藤田真司の気象予報士塾は、気象予報士試験合格をトコトン応援する通信型の塾(予備校)です。

無料メルマガ『めざせ!気象予報士・お天気キャスター』バックナンバー(第1話~第50話)


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(まえがき)気象予報士・気象キャスターを目指すあなたへ
  1、高校球児、気象予報士試験に興味を持つ。
  2、参考書に書いてある意味が分からない。
  3、早朝から勉強するも、2回連続で不合格。
  4、3度目の正直、17歳で試験合格!
  5、目指せ!気象キャスター。まずは仲間探し。
  6、学習塾の講師で、説明することの勉強。
  7、お天気キャスター森田正光さんに会いに行く。
  8、突然、舞い込んだ大きなチャンス
  9、深夜2時起床の生活スタート!
  10、体力が勝負の世界
  11、文系でも試験に合格できる。
  12、試験と実務は違います。
  13、動いた者が注目される。
  14、勉強の仕方 ~独学or通学~ その1
  15、勉強の仕方 ~独学or通学~ その2
  16、気象キャスターに向いている人とは?
  17、中学校の宿題から消えた「天気図作成」
  18、台風情報を伝えるという仕事
  19、難しい試験・・・でも恐れる必要はなし。
  20、気象庁のホームページを活用しよう。
  21、ときには自然に触れて、風を感じよう。
  22、勉強モードへの切替が大切。
  23、合格までに必要な時間は?
  24、分からないところを探す。
  25、名刺集めよりも必要なこと
  26、日本の気候 ~冬~
  27、日本の気候 ~春~
  28、できない理由を探さない。
  29、日本の気候 ~夏~
  30、代役になる準備はできているか?
  31、「受験勉強日記」を作ってみよう。
  32、日本の気候 ~秋~
  33、将棋の習得で学ぶ「天気図の読み方」
  34、気象情報は大きなビジネス
  35、雨を知らせる名曲
  36、肌感覚が大切
  37、何かを選ぶことは何かを捨てること
  38、勢いだけでは続かない
  39、耳に残る話し方とは?
  40、質問こそが理解への近道
  41、ライバルはわりと少ない。
  42、気象予報士の資格でメシが食えるか?(前編)
  43、気象予報士の資格でメシが食えるか?(後編)
  44、難問は少ない。
  45、自由とは「誰も働きかけてくれない」こと。
  46、最大限の夢を描こう。
  47、協力し合える仲間はいますか?
  48、価値観は遣ったお金に表れる。
  49、「気象」は、21世紀の必修科目だ!
  50、東大入試より難しい? ~一般知識試験の攻略法~


私は気象予報士として、民間の気象会社で勤務していました。
会社を退職した後も、天気予報は大好きです。
なにしろ、未来を予測できるわけですからね。
「先のことは分からない」とよく言われますが、
天気予報なら、少なくとも明日・明後日くらいの範囲ならば、
かなりの傾向が分かる時代になりました。
これって、すごいことだと思いませんか?
株価・競馬・選挙・景気・商品など、
世の中には多くの予測が流れていますが、
天気予報ほど的中率の高いものはないと思います。

また、日常生活に深く関わってくるのも天気です。
晴れて雲一つない青空が広がれば、
それだけで一日を楽しく過ごせそうな予感がしますし、
朝から雨が降っていれば、服が濡れるんじゃないか、
黒板の文字が見えにくくなるなあと、憂鬱な気分になりがちです。

台風接近が予想できるからこそ、
海で事故に遭う危険も避けられますし、
雷発生の危険性が予想できるからこそ、
屋外で落雷に遭う危険も避けることができます。

天気との関連はこれだけに留まりません。
健康とも大きく関係します。
寒くなれば風邪を引きやすくなりますし、
暑ければ胃腸が弱りがちになります。
また、天気の変化によって、古傷が痛んだり、
ぜんそくの発作が出やすくなる、ということも言われます。

冬に大雪になれば、被害を受ける人がいる一方で、
スキー場でのゲレンデコンディションの良さに喜ぶ人もいます。
夏が暑ければ、冷房器具が売れるので電器店は大喜びですが、
熱中症でダウンしてしまう人も多くなります。
健康にも、生活にも、景気にも、
天気は深く関係しているといって良いでしょう。

1994年には気象予報士という資格ができました。
この資格を取得したのをきっかけに、
気象の世界で働くようになった方を何人も知っています。
そして、私自身もそうでした。
私がどのようにして、気象予報士試験を突破し、
天気の仕事に就くことになったかを、ご紹介したいと思います。



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1、高校球児、気象予報士試験に興味を持つ。
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1994年(平成6年)の夏。私は京都府内の高校に通う高校生でした。
夏休みの期間なので、学校は休みですが、
野球部員だった私は、たいてい学校のグラウンドで走り回っていました。

京都の夏は暑いことで知られていますが、
その年の夏は特に記録的な猛暑だったので、今でもよく覚えています。
なにしろ、この年に記録した気温39.8度が、
京都の観測史上最高気温なのです。
私は休憩時間に水が飲めることだけを楽しみにして、
焼けるようなグラウンドで守備練習をしていました。
長い練習が終わって家に帰っても、全身が暑く、
1リットルの冷えた牛乳を飲みながら、食事を摂る毎日でした。

そんなある日、食卓で母親が「こんなのがあるよ」と言って見せたのが、
「気象予報士」という資格についての新聞記事でした。
ちょうど、始めて気象予報士試験が行われたときでした。
新しい国家資格ということもあって、
当時はマスコミでも、よく紹介されていたのです。

なぜ、母親がそんな記事を私に見せたかというと、
私は幼い頃から天気や宇宙に興味を持っていたからです。
父親がそういった話をしてくれたことや、
田舎に住んでいたので夜空が比較的きれいだったことが、
興味を持つ理由だったのかも知れません。
小学生のときは、ラジオの天気図を書いたこともありましたが、
あくまでも、「興味があった」「好きだった」という程度で、
特に何か専門的な勉強をすることもありませんでした。

学校の勉強もおぼつかない私でしたが、
「ちょっと本でも見てみるか」と思ったのは、
やはり、天気に対する興味が強かったからなのでしょう。
これが、私と気象予報士試験との出会いでした。



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2、参考書に書いてある意味が分からない。
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「気象予報士試験でも受けてみるか」と、
軽い気持ちながらも乗り気になった私は、気象の本を探しました。
しかし、地元の本屋には気象の専門書はなく、
野球部の練習がない定期試験の時期に、
大きな書店のある大阪まで出かけていきました。

当時はまだ気象予報士試験が始まって間もない頃でしたから、
気象予報士試験対策の本は少なかったように思います。
その点で、今の受験生は恵まれています。
例えば、「過去問題集」だけで20冊以上あるわけですからね。

いろいろ探したところ、一冊の大きな本が目に留まりました。
『天気予報の技術』(東京堂出版)という本です。
普段買う漫画や文庫本と違って、値段が高いことに驚いたものの、
興味を持つと凝り性になる私は、思い切って買うことにしたのです。

早速、買った本を家で読み始めました。
しかし、すぐに読むのを辞めたくなってしまいました。
というか、読むことができませんでした。
専門用語や数式のオンパレードで、何が書いてあるのか分からないのです。

『天気予報の技術』は、後に改訂版も出され、
私もお薦めする本ですが、初心者には高度な内容です。
当時の私は専門的な勉強など何もしていなかったのですから、
本に書いてある意味が分からないのは当然のことでした。

私は再び大阪へ行き、気象専門用語を解説した事典を買いました。
分からない言葉を調べながら、本を読むことにしたのです。
とりあえず、勉強するための道具は集まりました。
しかし、私は毎日学校へ通う高校生であり、
授業後はユニフォームに着替える野球部員でした。
日・祝日も練習や試合があったのですが、
試験勉強の時間をどうやって捻出したのかは、次週に書くことにします。



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3、早朝から勉強するも、2回連続で不合格。
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気象予報士試験の受験生になったとはいえ、当時の私は高校生でした。
朝6時に起きて学校に通い、授業が終われば野球部の練習。
定期試験もありましたし、週末も野球部の練習や試合がありました。
夏休みも冬休みも、野球・野球・野球です。
家に帰って風呂に入れば、自然と眠くなるもので、
夜に試験勉強(もちろん学校の勉強も)などできるものではありません。

そんな中で、私はどうやって勉強の時間を捻出したかというと、
夜ではなく、朝を利用することにしたのです。
起きた後の頭はリフレッシュされているから、勉強には良かろう、
そう思って、午前3時に起きることにしました。
もちろん、起きるのが辛かったことも結構ありました。
特に冬の朝は寒さが厳しく、布団から出たものの、
こたつに潜り込んで、再び寝てしまうこともあったほどです。
しかし、早起きによって、ある程度の勉強時間を確保できました。
こんな時間でもFMラジオは放送していて、
流れてくる音楽は、勉強の友になってくれました。
朝早く起きると、朝食も美味しく摂れます。

また、早朝に起きるメリットとして、
テレビの天気番組をじっくり見ることができました。
早朝番組の天気コーナーは、時間に余裕があるのか、
詳しく解説してくれることが多く、勉強になりました。
まさか、数年後に自分自身が、
この時間帯に出演することになるとは思いませんでしたが。

こうして、早朝勉強の習慣ができたとはいえ、
試験の結果は冴えませんでした。
特に、最初に受けた試験では、問題が解けないあまり、
試験会場で寝てしまう有様。
半年後、2度目の受験もあっけなく失敗。
高校生にとって、一回12000円の受験料は財布に痛いものでした。
(現在、受験料は11400円に改訂)
「いつまでも受からないままでは、勉強など無駄ではないか?」
試験勉強を始めてから、1年が過ぎた頃には、
そういった不安が出てきたのです。



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4、三度目の正直、17歳で試験合格!
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私が受験した頃から試験対策のための私塾はあり、
試験に2度失敗した私も授業を受けたかったのですが、
「授業料が高い」ことと「時間がない」のが理由で、行けませんでした。
気象予報士の勉強も次第に面白くなりつつある中、
野球も好きだったので、辞めたくなかったのです。
何冊かの本だけが私の先生でした。

そんな私の勉強法は、徹底した過去試験問題の攻略です。
まだ試験実施回数も少ない時代でしたが、
それでも、試験問題と解説が書かれた本で勉強したのです。
最初の頃は、問題文の意味さえ分からない状態でしたが、
事典などで調べながら、いろいろな本を読み続けているうちに、
何となく分かるようになってきました。
分かることで、私は勉強を続ける意欲を持ち続けることができました。
問題を復習しながら、分からないことを潰していく勉強法で、
少しずつ合格への手応えを感じるまでになっていたのです。
そして、3度目の試験を受ける際には、
「何としても、今回は合格したい」と思いました。
そのときの試験で受かれば、17歳で合格できるのです。

当時、気象予報士合格者の最年少は17歳の男性でした。
今は人気アカペラグループ「RAG FAIR」で、
「おっくん」として活躍している奥村政佳君です。
誕生日の関係で、私がその試験で合格しても、
彼が持つ最年少記録を更新することにはならなかったのですが、
17歳で合格することを、自分の中の目標としました。

1996年1月、第5回気象予報士試験が行われました。
私は試験会場におにぎりとチョコレートを持ち込みました。
「炭水化物は脳の活性化に良い」ということを聞いていたからです。
それが功を奏したのか、私は3回目の受験で合格することができました。
合格発表が行われた日は、高校2年の終業式の日でもありました。

このときにの試験で、同じく17歳で合格しながら、
最年少合格記録を更新した人がいました。
後に富山大学・大学院へ進んだ川原靖広君です。
合格発表後、彼はテレビ取材を受けたそうですが、
私には何の取材もありませんでした。(まあ、当然ですね)
学校に取材班が来るかもしれないと密かに思っていた私は、
当時からマスコミに顔を出すことに興味があったようです。

ちなみに、17歳で合格した奥村君・川原君・私は、
20歳の頃に東京で初めて3人で集まりました。
その後、別々の道を進むことになりましたが、
当時に計画した「共著で天気の本を出そう」という夢は、
いつか実現するに違いない、と思っています。



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5、目指せ!気象キャスター。まずは仲間探し。
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晴れて気象予報士試験を突破したわけですが、
何か周囲の状況が変わるわけではありませんでした。
私は高校3年に進級し、引き続き野球部員として日々を過ごしていました。
連日の厳しい練習だったのですが、
京都の西京極球場で行われた夏の大会(甲子園の予選)では、
あっさりと負けてしまいました。
しかも、私がラストバッターだったのです。
見逃し三振をし、試合を終わらせてしまい、
私の高校球児としての夏は終わりました。

最後の一球が「空振り」ではなく「見逃し」であったことは、
今でも悔しい思い出として、脳裏に焼き付いています。
もし、バットを振っていれば、ボールに当たったかもしれない、
そんな思いが、「機会を与えられれば、必ずバットを振ること」
という考え方を強めました。
これが今後の私の行動方針に影響することになります。

高校を卒業後、大学に進んだ私は、
気象予報士の資格を生かして、
キャスターをやってみたい、と思うようになりました。
しかし、そんな仕事はどうすればできるのか?
相談しようにも、私の周辺には気象予報士の仲間がいませんでした。
そこで、仲間を探すことにしたのです。
幸いにも、気象予報士向けの勉強会で、
私は知り合いを作ることができただけでなく、
気象勉強会を紹介していただくことができました。

さらに気象予報士の集まるパーティーがあるときは、
私はパソコンで作った名刺を配ることにしました。
とにかく、バットを振ってみることにしたわけです。



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6、学習塾の講師で、説明することの勉強。
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大学生のときに最も長く続けたアルバイトは学習塾の講師でした。
塾の講師の仕事をした理由は、
担当教科である社会科が好きだったことや、
ほかの仕事に比べて給料が良かったこともありますが、
最大の理由は「分かりやすく説明すること」を勉強したかったからです。
塾講師と気象キャスターには、いくつか共通した点があると思います。

(似ている点)
 ・限られた時間で、情報を伝えること。
 ・大勢の人に対して、同時に伝えること。
 ・視覚的手段も用いること。(テレビ画面・黒板)

また、実際に塾講師を始めてから、重要なことに気がつきました。
講師にとって必要な能力は「話術」よりも、
むしろ「知識量」であるということでした。
「しっかり喋れること」というのは、
「しっかり知っていること」でもあるのです。
たとえ、話術に自信が無くても、
知識が豊富にあれば、的確に話すことができると思います。

例えば、地震・航空機事故・戦争などが発生した場合、
テレビに専門家の先生が出てきて、解説することがあります。
先生方はキャスター・タレントではないので、
テレビに出る機会もそれほど多くないでしょうし、
話し方の勉強もされていないと思うのですが、
その説明は、とても分かりやすいのです。

「どれだけ情報を持っているかによって、
 どれだけ情報を発信できるかが決まる。」
このことは、後に気象キャスターの世界に入るときに、
嫌というほど自覚することになります。



