からあり、
会社を退いた後、久々にこの記事で目にしました。
何かを実行するためには、実現するためには、
まず「有言」することが、最も大切だということです。

これは、あらゆる物事について適用できると思います。
例えば、気象予報士試験でもそうです。
友人や同僚に対して秘密にしたまま、受験している人が結構います。
実は私もその一人でしたから、気持ちは良く分かります。
不合格になるのが格好悪いということです。

秘密受験であれば、失敗しても恥をかくことはありません。
しかし、秘密受験であれば、受験に対するモチベーションが下がっても、
それを突いてくれる人、盛り上げてくれる人もいないということです。
つまり、合格まで勉強を続けることができずに、
一人でこっそりと受験を諦めてしまう可能性もあるのです。

どうしても合格するまで勉強を諦めたくないのであれば、
堂々と受験宣言をしてしまいましょう。
さらに受験生仲間を作って、「○月の試験に合格する!」と互いに宣言すれば、
競争原理もはたらき、良いプレッシャーをかけることができるでしょう。
もちろん、「勉強に行き詰まったときに助け合う、励まし合う」という点でも、
受験生仲間を作ることの大きなメリットです。

私は気象予報士試験の合格後に、「有言」の大切さに気づきました。
その後、事あるごとに私は「将来は○○か△△という番組に出演する」などと、
(○○や△△には、誰もが知っている有名な報道番組名が入ります。)
大風呂敷を広げて、方々に触れ回ったものです。
結局、私の目標は少し違った形にはなったものの、
約3年後に実現することとなります。
「藤田とかいう、目立ちたがりの小僧がいるらしい」ということが、
業界関係者の耳に入ったようです。

「自分を奮い立たせること」「協力してくれる仲間を得られること」
実現したいことを高らかに宣言することには、
この2つの効能があるように思います。ぜひ、お試し下さい。




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92、勉強に終わりはない。
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現在、テレビやラジオで活躍している気象キャスターは、
大きく2種類に分けることができます。

A:放送用原稿を自分で作成しているキャスター
B:他人に作成してもらった原稿を読むだけのキャスター

中には原稿を作成せずに、そのまま解説を行う人もいますが、
これは頭の中に自分で作った原稿があるということですから、
Aタイプに分類されます。

気象予報士として、解説業務を行うのであれば、
Aタイプのキャスターを目指したいところです。
しかし、試験に受かったからといって、資格を持っているからといって、
必ずしも自分で解説原稿を作成できるとは限りません。

受験生から見ると、気象予報士試験というのは、
非常に高いハードルのように見えます。
しかし、実際の業務を行うためにおいては、
試験合格レベルの知識・技能では充分とは限りません。
気象キャスターの平井信行さんは、著書で次のように述べておられますが、
私もこの意見に大いに納得できます。

> 私が思うに気象予報士試験は、単なる運転免許に過ぎない。
> 免許を持っていても運転しなければ上手くなれない。
> 本来は、一年間ぐらいの実地経験を経て初めて、
> 資格を与えていいのではないかと思うことがある。
『天気予報はこんなに面白い』角川書店 2001年 P,80より引用

実際の気象実務を行うためには、試験科目以外の勉強も必要です。
これはどんな分野を担当するかによって、大きく異なりますが、
私の担当していたマスメディア向けの気象業務であれば、
暦・歳時記や、生活と気象との関わりについて、
かなり詳細な知識が求められました。
放送用原稿を作成するのであれば、作文能力も求められますし、
実際に自分が出演するのであれば、喋るための技術も必要です。
これらを習得するためには、勉強しなければなりません。

さらに、予報技術の進歩は早いので、
常に最新の情報を学んでいく必要があります。
気象予報士の資格は生涯有効ですが、
もし、試験合格から10年間にわたって、何も勉強をしなければ、
実業務に携わることは厳しいだろうと思われます。

気象業務従事者というのは、一種の専門職であり、
他の人が持たない知識や技能を有することで成り立つ職業です。
特に、アウトプットを仕事とする気象キャスターは、
常にインプットを心がけていないと、やがて知識が枯渇します。
勉強に終わりはない、ということです。




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93、マスコミに出るということ。
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国際エコノミストの長谷川慶太郎さんは、
その著書『情報力』の中で、次のように述べています。

> 私はよく「マスコミに出ることは、
> ピラニアに自分の肉を食わせるようなものだ」と言っている。
> (中略)
> だからピラニアにかじられるよりも、
> 自分の肉を増殖させる速度のほうが上回るという自信がない場合には、
> マスコミにはかかわらないほうがいい。
(長谷川慶太郎『情報力』サンマーク出版 1997年 P,60~61)

私がこの本を最初に読んだのは、24歳の頃だったと思いますが、
「自分はマスコミに出るのが早すぎたのではないか」と感じたことがあります。

私が初めてテレビに出演するようになったのは、20歳のときです。
調べたわけではありませんが、おそらく「気象予報士」としては、
全国で最年少の気象キャスターだったと思います。

若くして世に出れば、世間の注目も集まりますから、
そういった点では心地良いものです。
しかし、インプットが充分でないままマスコミに出ることは、
アウトプット量に、インプット量が追いつかなくなる危険性を含んでいます。
肉を食いちぎられて、骨だけになってしまう恐れがあるということです。

実力よりも評価・評判が先行する形になるのは、危ういものです。
当時、私は初めてメルマガを発行することにしたのですが、
そこには、こういった危機感があったのかも知れません。
黙々と天気に関するコラムを100本以上書き続けたのです。

一方、自分に対する周囲の評価が、
自分の実力よりも遅れていると感じる方もおられるでしょう。
私もそうだったので、よく分かりますが、
若いときほど「早く成功したい」と熱望し、
「目に見える結果を早く出したい」と奮起します。
結果を急ぐと、どうしても短期的な視点ばかりが優先され、
物事を長期的に考えることができなくなるのです。

しかし、どんなことでもそうでしょうが、
成功して結果を出すためには、充分な準備期間が必要です。
充分な蓄積の時間を与えられていることをラッキーだと感じるほど、
気持ちの余裕を持つことができてこそ、
腰を据えて勉強を続けることができるのではないかと思うのです。




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94、出題された問題について勉強することが大事。
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大きな紙の上に「◎」が描かれていて、
それを指定時間のうちに、色鉛筆で塗りつぶすゲームがあったとします。
「◎」のうち、内側の小さな○には「60点」、
内側の小さな○と外側の大きな○との間には「30点」、
「◎」の外側には「10点」と記載されています。
それぞれの領域を塗りつぶせば、これだけの点が与えられるのです。

もちろん、このゲームで高得点を挙げるためには、
まず、内側の小さな○を塗りつぶすことが先決です。
内側の小さな○を仕上げてから、外側に色鉛筆を進めることになるでしょう。
当然ながら、「◎」の外側に手を付けるのは最後です。

色塗りゲームの例え話をしたのは、
このような考え方が試験勉強で必要だと思っているからです。

気象予報士試験で出題される範囲は、概ね決まっています。
過去問題を分析してみると、すぐに分かりますが、
解答を導くために必要な「知識」「思考過程」の似た問題が多いのです。
分野によっては、過去10回以上出題されている部分もあります。
こういった箇所は、先ほどの「◎」で例えると、内側の小さな○です。
勉強の成果が最も得点につながりやすい場所です。

もちろん、試験では新しい知識や思考法を問うものも出題されます。
しかし、それは問題全体の割合からすると、わずかを占めるに過ぎません。
先ほどの「◎」に例えれば、円の外側に位置しているのです。