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7、お天気キャスター森田正光さんに会いに行く。
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森田正光さんといえば、全国で最も有名な気象キャスターの一人です。
放送界でのご活躍だけでなく、本も数多く出されています。
その森田さんが設立された気象会社で、
「気象キャスター候補」を募集していたので、私は応募しました。
連絡してみると、「東京まで面接に来て欲しい」とのこと。
私は「青春18きっぷ」を使い、
奈良から鈍行と快速列車を乗り継いで、東京へ向かいました。

面接には15人くらいの志願者が来られていました。
大半が関東の方で、関西から来ていたのは私だけでした。
試験とは一体どんな問題なのか?
いろいろ想像しているうちに、森田さんやスタッフの方が来られました。

森田さんは壁に貼ってある今日の天気図を指して言いました。
「この天気図を見て、何か話して下さい。」
それだけのシンプルな問題ですが、これが難しい。
私の番が回ってきましたが、何を言ったのかは記憶にありません。
覚えているのは、1分間も喋れなかったことです。

「何言っているのか分からないよ。『エー』とか『アー』が多すぎる。
 天気図一枚から3分間は話せるくらい、
 いろいろなことを勉強して、知っていなくちゃダメだ。」
森田さんは私に対し、そう仰いました。
なかなか痛烈ですが、今の私が当時の私を面接しても、
似たようなことを言ったと思います。

気象キャスターになるためには、
気象予報士試験に合格する以上に、勉強が必要だったのです。
その後、テレビ局のスタジオで、
森田さんが出演されている番組を見学しました。
小道具を使って、面白く分かりやすく解説されていましたが、
その裏には、相当な準備と勉強があるのだなと思いました。

「面接の結果は後日にお知らせします」とのことで、
私は再び鈍行列車を乗り継いで奈良へ帰りました。
そして、天気予報の勉強に励んだか?
残念ながら、そうではありません。

私は一人で名古屋から苫小牧行きの船に乗っていました。
途中に寄港する仙台で船を下りた私は、
積んできた自転車にまたがり、北に向けてペダルを踏みました。
前年夏にも、奈良-宗谷岬を走破した私は、
自転車旅の魅力にはまり込んでいたのです。




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8、突然、舞い込んだ大きなチャンス
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9月といえども、北海道では既に本格的な秋になっていました。
北の大地を自転車で旅していた私は、
テントで野宿をするたびに、朝晩の厳しい寒さを感じていたのです。
本では実感できない、その土地の空気を、
全身で感じることができるのが、自転車旅行の魅力です。

天気予報の仕事をする人にとって、
「気象を肌で感じる」ことは大事だと思います。
今はモニターの前に座っていれば、
データという形で、何でも情報が入ってくる時代ですが、
いくらデータを見たところで、
その気象をイメージすることができなければ、
他の人に伝えることはできません。
ですから、天気予報の仕事をする人は、
どんどん旅行をされるのが良いと思います。
そう言う私も、「氷点下30度の寒さ」や「1時間に100ミリの雨」
を未だ経験していません。実地で学ぶことが山積みです。

話は、私の自転車旅に戻ります。
旅路の途中で、買ったばかりの携帯電話が鳴りました。
画面に表示された市外局番は、東京都内からでした。
「先日は面接にきていただき、ありがとうございました。
 選考の結果、合格としたいと思います。
 天気キャスターのための勉強をしていきましょう。」

天気図を見ても、ろくなことが言えなかった私ですが、
ともかく機会を与えていただいたことに大きな喜びを感じました。
今から考えても、なぜ合格なのかよく分かりませんが、
当時20歳だった私の将来性を買ってくれたのだろう、
と勝手に解釈しています。

とにかく業界に潜り込むことさえできれば、次の進展が期待できる。
そう考えた私は、合格を大きなチャンスと受け止めました。
早速にも、キャスターになるための研修を受けたかったのですが、
私は奈良に住み、京都の大学に通っていることから、
長期休暇のときに受けることになりました。

研修を受けることを楽しみにしていた中、
知り合いの気象予報士の方から、電話がかかってきたのです。
「大阪の放送局で、早朝の天気番組を担当しませんか?」



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9、深夜2時起床の生活スタート!
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知り合いの気象予報士の方からかかってきた電話は、
テレビ出演に関する話でした。
まさに、私の望んでいたことが目の前に迫ってきたわけです。
当然のことながら、私はその依頼を受け、
番組での面接を経て、出演することが決まったのでした。

早朝5時30分から始まる番組でした。
当時、大学生だった私にしてみれば、
「そんな早朝から起きている人がどれくらいいるのか?」
と思いましたが、早起きの方は案外多いのです。
「早起きは3文の得」といいますが、
確かに早く起きると気持ちが良いですね。
特に春から夏にかけての季節は、5時を過ぎれば明るくなるのですから、
この清々しい時間を布団の中で味わうのは勿体ないものです。

さて、早朝番組を担当することになった私は、
何時に起きることになったかというと、午前2時でした。
放送局の近所にマンションを借りてもらったのですが、
午前3時までに局入りするためには、その時刻に起きなくてはなりません。

そして、早起きよりもキツかったのは、
「生放送に対するプレッシャー」でした。
気象予報士試験には合格したというものの、
実務の経験もなく、知識も少ない私が、
テレビの前で天気予報をお伝えするわけです。
出演が正式に決定した後、アナウンス研修を受けたり、
本番を想定したシミュレーションを何度もやっていただきました。

放送は1999年(平成11年)の年初から始まりましたが、
その直前に、声が出なくなるほどの風邪を引きました。
相当に緊張感が高まり、免疫力が落ちていたのでしょう。

初めてのOAが終わり、録画したテープを見てみると、
「そうですね」「そうですね」ばかり言っていました。
素人丸出しのキャスターだったわけですが、
そんな私を起用して下さったテレビ局の方には、
今でも感謝の気持ちでいっぱいです。



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10、体力が勝負の世界
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早朝番組のために、夜中から起きる生活は大変なものです。
さらに私はテレビ局での仕事に加えて、塾講師も続けていましたし、
一応は大学生だったので、講義にも顔を出していました。
夜遅くまで塾で教えた後、大阪へ向かい、
ホテルで仮眠を少しとってから、未明にテレビ局入り、
放送終了後に大学へ向かうということもしていました。
まあ、無茶なことをしていたものです。

放送の業界で、レギュラー番組を担当していると、
「しんどいから今日は休みます」と言うことができません。
もちろん、ぶっ倒れてしまえば、仕方が無いのですが、
生放送では代役を確保することも難しく、
周囲の方に大きな迷惑をかけてしまうのです。

だから、私も体調管理には気を使いました。
風邪をひかないように、うがいを心がけました。
ホテルの部屋は、空調の影響で空気が乾燥しやすいため、
わざと浴槽の湯を残し、部屋の湿気を保つようにしました。

午前2時半に起きた日は、どうしても眠くなりますが、
睡眠不足を補うのには、仮眠することが一番です。
特に電車の中は、仮眠に適しています。
慣れると、目的駅でドアが開く瞬間に目が覚めます(笑)。

しかしながら、たまには体調を崩してしまうときもあり、
何度か苦しい思いもしたものです。
最もキツかったのは、出演の前日に食中毒を起こしたときです。
尾籠な話で恐縮ですが、「上から」も「下から」も・・・でした。
出演中もずっと気分が悪く、ただ時が過ぎるのを待つだけでしたが、
視聴者の方に気づかれぬよう、カメラの前では普通に話せたことは、
誇れることかも知れません。



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11、文系でも試験に合格できる。
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気象予報士試験を受けようと思っている方の中には、
「理科が苦手だから」と躊躇している方がいらっしゃるかも知れません。
確かに、試験の中には物理や数学の知識を問う問題もあり、
私も問題を初めて目にしたときは、真っ青になったものです。

でも、資格に興味があるのでしたら、試験に挑戦してみるべきです。
全体の合格者に理系の方が多いのは事実ですが、
私の周囲には、文系の方のほうが多いくらいです。
私自身も文系で、大学では文学部でした。
それでも、気象予報士試験に何とか合格できたのは、
気象の勉強に強い興味を持ち続けられたからだと思います。

それに、試験全体が「理科系問題」で構成されているわけではありません。
気象予報士試験には、大きく分けて3つの課程があります。

 ・学科試験(予報に関する一般知識)
 ・学科試験(予報に関する専門知識)
 ・実技試験(2種類あります)

このうち、計算を要する問題は全体の2割程度です。
一方で、学科試験(予報に関する一般知識)の問題では、
気象業務法などの法律知識を問うものが4~5題も出題されます。
数学の苦手な方は「法律問題でカバーしよう」という作戦も良いと思います。

財団法人気象業務支援センターの発表によると、
学科試験の合格ラインは「15問中11問正解」とのことです。
つまり大相撲に例えれば、11勝4敗でクリアできるということです。
もちろん、朝青龍関のように全勝優勝できれば理想ですが、
苦手な分野が少しくらい残っていても、
試験をクリアできる可能性は高いと思います。

確かに、私自身も試験を受けるときには、計算問題で苦しみました。
しかし、順を追って勉強すれば誰でも「理解」に到達するはずです。
東京大学理科1類の試験問題が出てくるわけではないのです。
詳しく解説した本も出版されていますから、
じっくり取り組んでみると、案外スムーズに修得できると思います。



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12、試験と実務は違います。
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私がマスメディアの世界に入って、痛感したのは知識不足でした。
第7話でも書いたように、天気図を前にして1分間も話せなかった私は、
現場でも、知識の足りなさを強烈に自覚させられたのです。

砂漠地帯の天気予報なら「今日も晴れ、明日も晴れ」で済むでしょうが、
中緯度帯に位置し、周囲を海に囲まれている日本では、
四季の変化がはっきりしていて、さまざまな気象現象が起こります。
夏は北日本でも30度を超える暑さになりますし、
冬になると、西日本でも雪が積もります。
台風や低気圧もよく通るので、気象災害も頻発します。
昨年(2004年)だけで、いくつの気象災害が発生したでしょうか。

これら日本の気象について、過去の経緯を把握し、
今後の予想を、カメラの前でお話しするわけですが、
知識が足りないと、言葉は出てこないのです。

また、こういった知識を持つだけでは不充分で、
マスメディアの世界では、専門知識を翻訳する能力が要ります。

「相当温位342Kの暖湿流が太平洋側に流入するため、
 対流不安定により積乱雲の発達が予想され・・・」

気象予報士の実技試験で書く答案なら、これで良いのですが、
マスメディアで必要なのは、メカニズムよりも具体例です。

「結局、明日の天気はどうなるのか?」
「傘を持っていたほうが良いのか?」
「何か注意することはあるのか?」
これに対する答えが無ければ、天気情報の価値は無きに等しいのです。

また、桜・紅葉・花粉・紫外線といった知識は、
予報士試験ではほとんど問われませんが、
多くの人が関心を持つ話題ですから、勉強は欠かせません。
「学問としての気象」ではなく「生活としての気象」、
これがマスメディアで求められる知識であり、能力だと思います。
気象予報士試験を突破された方で、天気キャスターを目指す方や、
マスメディアでの放送支援業務に関心のある方は、
こういった勉強をされることをお勧めします。



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13、動いた者が注目される。
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「気象キャスターになるにはどうすればいいですか?」
というご質問を良く受けます。
私自身が、気象の知識が特に豊富であったとか、
話術に長けていたとか、タレント性に優れていたわけではありません。
単に、運が良かっただけのようにも思えますので、
上記のような質問を受けると、返答に窮するのですが、
一つ言えるのは、「動き回っているうちに運を拾う」と感じたことです。

今の時代に「気象キャスターになりたい」と思ったなら、
まず行うべきことは、気象予報士試験に合格することです。
この資格が作られてから、すでに10年以上が過ぎ、
業界では必須の資格になったような感があります。

そのために、どうやって勉強すれば良いか。
私のように本屋さんでテキストを買って、
一人で勉強するのも一つの方法ですし、
資格取得のための学校に通われるのも、一つの方法です。
通信教育を受けるというのも、良いでしょう。
大切なのは、どんな方法であれ、
自分で何かを始めないと、試験には合格できないということです。

試験に合格すれば、次はどうすれば良いか。
実のところ、試験合格後のほうが難しいように思います。
試験には「突破方法(マニュアル)」がありますが、
「気象キャスターになるための方法」に、定石は存在しないからです。
キャスターが所属する事務所(プロダクション)に入ったり、
気象会社にキャスター募集を問い合わせてみたりするのも方法です。
実際に気象キャスターに会いに行ってみるのも良いかも知れません。
もちろん、会えるかどうかは分かりませんが、
決まった方法が無い以上、
可能性のあることは何でも試してみる気持ちが大事です。

私もキャスターになりたいと思ったときは、よく動きました。
気象予報士の集まりに出かけては、手製の名刺を配り歩きました。
面接では、とにかく目立つことを心がけました。
上手く話そうと考えるのではなく、
どのようにすれば人目に付くか、ということを考えていました。
それが20歳で気象キャスターを始めることができたのと、
無関係でないと思っています。



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14、勉強の仕方 ~独学or通学~
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「気象予報士試験に合格するためには、
 専門のセミナーに通うほうが良いのか?」ということを良く聞きます。

結論から言いますと、「独学でも充分に合格は可能」です。
書店に専門書や試験対策本が売っていますので、
それをもとにコツコツ勉強すれば、合格できると思います。
実際、私自身も「本だけが先生」でした。
高校生のときに合格したわけですが、
学校の成績は「下の上」といったところでした。
英語はいつも30点前後でしたし、(昨年にTOEICを受けたら400点でした)
世界史では、「1」(注、10段階)を取ったこともあります。
そんな私でも、独学で合格できるわけです。

独学で合格すると、大きな達成感を伴います。
自転車だけで、北海道・宗谷岬に到達するような気分でしょうか。
(両方とも経験しましたが、似ているような気がします。)

一方、スクールで学ぶことのメリットは大きく分けて2つあります。
まず、一つめをご紹介しましょう。

  1,時間を節約し、効率的に学ぶことができる

私自身がそうだったのですが、試験勉強は試行錯誤の連続でした。
分からない語句が出てきては、あーでもない、こーでもないと考え、
解説を読んでも分からない問題にぶつかっては、悩んだものです。
そんなとき、講師に質問できる環境であれば、
抱えていた疑問は氷解したに違いない、と振り返ります。
私の試験勉強は非常に回り道の多い方法でした。

気象予報士試験の勉強を、一つの趣味・学問と捉え、
勉強に伴う試行錯誤も恐れることなく、
楽しみながら学んでいこうと思われる方には、独学をお勧めします。
時間はかかりますが、試行錯誤することも決してムダではないからです。
結果的には、そのほうが深く学べるかも知れません。

しかし、「早く資格を取得して次の目標を目指したい」
「就職活動までに資格を取っておきたい」という方は、
試験に合格することが最終目標ではないはずです。
資格取得は単なる「通過点」「一里塚」に過ぎないわけですから、
そのための勉強は、「最短コース」を選択されるのが良いと思います。
独学を普通列車に例えれば、
スクールを上手く活用することは急行列車であり、特急列車なのです。
ですから、「早く合格したい」「早く修得したい」ということでしたら、
私は迷いなく、専門の講師に学ぶことをお勧めします。

「スクールで学ぶ2つのメリット」、
もう一つの理由については、次回にお話ししたいと思います。




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15、勉強の仕方 ~独学or通学~ その2
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「スクールで学ぶ2つのメリット」、前回にお話しした一つめの理由は、
  1,時間を節約し、効率的に学ぶことができる
ということでしたが、二つめの理由がこれです。

  2,同じ志を持つ仲間に出会うことができる

これも私自身の経験がもとになっています。
高校生だった私は、完全独学で気象の勉強をしていました。
周囲で気象に興味を持つ人は皆無だったからです。
高校時代に天気の話をさせていただいたのは、地学科の先生だけで、
しかも、それは私が試験に合格してからのことでした。

受験生時代は、文字通り「本だけが先生」という状態でしたから、
大きな書店の「気象コーナー」で待ち伏せして、
予報士受験関連の本を見ている人に、声をかけようと思ったくらいです。
気が小さいので、そこまではできませんでしたが。

試験に合格してから、第5話にも書きましたように、
多くの気象予報士の方と知り合うことができましたが、
受験生だったときに、同じ志を持つ人に出会えていれば、
勉強のときも、もっと心強かったに違いありません。
第3話でも書きましたように、2回目の受験で失敗したときは、
「合格率も低いし、このままずっと受からないのではないか?」
と不安になったものです。

気象予報士を受験する人は増加傾向にありますが、
そうは言っても、年間受験者は1万人くらいです。
これは、行政書士試験の10分の1程度であり、
TOEICテストの100分の1以下です。
テレビに出る人が多いので、ある程度の知名度はあるものの、
専門性の高い資格であると言えるでしょう。

私が受験した当時から10年以上が過ぎ、
今はインターネットも普及していますから、
受験生仲間を見つけるのは、当時ほど難しくはないはずです。
掲示板を開いているホームページも見かけます。
と同時に、スクールに通われることでも、
仲間と出会う機会が高まるのではないかと思います。
「旅は道連れ世は情け」と言いますが、
資格取得のための勉強にも、この言葉が当てはまるのかも知れません。




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16、気象キャスターに向いている人とは?
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「どんな人がウェザーキャスターに合っているのですか」
「気象キャスターになりたいのだけど、自分は向いているでしょうか」
メールマガジンを発行していますと、
このようなご質問をいただくこともありますので、
今回は、それにお答えしたいと思います。

結論から言います。
気象キャスターに向いている人とは、
「気象キャスターになりたい!」と公言できる人です。
言うだけでなく、自分自身をドンドン売り込める人、
こんな人は天気キャスターに向いているのではないかと思います。
単純明快でしょう? でも、これが一番重要な要素なんです。

『アナウンサーになってやる!』というWebサイトがありますが、
タイトルが非常に良いですね。
https://tobeana.com/

「なれたら良いのだが」「なってみたいものだ」ではなく、「なってやる!」。
何としてでも願いを貫徹する姿勢が大切です。
ウェザーキャスターも、広義のアナウンサーだと思いますから、
同じような心意気が求められるのは、良く分かります。
「天気キャスターになったるわ!」という意気込みですね。

技術的な面に関して、「向き」「不向き」を言うつもりはありません。
気象キャスター・気象解説員に必要とされる技術が、
他の職業技術より、際立って高いとは思わないからです。
「なりたい」という気持ちを持ち、それを外に出すことができれば、
技術は後から付いてくるものだと思います。

例えば、ここ10年ほどの傾向として、
気象予報士の資格が重視されているのは事実ですが、
今まで天気について何も知らなかった文系の方が、
合格していくのを私は何人も見ています。
統計的な調査をしたことがないので、あくまでも主観的な感覚ですが、
「気象キャスターになりたい」という目標を持っているほうが、
気象予報士試験の勉強にも力が入り、
合格を引き寄せている方が多いように感じます。

「テレビやラジオで天気予報の仕事をしたい」と願う人は大勢いても、
それを、自分の夢として目標として、人前で言える人は僅かです。
さらに、実際に「行動」という形で、
目標に近づいていく人は、もっと少なくなります。
競争率は非常に高いように見えて、実は案外低いのです。

逆に言えば、気象予報士の資格を持っていても、
黙っていてキャスターになれることは、まずあり得ません。
いきなり「キャスターになりませんか?」と電話がかかってきたら、
詐欺商法の可能性が高いと考えるべきでしょう。
「では登録料65万円を」などと言ってくるに決まっています。

私自身も気象予報士試験に合格した後は、
「必ずや気象キャスターとしてテレビに出る」と公言して憚りませんでした。
周囲は「バカじゃなかろうか」と思っていたかも知れませんが、
その数年後に、実際に仕事をいただくことになったのは自分でも驚きでした。




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17、中学校の宿題から消えた「天気図作成」
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7月も下旬になり、学校は夏休みのところが多いかと思いますが、
夏休みの宿題といえば、読書感想文・問題集・絵画・工作など、
いろいろ出されたのを思い出します。
私は読書感想文・作文が苦手で、難儀した覚えがあり、
今こうして、メールマガジンを発行しているのが不思議です。
https://rojiura.jp/make-play.htm#4.5

さて、夏休みの宿題といえば、
私が中学生のときには「天気図を作成する」という課題がありました。
NHKラジオの第2放送を聞いて、天気図を書くのです。
たしか、中学2年の時だったと思いますが、
今はこうした宿題が出されていないところが多いようです。

といいますのも、文部科学省「中学校学習指導要領」には、
「天気図を作成すること」という課程が存在しないのです。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/990301c/990301d.htm

平成元年(1988年)に文部省が改訂した「中学校学習指導要領」には、
「天気図の作成」が書かれていました。(平成5年度から施行)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/890303.htm#024

> (ア)天気図を作成し、気圧配置と風向、風力及び天気との関係を見いだすこと。
> (イ)天気図や気象衛星画像などから、日本の天気の特徴を気団と関連付けてと
>    らえるとともに、天気の予測ができることを見いだすこと。

夏休みの宿題から「天気図作成」が消えたのは、
どうやら、この辺に理由があるようですね。
現在の「中学校学習指導要領」が施行されたのは、
平成14年(2002年)のことです。
いわゆる「ゆとり教育」というものですね。

「ゆとり教育」に対する批判として、
「学力低下」「理科離れ」といったことが、よく言われますが、
その中で私が感じるのは「地学軽視」の傾向です。

例えば、インターネット書店「Amazon」のサイトで、
学習参考書カテゴリーの中から、「地学」「化学」「物理」「生物」と入れ、
それぞれ何冊の本が検索で出てくるかを試してみました。
結果は以下の通りです。

「化学」917件
「生物」603件
「物理」528件
「地学」201件

理科4分野の中で、明らかに地学関連書の数が少ないことが分かります。
第3位の物理と比べても、半分以下です。
確かに、「センター試験を地学で受けた」という人もあまり聞きませんし、
私の通っていた高校でも、地学科の先生は一人だけでした。

では、地学分野が私たちの生活とかけ離れているのかというと、そうではなく、
日本は毎年のように大きな地震が起こる国です。
(この原稿執筆中の7/23にも、関東で大きな地震が起こりました。
 被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。)
また、台風をはじめとする気象災害にも遭うことが多いのは、
日本に住む人なら、誰もが感じることでしょう。

それを反映してか、小さな地震が起こっても、
テレビ画面には速報スーパーが表示されますし、
多くの新聞では、天気予報欄が1面にカラー印刷で掲載されています。

大切な情報であることはみんな知っていながらも、
地震や気象に関する知識を持った人は少ないわけですが、
学校で教えてくれなくても、自分で勉強する価値は充分にあると思います。




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18、台風情報を伝えるという仕事
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私が気象会社に勤務していた頃、台風が接近してくると、
妻は周囲からこんなことをよく言われたそうです。
「今日みたいな日、ご主人は海岸で台風中継をしているの?」と。

台風が接近すると、よく目にするのが台風中継です。
背景の海は大荒れで、至るところで白波が立ち、
レポーターの立っている場所にも、波しぶきが時々かかる。
横殴りの強い雨が容赦なく降り続き、
風でリポーターは吹き飛ばされそうになる。
多くの人が一度は目にしたことのある「台風中継」、
しかしながら、私自身は経験したことがありません。

では、台風が接近してきたときに、私は何をしていたのかというと、
放送局の中で走り回っていました。
台風といった異常気象時には、とんでもなく忙しくなるのです。
忙しくなる要素を挙げてみました。

  1,情報量が猛烈に多くなる。
  2,急に出演する必要が出てくる。
  3,普段の何倍も原稿を書く必要がある。

まず、1についてですが、
気象庁から入ってくる情報だけでも、膨大な量になります。
日本に台風が接近すると、台風の位置情報は1時間ごとに発表され、
臨時の気象情報も出てきますし、
警報(大雨・暴風・波浪など)が随時出されます。
「○○町で300ミリの大雨」などの情報も入ってきます。
仕事場のデスクには、紙の束でいっぱいです。

情報量が増えるのですから、発信量が増えるのは当然です。
2・3のように、出演や原稿作成という形で、
刻一刻と変化する台風情報・防災情報をお伝えしていかねばなりません。
台風中継を行うレポーターのために、原稿・資料を用意しましたし、
私自身が気象解説者として出演したこともありました。

限られた字数、限られた秒数の中で、
どうすれば、分かりやすく有益な情報を伝えることができるか。
災害を減らするための情報を発信しなければならないわけです。
情報の送り手側だった私は神経をとがらせて、
原稿を書き、マイクに向かったのでした。

当然ですが、台風は日時を構わずやってきますから、
昼夜問わずの24時間体制となります。
スタッフは複数人数いて、交代で勤務していたものの、
非常にハードな仕事であったことに変わりはありません。
しかし、災害を防ぐ・災害を減らす、
そのための情報発信に携わることができたことは、
今でも誇りに感じています。




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19、難しい試験・・・でも恐れる必要はなし。
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気象予報士という資格ができて、10年以上が過ぎ、
この資格の認知度はかなり高くなったと言えるでしょう。
私が試験を受けたとき(第5回試験)の受験者数は3000人足らずでしたが、
次回8/28に行われる第24回試験では、実に5401人もの方が、
試験を受けられるとのことです。
(財団法人気象業務支援センターの発表による)

これだけ多くの方が受験されるにもかかわらず、
毎回の合格者は、200~300人くらいのことが多いようで、
「難関資格」といわれる所以になっています。
気象予報士試験に興味を持っても、
その合格率の低さに尻込みしてしまう人もいるのです。

もちろん、数字が示すとおり、
気象予報士試験は簡単に突破できる試験ではありませんし、
私自身も、それなりに勉強しました。
(その経緯は、第1話~第4話で書いています。)
しかし、大学受験の浪人生のように、
一日の大半を試験勉強に費やさなければならないほど、
難しい試験であるとは思いません。
普通に生活しながら、毎日1時間程度を勉強に充てることができれば、
着実に、合格へと近づくことができると思います。

また、「気象予報士は理系の試験」という認識も、
一つの誤解ではないかと考えています。
理由は2つあります。

まず、理科系といっても、さほど高度な内容ではないことです。
気象予報士は、気象学者ではありません。
そもそも、気象予報士に求められていることは、
「気象データを用いて、現象の予想を行うこと」であって、
物理学や数学を駆使して、研究・開発することではないのです。
ですから、難しい方程式を解くような問題が試験で出ることもなく、
順を追って勉強していけば、誰でも理解できると思います。

もう一つは、文系の問題も出されるということです。
例えば、学科試験(一般知識)では、
15問の中から4問も、気象業務法などの法規問題が出てきます。
また、オゾン層破壊や地球温暖化の知識を問う問題もありますが、
雑学をより深く学ぶような感覚で、勉強できるはずです。

実際にテレビで活躍している気象キャスターの方々も、
プロフィールなどを見ていますと、
大学の理学部で、気象学や地球物理学などを専門的に学んだ方は、
それほど多くないようです。
一方で、これまで天気に特別な興味を持たなかった人が合格する姿を、
私自身も何度となく目にしています。

理系といったイメージを恐れることなく、
勉強を着実に重なることができれば、誰でも取れる資格。
それが気象予報士資格であると私は思っています。



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20、気象庁のホームページを活用しよう。
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気象予報士試験は、実務経験がなくても受験できる試験ですが、
試験そのものは「実務で使える知識・技能」を試されるため、
気象業務に携わっていない人にとっては、不利な点もあります。

特に学科試験の専門知識や実技試験に出題される内容は、
実際の気象業務に関係するものが多いのです。
例えば、週間予報がどんな形で発表されているのか、
業務を経験している人は、自然と覚えてしまうものですが、
一般の方にとっては、一つ一つ勉強する必要があります。

とはいえ、試験突破のためには大変大変とばかりも言っていられません。
良い教材をご紹介しましょう。それは気象庁のホームページです。
最近は特に内容も充実してきました。
ホームページには試験対策本よりも優れた部分があり、
ぜひ活用していただきたいと思います。

気象庁ホームページで活用したい部分は、特に次の3つです。

1,【速報性に優れている。】
気象庁ホームページでは、「報道発表資料」を見ることができ、
新しい気象業務についての発表や、統計資料の公開を行っています。
例えば、気象衛星「GOSE9号」に代わって、
2005年6月から「ひまわり6号」の運用が始まりました。
書籍では更新が追いつかない内容でも、
ホームページなら、いつでも最新情報を手にすることができます。

2,【詳細な情報を得ることができる。】
「ひまわり6号」は「GOSE9号」よりも優れた性能を持っていますが、
気象庁ホームページでは、その性能について細かく掲載されています。
天気予報で用いる用語についても、詳細に載っていて、
その内容は学科試験(専門知識)で出題されることも多いのです。
先日の第24回試験(学科試験の専門知識)を例にとると、
問1や問11がそれに相当します。

3,【実際の気象事例を学ぶことができる。】
気象庁ホームページには「気象画像事例集」というコンテンツがあり、
特徴的な衛星写真が解説とともに掲載されています。
これは衛星画像を勉強するのに役立ちます。
また、気象災害が発生すると、気象庁や各気象台からは速報が出されますが、
実技試験で出題される内容は、災害の恐れのある気象ばかりです。
気象庁ホームページでは、過去の気象事例を勉強することができるのです。