「次の試験で新たに出題されるのは何か?」というのは、
多くの受験生にとって、大いに気になることですが、
それを予測することは至難の業です。
「◎」の外側には、限りなく多くの事項が広がっていて、
問題を作成する材料は、数多く存在しているのです。
仮に予測が的中しても、それは問題全体の一部に過ぎません。

受験生として、他人が知らないような情報を、
手に入れたくなる気持ちは分かりますが、
それは明らかに「◎」の外を色鉛筆で塗ろうとする行為です。

試験対策で大事なのは、「◎」の円内について、
どれだけ丁寧に勉強できるかってことです。

今回の試験で合格された方々のお話を聞いていると、
驚くほど丁寧に、過去問題演習を進めておられたことが分かります。
満点が取れるまで、何度も繰り返して勉強されているのです。
もちろん、学習には長い時間を要します。

実のところ、行うべき勉強の範囲は概ね限られているのです。
この範囲について、愚直に勉強を続けることが、
合格への最短経路であると私は確信しています。




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95、自分を奮い立たせる方法を持っているか。
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先日、私が主宰する塾において、「合格お祝い金贈呈式」を行いました。
所定の条件を満たした方が気象予報士試験に合格された場合、
これまでにお支払い下さった受講料の半額に相当する金額を、
「合格お祝い金」としてお贈りしているのです。

メルマガの本文では、原則として塾の広報を行わないことにしていますので、
合格お祝い金制度そのものの詳細について関心のある方は、
「藤田真司の気象予報士塾」のホームページをご覧下さい。
ここでは、私がこの制度を採用した背景にある、
「目標達成のための方法」についての考え方を述べたいと思います。

私は「あらゆる行動には、動機が存在する」と考えるのですが、
それは、大きく2つに分けられます。

1,「○○をしないと損をする。だから○○をしよう。」
2,「○○をすると得をする。だから○○をしよう。」

1はマイナスから逃れようとするための行動、
2はプラスを得ようとするための行動ですね。

子供であれば、「先生に怒られないように、宿題をキチンとする」、
「野球部を辞めさせられないように、中間テストで良い点を取る」
といったことも、よくあるように思いますが、
自発的に行う大人の勉強は、2の動機で進めたいものです。

よく、「自分へのご褒美」という言葉を耳にしますが、
動機付けのためにご褒美を有効活用するためには、
「ご褒美をあげる人」と「ご褒美をもらう人」は別々のほうが良いのです。
自己裁定では、どうしても基準が甘くなってしまいますし、
自分の左手から、右手にご褒美を渡すよりは、
他人からもらったほうが嬉しいですからね。
そこで、「合格お祝い金」という制度を採ることにしたわけです。

もっとも「合格お祝い金」は、数ある動機付けの一つに過ぎないと思います。
これをきっかけにして、勉強を進めていくうちに、
「勉強そのものに充実感を覚えるようになった」と仰る方も多くおられます。
こうなれば、「もっと学びたい」という気持ち自体が、
さらなる勉強への大きな動機になります。
もちろん、「気象キャスターになりたい」「資格を取って転職したい」
といった目標が、大きな動機になっている方も多いでしょう。

動機は数多くあるに越したことはないのです。
できれば、その中に「遠くにある大目標」だけでなく、
「わりと手の届きそうな小目標」「少し遠くにある中目標」といった感じで、
種類の異なるものを揃えておくのが理想的だと思います。




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96、その習慣、本当に必要ですか?
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まず、「ニュートンの運動の第1法則(慣性の法則)」をご紹介します。

「物体に加わる力がなければ、その物体は現在の運動を続ける。」

つまり、静止している物体は、そのまま止まった状態を続け、
時速30kmで真っ直ぐに動いている物体は、そのまま動き続けるわけです。
地球上では、空気などによって運動を止めようとする力が働くため、
投げたボールはやがて止まってしまいますが、
宇宙空間で投げたボールは、どこまでも飛び続けるわけです。