このように、気象庁ホームページは以前よりも内容が充実し、
気象予報士試験にも役立つ内容が増えました。
しかし、「天気図」に関しては、地上天気図がいくつか公開されているだけで、
実技試験に登場するような専門的な天気図は見ることができません。
韓国気象庁では、すでに様々な種類の天気図が、
カラーでネット公開されていることを考えると、
日本の気象庁でも、専門天気図の公開が待ち望まれます。

気象庁ホームページ




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21、ときには自然に触れて、風を感じよう。
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「気象予報士は空や雲を見て天気を予想するのか?」
このようなご質問を数多くいただきます。
しかし実際のところは、空を見る時間よりも、
天気図などの気象資料を見ている時間のほうが多く、
雲を見るにしても、下(地上)からではなく、
上(気象衛星ひまわりを通した画像)から見ることのほうが多いのです。

もちろん、それは多くの技術を結集して得られた気象資料のほうが、
空や雲を見ることよりも、正確に天気予報ができるからです。
気象予報士試験において求められる能力は、
気象資料の分析・解釈が大部分を占めると言って良いでしょう。

でも、紙の資料やモニター画面だけ見ていれば良し、とは思いません。
天気予報を利用するのは、生身の人間です。
その人間に伝わるような予報のためには、
やはり実際の天気に触れる機会を多く持つことが必要だと思います。

ハイキングやキャンプ・カヌーなどのアウトドアスポーツ、
サーフィンやスキューバダイビングなどのマリンスポーツ、
パラグライダーやスカイダイビングなどのスカイスポーツ、
スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツなど、
天気が好きな人は、自然の中で遊ぶのも好きな人が多いのです。
自然と一緒に遊んでいるからこそ、
自然・宇宙・風・天気・大地・生き物に、興味を持つのかも知れません。

私も二度も自転車で北海道を訪れるほどの自転車好きで、
ここ数年は、山に登ることを趣味にしています。
昨日も三重県の青山高原を友人と一緒に歩いてきたところです。
登り始めて約3時間、標高756mの三角点に立つと、
遠くに伊勢平野の街々が見え、その向こうには伊勢湾が望めました。
海から湿った空気が流れ込んでいたので、
景色がぼんやりとしていたのが残念でした。
それにしても、「上空では地表付近よりも風が強い」とは言いますが、
稜線まで登ってきたときの風の強かったこと。
汗が冷えたこともあって、肌寒くさえも感じました。

「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通り、残暑の季節も終わり、
いよいよ本格的な秋の到来です。
勉強の疲れは、自然の中で思いっきり発散しましょう。




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22、勉強モードへの切替が大切。
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気象予報士試験は、試験日から合格日までの期間が長く、
試験を受けてから合否が判明するまで、40日くらいかかります。
私自身、試験を三度受けましたが、そのたびに気を揉んだものです。
今は気象業務支援センターのホームページで、模範解答が発表されていますが、
私が受験した当時はそういったものもなく、
やきもきしながら、合格発表日を心待ちにしていたことを思い出します。

試験前日までは、早朝に起きて問題を解いたり、
通学の電車内で野球部カバンに潜ませた『一般気象学』を広げるなど、
寸暇を惜しんで勉強したように思います。
ただ、試験を受けた後は勉強習慣が途切れしまいました。
合否は気になるのですが、勉強の意欲は失せてしまうのですね。
同じような気持ちになった方、たくさんいらっしゃるかと思います。

今まで勉強に打ち込んできたことで生じた疲労感によって、
しばらくは、ゆっくりと休みたくなってしまうのですね。
さらに、「もし試験に受かっていたら、もう試験勉強はしなくていい」
という気持ちが、机に向かう意欲を失わせてしまうのも事実です。
私自身もそうでしたから、よく分かります。

でも、過去のデータは厳しい現実を物語っています。
「受験生の約95%は試験に落ちている」
あまりにも非情な内容ですが、この95%の方が合格を手にされるためには、
いち早く、次の試験に向けて勉強を始めることが必要です。
なぜか? それは次の試験までの時間は決して長くないからです。

合格発表から次の試験までの期間を見てみましょう。

 ★合格発表(10月上旬)→試験(1月下旬)・・・約3か月半
 ★合格発表(3月上旬)→試験(8月下旬)・・・約5か月半

特に、夏の合格発表日から冬の試験日までの期間が、
かなり短いことに気づかれると思います。
日数に直すと約100日しかありません。
ただでさえ、試験準備期間が短いにもかかわらず、
勉強のエンジンがフル回転するまでに時間がかかってしまっては・・・ですね。

試験の結果が明らかになったら、すぐに勉強モードに切替。
これが、冬の試験を征するための秘訣だと思います。




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23、合格までに必要な時間は?
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本屋さんで資格の本を見ていていたのですが、その数の多さに驚きました。
私など資格といえば、気象予報士に持っているものといえば、
運転免許(AT車限定。取るのに半年かかった。)と英検3級だけ。
新しく気象予報士の勉強を始められる方が多い中で、よく出るご質問が、
「どのくらい勉強すれば合格できるのか?」という内容。
しかしながら、お答えするのは容易でありません。

中には、「オレは一発で合格した!」という声も耳にしますが、
大半の方は、試験に落ちた経験をお持ちです。
何しろ合格率が4%台(第24回試験では4.1%でした)、
つまり「25人に1人しか合格を手にできない」のですから、当然です。

人それぞれ確保できる勉強時間も異なりますし、
独学で勉強されているのか、学校に通っておられるのか、
ということでも、違ってきます。
また、科目によって得手・不得手があるわけで、
一概に「合格までの勉強期間は○年」とは言いにくいのです。

しかしながら、敢えて「何らかの数字を挙げろ」と言われれば、
「少なくとも1年半はしっかり勉強することが大切です。」
と答えるようにしています。

もちろん、「私は1日15時間勉強する!」という方なら、
半年いや、もっと短い時間で合格できるかも知れません。
しかし、多くの受験生は気象予報士試験の勉強だけに、
一日の時間を割けるわけではないはずです。
他の学業・仕事があり、そのうえで余った時間を惜しんで、
勉強されているに違いありません。

気象予報士の試験範囲は、↓のようになります。(注、かなり大雑把です。)

 ・気象学の基礎(一般知識)
 ・気象法規(一般知識)
 ・気象現象(一般知識・専門知識)
 ・天気予報の作り方(専門知識)
 ・気象災害と防災(専門知識)
 ・天気図を読み取り予想する(実技)

これらの内容を熟知できてこそ、試験合格につながるわけですが、
知識ゼロから始められるのであれば、
少なくとも1年半程度はかかる、と私は思っています。

合格を勝ち取ることが困難だからこそ、その資格に価値はある。
「決して諦めない」勉強をする上で一番大切なことだと思います。




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24、分からないところを探す。
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「効率よく勉強を進める上で大事なのは何ですか?」
という質問をいただくことがありますが、私は次のように答えます。
「理解できている部分と、理解できていない部分を
 ご自分でしっかりと把握されることです。」
独学であれ、スクールに通うのであれ、この原則に変わりはないと思います。

どんな試験であれ、合格するために必要なのは、
「試験範囲の内容を理解すること」ですが、
それは家を建てることに似ています。
家に応じた建材を用意し、組み立てていくのが試験勉強です。

組み立てキットを見ながら、一人で部品を加工することから始めるのが独学、
加工済みの建材と組み立て方を教えてもらえるのが、
スクール通いと例えれば良いでしょう。

ここで重要なのは、ある程度まで組み立てが進んだ段階で、
「これから必要な工程」を細かく把握できるのは本人だけ、ということです。
もちろん、スクールの講師ならば、
「土台ができていない」「柱が不足している」といったことは分かりますが、
「この部分のネジが緩んでいる」といった部分まで把握するのは無理です。
専属講師からマンツーマンで指導を受けたとしても、
まるでパソコンのハードディスク残量でも覗くかのように、
他人の「知識量」を推し量ることは相当に難しいでしょう。

結局、自分の足りないところは自分で把握する。
これが最も早道で確実な方法です。
そのためには、何となくテキストを眺めるのではなく、
実際に問題を解いてみるのが効果的だと思います。
こうして「分からないこと探し」を始めてみると、結構出てくるもので、
何を隠そう、私自身も問題を間違えることがあり、
そんなときは勉強の不徹底に反省します。

「分かったふりをして誤魔化さない。分からないことに耐える。
 本当に分かるまで追求することが大切。」
『知的生活の方法』(講談社現代新書)という本で、
渡部昇一さんが述べておられますが、まさにその通りだと思います。





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25、名刺集めよりも必要なこと
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「キャスターになるためには人脈が必要なのか?」
といったことを聞かれることがあります。
私は決して長い間、業界に身を置いていたわけではないので、
正直なところ、そのへんの事情はよく分かりません。
でも思うのは、「必要なのは人脈よりも能力」ということです。

「自分をキャスターにさせてくれる人」を探さないほうがいいです。
そんな人は、まずいません。いたら詐欺だと思ってもいい。

「人脈」という言葉をはき違えている人がいます。
あちこちから名刺を集めて喜んでいるような人です。
名刺をもらったからといって、その人から協力が得られるのでしょうか。
「○○部長の名刺を持っている」だけでは、
タダの紙切れを抱いているのと同じです。
名刺を交換した程度の関わりで、誰が自分の夢に協力してくれるでしょうか。
多くの「何かあったら、いつでも連絡下さい」が、
社交辞令であることに気が付かなければなりません。

では、どうすれば人の協力が得られるのか?
それは「この人を紹介すれば、自分の利益になるな」と思わせることです。
そうすれば、頼み込まなくても、向こうからやってきます。
逆に「この人を紹介しても、自分の利益にならないな」と思われたら、
その人との繋がりは無いも等しいと考えるべきでしょう。
「人脈よりも能力」と最初に書いたのは、このような理由です。

ずいぶん以前のことですが、ある深夜番組で、
若き日の桂三枝さんについて紹介していたエピソードが私は好きです。

三枝さんは一般人を装って、テレビ局に電話をかけ、
「○○駅前の路上で、変なヤツが何かパフォーマンスやってます。
 すぐに来て下さい!」と息を切らせて伝えました。
そして、公衆電話ボックスから出た後、すぐに○○駅前に向かい、
自ら路上で芸を披露されていたそうです。

自作自演で、テレビ局の取材を引っ張り寄せたわけですね。
「そこまでやるか!」という感じですが、
あの三枝さんでさえも、こんなことをしてこられたのだ、と思うと、
何でもやってやろう、という気持ちが湧いてくるのです。





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26、日本の気候 ~冬~
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【南北の気温差が40℃以上になることも】
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日本列島は南北に長い国ですが、
夏よりも冬のほうが、北海道と沖縄で大きく気候が異なります。
札幌では、最高気温が0℃を下回る「真冬日」が、
一年間で平均約130日に達するのに対し、
沖縄では、真冬でも昼間の気温が20℃を超えることは珍しくありません。
北海道と沖縄の気温差が40℃を超えることさえあるのです。


【冬型の気圧配置】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
テレビの気象解説などでもお馴染みの言葉ですが、
日本の東に発達した低気圧、日本の西に強い高気圧が存在することが多く、
「西高東低」とも呼ばれます。
このような気圧配置になると、日本海側では雪が降りやすく、
特に山沿いでは、積雪量が2m、3mに達する所も出てきます。
一方、太平洋側では冷たい北風が吹くものの、
雪や雨が降ることは少なく、乾燥した晴天が続きます。
また、沖縄では季節風が海を吹き渡る間に、雲が発生するため、
ぐずついた天気となることが多いのです。


【太平洋側での雪】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あまり雪の降らない太平洋側でも、雪の降ることがあります。
低気圧が太平洋側を通過し、かつ冷たい空気が流れ込むと、
途中で融けることなく、雪のまま落ちてきます。
慣れぬ積雪のため、滑って転ぶ人が続出したり、
交通障害が発生することもしばしばです。
このタイプの雪は、真冬よりも春先に多いのが特徴ですが、
「雨として降るか、雪として降るか」が非常に予想しにくく、
気象関係者の頭を悩ませます。


【流氷・霜・霜柱・霧氷】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
日本で唯一、流氷が押し寄せるのが北海道のオホーツク海。
1月頃から流れてきて、春先まで留まっています。
また、ほとんどの地域で見ることのできる霜は、
空気中の水蒸気が氷となって、草などに付着したものです。
言葉は似ていますが、霜柱は土の中の水分が凍ったもので全く別物です。
(予報士試験でも、その違いについて出題されたことがあります。)
また、霧氷は空気中の細かい水滴が木などに付着して凍ったもので、
成長すると、木全体が氷に覆われて雪像のようになります。
蔵王の「モンスター」は有名です。


【凧揚げの季節】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
冬将軍・木枯らし・北風・・・。
冬は風の強い季節ですが、それは東西の気圧差が大きいからです。
夏の天気図には等圧線の数が少ないのですが、
冬の天気図にはビッシリと等圧線が描かれています。
ときには、東京と福岡の間に5本も等圧線が入っていることも。
だから、冬は凧揚げの季節なのですね。




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27、日本の気候 ~春~
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【春はまず光から】
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最初に春が訪れるのは光、つまり日差しです。
一年で最も昼間の時間が最も短いのは「冬至」(12月20日頃)で、
その後は少しずつ日差しも強くなってきます。
3月下旬になると、日差しの強さは9月下旬並みになります。
ちょうど、センバツ甲子園の頃ですが、天気のほうはと言えば、
西日本や東日本でもまだ雪が降るほど寒い日もあります。
光の春を追いかけるようにして、気温の春がやってくるのです。


【日本海低気圧がもたらす「春一番」】
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春先に、日本海を低気圧が発達しながら通過するときがあります。
このとき、南から暖かい空気を引き込むので、
強い南寄りの風が吹き、これを「春一番」といいます。
春の訪れを告げる風ですが、「春一番」の後には、
決まって強い冬型の気圧配置になり、寒さが押し寄せてくるのです。
3歩進んだかと思えば、2歩下がる。
このようにして、ゆっくりと季節は進んでいきます。


【4か月かけて、桜前線が北上】
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春と言えば桜ですが、沖縄では1月に咲きます。
3月後半になると、九州や四国に桜前線が上陸し、
やがて、近畿・東海・関東の太平洋側でも開花します。
西日本から東日本にかけての平地では、4月上旬に咲きますが、
東北では4月中旬から下旬、北海道では5月に入ってからです。
また、標高の高いところでも開花は遅くなり、
100m高くなると2~3日遅れます。


【春の空に浮かぶもの ~黄砂と花粉~】
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黄砂とスギ花粉、どちらも春の迷惑浮遊物です。
黄砂は中国大陸にある砂漠で吹き上げられた砂が、
日本上空まで飛んできたものです。
冬の間は地面が凍っていて、砂が吹き上げられないのです。
一方、スギ花粉はスギ林から飛んできているわけですが、
飛散量は前年夏の天気と大きな関係があります。
夏に晴れて暑い日が続くと、翌年の飛散は多くなります。


【春の天気は周期変化】
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冬の間は、同じような天気が長続きする傾向がありますが、
春になると、低気圧と高気圧が交互にやってくるようになるため、
天気は周期的に変化するようになります。
「春に3日の晴れなし」という言葉もあるように、晴天が長続きしません。
太陽や月に「暈(かさ)」と呼ばれる輪が見えたら、
天気の崩れは迫ってきていると考えて良いでしょう。



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28、できない理由を探さない。
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2005年8月に行われた気象予報士試験は、合格率が4.1%で、
全24回の試験の中で、2番目に低い数値となりました。
実に「25人に1人」しか通らない試験だったということです。

この結果に尻込みしてしまうのか、奮起して勉強に取り組むのか、
それは受験生の気持ち次第だと思います。
何事においてもそうだと思いますが、「できない理由」を探し始めると、
できることでも、できなくなってしまいます。

私のことを例に出すのも何ですが、
試験に取り組む私の環境は、決して良いものではありませんでした。

1,時間がない
当時の私は月~土まで学校に通う高校生(週休2日制ではなかった)で、
野球部の部員でもありましたから、時間は決して豊富でありませんでした。
野球部を辞めて、帰宅部になれば時間は捻出できたでしょうが、
何とか両立したかったのです。

2,カネがない
お金があれば、セミナーに通ったり、通信教育を受けたりできましたが、
アルバイトもしていない高校生に余剰資金はありません。
勉強のための専門書を買うのですら「こんなに高いのか」と思いましたし、
受験料12000円(当時)を払うのも、惜しいと感じたものです。

3,仲間がいない
勉強で分からないところがあっても、誰も教えてくれませんし、
試験の情報なども、なかなか入ってきませんでした。
今と違って、インターネットも普及していませんでしたから、
ネット掲示板で情報を得る、ということもできなかったのです。

このように、3つの「ない」がありましたが、
私は「気象予報士になりたい」という意志だけは強く持っていました。
だからこそ、試験に2度落ちても、やる気を失うことなく、
勉強を続けることができたのだと思います。

これは気象予報士試験に限った話ではなく、
司法書士試験でも、英語検定試験でも、大学受験でも同じです。
合格の価値が高い試験ほど、難易度も高いものです。

私の知っている方でも、仕事で激烈に忙しい方がおられましたが、
ちょっとした休みの時間でも、勉強に充て、
実技試験における天気図の見方を、ちょくちょく私に聞いてきたものです。
その方が合格を手にされたのは、言うまでもありません。

いくら「時間がない」と言っている人でも、
電車に乗っている間くらいは、本を広げることができるでしょう。
たとえ一日30分であっても、その時間を集中して復習に充てられるのなら、
半年後には大きな違いが出ているはずです。




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29、日本の気候 ~夏~
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【長雨の季節】
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日本の大部分では本格的な夏を迎える前に「梅雨」があり、
太平洋側を中心に雨の多い季節となります。
沖縄や奄美ではゴールデンウィークを過ぎた頃から、
九州・四国・九州でも、6月に入ると梅雨入りします。
梅雨の期間は40日くらい続きますが、
特に期間の後半には強雨・大雨が多くなります。
なお、北海道には梅雨はなく、6月は晴天の多い季節です。


【不快をもたらす湿気】
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人が暑苦しさを感じるのは、温度が高いことだけが理由ではありません。
温度が高くても、空気中の湿気が少ないと、
つまり湿度が低ければ、それほど暑苦しさは感じないのです。
湿度が低いと汗がすぐに乾いて、同時に皮膚の熱を奪ってくれるからです。
梅雨前線の北側には乾いた空気、南側には湿った空気がありますが、
通常の梅雨明けは、南側の湿った空気が梅雨前線を押し上げる形で起こります。
梅雨明けが近くなると、急に寝苦しくなるのはそのためです。


【入道雲は「不安定な夏」の証し】
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夏というと、砂浜や水平線、
そして青空に浮かぶ白い入道雲を思い浮かべますが、
実は「本当の夏空」では、入道雲はあまり現れません。
日本付近に夏空をもたらしているのは、太平洋高気圧ですが、
この高気圧がしっかりと日本付近を覆っているときは、
入道雲もあまり出現しなければ、夕立もほとんど起こりません。
特に「梅雨明け10日」という言葉があるように、
梅雨が明けてしばらくの間は、非常に安定した天気が続くことが多いのです。
入道雲は、太平洋高気圧が弱まったときや、
上空に寒気が流れ込んだときに多く出現します。


【都市化が真夏の夜をもっと暑くする】
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都市化が進むと、夜の気温が下がりにくくなる傾向があります。
草地や水面が減る一方で、コンクリートやアスファルトが増えると、
地上から放出される熱が増えるのです。
また、冷房機・自動車・工場などからの排熱が増えることも原因です。
これによって、冬の夜の冷え込みは弱くなるのですが、
夏の夜は気温が下がらないことによって、寝苦しさが増大します。
特に最低気温が25℃を下回らない日を「熱帯夜」と言います。


【秋は朝晩から訪れる】
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お盆休みを過ぎると、少しずつ夏は遠ざかり始めます。
まだまだ昼間はカンカン照りの暑さですが、
朝晩の気温が少しずつ低くなり、過ごしやすくなってきます。
真夏の天気を支配していた太平洋高気圧が勢力を弱め、
代わって大陸から乾いた涼しい高気圧が日本にやってくるようになります。
鳥の羽毛のような雲が空に現れれば、秋はもうすぐです。



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30、代役になる準備はできているか?
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ミュージカルの本場、ブロードウェイの練習場では、
主役級と全く同じ「歌・ダンス・演技」を、
フロアの片隅で練習している役者がいるそうです。
練習をしている役者は、その劇において端役を与えられているに過ぎない存在。
すでにキャストは完全に決まっているにもかかわらず、
また誰に強制されたわけでもないのに、どうしてそんなことをしているのか?
それは、何らかの理由で主演級の役者が交代しなければならないときに、
すぐに自分が代役として出られるように、準備をしているからなのだそうです。
人気俳優といえども、うかうか風邪も引いていられませんね。

気象キャスターの仕事は、実際に経験してみたところ、
ミュージカル俳優のような華々しい仕事ではないと思いましたが、
「ああいう仕事をやってみたい」と感じる人が多い点では似ています。

日本全国、あちこちの放送局にお天気キャスターはいますが、
全てのキャスターが、やがて降板するときが来ます。
そのとき、何らかの理由で立候補できる立場であったときに、
「私がやります」と言えるかどうか。

キャスターに向いている人は、「私がやります」とハッキリ言える人です。
理由は二つあると思います。
 ・人気のある職業なので、黙っている人には転がり込んでこない。
 ・自分の意見もハッキリ言えないようでは、
  「多くの人にものを伝える」という仕事には向いていない。

もちろん、「やりたいです。なりたいです。」と叫ぶだけではダメです。
そのための能力を磨き、準備することも大切でしょう。
気象キャスターに不可欠なのは、豊富な気象の知識です。
知識がないと、カメラの前で話すことができずに、
他の人が書いた原稿を丸読みするだけになります。

実は「気象業務法」を読めば分かりますが、
気象予報士の資格は、法的に「お天気キャスター必須の資格」ではありません。
では、マスコミに登場するキャスターのほとんどが有資格者なのはなぜなのか。
それは、資格に裏付けされた「知識量」が求められる時代だからです。

「能力」と「積極性」。この二つの両輪が上手く回転したとき、
自信を持って「私にやらせて下さい!」と言えるようになるはずです。




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31、「受験勉強日記」を作ってみよう。
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中学校や高校の定期テストで、猛勉強する友人がいました。
私と同じ野球部でしたので、普段は練習でヘトヘトになって、
とても勉強どころではないのですが、
試験前になり部活動が休止すると、一気に試験モードに切り替わるのです。
例えば、英語の試験対策で彼が使った方法が「教科書丸暗記」でした。
出題される単元の英文を全部覚えてしまうのです。

彼は記憶力が優れているのか、それとも暗記慣れしているのか、
毎回毎回の試験で、粛々と暗記を繰り返していました。
「これをやっておけば、単語の穴埋めも簡単にできるし、
 口で唱えながら覚えれば、1週間で間に合うんだ。」
そういって、試験中はほとんど睡眠も摂らずに勉強していました。
事実、彼は英語の試験で80点を下回ることはありませんでしたし、
他の教科の成績も良かったのです。

そんな人間性を無視した機械的なやり方なんて!と私は思いましたが、
後に読んだ野口悠紀雄さんの『超勉強法』という本に、
この英語攻略法が紹介されているのを見て、
同じような方法で勉強した人が他にいるんだな、と感じたことがあります。

さて、私のほうはといいますと、
丸暗記は面倒くさい、正攻法で勉強するのはもっと面倒くさい、
ということで、英語の試験で35点を上回ることはありませんでした。
部活動休止を良いことに、一人で山越えサイクリングをしていましたから、
他の教科もロクな結果が出ませんでしたが・・・。

・・・それはさておき、学校の定期テストならともかく、
入学試験や資格試験になると、いわゆる「一夜漬け」は通用しません。
そこで求められるのは、総合的な知識量です。
膨大な知識は短時間で習得できるものではありませんから、
大事なのは、いかにして勉強を継続できるかということですよね。
いくら奮起しても、その勢いが短時間で萎んでしまっては、
決してトータルで見た勉強量は多くなりません。

頑張る気持ちをどうやって維持することができるか。
その方法の一つが、「受験勉強日記」を作って公開することです。
ブログで日記を公開すれば、不特定多数の人が目にしますから、
うかうかサボっていられませんね。
また、自分から情報を発信することによって、
逆に読者の方からアドバイスを得ることもあるのです。

今、いくつかの「気象予報士受験」のブログが公開されています。
メルマガ読者の皆さんも「受験勉強日記」を作って、
公開されてみてはいかがでしょう?
もし、ブログを作成された方がいらっしゃれば、ご連絡下さい。
当メルマガでご紹介したいと思います。




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32、日本の気候 ~秋~
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【秋の長雨】
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秋と言えば、運動会や遠足など、野外イベントの多い季節ですが、
秋の前半である9月は雨の多い時期にあたります。
真夏に日本付近を覆っていた太平洋高気圧が勢力を弱め、
一方で、北からはシベリア高気圧が少しずつ力を強めてきます。
この二つの高気圧にできるのが秋雨前線で、
ちょうど梅雨のような天気がしばらく続くことになります。


【台風シーズン】
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8月から9月にかけては台風の上陸数が1年で最も多くなります。。
統計的には、この2か月で約2個の台風が上陸していることになり、
台風による、雨や風の被害を受けることが多いのです。
特に、秋になってからやってくる台風は、
夏にやってくる台風と異なり、日本付近で速度を上げるのが特徴です。
「まだ風が強くないから大丈夫」と思っても、
猛スピードで台風が近づいてくることもありますので、
台風情報に十分注視する必要があります。


【秋晴れ】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
長雨の季節が終わると、
日本付近は移動性高気圧に覆われることが多くなり、
晴れの天気が続きやすくなります。
昼間は暖かいのですが、晴れていると夜は冷え込みます。
湿度によっても異なりますが、気温が15℃を下回るようになると、
吐いた息が白くなってくるのです。


【紅葉前線南下】
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春の訪れが南からやってくるのに対し、秋の深まりは北からやってきます。
気温が下がる冬に備えて、葉を落とす木を落葉樹といいますが、
葉を落とす前に、紅葉という準備があるわけです。
北海道の大雪山系では、9月に紅葉の見頃を迎え、
その後、紅葉前線は南へ、標高の低いところへ進んでいきます。
西日本や東日本での紅葉は、11月下旬になることが多いようです。


【木枯らし1号】
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日本では、夏は南風が、冬は北風が吹くことが多くなります。
秋が深まるにつれ、次第に空気が冷たさを増す頃に、
強い北よりの風が吹くことがあり、これを木枯らしと言います。
木枯らしが各地で吹くようになると、
紅葉の季節を終えた山では、雪が積もるようになります。
麓から雪が積もっているのを初めて確認できたときを「初冠雪」といいます。




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33、将棋の習得で学ぶ「天気図の読み方」
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気象業務法第二十四条の二には、次のようなことが書かれています。
「気象予報士試験は、気象予報士の業務に必要な知識及び技能について行う。」

ここでいう「技能」を試す問題が、いわゆる「実技試験」です。
初めて実技試験に取り組んだ人の多くは、こう言います。
「時間が足りなかった。」
確かにそうなんです。私自身もそうでした。

でも実技試験では、あえて短時間で適切な答えを出さなければならないのです。
実技試験は、いわば実際に気象業務を行う上で直接に必要な技能です。
短期的な天気予報は、資料を手にしてから極めて短い時間で、
「現象の予想」を行わなければなりません。
「明日の天気予報を3日かかって予想した」では笑い話にしかならないのです。

実技試験において、問題が早く解けるかどうかは、
天気図を中心とする気象資料をどれだけ早く正確に読み取れるかがカギです。
では、どうすればいいのか?
「天気図を読むこと」は、将棋の習得に似ていると私は考えます。

将棋という盤上ゲームを習得するために最初に必要なことは何でしょうか?
どんな駒の種類があるのかを把握し、
それぞれの駒の動かし方について知ることですね。
「将棋には、王将・金将・銀将・桂馬・・・といった駒があり、
 例えば金将という駒は、前・横・斜め前のどれかに一マス進める。」
という知識を最初に勉強します。

天気図を読むこともこれと似ていて、
まず、天気図の中に登場する記号がどんな役割をするのか知る必要があります。
主な天気記号・等圧線・前線などの概念を把握することは、
天気図を解読していく上では不可欠なことです。

将棋において、駒についての勉強をした後は、
基本的なルールを把握していくのが大切なことです。
例えば「敵の陣地に入った場合は、駒を裏返すことができる」とか、
「二歩はダメ」「歩を打って詰めるのはダメ」などのルールです。

天気図でこれを例えてみれば、
「等圧線が込んでいると、風が強いことを示す」
「海から風が入り込むときは、天気が悪くなりやすい」
などが当てはまるでしょう。

将棋の基本ルールが分かってきた後は、
「定跡」を勉強することが大切なのではないでしょうか。
「金矢倉で守る」「棒銀戦法で攻める」「穴熊を決め込む」など、
将棋には多くの人が認める「定跡」が存在します。
やみくもに駒を動かすよりも、
定跡を習得し、それを生かしたほうが強くなります。

またまた、これを「天気図読み」に置き換えれば、
「顕著に登場する気圧配置」の勉強だと思います。
例えば、日本付近によく現れる気圧配置を見てみますと、
春なら、日本海低気圧・移動性高気圧
夏なら、梅雨前線・北東気流・太平洋高気圧
秋なら、秋雨前線・台風・帯状高気圧
冬なら、西高東低・南岸低気圧
という形で、ある程度のパターンが見られます。
これらの気圧配置を勉強しておくと、
似たものが天気図上に現れたときに、早くパターンを掴むことができるのです。