この有名な物理の法則は、人間の行動と似ているように思います。
「今やっていることは、とりあえず今後も続ける。」ということです。

例えば、通勤や通学で電車を毎朝使っている人であれば、
何時何分の電車に乗るか決まっていることが多いでしょう。
それどころか、「前から3両目の車両で、一番後のドア」といった感じで、
乗り込む場所まで決めている人も少なくありません。
私も中学時代から通学に電車を使っていましたが、
いつもの電車・車両・ドアが決まっていました。
周囲の顔ぶれも、概ね同じだったように記憶しています。

昼食を摂るために入る食堂も、数軒のうちのどれか。
夕方、駅から歩いて家まで帰る道のりも同じ。
このように、一度決まった行動については、
特に疑問を差し挟むことなく、そのまま続けることが多いのです。

気象予報士試験の勉強を本格的に進めていく際に、
「勉強時間をどうやって確保するか」が課題となります。
そのときによく出てくるのが、「寝る時間を減らす」という方法ですが、
これはお勧めできない、ということを以前にも書きました。
むしろ必要なのは、起きている間の生活行動を見直し、
不要な習慣が見当たらないかを、点検することです。

試験に合格された方にお話を聞いてみると、
「テレビを見るのをほとんどやめた」と仰る方がおられました。
たしかに、テレビを見ることは習慣性の強い行動です。
特に独り暮らしの方であれば、部屋も静かであるがゆえに、
「とりあえず、テレビをつけておく」ということも多いでしょう。

面白いテレビ番組を数多く知っている人ほど、
テレビを見る習慣から離れられませんが、
試験勉強の時間を確保するためには、
この時間を「聖域化」するべきではないと思います。

不思議なことに、「テレビを見ない」という習慣をつけてしまうと、
それほど苦にならないそうです。
私自身、夜に放送しているバラエティー番組やドラマは滅多に見ませんが、
それをキツイと感じたことはありません。
見ないことで損をしている部分もあるのでしょうが、
得をしている部分もあると思います。

新しい習慣(ここでは受験勉強)を定着させるためには、
これまでに存在している習慣の一部を取りやめることが大切です。
1日のうち、自分の意志で自由に行動できる時間は限られているからです。




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97、効率的な学習のためにお金を遣う。
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小学生だった頃、近所にある公民館へよく行きました。
公民館の2階にある図書室には、子供向けの本が数多く並んでおり、
特に夏の暑さが厳しいときなどは、涼しく読書を楽しめたものです。

冷暖房が行き届いていて、なおかつ静かな図書室は、
常に多くの人が利用していました。
しかし、その利用者の大半は本を読みに来たのではなく、
受験勉強のために来ていました。

あれから20年ほどが過ぎましたが、
最近は図書館での自習を禁じているところが多いようです。
やはり、本来の目的とずれているわけですから、
そこで読書をする人が最優先、ということなのでしょう。

それに代わって、このところ目にするのが「自習室」の存在です。
私は授業のために、大阪へ週2回行きますが、
「貸し自習室」と書かれた看板がよく掛かっています。
有料で自習スペースを提供してもらえるのです。
設備や立地にもよりますが、月額1万円~3万円程度で利用できるようです。

考えようによっては、勉強するだけのスペースを確保するために、
わざわざ、これほどの大金を毎月支払うことに、
抵抗を感じる方もおられることでしょう。
確かに、自宅で勉強すれば余計なお金は掛かりません。

しかし、これほど自習室が流行っているということは、
多くの人が価値を認めているとも言えるでしょう。
実際、私が主宰する塾でも、ある受講生の方が自習室を利用されていました。
ご自宅ではなかなか密度の高い勉強ができなかったそうですが、
自習室では、集中して学習を続けることができたそうです。
その成果は、「気象予報士試験合格」という形で表れたのです。

お金をかけたからといって、必ず成果が出るとは限りませんが、
お金を出し渋ることで、勉強が非効率になってしまうことは多いのです。
その1つが、インターネットによる情報収集に対する過度な期待です。