気象予報士試験に出題される天気図は、典型的な気圧配置(つまり定跡)が多く、
定跡を丁寧に勉強できれば、かなり問題が解けるようになるはずです。
天気図の精読ができれば、次第に速読もできるようになります。

昔は「天気図3000枚」という言葉がありました。
「3000枚天気図を書いたら一人前の予報官になれる」という意味です。
かつて天気図は「手で書くもの」だったのですね。
今はコンピュータが書いてくれますから、自分で書く必要はありません。
完成品の天気図をインターネットで好きなだけ見ることができます。
やる気のある人にとって、素晴らしい環境が整った時代になりました。




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34、気象情報は大きなビジネス
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もう、かなり前のことですが、
ある気象キャスターの方とお話をしていたときに、
こんな話題が出たことがあります。
「自分がいる位置の天気予報が携帯電話なんかに出ると、便利だな。
 移動すれば、自動的に表示される天気予報が変わるんだ。
 例えば、出張で福岡へ行ったときには、
 携帯電話の画面に福岡の予報が出る、という具合にな。」

それを聞いていた私は「そんなことできるのかね・・・」と思いましたが、
今、私が持っている携帯電話には、
場所の移動に伴って、自動的に当地の天気予報が表示されます。
そのキャスターと同じことを考えついた方たちが、
新しいビジネスとして、実用化されたのでしょう。

「天気予報をビジネスにする」というのは、不可能なように見えます。
なぜなら、テレビ・ラジオ・新聞などという媒体で、
ほぼ無料の形で、天気予報が流れているからです。

そんな中で、「177」の電話天気予報サービスを考案した人はスゴイ。
無料の天気予報が数多く存在しても、
新聞の天気欄は「情報の更新」という点で劣りますし、
テレビやラジオは、天気予報コーナーの時間まで待たなければなりません。
「今すぐ天気予報を知りたい」という人にとって、
「177」のサービスは、お金を払ってでも知りたい情報なのですね。

そして今、携帯電話の画面で天気予報を入手できるようになりましたが、
これを最初に考案した人も、素晴らしい発想の持ち主です。
各社が月額100円程度でこういったサービスを行っているようですが、
会員が100万人になれば、月額1億円の売り上げになるのですから、
これは大きなビジネスですね。

現在、多くの気象会社がさまざまな気象サービスを提供しています。
これからも無数の気象ビジネスが生まれるに違いありません。
明日の天気を気にする人がいなくなることは絶対にないのですから。





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35、雨を知らせる名曲
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先日、家族で百貨店の店内をうろついてきたときのことです。
妻が私に「今、雨が降ってきたんじゃない?」と言いました。
確かに今日の天気は下り坂で、店に入る前も厚い雲がたれ込めていましたが、
周囲に窓のないフロアで、今降ってきたことがなぜ分かるのか?
その答えは「店内のBGMで『雨に唄えば』が流れたから。」でした。

雨が降り出すと、百貨店ではいろいろな対応に迫られます。
全ての出入り口に傘袋を設置し、足下が滑りにくいようにマットを敷く。
商品によっては包装の紙袋の上から、ビニールを被せる必要もあるでしょう。
しかし、あからさまに「雨が降ってきたので・・・」と、
館内放送で指示を出すというのは、あまりにも野暮というもの。
そこで、往年のミュージカル映画の名曲を、さりげなく流すことによって、
窓の外の様子を知ることのできない従業員に対し、
空模様の変化を伝えているというわけです。

このエピソードは、客商売において、
いかに天気を気にしなければならないか、ということを示しています。
天気に特に注意を払う仕事として、
建設現場やレジャー施設を挙げる人は多いでしょうが、
むしろ、天気を気にしなくて良い業界のほうが少ないのかも知れません。

かなり以前の話ですが、私は超短期アルバイトで、
食べ物の展示博覧会のスタッフをしていたことがあります。
野球場のような広い会場に、世界中から集めたご馳走が並んでいたのですが、
初出勤の私に渡されたのは、大量の「ペット用トイレシート」でした。

私が面食らっていると、常勤スタッフが展示場へどんどん歩いていきます。
そして、生鮮食品を冷やし続けている大型冷蔵庫の裏へ回ったかと思うと、
冷蔵庫の下に置かれている大きな洗面器を取り出して私に渡したのです。
「これ、こぼさないように持っていけ。」
洗面器の中に入っていたのは大量の水でした。

24時間休まず働いている冷蔵庫からは大量の水が出ます。
その水はこぼれないように、洗面器に溜まるようになっていて、
洗面器が溢れて、展示場の床が水浸しになってしまわないように、
定期的に水を捨てる必要があるのです。
つまり、私は「水捨て要員」としてアルバイトに雇われたわけですね。
「ペット用トイレシート」は、何らかの理由で水をこぼしてしまったときに、
すぐに拭き取るための道具です。
さすがに吸収力は抜群でしたが、このような用途で使われているとは、
メーカーさんもご存じないかも知れませんね。
「雨の日なんかは、かなり頻繁に水抜きをしないとダメなんだ。」
と常勤スタッフの方は仰っていました。
空気中の水蒸気が増えるために、溜まる水の量も多くなるからです。

私たちが地球上で暮らしている以上、
天気と生活は切っても切れない関係にあると言えるでしょう。
ちょっとした身近な出来事も、気象を考慮したものが無数にあるはずです。
そんな視点で、天気を見てみるのも面白いですよ。




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36、肌感覚が大切
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先日、私が主宰する「気象予報士塾」の懇親会を行いました。
お集まり下さった十数人のうち、男性は私を含めてわずか3名。
残りは全て女性の受講生でした。
実は受講生全体から見ても女性が圧倒的に多いのが、当塾の特徴なのですが、
「なぜこれほどまでに女性が多いのか」が、宴席でも話題に上りました。
確かに試験会場での顔ぶれを見てみても、
以前に比べて、女性の受験者が多くなった印象を受けます。

「テレビで活躍する女性キャスターが増えたからだ」とか、
「女性のほうが男性よりも自分に投資する人が多いのだ」など、
いろいろな理由を挙げることができると思いますが、
「女性のほうが、男性よりも気象と生活が密着しているからだ」ということも、
見逃してはならないことだと私は思っています。

四季の移り変わりがハッキリしている日本において、
女性は男性よりも、天気の変化を敏感にとらえているはずです。
さほど大きな変化が見られない紳士服売り場とは対照的に、
婦人服売り場は、常に季節の変化を意識した商品が並べられています。
5月にもなると、目にするのは夏物の服ばかりです。
また、化粧品コーナーをのぞいてみますと、
各社が競うようにして、日焼け止めクリームを販売しています。
男性である私が紫外線を気にするときといえば、
山登り(標高が高くなると紫外線が強くなる)のときくらいでしょうか。

冷え性を気にされるのも女性のほうが多いでしょう。
また、暑い時期に汗をかけば、化粧くずれが気になるでしょうし、
冷房による足もとの冷えを訴える方も多いはずです。
冬になれば、乾燥や寒さによる、
肌のかさつき・手荒れに悩む方も少なくないでしょう。
洗濯物を干すときに、天気が気になるのは言うまでもありません。

私も含めて男性は気象状況を「数値データ」で判断しがちであるのに対し、
多くの女性は自らの肌感覚も敏感に取り入れているように思えます。

詳細な観測データやコンピュータによる数値予報が、
天気予報に不可欠なものとなって、すでに久しくなりました。
極端なことを言えば、データさえ揃っていれば、
地球の裏側の天気予報でさえ、密室のスタジオから伝えることは可能です。
しかし、その予報を受け取るのが生身の人間であることには、
今も昔も変わりありません。
いつの時代になっても、天気予報に携わる人は、
「肌感覚」を忘れないでほしいと思います。




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37、何かを選ぶことは何かを捨てること
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昼間の日差しが強すぎる季節になると、夜の散歩が快適です。
しっとりとした空気には、新緑の香りが混ざっていて、
歩いているだけで気持ちの良いものです。
先日も夜9時過ぎに、近所をウロウロしていますと、
闇の向こうに明々と輝くライトがいくつも見えました。

ライトの下にいたのは高校球児たちでした。
何度も甲子園出場経験のある、有名な強豪野球部です。
日が沈んでから、もう何時間も経っているというのに、
泥まみれのユニフォーム姿で、バットを振ったり、
ボールを打ったりしていました。

さすがに、帰る支度をしている部員もいましたが、
家に着くのは何時になるのだろうかと想像しつつ、
私の高校時代と思い比べていました。

私が在籍していた野球部では、練習は夕方の6時まででした。
「6時までに下校しなければならない」という規則があったからですが、
これでは平日の練習時間は2時間程度しか確保できません。
それでも私は「なんてキツイ練習なんだろう」と思っていましたが、
結果は「夏の甲子園予選-すべて初戦敗退」でした。
練習量と野球の実力は、必ずしも比例するわけではないでしょうが、
少なくとも、強豪校はそれくらいの練習を重ねているわけです。

高校在学中に、気象予報士試験に合格した私は、
周囲から「勉強も野球もできるスーパー高校生だったのですね」
と言われることが少なくありませんが、実体は異なります。
弱小野球部であったことはお話のとおりですし、
勉強が良くできたわけでもありません。
気象予報士試験のために、午前3時から起きていたのは事実ですが、
不足していた睡眠時間は全て学校の授業中に補っていたのです。

もし、私が「甲子園出場」もしくは「東大合格」という目標を立てていれば、
高校在学中に気象予報士試験に受かることなど、絶対になかったでしょう。

どんな人間でも、1日に与えられている時間は「24時間」です。
いくら「効率」や「時間管理」に気を配っても、
1日が30時間になったり、40時間になったりはしません。
つまり、「1日にやれること」というのは概ね限られているのです。
風呂に入りながら歯を磨くことくらいは誰にでもできますが、
仕事を持つ人が、会計と法律の勉強を両立するのは至難の業でしょう。

何かを選択するというのは、同時に何かを捨てることでもあります。
「あれも、これも」と欲張っていると、全てが中途半端になるかも知れません。
どうしても乗り越えたい壁があるときは、荷物を捨てるのが一番だと思います。





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38、勢いだけでは続かない
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高校から大学へ進学する頃に、本屋でアルバイトをしていたことがあります。
本屋での仕事といいますと、レジ打ちや本棚の整理などが思い浮かびますが、
それ以外に重要な仕事として、「返品の梱包」がありました。
最新号が出版されたために古くなってしまった雑誌や、
売れなくなってしまった書籍を段ボールに詰めて、返送するのです。
何しろ「本」ですから、ものすごく重い。
腰を痛めないように、慎重に段ボール箱を運んでいた記憶があります。

本屋でこのような仕事をしていただけに、
「どんな雑誌がどの程度売れているのか」ということは、自然と頭に入りました。
中でも印象に残っているのは、NHKの語学雑誌です。
ふつう、雑誌というものは売れ行きが極端に変動することはないのですが、
語学雑誌の場合、4月号だけが特によく売れるのです。
4月から番組がスタートするからですね。

ところが、5月・6月になると、売れ行きは落ちてきます。
理由はお察しのとおり、勉強に挫折する人が出てくるからです。
各語学講座の放送時間は20分ほどだったと思いますが、
これを継続するのは、かなり大変なことなのですね。

私も5年ほど前に「ロシア語講座」というのを始めたことがあります。
たしか、バルト三国へ旅行に行きたくなり、
「そのためにはロシア語ができたほうが良かろう」ということで、
ラジオ講座の雑誌を買ったのです。
しかし、英語さえもできない私にロシア語が身につくはずもなく、
結局、2冊目の雑誌を買うことがないまま、勉強は終了しました。
未だにロシア語のアルファベットも分かりません。

6月にもなると、新年度に始めた新しいことが徐々に新鮮さを失い、
行き詰まりを見せ始める時期でもあります。
しかし、語学に限らず、あらゆる勉強をものにできるかどうかは、
「続けられるかどうか」にかかっています。
もちろん、気象予報士試験も同じことで、
合格率4%の試験を突破する方法は、継続なしではあり得ません。
大切なのは一発奮起ではなく、着実な持久力なのです。

挫折することなく勉強を続けるコツは、ペースを落としてもいいから、
「分からない部分」を「分かる部分」に変えることです。
スポーツでも勉強でもそうですが、上手くできるからこそ好きになるのです。
勉強を好きになるためには、勉強ができるようになるしかありません。




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39、耳に残る話し方とは?
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「気象キャスターになるためには、話し方が上手でないとダメなのですか?」
このように質問されると、返答に困ります。
ある意味ではYesであり、また別の意味ではNoでもあるからです。

「立て板に水を流す」という諺があるように、
一般によどみなく話せる人を「話し上手」と見る傾向があります。

こういった話し方は、確かに聞き心地が良いものですが、
あとから振り返ってみると、情報が何も頭に残っていないことがあります。
気象キャスターにとって、最も大切なことは、
「リスナーや視聴者の頭に重要な情報をどれだけ定着させるか」です。
内容が記憶に残らない話し方など、キャスターとして失格ではないでしょうか。

もちろん、話し始めに「えー」とか「あー」とか出てしまう話し方は、
聞く側にとっても、耳障りというものですが、
「流暢」であることに、それほど拘らなくて良いと私は思います。

普段の生活においてもそうですが、
「分かりやすい話し方」のできるときというのは、話の内容を十分に咀嚼し、
内容の重点を押さえられているときではないでしょうか。

例えば、何度も見た大好きな映画の話を人にするときなら、
「重要な場面」や「カギとなる台詞」は十分に分かっています。
その部分を説明するときは、大きな声でゆっくり話したり、
わざと話の間を少し大きく置くことによって聞き手を注目させたり、
言葉を少し変えて同じ意味合いの説明を繰り返したりするでしょう。
こういったことは話すことを職業にしている人だけでなく、
多くの人が無意識に行っていることなのです。

しかし、単に話す内容を事前に丸暗記して、はき出すだけの場合は、
こういったことを行うことはできません。
どの部分が話の重点であるか、把握できていないからです。
仮に流暢に話せたとしても、内容が聞き手に残りにくくなります。

気象キャスターになるために、自分が話し上手かどうかを、
あまり気にされる必要はないでしょう。
誰でも自分がよく知っている分野については、熱っぽく語りますよね。
つまり、気象キャスターにとって大事なのは、
その日に話す内容をいかに自分のものにできるか、だと思います。




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40、質問こそが理解への近道
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先日、かつて他塾で教鞭を執っておられた方と、
情報交換をする機会に恵まれました。
「どんな生徒さんが短時間で実力を伸ばすか」という話題が上ったのですが、
お互いの印象がピタリと一致しました。
「やはり、質問の多い人は伸びますね。」ということです。

その理由を私なりに解釈してみますと、次の2つを挙げることができます。
  1,勉強に励むからこそ、質問量も増えるから。
  2,質疑応答のやりとりで、理解が定着するから。

まず、1です。
なんとなく「質問の少ない人・全くしない人」は、
「勉強内容が全て理解できている人」であるように見えます。
しかし実のところ、そうでない場合が多いのです。

といいますのも、気象予報士試験に限らず、
勉強というのは、進めるほどに分からないことが増えるものだからです。
逆に、全く勉強をしなかった場合、
分からない部分(正確には分からないと感じる部分)は0です。
勉強に励んでいる人ほど、分からないことを多く抱えているわけで、
質問の数も増えるというわけです。

続いて、2です。
勉強には「知識を収集する作業」と、
「知識と知識を結びつける作業」があるのですが、
質問に来られる方の多くは、後者の点で引っかかりを感じています。

具体的な例を出してみますと、
  知識A:台風の中心付近は下層から上層まで暖気で構成されている。
  知識B:暖かい空気は冷たい空気よりも密度が小さい。
という2つの知識を上手く結びつけることができてこそ、
「台風(熱帯低気圧)の上層では、高気圧循環になっている」
ということが理解できるわけです。

講師の話を一度聞くだけで、全てを飲み込める人はごく僅かです。
ほとんどの人は、飲み込めていない部分や誤解している部分を、
質疑応答によって修正し、消化していく必要があるのです。

「なるほど!」「そうだったのか!」と納得できるのは、
知識と知識が上手く結びついた瞬間です。
「分かるほどに勉強が楽しくなりました!」との声を聞きますが、
これこそが学ぶことの楽しさ(=知的快感)ではないでしょうか。




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41、ライバルはわりと少ない。
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「気象キャスターの募集って、ぜんぜん見あたりませんね。」と、
何人かの方から尋ねられました。
確かに「テレビの天気キャスター募集中」というような情報は目にしません。
その理由は何なのでしょうか?