定額料金でインターネットを利用できるようになったことで、
接続に要する通信費は、10年ほど前に比べて非常に安くなりました。
しかし、ネット検索は決して万能ではありません。

ネット上の情報の中には、真偽が曖昧なものが数多く含まれています。
特に個人が発信している情報内容には、充分に注意する必要があります。
また、情報内容が正しくても、一般的にネット上の情報は、
教科書や学習書として掲載されているわけではありませんから、
断片的な内容が多く、何かを基礎から順番に学ぶ際には不適です。
充分な知識を持った人が、補助的に活用することで、
「最新情報をいち早く得られる」などといったメリットを享受できる、
私はこのように考えています。

インターネットなら何でもタダで情報収集できると考えて、
本を買うことを躊躇うと、効果的な学習から遠ざかってしまいます。
マウスをいくら動かしても、優れた本10冊にはかないません。

では、優れた本を見つける方法は何か?
もちろん、その道をよく知る人からアドバイスを受けることも有益ですが、
本当に自分に合った本を見つけるためには、
自分で試行錯誤しながら、本を買い集めていくことです。
結局、身銭を切らないとダメだということです。




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98、忘年会の二次会には出ない。
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私が通っていた高校は、ある私立大学の系列校でした。
今はどうなっているか知りませんが、
当時は全生徒の大半が、推薦で系列の大学に進学していました。
私もそのうちの一人です。

推薦入試と言っても無試験ではなく、一応は入学試験がありましたが、
私が受けた筆記試験は、英語のテストだけ。
しかも、辞書の持ち込みが許されていました。
しかも、その入試問題は前年に出されたものでした。
しかし、私は問題の意味が全く分かりませんでした。

持ち込んできた英和辞書を使って、
長文の単語を一つ一つ調べていくのですが、
個々の単語が分かっても、文法が分からなければ、
文の意味を取ることはできません。
結局、何も分からないまま、適当に記号を入れただけでした。
それでも平然としていられたのは、この英語の試験が、
本質的に合否を左右するものではないことを察していたからです。

これほど出来の悪い受験生だったのも無理はありません。
「問題行動さえ起こさねば、上(大学)には必ず行ける」
という認識があったものですから、
まともな勉強など、何一つしていなかったのです。
定期試験などで午前中に下校できる場合は、
「普段はできないのだから」と自転車で山登りをし、
友人の家に集まって、深夜までバカ騒ぎに興じていました。

そんな中、敢えて推薦入試を受けずに、
一般受験で他大学に合格し、進学した生徒が何人かいました。
煙でモウモウになった部屋で、私が麻雀牌をかき回していた頃、
おそらく、彼らは赤本と格闘していたのでしょう。

他人と違う結果を残したいのであれば、
当然ながら、他人と異なる時間を過ごす必要があります。
これは気象予報士試験に挑戦するときも同じです。
大勢と馴れ合っているようでは、勉強時間を確保できません。

例えば、今は忘年会シーズンですが、
二次会・三次会と飲み歩いているようでは、ダメです。
一次会に参加することで「つきあいの義理」は果たしたと考え、
帰りの電車の中で参考書を広げるくらいの気持ちが大切です。




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99、一年の計は年末にあり。
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2008年も残すところ10日となりましたが、
今年を振り返ってみて、いかがでしょうか?

このメルマガをお読みになっておられる方の中には、
 ・念願の気象予報士試験に合格できた
 ・初めて学科試験に合格できた
 ・初めて気象予報士試験に挑戦できた
今年1年で達成できた目標をお持ちの方も多いかとお察しします。

一方で、いろいろなご事情もあって、
 ・試験勉強が思うように進まなかった
 ・試験勉強を中断してしまった
 ・気象予報士試験に挑戦しようと思いつつ、できなかった
といった方々もおられるに違いありません。

今年の反省をバネにして、ぜひ来年には目標に向けて、
第一歩(もしくは再スタート)を踏み出していただければと思います。

このメルマガを書くときもそうなのですが、
最初に書き始めるまでが、なかなか時間がかかるのです。
半月に一回のメルマガですが、たいてい書き始めるのは前日か当日です。

しかし、原稿画面を立ち上げて、
少し書き始めてしまうと、後は比較的簡単に筆が進みます。
不思議なのは、何か書き始めることで、
次に書こうとする内容が頭に思い浮かんでくるのです。
一人でウンウン考えているときよりも、
その内容について、人と話をしているときのほうが、
良い考えが浮かんだりすることと似ています。

勉強もこれと同じであると言えるかも知れません。
最初の一歩を踏み出すまでが大変です。
特に、気象予報士試験は「理系科目の試験」というイメージが強く、
学生時代に文系だった方には、取っつきにくい印象があります。
確かに、理系科目を勉強する必要があるのは事実ですが、
一つ一つを着実に学んでいけば、確実にレベルアップできるのも確かです。
これは、文系・理系に関係なく、勉強に共通して言えることでしょう。

これまで文系の勉強をしてこられた方が、
理系の資格も取得できるなんて、カッコイイじゃないですか。
そう考えて、第一歩を踏み出してみることが大切だと思います。

さて、「一年の計は元旦にあり」というのは有名な諺ですが、
できることなら、年末から計画を練っておかれることをお勧めします。
確かに、年末は何かと忙しいのですが、
29日や30日になれば、ある程度まで落ち着くはずです。
そこで、今年1年を振り返ったうえで、
来年に実現したいことを思い浮かべてみて下さい。
そうすれば、新年を迎える際には、
それを実現するための具体的な方法が少しずつ見えてくるはずです。




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100、種をまくから、収穫できる。
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私が気象予報士の勉強をしていた頃、
「そんな勉強をして、どんな役に立つのかね?」
と言われたことがあります。

私が気象予報士試験の勉強を始めたのは1994年(平成6年)のこと。
第1回試験が実施されて間もない頃でした。

今ではテレビやラジオの気象解説と言えば、
気象予報士が出てくるのが当たり前になりましたが、
当時は、資格そのものが今ほどには知られていなかったのです。

もし、私が途中で勉強を投げ出していれば、
その後の人生は、大きく変わったものとなっていたことでしょう。

勉強をすることは、畑に種をまくことと似ています。
種そのものを食物として食べることもできるわけですが、
敢えてそれをせずに、種を土に埋めて、水を撒き、肥料をやるわけです。
勉強のために「時間」「労力」「お金」を使うということです。

こうして、種が芽を出し、苗が生長していくわけですが、
「○○年に収穫できる」と予め決まっているわけではありません。
しかし、これだけはハッキリと言えます。
種をまいて、育てなければ、絶対に収穫できないということです。

何もこれは気象予報士試験に限った話ではなく、
楽器でも、語学でも、肉体改造でも、同じだと言われています。

私は4年ほど前に、アコーディオンを買いましたが、
もうずっと、押し入れで眠ったままです。
大きいので、かなりのスペースを占領し続けています。
フルートだったら、もっとコンパクトなのですが、
cobaさんに憧れてアコーディオンをやってみたかったので、仕方ありません。

「マンションだから楽器はダメ」というのを言い訳にして、
この4年間ほとんど触っていませんが、
1週間に1回でも、カラオケ店で練習していれば、
「My Way」が弾けるようになっていたような気もします。
種をまいたが、その後の世話を怠っているということです。

気象予報士試験で挫折する人は、収穫時期が見えないからです。
「そんな勉強をして、どんな役に立つのかね?」
という心の声が聞こえてくるからです。
しかし、種まきの時期と収穫期の間には、必ずブランクがあります。
未来を信じて耕し続ける人だけが、収穫できるのです。

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