 1,募集そのものが少ないから
 2,公募を行うとは限らないから

まず1ですが、日本国内の放送局数が限られていて、
天気予報番組の数に大きな変化がない以上、当然のことと言えます。
人気のあるキャスターは、辞めずに続けるでしょうから、
そのぶん新規参入も難しいというわけです。

それから2については、別に気象キャスターに限った話ではありません。
「番組出演者を公募で選ばねばならない」という決まりはないのです。

こんな話をしていると、「気象キャスターになんて、なれるわけがない」
と思われる方も多いことでしょう。
でも、そう思った人は、それで終わりです。

例えば、テレビで活躍している俳優やタレントの全てが、
公開オーディションやタレント養成学校を経てきたのでしょうか?
もちろん、有名なオーディションで選ばれた人もいるでしょうが、
徒手空拳で頑張っているうちに、夢を手に入れた人も少なくないはずです。

「きちんと体裁の整った公開募集」に慣れすぎていませんか?
この傾向はインターネットが普及してから、さらに強まったように思えます。
例えば、就職活動サイトに登録されている企業だけが、
就職先の候補だと錯覚してしまいます。

キャスターであれ、俳優であれ、志望業界であれ、
本気で目指しているものがあるならば、受け身の情報だけで満足できません。
必ず自分から何か動いてみようとするはずです。

気象キャスターは多くの人が憧れる職業です。
しかし、そのほとんどの人は「公募が見つからない」というだけで、
簡単に諦めてしまうことでしょう。
つまり、本気で目指している人は案外少ない、これが私自身の感覚です。
この最初の関門で、脱落してしまう人がいかに多いことか。

最後にある塾のお話を。
その塾は、無料で授業見学ができることを、あえて公表していません。
『「見学したい」と自ら願い出る人にだけ、授業を見てほしい』からです。




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42、気象予報士の資格でメシが食えるか?(前編)
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「気象予報士の資格で転職できますか?」多くの方からいただくご質問です。
気象予報士試験の受験指導を行っている私の立場からすると、
「もちろんです。未来は明るいですよ!」とでも言えば良いのでしょうが、
実際のところは、必ずしもそうとは言えない部分があります。

まず、これは大半の資格に言えることだと思いますが、
「資格を取得しただけでメシが食える」ということは、ありません。
例えば、駅のホームにある立看板に目をやると、
いかに医院・歯科医院の看板が多いかが分かります。
私の住んでいる町は、人口10万人足らずの地方都市ですが、
それでも徒歩圏内の病院・医院は、軽く10件を超えるのです。
(加えて歯科医院が5~6件はあると思います。)
医学部で6年間の勉強を続けた上で、やっと取得できる医師免許でさえ、
「開業しただけで生活ができる」とは限らないのです。

医師免許と並んで、超難関資格といわれる弁護士資格であっても、
司法試験制度の改革によって、今よりも有資格者は増える見通しです。
つまり、それだけ同業者の中での競争が激しくなることを意味します。

机の上での勉強が得意な人ほど、、
「試験に合格して資格を取得すれば、仕事は向こうからやってくる」
と考えてしまう傾向にあります。
資格が「黄門さまの印籠」のように見えてしまうのですね。
しかし現実を見てみますと、いわゆる社会的地位の高い資格業務であっても、
それを仕事(=商売)として行うためには、泥臭いこともしなければなりません。

例えば、私が知っている行政書士さんは非常に営業熱心です。
個人で事務所を構えているにもかかわらず、
サイトをいくつも作って、あらゆる種類の顧客を獲得しようとしています。
行政書士が作成できる書類は1万種類を超えると言われますから、
仕事の幅は非常に広いと言えます。
もちろん、行政書士の資格を取っても、
寝転がっているだけでは、一件の仕事依頼も入ってこないでしょう。

私の場合、17歳で気象予報士の資格を取得しました。
「現役高校生の気象予報士」なんて、いかにも話題性がありそうだ、
と思ったのは自分だけ。
誰も取材に来ませんし、誰も声をかけてくれませんでした。
初めて気象予報士仲間に出会えたのは、
自分で申し込んだ財団法人気象業務支援センターによる講習会の場でした。
結局、自分が動かないと、何も変わらなかったのです。





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43、気象予報士の資格でメシが食えるか?(後編)
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気象庁のホームページによりますと、
現在、全国に5629人もの気象予報士がいます。(2006年3月31日現在)
このうち、実際に資格を生かして仕事をしている人はどのくらいなのか?
データが手元にないので、正確なところは分かりませんが、
気象会社の数などを考えてみても、おそらく半数を下回るのは確実でしょう。

もちろん、気象の勉強は趣味としても非常に面白いものですから、
最初から「個人として楽しむため」と割り切って、
試験に臨まれる方も決して少なくはありません。
しかし、そういった人々の割合を考慮しても、
弁護士や公認会計士・医師などと異なり、
「有資格者のプロ率」が低いのが、気象予報士なのです。

気象予報士の資格を仕事に生かしている人の中で多くを占めるのが、
気象会社の社員(気象会社と契約を結んで仕事をしている人も含む)です。
しかし、資格を持っているからといって、
気象会社にスムーズに入社できるわけではありません。

当たり前の話ですが、気象会社も営利を目的とする組織である以上、
「天気が好き」「気象に詳しい」だけで、入社試験に合格するとは限りません。
会社員として有能であると経営者側から判断されることが、
入社の条件であるのは、他の業界と全く変わらないはずです。
「気象予報士資格があれば業界へフリーパス」ということはありません。

・・・とまあ、気象予報士を取り巻く状況を書かせていただきました。
前回と今回の記事をお読みになって、「やっぱり無理だ~」と思われる方は、
どうぞ、気象予報士を目指すのをお止め下さい。
本気で気象予報士になりたいという人は、困難な状況を目の前にしても、
夢の実現に向かって走り出しています。
何者も阻止することができないほど、燃えています。
そんな方にこそ、気象予報士試験に合格して活躍してほしいと思うのです。

最後にある業界関係者から私が直接に聞いた言葉を紹介しておきます。
「気象キャスターの世界は、いつでも人材不足なんです。
 目指したい人には、どんどん飛び込んできて欲しいですね。」





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44、難問は少ない。
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気象予報士試験の後は、試験勉強に関するご相談をよくいただきます。
中でも特に目立ったご質問は、
「学科試験で難問が多く出題されたので、太刀打ちできない。
 どんな方法で勉強すれば良いのか?」という内容です。

それに対する私の回答は実にあっさりしていて、
「過去問題を徹底して勉強すれば、合格ラインに届きます。」と申し上げます。
これが合格の近道であると、私は考えているのです。

学科試験の問題を分析してみますと、大きく3つに分類できます。
 1,過去に出題された問題とほぼ同じ内容の問題
 2,過去に出題された問題を少しひねった問題
 3,過去にほとんど出題例のない問題

1のタイプが特に多いのは、一般知識試験の「法規分野」です。
法規分野では、何度も出題される条文がいくつもあるのです。

2のタイプもわりと多いと言えるでしょう。
例えば、第26回試験における一般知識試験の問5などは、
第19回試験における一般知識試験の問8を勉強していれば、
十分に対応できるであろう問題だと思います。

実のところ、気象予報士試験で出される問題は1か2がほとんどです。
3のタイプとして、第26回試験における一般知識試験の問10、
第25回試験における一般知識試験の問11などが該当しますが、
全体から見れば、その数は少ないと言えるでしょう。

「難問が出題された」「応用問題が多かった」と言う方の多くは、
たいていの場合、次のいずれかのケースに該当します。
 1,基礎的な勉強が足りていない。
 2,過去問題の演習不足。

基礎的な勉強が足りていないと、試験で頭を抱えることになるのは自明です。
例えば、「温位」という用語を、
「ある空気塊を1000hPa面にもってきたときの絶対温度」
と丸覚えしているだけでは、試験対策として十分ではありません。
特に「大気の熱力学分野」では、用語の概念を正しく把握しているかどうか、
あらゆる角度から問題が出されます。
「暗記」ではなく「根本的な理解」が試されているわけです。

また、過去問題の演習は試験対策に欠かせません。
少なくとも過去5年(10試験分)程度の試験には、取り組んでおくべきでしょう。
(注、専門知識試験の場合、技術の進歩や制度の変更があるため、
 過去の正答が現在も常に正しいとは限りません。この点は注意が必要です。)
もちろん、ただ単に「過去問題をやった」だけでなく、
全ての問題において、他人に説明できるくらいまで勉強することこそ、
本当の意味での「試験勉強」であると私は思います。

過去問題の演習が大事だというのは、気象予報士試験に限らず、
多くの資格試験にも言えることのようです。
毎回の試験で、常に一定レベルの合格者を出すことが、
試験主催者の目的であるということを考えれば、
過去問題演習で対応できない問題ばかりを出題するわけにはいかない、
という結論になるはずなのです。




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45、自由とは「誰も働きかけてくれない」こと。
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いよいよ本格的な秋を迎えつつある今の時期、
修学旅行で奈良を訪れる中学生や高校生をよく見かけます。
最近は10人程度のグループ単位で行動する学校が多いようですね。
言葉のイントネーションが関西弁と異なるため、
話をしているのを聞いていると、修学旅行生だとすぐに分かります。

こうした姿を見て思い出すのが、私自身の高校生時代。
気象予報士試験に合格して間もない頃に、
研修旅行(修学旅行のことです)で沖縄へ行きました。
本州とは異なる沖縄の風景が素晴らしかったことも良い思い出ですが、
一番よく覚えていることは、夜遅くまで友達同士で騒いで、
見回りの先生にどえらく怒られたことですね。

学校行事としての旅行ですから、生徒の自由は制限されています。
消灯の時刻は決まっていて、夜中にトランプをすることはできません。
男子生徒が女子生徒の部屋に忍び込んで良からぬことが起こらぬよう、
男子用客室と女子用客室は、階ごとに分かれていました。
ましてや宿の外へ出て、歓楽街に繰り出すことなどもってのほか。
当たり前です。高校生ですからね。

最もツライ思いをしたのは、友人のK君かも知れません。
今だから言えますが、18歳にして既にニコチン中毒だった彼は、
4日間における旅行期間中の「禁煙」が何よりもキツかったとのこと。
関西国際空港にて解散後、真っ先に空港のトイレに駆け込み、
一気にマールボロ4本を立て続けに吸ったそうです。

規則で固められた修学旅行は窮屈です。(楽しかったですけど)
行きたい場所へ自由に行けて、夜遅くまで好きなだけ夜更かしして、
思いっきり羽目を外した旅行がしたいものだ!、と当時は切望したものです。

そんな願いは、わりと早い時期にあっさり叶いました。
大学生になって友達同士で旅行へ行けば、
「早く寝ろ」とか「酒はダメ」とか「パチンコするな」とは言われません。
そして望み通り、大いにいろいろ楽しんだのですが、
最近は「修学旅行みたいなのも良いな」と思うようにもなりました。

例えば深夜、わずかな懐中電灯の明かりを頼りにして、
布団の上で密かに繰り広げられる「賭けトランプ(1回50円)」は、
夜回りをしている先生の存在におびえながら行うからこそ楽しいのです。
「土産に○○円使って、菓子に○○円使って・・・」と頭を悩ませながら、
最大限に楽しめるお金の使い方を模索できるのも、
生徒の所持金額が決められているからですね。

自由の少ない環境に身を置かれると、「自由になりたい」と感じるものですが、
「自分自身に対し、何の強制力も働かない状態」というのは、
ある意味で、なかなか厳しいことではないかとも思います。

私は高校球児だった頃、真夏の炎天下でも走り回っていましたが、
これは野球部という組織に所属していたからこそ、
厳しい監督と、怖い(理不尽な?)先輩がいたからこそ、できたことです。
「高校時代と同じ内容のトレーニングを自主的にやれ」と言われても、
とてもやり遂げられるものではありません。

勉強だってそうでしょう。
本屋さんで有名大学の赤本を手に取って見てみると、
手も足も出ないような問題がビッシリと記載されています。
でも、これを解いて大学に合格する高校生は何万人以上もいるわけです。
その素晴らしき学力の原動となったものには、
「将来への夢」「向学心」といったキレイなものもあるでしょうが、
「勉強せざるを得ない環境だったから」という人も少なくないでしょう。

大人になると、「イヤなものはイヤ」と言えることが多くなります。
仕事としてではなく、「興味があるから」というだけでやっている場合、
いつでも止めることができる「自由」があります。
それは確かに良いことではありますが、
同時に「強制力」が働きにくいことも意味します。
本当に何か結果を残したいことであれば、
自らを「強制力の働く環境」に身を置くことも大切なのかも知れません。





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46、最大限の夢を描こう。
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前回は「自由を奪うことで試験勉強はうまくいく」というお話をしましたが、
自分の夢や目標に対しては、思いっきり自由であるべきだと考えます。
「富士山ほど願って、蟻塚ほど叶う」という言葉があるように、
描いた夢以上のことは実現しないと思うからです。

「蟻塚ほどしか叶わないなら、願うことなどやめておこう」
と言いたいのではありません。
「大きく叶えるために、できるだけ大きく願おう」と言いたいのです。

「気象キャスターという仕事が自分に向いているのかどうか分からない」
と考える人は、気象キャスターに向いていません。
私の周りだけでも「我こそが気象キャスターに!」という方がたくさんいます。
夢を描くことに躊躇している人が、そういった人に敵うはずがないでしょう。

だいだい「キャスターは自分には不向きだ」と思ってしまえば、
さっさと途中で辞めて、方向転換すれば良いだけのことです。
何を隠そう、私自身がそうでした。

6年あまり、放送現場で仕事をしてきましたが、
最終的に職を辞することになった理由の一つは、
「これは自分には向いていない」と感じたことです。
「6年もやってきて、分からなかったのか?」と言われそうですが、
事実そうだったのですから、仕方がありません。

長い間、出演させて下さった番組には申し訳なかったのですが、
降板を申し入れ、勤めていた気象会社も退職しました。
そして、「気象キャスター・気象予報士を目指す方を支援したい」
という思いから気象予報士塾を開業し、今に至っています。
今の私は「やはりキャスターよりも講師のほうが自分には合っている」
と感じていますが、気象報道の現場で勤務していたことが、
今の講師業に大きく役立っていることも、これまた事実です。

私がそうだったように、価値観は不変ではありません。
だからといって、最初から夢に挑戦することを諦めるべきでないでしょう。
目標の軌道修正など、後からいくらでもできますし、
チャレンジすること自体が後々どんな形で役立つか分からないからです。





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47、協力し合える仲間はいますか?
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私が主宰する塾では、2か月に1回程度の割合で懇親会を開いています。
難関試験を突破するには、一人で挑戦するよりも、
仲間がいたほうが良い結果を生み出しやすい、と思うからです。

ここで言う「仲間」とは、単に馴れ合うだけの仲間を意味するのではありません。
「仕事が忙しかったから、勉強時間が確保できなかったんだよね~。」
「問3と問7と問11さえ合っていたら、一般知識は合格してたんだけどな~。」
まあ、そういうのも必要なのかも知れませんが、
私は「教え合う仲間の存在」こそが大切だと考えているのです。

気象予報士試験には、暗記しなければならない内容よりも、
理解しなければならない内容のほうが多いのです。
どんな試験でもそうだと思いますが、
試験主催者側が合格させたいのは「本当に理解している受験生」であり、
「丸暗記で無理やり突破しようとする受験生」は落としてしまいたいはずです。
問題を作成するときも、それを考えて作っていることでしょう。

そこで単純暗記ではなく、理解しながら勉強を進めていく必要があるわけですが、
一人で勉強していると、「分かったつもり」になっている場合がよくあります。
長い期間にわたって勉強しているにもかかわらず、
なかなか合格できない人は、この状態を疑ってみる必要があります。
特に難しい事柄に対しては「妥協」が生じるため、
知らず知らずのうちに「まあ、こんなもんでいいか」となってしまうのです。

例えば「空気塊の定圧比熱は定積比熱よりも値が大きい」という、
大気の熱力学における決まり事があります。
これを丸暗記しているだけでは、実戦であまり役に立ちません。
自分が本当に理解できているのか、それが明確に分かるのは、
ズバリ!本試験で問題が出されたときです。

・・・試験に出されてからでは遅いですね。年2回しか試験ありませんからね。
もっと早く気づく方法は? ハイ、あります。
それは、「なぜ空気塊の定圧比熱は定積比熱よりも値が大きいのか?」と、
他人から質問されたときなのです。

ここで納得させられるように回答できればOK!なのですが、
質問者は「分かりたい」と熱望していますから、
スッキリ納得できない部分については、容赦なく突いてきます。
「そもそも比熱って何だ?」「定圧比熱と定積比熱の違いは?」
「本には定容比熱って言葉も載っていたけど、どういうこと?」
これらに対してキチンと答えられないとき、
自分自身の勉強が中途半端であったことに気がつくのです。

私が初めて「教える側」に立ったのは、進学塾講師の仕事を始めたときでした。
「他人に教えねばならない」という立場に立って初めて気づいたのは、
「まず自分が分かっていないと教えられない」ということです。
まさかイイカゲンなことを教えるわけにもいきませんから、
教えねばならない部分については必死に勉強することになります。
それが結果的に「教える側」の試験勉強として役立つわけです。
常に「教え合う」という環境に身を置くことで、
勉強に対する妥協を減らすことができます。
そう考えると、教わって得をする「教えられる側」よりも、
「教える側」のほうがメリットが大きいとも言えるかも知れません。




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48、価値観は遣ったお金に表れる。
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以前に、ある気象予報士の方から話を聞いたとき、
そのお金の遣い方に驚いたことがあります。
酒・タバコには、ある程度のお金を遣うものの、
服装はいつも同じ・車は持たず・ギャンブルもやらず・・・という人で、
「給料のかなりの部分は残る」らしいのです。
そんな堅実な方がこっそり教えてくれた大盤振る舞いとは、
「気象衛星ひまわりの画像受信システム」を個人で購入されたことでした。

・・・ピンとこない読者もおられると思いますので、少し説明します。
「気象衛星ひまわりの画像」というのは、人工衛星が撮った「雲写真」のこと。
テレビの天気予報でお馴染みですね。
インターネットが非常に普及した今であれば、
世界中の気象衛星が撮影した写真をリアルタイムで入手できますが、
今から10年前以上昔であれば、それは非常に困難なことでした。
大学などの研究機関やテレビ局・気象会社など、
一部の限られた人だけが入手できる資料だったのです。

しかし、個人がリアルタイムで衛星画像を手に入れる方法もありました。
それが先ほどの「気象衛星ひまわりの画像受信システム」です。
衛星が撮影した写真は、電波によって地上に送信される仕組みになっており、
専用の受信設備があれば、個人でも電波を受信して画像を入手できるのです。

受信機器とパラボラアンテナなど一式で、約200万円!!
私も子供の頃から気象が好きで、天気図などを書いていた少年ですから、
分からないでもありませんが・・・、しかし驚きました。
クルマも200万円くらいするものがありますが、
気象衛星受信機は人を乗せて走りません。雲の写真が写るだけです。

よく「その人の友達を見ることによって、その人なりが分かる」と言いますが、
「その人が何にお金を遣っているか」というのも、
人物像を映す鏡であると思います。
200万円を衛星受信機につぎ込むことができるのは、
それだけ気象を愛しているということでもあり、カッコイイことです。

私の場合は「本」です。
単体としては安いものの、数が多いため、
合わせた金額はおそらく300万円にはなるのではと思います。
大学時代の4年間で約1000冊の本を読みましたが、その95%以上は買った本です。
チラシであれ、常に何かを読んでいないと落ち着かない性格を考えると、
私の価値観・人間性が、遣ったお金に表れていると言えます。

以前に、ある新聞記事で読んだのですが、
ある有名な気象キャスターさんは、気象予報士の資格を取るのに、
予備校の費用など、およそ100万円を遣われたそうです。
(私は独学でしたので、受験料を含めて10万円もかかりませんでした。)

100万円つぎ込んだから、気象予報士試験に合格するとは限りませんし、
100万円つぎ込んだから、気象キャスターになれるとは限りません。
しかし、この方が100万円を気象の勉強に遣わなければ、
おそらく全く別の人生を歩んでおられたのではないでしょうか。

皆さんは何にお金を多く遣っていますか?
強く意識することなく、自然にお金をつぎ込むことのできるものこそ、
最も自分が好きなものであるに違いありません。




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49、「気象」は、21世紀の必修科目だ!
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「地学の授業」や「気象予報士試験」ばかりが気象の勉強ではありません。
もちろん、単位や合格を目指して頑張ることも大切なことですが、
そういったものが無かったとしても、やはり私は天気の勉強をお勧めします。
「勉強をしておくと何かと得なことが多いですよ」と思うからです。

気象の勉強をする目的は何でしょうか?
「自分だけのオリジナル天気予報を作ってみよう」ではありません。
気象予報士制度が始まって、とかく「独自の予報」が着目されがちですが、
現在の天気予報は、全世界で観測した膨大なデータをもとにして、
スーパーコンピュータが計算して作っています。
観測網もスパコンも持っていない一個人が、
本当の意味での「独自の予報」を作ることは、不可能だと私は思っています。

私が気象の勉強をお勧めする目的は、勉強をすることによって、
「気象庁や気象会社が提供する情報を最大限に使いこなそう!」ということです。
気象の勉強をしたほうが、気象の情報の有用性が分かるので、
より的確に使うことができるのです。

例えば、携帯電話でウェブ画面を見る方がここ数年で増えましたが、
「雨雲レーダー」の画像をご覧になった方は、どれくらいおられるでしょう?
これを見ると、雨雲がどの地域にあるのかが一目で分かります。
最近の携帯電話の画面は解像度が良く、
数センチ四方の小さな画面でも鮮明に映るのです。
こういった情報を上手く活用できれば、雨に対して能動的な行動ができます。
例えば、「今、雨雲の隙間に入った。30分は止み間がありそうだから、
今のうちに外へ出て用事を済ませておこう。」といった具合です。

また、天気を知ることは「自分の命を守ること」でもあります。
これは決して大袈裟な表現ではありません。
登山で吹雪、海水浴で高波、ゴルフで雷、キャンプで夕立。
楽しいはずのレジャーが、一転して悲劇を生み出すことがあるのです。
確かに、現代の高度な予報技術を駆使しても、
「何時何分にどこで気象災害が起こるか?」を予測することは不可能です。
しかし「気象災害が起こる危険度がどの程度あるか?」については、
充分に予測することが可能になってきました。
気象の勉強をすることによって、
事前にどんな情報に着目すれば良いのかが分かるようになります。
的確な情報を正確な知識によって判断することで、
自分の命を守ることにつながるのです。

気象の勉強をし、1か月~半年先までの長期予報を活用することで、
投資に役立つことがあるかも知れません。
小豆やトウモロコシといった商品先物相場において、
生産地の天候が値動きに影響することは大いにあるでしょう。
また、2005年にアメリカを襲ったハリケーン「カトリーナ」の影響で、
メキシコ湾岸のある製油所の稼働率が低下したことが、
原油高騰の一因になったとも言われています。

ネットで株式の売買を趣味にされている方であれば、
天候が業績に影響する企業が少なくないことに気づくでしょう。
猛暑であれば、エアコンやビールなどの売れ行きが良くなりますし、
厳冬であれば、石油業界の売り上げが伸びることでしょう。
平年より雨が少なく、晴天が続くことが多ければ、
レジャー施設の業績に良い結果を与えるように思えます。
長期予報については、まだまだ精度的には充分ではありませんが、
他の投資家があまり注目しない視点を持つことができるだけでも、
一歩リードすることになるかも知れません。

どんな情報であっても、それを的確に使いこなすためには、
それに関する勉強が必要です。
気象の勉強をすることで得られる対価は、
決して小さなものではないと私は考えています。



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50、東大入試より難しい? ~一般知識試験の攻略法~
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いきなりですが、まず次の問題をご覧下さい。
( )の中には、どんな言葉が入るでしょうか?

> 対流圏内で大気の大規模な運動を時間平均および帯状平均して模式的に表すと、
> 子午面で三細胞の循環が見えてくる。[中略]
> 赤道付近から上昇する循環は(a)循環といわれ、
> これは(b)風の駆動力となっている。
【平成12年度第2回気象予報士試験「一般知識・問10」から引用・一部改題】

来年1月の試験に向けて勉強に励んでおられる方ならば、
空欄に適切な用語を入れることは、それほど難しくはないはずです。
(a)ハドレー (b)貿易 ですね。
では、次の問題はいかがでしょうか?

> 大気の上端で入射する太陽放射と地球から宇宙へ放出される赤外放射は、
> 緯度約(A)度以下では入射の方が多くなっており、
> 大気や海洋はこの熱的不均衡を解消すべく地球規模の大循環を形成している。
> 低緯度では、赤道付近の熱帯(B)帯を中心とする積雲対流の活発域で上昇し、
> その極側の亜熱帯高気圧帯で下降する、いわゆる(C)循環が卓越している。
> (C)循環の上昇域には、亜熱帯から空気が流入している。
> この気流に地球自転による(D)が働くと、
> 風向きは東から西に向かう成分を持つ、いわゆる貿易風となる。

先ほどの問題と似た傾向が見られます。
(A)40 (B)収束 (C)ハドレー (D)コリオリの力 が正解ですね。
さて、過去問題を熱心に演習しておられる方でも、
この問題には出会ったのは、おそらく初めてではないでしょうか?
といいますのも、これは気象予報士試験の問題ではありません。

実は東京大学の入試問題なのです。【1998年・理科前期「地学」から引用】
気象予報士試験の勉強を熱心にしておられる方なら、
「意外に簡単だな」と感じられたはずです。
上記の問題も実際には4つの選択肢から選ぶ形式になっていますので、
難易度はもう少し低くなるかと思います。
(「地学」の試験は気象だけでなく、天文や地質などの問題も出ます。)

「お天気お姉さんになるための切符」として、
認識されることの多い気象予報士資格ですが、
その試験内容は、大学入試問題のレベルを上回るものもあり、
生半可な勉強では間違いなく挫折してしまうことでしょう。
大学入試に取り組むくらいの気合いが必要ではないかと思っています。

また、いわゆる「お天気マニア」であることは、
一般知識試験での成績にまず関係がないと言って良いでしょう。
NHKラジオの気象通報を聴いて天気図を何枚書こうと、
日本各地の気象記録をいくら詳しく記憶していようと、
そういった技能や知識は、一般知識試験でほとんど問われないからです。
(専門知識試験や実技試験では、ある程度役に立つと思います。)

一般知識試験について言えば、高校で理系だった人が有利なのは明らかです。
特に「物理」「数学」を一生懸命に勉強した方なら、
勉強しなかった人に比べると、習得速度にかなりの違いが出ると思います。
一般知識試験では基礎的な気象学に関する問題が数多く出ますが、
気象学を理解するには、ある程度の物理や数学の知識が必要になるからです。

このように書くと、長らく理系科目から遠い位置にあった方は、
「では過去の試験を全て丸暗記してしまおう」と思われるかも知れません。
しかし、それは労多くして功少ないやり方と言わざるを得ません。
今まで26回の試験が行われ、一般知識試験だけで400問近い出題がありました。
それだけの問題をどうやって暗記すれば良いのでしょう?
また、いくら苦労したとしても「丸暗記」は「丸暗記」に過ぎません。
少しでも出題パターンを変えられたら、それで終わりです。

勉強が面白いと感じるのは、内容が理解できたときです。
一つ理解できたことによって、一つ面白いと感じます。
これが次の勉強への原動力となるのです。
しっかりと勉強時間を確保し、この好循環を作り出すことができれば、
文系初学者が半年で「一般知識合格レベル」に達することは、
決して困難なことではないと私は考えています。

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